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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学の歴史を単に辞書的にさまざまな人の考え方を羅列するのではなく全体的な流れを意識して記述されている。
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学の歴史が、わかりやすく解説されていて、よかったです。自分と世界を考えるヒント満載で、役立ちそうです。
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
欲張った内容だが、著者なりの価値観というか哲学観が貫かれているので薄っぺらい感じはない。魂の哲学、意識の哲学、言語の哲学、生の哲学という四章立てになっている。著者がおそらく英米哲学を生業とするため、従来の大陸系だけでなくアメリカのジェイムズ、パースにスペースが割かれる。一方でルソー、ホッブズは一顧だにされず、ヘーゲルも意外に小さな扱いになり、生の哲学とされた中にプラグマティズムの扱いにも違和感が残る。しかし羅列的に名前を紹介されるより、著者なりのスタンスで取捨選択された哲学史なのでおもしろく読めた。
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哲学の歴史を、「魂」、「意識」、「言語」、「生命」へと展開する物語として描かれていることで哲学がどういった経緯をたどったのかがよく分かった。同時に、なぜ現代哲学が分かりにくいのかという事も理解できた。つまり過去の哲学に対する批判、反省を土台としているため、その土台が理解できていないから現代哲学が理解できないということである。哲学の歴史を俯瞰することを目的としているため細かい部分はバッサリ落としている。そのため哲学者それぞれの主張を読み解くためにはやはりその哲学者の著書を当たらなければならない。しかしながらその主張が何を土台としているのかを本書で扱っているため、理解の手助けになると思う。ただ、近代哲学、特に分析哲学は過去を土台としているものの、大きな断絶が存在しているようでやはり理解するのが難しい。さすがにその断絶を埋めることはできなかったが、断絶そのものの存在を認識できたのは良かったかもしれない。
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哲学は非常にとっつきにくい分野である。複雑な用語、難解な文脈、思想家同士のさまざまな影響関係など非常に分かりにくい。高等な言葉遊びのような感覚すらある。
また、哲学を知ってどうなるという思いもある。英語を学べばコミュニケーションができるし、工学を学べばテクノロジーの何かが分かる。料理法を学べばおいしく体にいい料理ができるようになるし、スポーツの技術を学べば試合に勝てるし、場合によってはそれが金にもなる。哲学はどうだ。いくら学んでも何一つ身につかない。体も健康にならない。コミュニケーション能力が上がるわけでもない。むしろ、哲学を学ぶあまり心身ともに不調をきたすという例もあるではないか。何のために哲学はあるのかと。
私にとって哲学とは上記のようなものだった。大学時代、哲学専攻の同級生を知識オタクの象徴とみなしていたことを白状したい。
しかし、最近少し考えが変わってきた。ものごとの基本的な考え方を知ることは、日常のすべての見直しにつながるということを実感するようになったのだ。同じものを前にしても、基本的な考え方、考えの出発点に立ち戻るとすべてが違って見えてくる。その意味において絶対に避けることができないものなのだと。
それにしても、哲学の専門書の敷居は限りなく高い。最近、新書や文庫化された哲学の啓蒙書を少しずつ読んでいるが、それでもやはり難しいものは難しい。でも、少しずつ分かってくると、次を知りたくなる。どうも哲学という分野はそういう意味で底なしのようだ。
本書は著者自身が述べるように、哲学の流れを物語として語るものである。ここでいう物語とは、一連のものと捉えるということであり、虚構性や創作性を意味するものではない。だから、一般的に言う通史のようなものだ。といっても単に時系列上に配置してもこの手の話はつながらない。関係のある思想群を並べて、相互の関係をつなげようとしている試みだといえる。本書では、大きな流れを、哲学の関心事という側面で、「魂」から「意識」「言語」「生命」へとのつながりと捉える。
各論に関しては先に述べたような難解さがどうしても付きまとう。それはひとえに私の知識と読解力の不足が原因であるが、その難を抱える私にも、全体の思想の流れを察することができるような構成にはなっているのはありがたい。
本書のサブタイトルは哲学が今後も生き続け、私たちの生活の中で何らかの意味を持ち続けることを願ってつけられている。様々な困難が待ち構える未来を考える上で、哲学は変わり続け、議論が続けられるのだろう。真理の探究は想像以上に厄介なものらしい。
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哲学が時代ごとにどのように発展してしたのかが概観できる。これまで漠然と知っていた哲学的な知識を、全体の中に位置付けて理解できる。必読!
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物語として哲学史を語るというのは面白い試みだと思う。哲学史の本はえてして無味乾燥になりがちで苦手なのですが面白く読めました。ただ,自分が詳しくない部分は消化不良ではあります。やっぱり僕はジェイムス,ベルクソン,メルロ=ポンティあたりが好きなんだなぁと改めて。ホワイトヘッドがラッセルの師としてしか触れられてないのは残念。
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伊藤邦武『物語 哲学の歴史 自分と世界を考えるために』中公新書、読了。「人間の誰もが世界と向き合い、自分の生を意味を顧みるときに、どうしても問わずにはいられない、もっとも根本的な問いを深く考え、その答えを模索しようとする知的努力」が哲学。哲学史を一つのストーリーとして描き出す
筆者は西洋哲学二千余年の歴史を、「魂の哲学」(古代・中世)、「意識の哲学」(近世・近代)、「言語の哲学」(20世紀)、「生命の哲学」(21世紀へ)と分類、そのパラダイムシフトを追跡する。魂から意識へ。意識から言語へ、そして生命へ。
西洋哲学の源流は魂への配慮に始まる。そしてどう認識し、言語化するのかという営みは、魂そのものとしての生命に注目せざるを得なくなる。自分とは何か?とは、世界と対話した上で自分に戻るからするから、哲学のストーリーとは再帰的といってよい。
本書は新書サイズで西洋哲学史の流れだけでなく、代表的な考え方を平明かつコンパクトにまとめようとする大胆な試みだが、筆者の意図はほぼ成功しているといえよう。「自分と世界を考えるために」(副題)一助となる一冊である。
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何か自分に不調があった時、「それは精神的な問題ですね」とか、「体が疲れているんだろう」などと私たちは心と体を分けて考え、それに応じた対処を取ることができる。また、自分に心があることは認めても、部屋の中にある椅子や机、その辺に転がっている石などに、心があるなどとはまったく考えない。心は動物に、しかも高等動物に、特有のものだと信じている。
しかし、それは当たり前のことだろうか。もし当たり前でないとしたら、なぜそう信じていられるのか。心とは、いったいどのように在るものなのか。
こうした問いのひとつの行き先がこの本にはある。これは、過去の哲学者たちが「心」をどのように捉えようとしてきたかの歴史=物語なのだ。
古代から現代へと至るその物語は四つの段階に分けられている。「魂の哲学」「意識の哲学」「言語の哲学」「生命の哲学」である。そしてこの物語の面白さは、これらが現代において、始発点へと回帰するという見方にある。
――「魂から意識へ、意識から言語へ、そして生命へ―。これは簡単にいうと、一つのサイクルの物語である。哲学は魂という原理から出発して、意識や言語という近代科学と密接に結びついた考え方を経由して、生命というある意味では古代の魂にも似た原理へと戻ってきた。」(p.5)
そして、この「心」への問いは、最終的には宇宙へと広がっていく。物理学を基本にして宇宙論が発展した今、私たちの心は宇宙に対してどう位置づけられるのか。それは、私たちの内面を問いながら、私たちを超え出るものを問うことになるだろう。
こうした無限の射程を含みながら、哲学における「心」の歴史=物語がこの本には明快に描き出されている。
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「心」の存在論について、ソクラテスやプラトンから現代までどのようなことが考えられてきたのかを、螺旋と円環を組み合わせたかのような流れとして記した本。何を言っているのか(説明不足で)分かりにくくなっているところもちらほらあるが、きれいにまとまっていて、誰と誰が、何と何が、どう関係するのかがわかりやすい。
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題名をあえて「物語」としたところに「歴史物語論」に対する著者の意図を感じるが、それは捻くれた見方だろうか。
著者は人間の精神をテーマに哲学史を論じ、最終的には「生命の哲学」へと帰結している。これは科学哲学のみならず、生命倫理や医学分野等々、学際的に考えなければならない重要なテーマであると思うが、タコツボ化したアカデミズムにそれが可能か否かが課題だろう。
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3000年にわたる哲学の歴史を、主たるテーマの流れがどのようになっているか、なぜそのような流れに至ったのかという説明を重視して記述する。あたかも、ある川の流れを淵源から下流に向かって一体感を持った解説を行うような趣がある。
人類の知の営みのエッセンスともいうべき内容を、わずか1000円未満の本一冊に入れ込んでいる。ともすると倫理の教科書のような「スケルトン未満」の内容となったり、逆に一つ一つのパーツが虫眼鏡が必要なほどごちゃごちゃしてしまいそうなものだが、この本は大きな絵柄を見ることに心がけているので、読みやすく、かつ適度な知的刺激が得られると思う。著者と編集のGood-Jobだ。
例えてみれば、巨大なタペストリの見本織の端切れのようなものだろうか。陽と陰、抽象と具象、魂と元素、イデアと生物、科学と哲学、認識と神、心と体、差異と反復など、二元で対照される概念や方法論が、縦糸横糸として織り込まれて絵柄を作っていく様子が現わされていく。あるいはDNAの二本鎖のように綴りあわされ、動と反動、合一・止揚の動きが歴史の流れのなかでダイナミックに動いていくさまが描写される。
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まさに「物語」のように哲学の歴史を有機的に紡いでくれます。全くの初心者にはお勧めできませんが、それなりに哲学の知識を入れた後ならば
断片的な知識を結びつけるのに役立つと思います。
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哲学を「存在とは何か?」「人間とは何か?」ということを切り口にギリシャから現代まで俯瞰した本。非常に狭い範囲に論点を絞っているのでそれぞれの哲学社の思想をすべて網羅しているわけではないが、「存在」「人間」というものをどのように考えるかという哲学の最大課題を見事に描き出している。プラトンのイデア論、アリストテレスの目的論、デカルトによる理性の発見、イギリス経験論、大陸合理論、カントの観念論、ショーペンハウアーの生の哲学、ニーチェの力の哲学、プラグマティズム、ラッセルの言語哲学、実存主義と哲学の大筋を理解するにはうってつけ。一つ一つの哲学書を読むよりその思想を生み出す土台となったそれ以前の哲学との流れとして理解できるので、分かりやすい。哲学が科学技術の進歩に影響を受けて形を変えてきたということもよくわかる。とは言っても内容を咀嚼するのには相当の努力が必要で、面白さも相まり珍しく2度読みした。人間は特別な存在なのか、言語というものはなぜ存在するのか、言語は社会の進化を促すのに大変有益であると同時に言語があるために哲学のようなある意味考えなくても良いことを考える宿命を人間は持ってしまったのではないかとつくづく考えさせられた。
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哲学とは歴史である。そのことがよくわかる本だった。本書は、哲学史を一つの物語として語った本だ。歴史といっても、実際にはさまざまな細部があり、すべてを詳細に記述することはできない。本書が考える哲学史の展開のストーリーは、「魂の哲学」から「意識の哲学」、「言語の哲学」を経て、「生命の哲学」に向かっていく。
ある思想がどのように生まれ、どのように否定されるのか、ある人物はなぜこのような主張をしたのか、そして私たちは今なぜこのように考えているのか、などのことがわかるようになる。これまでの思想の全体像を理解したい人におすすめの本だ。