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高野さんの本は何冊か読んでいて、冒険旅行的な内容が好きだが、今回の作品はちょっと趣が異なる感じがして、それが好きな人もいると思うが(そして学術的には今回の作品は評価されるものだと思うが)、個人的には興味があまり持てない分野だった。
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さすが高野さんの調査力と対応力。面白い。
イラクのイメージがどうしてもイランイラク戦争とか湾岸戦争の暗いイメージしかなかったので、そうかメソポタミア文明、とか改めて画一的なイメージを持ってしまっている自分に気付かされた。
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読了。
ウル、ウルク、(自衛隊が駐留していた)サマーワ、チグリス・ユーフラテス川など、歴史の教科書などで馴染みがある地名が続く。
自分の思いどおりには物事が進まない、のんびりした外国の雰囲気が続く中、秘密警察が出てくるくだりだけ雰囲気が緊張感・冷や汗へ変化する。
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『ワセダ三畳青春記』、『西南シルクロードは密林に消える』に続く、個人的高野秀行3部作入賞作品。何の権威もないが(当たり前)、高野氏の持ち味全開で、まず踏み入れることができないイラクのしかも国家権力が及んでいない地域のことを追体験できる、一読の価値がありすぎる本。
関心が自分の外側の世界の全方向に向けて果てしなく拡散していく高野氏の持ち味が十分すぎるほど発揮されていて、読む側も全身全霊で取り組みがいがある。
『謎の独立国家ソマリランド』で導入された、「有名作品の登場人物・あらすじに当てはめて説明する」メソッドが、本書ではいい感じになじんでいる(『ソマリランド』の時は、途中当てはめることに重きを置き過ぎ、逆に分かりづらくなる向きもあった)。
更に『謎のアジア納豆―そして帰ってきた〈日本納豆〉』では、後ろのスポンサーの影がちらついていた(取材するにあたってはスポンサーは必ず必要だが、個人的にはその影はできる限り隠してほしいと思っている)が、本書はそのような影も感じなかった。
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もう たまりせんね
この 面白さ!
「ソマリランド」以来の
興奮度で 読んでしまいました。
PC画面上で
身体を全く動かさずに
世界中の至るところへ、
行った気にさせられてしまう
不幸な(!)現代だからこそ
高野秀行さんの「とんでも旅」見聞記
は もっと 読まれて欲しい
人は
どこから来て
どこに向かって
行くのだろう
なんて 問いにも
ちゃんと考えさせてもらえる
そんな 一冊に 感じています
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イラクの湿地帯の歴史・文化・生活が言語化されていて素晴らしかったです。シュメール人の頃から続く伝統が失われませんように。私もティグリス川とユーフラテス川のデルタに行ってみたい。
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イラクの湿地帯に興味を持った我らがタカノ。イラクの歴史、現代イラクの問題、湿地帯を行く舟を作る、食べる。
超危険な所に行くハイパー勇気と好奇心。スゲー、スゴすぎる。タカノは天才だと改めて思う。
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イラクのチグリス・ユーフラティス川の湿地帯アフワールを求めて。
これは2019年のオール読物で連載されていたものやネット連載を読んでいたのだが、手に取ると厚さ4センチもある。連載と同じ内容かと思ったら、なんと湿地帯へは2018年1月、2019年5月、2022年4月と計3回行っていたのだった。雑誌にはなかったカラー写真が豊富で、また同行者・隊長、山田高司氏の大変すばらしいイラストで湿地の浮島や葦の家、料理などがとても理解を助けてくれる。
2回目に行った時に伝統的船を造ってもらい、コロナ禍を経て行った3回目でやっとタラーデという船に乗った。これが表紙の写真だ。一番前がボートマンのラーアド、高野氏、山田隊長、船頭のアブー・ハイダルの4人。船を造る時には設計図などはひかず、感覚で作ってゆき隙間などもあるのだが、現地でタールがとれるのでそれを船全体に塗るので沈まないのだった。・・などと現地の人たちが生き生きと、もちろん高野氏、山田氏、まるで自分もその場にいるかのような筆致だ。
2018年は湿地帯の偵察。
2019年は湿地帯で伝統的船・タラーデを造ってもらう
そしてコロナ禍。この間にいろいろ調べものをし、湿地帯で作られる伝統的刺繍毛織物・「マーシュ・アラブ布」の存在を知る。そしてその布を集めている人が日本にもいた。さらにアガサ・クリスティも集めていたらしいが現在は収集した布は見当たらないのだ、という情報も得る。
そして2022年4月、やっと3回目行くことができた。この回は、タラーデ(船)に乘る、湿地の民・マアダンの生活を知る、・マーシュアラブ布の正体を探る、と目標をきめ、めでたく3つとも成就。
とにかく分厚い本ながら、しっかりと、しかしすらすらと、いやちがうか地図と歴史年表を見ながら読み終えた。
「オール読物」2019.3・4月合併号~2019.12月号
https://booklog.jp/item/1/B07N47JXSM
2023.1月号~6月号 に連載を大幅な加筆・修正
2023.7.30第1刷 図書館
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感想
最初はタイトルだけ見て歴史ものの小説かと思ったが、実際は旅行記というか体験記とかそのような読み物。
謎のベールに包まれたイラク。その中でもさらに伝統的な暮らしをする南部の湿地帯で、人がどのように暮らしているのか、どのような歴史的背景でそうなったのかが記載されている。
チグリス川とユーフラテス川の豊富な水が形成する湿地帯も上流にダムが建てられ、農業用灌水として使用されることで下流側に水が回ってこず、湿地帯の減少と共に文化も廃れゆく可能性がある。また、現地民のマアダンに対する迫害が強く、マアダンの流出も進んでいる。まさに失われゆく可能性が高い文化だ。
歴戦の旅人の筆者と山田氏を持ってしても、文化が違いすぎてなかなかうなく取材が進まないが、現地の人の懐に飛び込むまさしく体当たり取材で、湿地帯の人の暮らしが明らかになった。写真や絵も多くあり、楽しく読めた。
失われゆく文化に本書で触れ、自然に楽しく生きるという古来の暮らしを守ることも今の時代は難しくなっているのかもしれないと感じた。
あらすじ
謎に包まれた国イラク。その中でチグリス川とユーフラテス川の湿地帯に筆者が赴き、取材した内容が記される。湿地帯の中洲を梁山湖に見立ててタイトルに冠している。
イスラム教で9割を占めるスンナ派ではなく、1割のシーア派が主流を占める国。
・とにかくご飯が美味しいらしいが、しこたま食べる
鯉の円盤焼き、ゲマールがオススメ
・イランと違い敬虔なシーア派。お酒は禁止
・日本人というとお金持ちと思われるため、中国人という
・マンダ教はキリスト教やイスラム教の源流と自認
・マアダンという湿地民がキーワード
・ポイントのない湿地帯での探検に船大工と交渉して旅することに
・フセイン政権後、スンナ派とシーア派の宗教対立が起こるように
・湿地帯の王アミールに、フセイン政権との戦いの話を聞く
・NGOのジャーシムと出会い、世界が広がる
・一夫多妻性、親戚同士で嫁を交換する氏族もいる
・歴史としても抵抗勢力が居座るにはちょうど良い場所だったようだ
・共産主義的な考え方をする人もいる
・アザールという湿地帯で作られたであろう布の刺繍。世界でもあまり知られておらず、その謎を解くために旅に。産地はチグリス川流域に分布
・現地民はプライドが高く、人を雇うことができない
・どこに行くにも現地民の保護者が必要
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世界最古の文明ことメソポタミア文明発祥の地、
ティグリス川とユーフラテス川流域の湿地帯“アフワール”を旅した冒険ノンフィクション。
おそらく多くの日本人にとって危険なイメージを持たれている国イラクに、コロナ禍を挟んで3回も渡航しているバイタリティが凄いし、現地の人と“友達になる”コミュ力にはただただ脱帽。
現地の食文化、宗教観、ライフスタイル、価値観に時に驚かされ、時に考えさせられた。
湿地帯の葦でできた館“ムディーフ”はシンプルな構造でいて豪華絢爛、水牛の乳製品“ゲーマル”も一度で良いから食べてみたくなるくらい美味しそうだ。著者らの冒険を通じて古代文明、シュメール人に思いを馳せるロマンがある。数多くの写真と洗練された“山田隊長”のイラストが差し込まれているおかげで、イメージもしやすい。
また、その場で手に入るありあわせのものでモノづくりをする“ブリコラージュ”は、準備段取りを重視しがちな日本人にはなかなかない発想で、良い気づきになった。
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」著者のポリシーが詰まった渾身の一冊。
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郷に入る前に大事なことを学んだ
もちろんそれたけでなく、マンダ教徒、シュメール等など聞きなれない単語が多くて目が回りそうだった
とりあえず湿地はヤバい。倫理観がヤバい
倫理観なんていうものは、環境が作り出すものなんだろうな
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書店で平積みにされているのを見て、思わず手に取ってしまいました。一度見たら頭から離れない表紙のインパクト通り、内容も凄まじくインパクトのあるものでした。
『イラク』と言われると治安が悪い、よくわからない場所と思っていましたが、高野さんの書き振りが読者にとって非常に分かりやすい表現であったり、山田隊長のイラスト(というよりもはや図解)であったり、写真や地図で明確に伝えて下さったお陰で、まるで現地にいるかのような気持ちで本に没頭することができました。
人との繋がりがないと前に進めない前途多難な旅に登場する、多くの人々の個性が出ていると共に、最後は『仲間』となっている所が非常に感慨深かったです。
これはただの「本」ではなく、アフワールに関する貴重な文献であると思いました。また、多くのページで引用元が書かれていたり、最後には参考文献やお世話になった方々についてまとめられていたりと、高野さん自身が丁寧に調べ、まとめられたことがヒシヒシと伝わってきました。
本当に面白かったです!長きに渡る調査、お疲れ様でした。
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いやもう、めちゃくちゃ面白かった。
イラクの、その中でも湿地帯(アフワール)という知られざるエリアに限った話にも関わらず、高野式ブリコラージュ的探検譚の勢いに乗っかってとても面白く読んだ。
恥ずかしながら、水滸伝を読んだこと無いので、登場人物たちの水滸伝例えがイメージ湧かないという残念さ…今度読んでみたいと思う。
『イラク水滸伝』→『本家水滸伝』というなかなか無い流れを踏むことになりそうで、それはそれで良いかな笑
シェイフ・山田(山田隊長)の挿絵も素晴らしく、子供の頃に読み耽った『冒険図鑑』を思い出した。
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イラク南部のティグリス・ユーフラテス川河口付近にある湿地帯アフワールの冒険譚。イラク方言のアラビア語の学習に始まり、特注の船に乗って湿地帯を漕ぐところまでで終わる。途中に新型コロナ禍を挟みながらも、数年がかりで断続的にイラクを訪問しながら現地の関係を築いていくのは冒険家ならでは。
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ヤバイ国イラクという印象が変わり、この国の歴史に思いを馳せる。アフワールという湿地帯、水の民の生活に触れ、マンダ教徒やイラク料理、タラーデ(舟)作り、マーシュアラブ布のルーツ探しなど人脈に頼りながらの旅の記録。
梁山泊に例えながらの描写が的確で分かりやすくユニークな人々だらけで面白かった