紙の本
歴史書になっている
2021/06/08 16:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Masaru_F - この投稿者のレビュー一覧を見る
1996年に日銀総裁に就任した松下康雄氏から現在の黒田東彦氏に至るまでの25年間における金融史を、日銀総裁の目線、中央銀行の目線で書かれています。バブル崩壊後の長期株式相場の低迷、デフレ経済からの脱却という課題にいかに対応してきたのか。個人的には少し日銀、日銀総裁に対して厳しいコメントもあるように感じました。
前半部分は、「問題先送り体質」と「先送りできなくなった金融機関の苦闘」を振り返る歴史書として、課題先進国・日本から多くの示唆を得る書として読み進む価値があると思います。私はこの歴史の渦中にいましたが、「そういうこともあったな」とか、「そういう背景があったのか」など、自分なりに整理するのに役に立ちました。
投稿元:
レビューを見る
日銀を通して四半世紀の金融状況、ゼロ金利、量的緩和、リーマンショック、東日本大震災、欧州債務危機、インフレ目標、異次元緩和などのドキュメント本です。ドラマチックでした。
印象に残った文章
⒈ 我が国で最も高いと言われている総裁の給与、年収、総裁が5133万円、副総裁が3714万円、ちなみに内閣総理大臣が4488万円・・・
⒉ 肖像画は一千数百円と聞きました。
⒊ 「異次元緩和」「黒田バズーカ」の異名が広がっていく。
投稿元:
レビューを見る
日銀を取り巻く諸情勢がどんなものであったか、できる限りファクト・ベースで書かれた貴重な本。かなり日銀のみならず財務省、金融庁さらには政治家にまで取材をして、その上で国会議事録とかの公式文書を、場合によっては注釈を付けて綿密に記録を残してある良書です。霞ヶ関の劣化は言われて久しいが、日銀の経営層の劣化がいかに酷く進んでいるかがわかる。黒田後の日銀立て直しには数十年かかる気がする。
投稿元:
レビューを見る
日銀の漂流ぶりが見事に描かれている。あきることなく読めた。歴代の人物像が浮かび上がってくる。金融緩和の具体的な方法については素人でも分かるようにもっと詳しく書いて欲しかった。
投稿元:
レビューを見る
「日銀」を中心とした、平成日本経済金融史2021/02/11
1990年代バブル崩壊から、停滞の30年 日本金融の記録
1997年金融危機の最中に、日本銀行法の改正が行われ、日本銀行は待望の「独立」を果たすが、他方、政治や世間と直接向き合うことの責任の大きさは望外に大きなものとなった。
2020年コロナ禍のアベノミクスは金融政策を難しくし、結果的には徒に金融緩和を続ける、「日銀漂流」の事態に陥ってしまった。
日銀総裁を時代区分とするまとめ方も「理念・思想」による経済政策史としてユニークであり、成功していると思う。
2021/02/16日銀漂流 西野智彦☆☆☆
1997年6月日銀法改正 戦時法「日銀は国策機関」から「日銀独立」へ
Ⅰ.松下総裁1996-1998
日本版ビッグバン(橋本総理)フリー・フェア・グーバル
通貨危機・金融危機
日銀特融はつなぎ資金 公的資金は決断できず
接待事件 松下総裁・福井副総裁辞任
Ⅱ.速水総裁1998-2003
銀行国有化 長銀・日債銀
99年02月ゼロ金利政策導入 リフレ派の批判「量は絞っている」
00年08月0.25%へ引上げ 「議決延期請求権」政府
米国ITバブル破裂 株価下落・経済変調
01年03月量的緩和政策 福井前副総裁「量的緩和は無意味」
「株式買入れ枠2兆円」日銀自己資本に相当→実質公的資金資本注入
竹中プラン「金融再生プログラム」
インフレ・ターゲット 浜田宏一岩田規久男ー山本幸三 本田悦郎 高橋洋一 中原
Ⅲ.福井総裁2003-2008 岩田一政・武藤敏郎
2003年05月りそな救済「繰延税金資産」 公的資金2兆円 日銀特融
円売り大介入 非不胎化介入 量的緩和を支持する米国の許容
小泉政権で最も効果のあった経済政策「為替介入と金融緩和」
円キャリートレード Globalな過剰流動性の問題
出口戦略=オペ期間の短縮化→在任中に「量的緩和をやめたい」
2005年平成の大合併 郵政民営化法案
11月CPIプラスに浮上
2006年03月「量的緩和の解除」へ 安倍晋三官房長官の反対
村上ファンド問題のダメージ
Ⅳ.白川総裁2008-2013 衆参ねじれ 武藤総裁・白川副総裁・伊藤隆敏副総裁
新日銀法では異なる議決の調整は規定されていない 両院一致のみ
08年03月米国サブプライムローン金融危機
「リーマンショック」 8,000社の系列会社 10万異常の債権者
9月13日チャプター11 (中曽局長97年三洋証券の会社更生法の反省)
白川総裁は「金利機能」重視 現場雨宮は「資金繰り支援」白川は頷かず
企業金融というミクロの資源配分に中央銀行は関わるべきではない→政府系金融機関
(白川)日銀の緩和政策出し惜しみ 円相場急ピッチの上昇90円割り込む
「包括緩和」 あくまで金融政策目標は「金利」
「日銀の独立」 政策目標は政府と協議、政策手段は完全な独立
「2012年12月26日第二次安倍内閣発足」
①大胆な金融政策②機動的な財政政策③民間投資を喚起する成長戦略
「アコード」→「共同声明」 反対は木内・佐藤審議委員
Ⅴ.黒田総裁2013- 中曽宏・岩田規久男
日銀黒田総裁人事←安倍総理・麻生大臣・浜田宏一・本田悦郎+企画理事雨宮正佳
4月4日政策決定会合「2%,2年,2倍」M138兆円→270兆円
円安78円→95円 株価 8,600円→12,400円
Buy My Abenomics (財務省) 真珠湾、ミッドウェーに行かないと良いが 国の債務1,000兆円
2014年春 CPI+1.5% GDP+2.6% 企業収益も改善
2014年04月 消費税引上げ 5%→8% 「景気急ブレーキ」 原油価格急落
2014年10月 第二弾異次元緩和サプライズ「30兆円 3年 3倍」 バズーカⅡ 円安株高
審議委員4名反対 「財政ファイナンス」 森本・石田・木内・佐藤 4:4
銀行の支持 ①超過準備0.1%付利継続 ②国債買いオペ言い値=所得移転・補助金
2016年01月25日「マイナス金利」三層構造 ⇒国民・銀行は反対・反発
2016年09月「過去3年半 異次元緩和の総括的検証
異次元緩和 時間軸政策
①イールドカーブ・コントロール 長短金利 短期金利-0.1% 10年ものゼロ%
②国債買入れ 年間80兆円
③ETF・REIT買入規模は維持
④CPI2%超までマネタリーベースは拡大
2016年11月米大統領トランプ当選
2018年04月黒田総裁再任 若田部昌澄 雨宮正佳
安倍総理アベノミクス採点表①雇用②株価③企業業績④物価✕
2018年11月日銀総資産553兆円>GDP
2020年04月コロナ緊急事態宣言
投稿元:
レビューを見る
・日銀法改正から菅政権までの数々の難局を乗り越えてきた日銀総裁以下メンバーの四半世紀のドキュメントです。
・非常に丁寧にその当時の情報や、登場する人々の考え、行動が記録されており、金融政策に詳しくない方でも熱い男たちのドラマとして読めます。
・私としては金融政策の変遷や背景を知りたかったので楽しめました。今後はそのそれぞれの政策がどの程度経済に効果を与えたのか数値的に考えられるものもあれば良いなと思います。
投稿元:
レビューを見る
日銀が政治に翻弄されてきた歴史を臨場感豊かに描いていて、一気に読めた。面白い。日銀に同情する一方、数々の失敗にも関わらず、組織の中の主流派の方々が何の責任も負わずに、順調に出世の階段を登っていっているのには違和感を覚えた。変な組織なんだろうな。
投稿元:
レビューを見る
非常に面白い。
バブル期以降の日銀にスポットを当ててドキュメントで書かれている。ので著者個人の見解等はほとんど入っていない、この点が非常に良い。
単なるドキュメントであるがずらずらとただ書き並べているだけではなく非常に重点を絞っているので簡潔で読みやすく面白い。
一方で重要な事態以外の部分はさらっと描かれているのでその部分を資料として必要な場合は別途検証した方が良い
投稿元:
レビューを見る
ジャーナリズムの本格派右腕ともいうべき著者のスタイルには毎度唸らされてしまう。
この作品は政治と経済がいかに影響しあっているのかを、失われた30年を反面教師として、日銀というファクターを通して学ぶことが出来る一冊。
特に誰が、という訳ではないが、責任を取らない政治屋には腹が立つのを通り越して呆れてしまう。
投稿元:
レビューを見る
本書はさすがドキュメントと名打つだけあって、わかりやすく読みやすいてす。
1996年以降の、5人の日銀総裁のそれぞれの活動と日本経済の軌跡を追って紹介しているのですが、現在の黒田日銀の異次元緩和に至るまでの、金融政策の変転が詳細に紹介されていて、すこぶる興味深い読み物に仕上がっています。
まず松下総裁時代(1996~1998年)です。
1997年の北海道拓殖銀行破綻と山一證券の破綻は、小生はリアルタイムに経験していましたが、当時何が起きているのかは、会社が破綻したという表面しかわかりませんでした。
社長が記者会見で大泣きしながら「社員は悪くありません」と叫んでいたのを思い起こします。
本書では、その時の関係者の動きも、実にリアルに紹介されています。当時の日銀、大蔵省、自民党の政治家が、それぞれの利害と見識を賭し動いていたのですが、当然当時は誰にも知られることはありませんでした。
その間の詳細な動きをドキュメントとして描いた後に、本書は「カミソリの刃を渡るような危機を、日本は何とかしのぎ切った」と最後に書いています。
一般国民は、何も知らされていなかったのだなと驚くとともに、社会において金融システムという目に見えない構造が持つ重要性を改めて知らされました。
次に速水総裁時代(1998~2003年)です。
当時、大蔵省での接待汚職事件が夜を騒がせる中で、日銀の接待もやり玉にあがられたことが書かれています。ただ当時日銀では、銀行関係者との接待は禁止されていず、むしろ推奨される空気があったことは初めて知りました。
しかし、この世間の雰囲気は日銀の金融政策を進めるうえで微妙な影響があったのでしょうか。権威の失墜は免れなかったのでしょう。
1999年に「デフレ懸念が払拭されるまでゼロ金利を継続する」と追い込まれます。政治と世の中は、金融緩和・ゼロ金利が景気上昇へとつながると信じていて、日銀はそうは考えていないことが本書で詳細につづられています。
速水総裁は敬虔なクリスチャンで、総裁室の奥の小部屋には「恐れるな、私はあなたと共にいる」との聖句が書かれた掛け軸があったそうです。政治との関係の決断には、人間としての背景があったのでしょうか。
次は福井総裁時代(2003~2008年)です。
福井総裁は「思い切った量的緩和でデフレ脱却を果たし、5年の任期中に元の姿に戻すこと」をひそかに誓っていたとされています。
ところが量的緩和の解除に首相官邸が立ちはだかります。とりわけ強硬に反対したのは官房長官の安倍晋三だったとあります。
その時期に福井総裁が村上ファンドに出資していたという問題が爆発します。それを押し切って福井総裁は「ゼロ金利を脱し、コールレートの0.25%上げに踏み切り」ます。
その直後に発表されたCPI(物価指数)上昇率が、5年に一度の基準改定により大幅に下方修正されたのです。「CPIショック」です。
自民党からは「3月の量的緩和は誤りだった」との声が渦巻きます。お金をどんどん刷ればいいとするリフレ論者からは「早期に出口に向かった結果、再びデフレに陥った」と日銀を批判します。
金融緩和は景気を浮揚するのか。現���のあと知恵では、効果は少ないといえるかもしれないが、当時は誰もそのようには考えませんでした。日銀内の専門家以外では。
次は白川総裁時代(2008~2013)です。
福田内閣時代で衆参ねじれが起こったのがこの時代です。リーマンショックが世界を襲った時期でもあります。
総裁の椅子が政治の混迷で空席となる異常事態となりました。戦後初めての事態です。白川副総裁が総裁代行となり、その後やっと総裁に指名されました。
この「一連の騒動は、高度な専門性と独立性が求められる中央銀行の人事に「むき出しの政治」を持ち込む前例となった」と本書は記しています。
政治家の日銀と金融政策の介入に遠慮がなくって来たということでしょう。
民主党政権の下でデフレとの闘いが続きます。2010年には菅首相の所信表明演説の後に「コールレートを0~0.1%に引き下げる実質ゼロ金利の導入」がされます。
そして、東日本大震災です。復興を理由としてリフレ派が決起します。「デフレ、円高という貨幣的症状が出ているのですから、金融拡張が当たり前の処方箋です」と、白川総裁が大学3年時に指導教員だった浜田教授が主張します。その主張が誤りだったことの証明に、その後10年かかります。
最後は、現在の黒田総裁(2013~ )です。
「黒田バズーカ」の出発です。異次元の金融緩和として、「短期決戦」を目指して思い切った金融緩和を進めました。
始まってから1年は、まずまずの成果を上げたと関係者は考えていたといいます。
「これは後で判明したことだが、景気は既に前年11月に底を打ち、安倍内閣発足時には穏やかな景気回復が始まっていた」と書かれています。運がよかったんですね。
そして「黒田バズーカ第二弾」と「マイナス金利導入」です。不利益を被る金融界との不協和音などが描かれています。
そして長期戦となることによる「副作用」の拡大です。日銀は専門的な知見から様々な手法を提示していますが、事態を制御出来ているようには、本書からはみえませんでした。
「金融政策がこうも難解複雑になったのは、2%達成まで緩和を続けざるを得ない苦しい事情と、緩和の副作用をこれ以上放置できない現実論との狭間で、妥協のパッケージを積み上げてきたからである」とあります。
黒田総裁は、2019年11月の国会報告の場で「確かに私どもの判断が楽観的すぎた(中略)政策として間違っていたとは思わないが、予想していたよりも、根強い家計、企業の賃金、物価感というのがそう簡単に転換してこなかったということが一つあるのかなというふうに思っております。これは私どもとしての反省でございます」と述べたといいます。
本書は、経済の専門家でなくとも読んである程度の概略がわかる良い本だと思いました。
経済は複雑で難しく、しかも評価のタイムスケールが長いものですから、なかなかその時点の政策が正しいかどうかの判断がつきません。
しかし、本書はそれを、世の中の流れと象徴的な経済事象を紹介することによって、わかりやすく進めています。良い本だと思いました。
投稿元:
レビューを見る
読みやすい。
日銀の現状がよく分かる。
植田新総裁の今後の采配に期待
黒田日銀を支えた雨宮さんが後継総裁になるべきだったのでは?
投稿元:
レビューを見る
バブル以降の日銀総裁と政策過程を描き出している。組織の独立性の担保と有効な金融政策というものの間で日銀がいかに翻弄されてきたかがよくわかる。
政策とは、一つだけやればいいものではないという竹中平蔵さんのお言葉はまさに箴言である。