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鳥籠使い一行の原点は
2023/12/12 08:39
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投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公たちそれぞれの、そしてチームとしての出発点を納めた短編集。どのエピソードも一巻以前のものなので「0巻」と考えてもらうとわかりやすいと思う。常にどこか飄々とした雰囲気の一行の背負う生い立ち、成長、悲哀はファンの心を掴むこと請け合いだ。
これは読み違えかもしれないが、今まで作中では「怪異が現実の歴史に侵食する」読み味だったのが、この巻では「現実が怪異に足を踏み入れる」ような舞台を整えているように思われる。前島密、小泉八雲、泉鏡花、ムンクなど、その時代までに存在した人々が近くにいる情景は、これまでの話とは違った読み味を加えてくれている。
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鴉夜、津軽、静句のエピソードゼロと法廷劇の4編
2023/12/04 13:24
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投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
テレビアニメも好評のうちに放送を終えた偉人オンパレード系特殊設定ミステリ、待望の最新刊。
「とんでもない変態」に不死にされた鴉夜。怪物退治屋・津軽は如何にして鬼混じりとなったか。山奥で家族とともに鴉夜に仕える静句の幸せな日々の終焉。既刊で少しだけ語られていた主役三人の前日譚3話が堪能できます。
面白かったけどミステリは?という向きもご安心あれ。最後の短編「人魚裁判」は人魚の冤罪を鮮やかに晴らす法廷劇。鴉夜の何気ない質問とそれへの証人の回答が少しづつ事件の真の姿を明らかにしていき、最後にはロジカルに真犯人にたどり着く傑作です。
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新たな組み合わせのバディによる、伝奇小説の要素をもつミステリ新シリーズに期待
2023/08/29 17:07
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投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
新TVアニメ「アンデッドガール・マーダーファルス」を予備知識なく見た。タイトルからゾンビ少女の物語?何だ、これは面白い!? 時代設定が「鬼滅」が大正でこちらは「明治」、主人公輪堂鴉夜は、過去に首から下を奪われてないが、不老不死であり、生首だけで生きている。平安時代から生きて900歳を超える14歳の美少女。まるで「鬼舞辻無惨」ではないか。一人では動けないため普段は鳥籠に入って持ち運ばれている。奪われた体を取り戻すために怪物専門の探偵「鳥籠使い」を結成して数々の事件を解決しながらヨーロッパを巡る、というストーリー。チームの一人真打津軽は、鴉夜と共通の敵に半人半鬼にされた「鬼殺し」。性別は違うが太陽を克服したね豆子、そしてもう一人のメンバーで鴉夜に仕え世話をする人間馳井静句は腕が立つので竈門炭治郎と、「鳥籠」探偵団はまるで「鬼殺隊」ではないか。「鬼滅の刃」ヨーロッパ版?
19世紀末。日本では水木しげる的「妖怪」世界、ヨーロッパでは吸血鬼・人造人間・人狼など、異形な存在がまだ暮らしていた世界。こういったキャラクターに加え、シャーロック・ホームズとワトソン君、怪盗ルパン、はたまたシリアル・キラー切り裂きジャック、オペラ座の怪人など、小説・映画などで誰もが知っている有名人が登場し、「鳥籠」と、推理と異能力バトルを繰り広げていくロードノベル。架空の登場人物とフィクションの登場人物、そして実在した人物が混然一体となったプロットだが、現実にあったような錯覚を感じさせる謎に満ちた悪夢のような笑劇(ファルスfarce)の連続。
原作は3巻まで出ており、これからアニメ放映予定。第4巻は短編集でこれまで語られていない「鳥籠」メンバーの過去の話。おっ、なんだ、なんだ、そうだったのか、である。
「知られぬ日本の面影」は、「鳥籠」探偵団誕生秘話。小泉八雲を登場させて物語の狂言回しをさせるところは、著者の想像力と物語構成力を示すものであり、また、近代化を目指す日本・東京の描写と文章もリアルさを感じさせる力強さがある。探偵団最初の依頼案件、ホームズ『赤毛同盟』を彷彿させる推理で解決する。
「輪る夜の彼方へ流す小笹船」は、鴉夜が不死となる話。陰陽道の秘術で不死となったとされ、陰陽道の大物安倍晴明が登場するが、実は時空を超えた仕掛けがあった。「彼方へ流す小笹船」が示すようにHGウェルズ『タイムマシン』が謎を解くカギとなる。
「鬼人芸」は、真打津軽が半鬼半人の「鬼殺し」となった過去。スイスでホームズとの格闘で死んだと思われた最大最強の敵モリアティ教授、なんと「半鬼半人」実験で日本に登場。ロンドンを震撼させた切り裂きジャックが手下であるなど、『シャーロック・ホームズ』のフィクションと歴史的事実が介入混在する。教授は鴉夜の不死の秘密を奪おうと目論んでおり、鴉夜と津軽が手を組む端緒となる。なお、本名かどうか不明だが、真打という苗字の由来も示される。
「言の葉一匙、雪に添え」は馳井静句の物語。馳井一族は300年近鴉夜を守っている。そこを教授と半鬼半人ジャックに襲われ、下半身を奪われてしまう。一族の静句の愛する鴉夜を独占したいという秘めた想いが、残酷な形で願いがかなったことへの悔恨の念に苛まれるが、生首鴉夜と共に生き一族の使命を全うする決意を描く。そして真打津軽との出会いが…。
「人魚裁判」は、物語の狂言回し役新聞記者アニーと「鳥籠」探偵団の出会いの物語。欧州編最初の推理案件。一つの小さな手掛かりから論理を突き詰めていく推理の楽しさが味わえ、第一話とともに作者の推理作家としての力量が余すところなく示されている。
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それぞれの生い立ちが描かれる実質0巻にあたる本作。
なるほどー!そーゆーことだったのねと納得する。
アニメ見てみようかなぁ。
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さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!
今宵は『鳥籠使い』の始まりを語って差し上げやしょう!!
本作『アンデッドガール・マーダーファルス4(通称アンファル)』はナンバリング0が相応しい、鳥籠使いの輪堂鴉夜、真打津軽、馳井静句、そして鳥籠使いの取材に奔走するアニーの4人の出逢いや生い立ちに触れた物語でありやす。
輪堂鴉夜は元から不死として生まれたのか?
真打津軽が属していた鬼殺しとは?
馳井静句と輪堂鴉夜の出逢いとは?
アニーの求める『鳥籠使い』の始まりは?
と、これまでのシリーズ作品前後や幕間を補う本作は、大人なアンファルといった可笑しさよりも哀しみ強めのトッピングでございます。
満腹よりも腹八分目が丁度良いとは言いますが、あたくしにゃ、味噌たっぷりの田楽で腹一杯にしたいもんです。
「津軽、まずはお前の脳味噌を一杯にしろ」
「師匠、馬鹿力のあたくしが知恵まで付けたら手に負えませんでぇ。」
「大丈夫だ、もとより私に出せる手はない」
「おぉ、師匠。それじゃ、あたくしを誰が止めてくれるので?」
「やれ、静句」
「はい、鴉夜様」
「ひゃ、………。」
最後に次巻予告が載る所から、まだまだ冒険譚に終わりはなさそうと安心した所で、今宵はお開きとさせて頂きます♪
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ドウ様の正体そいつかー!
3人の過去、馳井家が鴉夜に仕える理由が判明した。静句さんだけでなく馳井家代々たぶらかしていたなんてさすが鴉夜さま。
今までなかったのに急に初出一覧が付いたので前巻を見直してしまった。大人の読者を増やそうとしてる?
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今まで書かれていなかった、鴉夜が不老不死になったり、津軽が半鬼になった経緯などが解明された一冊でした。
まだ純粋だった頃の鴉夜が可愛かったのに、ああなってしまうのも無理ないですよね。
津軽も中々ヘビーな半鬼になった経緯が切なかったです。
次はどんな冒険が待っているのか楽しみです。
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鳥籠使いが鳥籠使いになる最初の事件。鳥籠使いのメンバー鴉夜、津軽、静句の過去の出来事。そしてエポック社のアニーと鳥籠使いたちの出会いとなる人魚裁判。全5話からなる短編集。
「輪る夜の~」自らも自覚する人でなしが赤子をなぜ引き取ったのか。自分に恩義を感じ、信頼と信用をさせて自分の悲願を達成すると見越していたのだろうか。ドウ様は人でなし、ドウ様は人では無しでなに何者か?
「鬼人芸」喜怒哀楽の楽以外の感情が欠落しているような津軽。サイコロ運がないのは生まれつきなようで出る目出る目が悪い人の見本だ。そんな己自身もネタにして楽しい方へ面白い方へ向かうのが強いのか狂っているのか。そんな津軽の喜怒哀楽を全て観える貴重な話。
「言の葉一匙~」無口で鴉夜に忠実で津軽に対して辛辣くらいで過去が謎だった静句。今回で精神年齢15才依存度MAX激重女性だと判明。鴉夜様のためが全部自分のための静句にとって今の状態は良いのか悪いのか、津軽は鴉夜にとって良いのか悪いのかは謎で怖い。
今作はそれぞれが今の鳥籠使いのメンツになるまでが書かれたゼロ巻のような立ち位置だ。だが、個人的には1~3巻を読んで鳥籠使いの面々の個性を承知の上で読んで欲しいと思う。もちろんこちらから読んでも楽しめると思うが、最初にしては重くて笑劇とは言えない。それぞれを知った上で読むとキャラの今とのギャップも感じることが出来るし、愛も増すように感じた。
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3人それぞれの過去の話を含めた5編の短編集
静句の過去と鴉夜が今の姿になった時の『言の葉一匙、雪に添え』が一番好き
白と赤のコントラストと2人の心を思うと胸が痛くなった
津軽は鴉夜と出会えて本当の本当に良かったなと思う
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《鳥籠使い》一行が日本を旅立つ直前に手がけた事件で幕を開け、「アンデッドガール・マーダーファルス エピソード0」的な3編を挟んで、一行が欧州に渡った直後の(同時に、アニーが《鳥籠使い》を初めて目にした)事件で幕を閉じる、何とも豪華な5短編集です。
エピソード0の3編では、輪堂鴉夜、真打津軽、馳井静句の三者それぞれを見舞った壮絶な悲劇を知らされ、読んでいるこちらまで打ちのめされます。
そこから立ち上がり、出会い、旅を続ける今の彼らを応援する気持ち、彼らの目的が達せられることを祈る思いも、ますます強くなりました。
そういった感じで笑劇の幕間を存分に楽しませていただいたものの、やはり、一行の欧州道中も気になって仕方がありません。
これまでのエピソードをアニメでおさらいしながら、もうしばらく続きを待ちましょう。
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鳥籠使い一行のメンバーそれぞれの来し方が語られる短編集。蘆屋道満の手により不死となった鴉夜。その鴉夜に代々支える家柄に生まれた馳井静句は、襲撃を受けた鴉夜を守り切れず、鴉夜の身体を奪われてしまう。真打津軽が鬼となった経緯もなかなかに壮絶。津軽が作られた存在だったとは思わなかった。
そして、3人共通の因縁の敵である杖をついた老人ことジェームズ・モリアーティとの戦いの始まりの物語でもある。
本短編集の中で「人魚裁判」だけは推理劇となっており、探偵としての鴉夜の能力が遺憾なく発揮されている。
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今回短編だった、微妙。
各々の過去の話で、ミステリがっつりでも
戦闘がっつりでもない。
長編ではキレッキレの文章力も、
短編だと何だかぼんやり…。
既に次巻予告されていたので、そちらに期待。
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アニメ化もされたシリーズの4巻目であるが、前巻からの続きではなく、初の短篇集である。五つの短篇はすべて、3巻までに描かれたエピソードより以前の話である。特に《鳥籠使い》のメンバーについて、これまで僅かしか描かれなった過去が明らかにされる。キャラクターに深みを与え、興味深く読むことができた。
「知られぬ日本の面影」では、怪物専門の探偵《鳥籠使い》としての最初の事件が描かれる。あのラフカディオ・ハーンが登場する。
「輪る夜の彼方へ流す小笹船」では鴉夜の生い立ちと、彼女が如何にして「不死」となったのか、そのいきさつが語られる。高名な陰陽師二人が登場する。あとH・G・ウェルズ…
「鬼人芸」では津軽の生い立ちと、半人半鬼にされたいきさつが語られる。さらに「言の葉一匙、雪に添え」では静句の生い立ちと、鴉夜が「生首」になったいきさつが語られる。
最後の「人魚催裁判」は、第1巻で少しだけ触れられたエピソードで、少女記者のアニーが登場する。
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すべては論理で描ける、というのが作者の主張か。暴力も論理で解き明かす。
謎解きは、面白かったけど、過去譚より、話しの続きが読みたかった。
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鴉夜、真打、静句!強烈キャラクター陣のエピソードゼロ短編集 #アンデッドガール・マーダーファルス4
■きっと読みたくなるレビュー
アンガール強烈キャラクター陣のエピソードゼロ短編集。今回もアクションや謎解きがめっちゃ楽しい!しかも今まで謎だったキャラの過去が明るみになり、なるほど感も満載。さらに歴史上の人物を楽しく学べるところも素晴らしいですね。
また今回はメッセージ性がかなり強めで、作品に深みと味わいがパワーアップ。そして装画の鴉夜が可愛すぎ!和服の女子には弱いの。
○知られぬ日本の面影
鴉夜、真打、静句が仲間になった翌日の一話。
本シリーズの面白みが凝縮された内容で、ひっくり返るような史実キャラ登場でニンマリ。謎解きでは大好きな元ネタが出てきて歓喜、子供のころ読んで発想力の壮大さに痺れたんですよね。
○輪る夜の彼方へ流す小笹船
鴉夜の少女時代、不死の謎にまつわる一話。
時代は遡り、またもすごい登場人物と逸話に絡めてストーリーが進む。圧巻の筆致で、さらにロジックを加えて面白く読ませるなんざ、さすがの匠芸ですよ。そしてあまりの真相に、顎が外れました。
○鬼人芸
若かりし頃の真打、半鬼になってしまったエピソード。
序盤は楽しく元気な雰囲気ですが、後半のおぞましさぶりは精神に来る…
○言の葉一匙、雪に添え 【超おすすめ!】
静句と鴉夜の関係性が分かる一話、そして最も気になる謎のエピソード。
最後の1ページが美しすぎるよ… 強く深く静かな想いがキレイ。そして苦しさが全身を駆け巡る。本作で一番好きな作品でした。
○人魚裁判【おすすめ!】
タイトル通りのお話、おなじみキャラも登場する嬉しい作品。
人間VS人外の超しっかりとした法廷ミステリー。短編なのにロジック出来がめっちゃイイ! 人種差別の社会問題性も含んでいて、読み応えもしっかりありました。
■きっと共感できる書評
人生は誰しも一筋縄ではいかない。本作に出てくる登場人物たちのように、派手で辛辣な出来事はなかなか起こりませんが、辛い目や酷い辱しめに合ってしまうことは少なからずあります。
しかしどんな屈辱や差別を受けようとも、前向きに笑い飛ばす彼らが大好きなんです。もっともっと笑劇を見せてほしい。次回作も期待しちゃいます!