紙の本
ホームズ物をより広いパースペクティブで捉えることができ有益
2023/09/29 21:51
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投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
単に娯楽作品として読むのはやはりもったいなく、ホームズ物への向き合い方を変えてくれた番組とこの一冊。これらに触発されて、現在、ホームズ物の完読トライ中です。
「ジャンルとしての探偵小説は、職業としての「探偵」が歴史上に誕生した時代に初めて成立したと私は考えています。・・・ 文学作品に探偵という存在を導入することによって、人間の悪の秘密を白日の下に晒し、その罪を徹底的に、しかも理路整然と暴くことができるようになります。ですから探偵小説とは、人間の弱点や人間性の暗部を探究するうえで、格好の文学ジャンルなのです。」(90~1頁)
しかし、改めてホームズ物を読み返すと、探偵と助手の協働と掛け合い、Who-done-it(意外な犯人)/How-done-it(犯行のトリック)、Why-done-it(人間性の奥底に潜む動機)が三位一体となっており、探偵小説の初期完成形態であることがよく理解できた。正に傑作群かと。
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「シャーロック・ホームズ」を異なる視点で、楽しむ!
2023/09/15 11:36
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投稿者:野間丸男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
NHKの「100分 de 名著」という番組のテキストであるが、
「シャーロック・ホームズ」の解説書の一つとして、楽しめる。
(はじめに)世界一有名な探偵、シャーロック・ホームズ
(第1回)名探偵の誕生
(第2回)事件の表層と真相
(第3回)ホームズと女性
(第4回)人間性の闇と光
「緋色の研究」、「赤毛組合」、「唇のねじれた男」、「ボヘミアの醜聞」、「ボール箱」、「ボスコム谷の謎」などが取り上げられるが、
さまざまな角度から、ホームズの探偵像を解説してくれる。
「探偵小説は平和だからこそ楽しめる」の言葉が、心に残る。
紙の本
はじめて
2023/09/19 08:43
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投稿者:にゃんぱり - この投稿者のレビュー一覧を見る
はじめて,番組と並行してテキストを読みました。
番組では取り上げられていない話もあって面白かったです。
この番組のおかげで中学生の時以来40年ぶりに「緋色の研究」を
読みました。
当時は大作だと思っていましたが,あっという間に読んでしまいました。
でもドキドキするほど面白かったです。
ありがとうございました。
番組と並行して利用することをおすすめします。
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人間性探求の名探偵ホームズ
2023/10/07 21:48
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投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
TVアニメ『アンデッドガール・マーダーファルス』第二章「ダイヤ争奪編」で登場したホームズ&ワトソン。ルパン&ファントムと宿敵モリアーティ教授率いる「夜宴」とのバトルで活躍した。ちょうど第三章「人狼編」が始まる前に、100分de名著シリーズでシャーロック・ホームズスペシャルが放映され、読んで観た。
また、折しもNHKではジェレミー・ブレット主演のテレビ・ドラマが再放送されているし、第3作製作も予定されている、「アイアンマン」ロバート・ダウニー・Jr主演の映画『シャーロック・ホームズ』(2009)と続編『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』(2011)も見た。原作にほぼ忠実なNHKドラマ、原作のキャラクターとプロットを使って創作された新たなアクション映画(ワトソン役ジュード・ロウも派手に活躍)、そしてジェレミー・ブレットを彷彿とさせるキャラ設定と語り口の『アンデッド』と、三者三様のホームズを見たことになる。
ホームズ&ワトソン・シリーズは、確かに読んで楽しめる作品ではある。しかし「小説」として「名著」と言われると、なぜなのか、という疑問が湧いてしまう。その疑問に答えるのが、今回のスペシャルである。英文学とイギリス小説の研究者で、『ミステリーの人間学-英国古典探偵小説を読む』も上梓している著者・講師は、代表作を読みながら、その疑問に答えていく。
ホームズ・シリーズは、「探偵小説」であり「ミステリー」である。「探偵小説」は、秘密・謎・不可解なものであるミステリー的要素を高度に発達させてジャンルである。多かれ少なかれ文学作品にはミステリー的要素があるのだが、探偵小説は「謎解きに対する読者の好奇心と知的欲求を掻き立てる効果を集中的に狙った知的な遊び」である。しかし単に謎解きのゲームではなく、底辺では文学とつながっている。そして小説とは人間を描くものであり、探偵小説は探偵の登場によって人間の悪・罪を徹底的に、しかも理路整然と暴き、人間の弱点や人間性の暗部を探求する文学ジャンルである。
ホームズは冷徹な推理能力だけの探偵ではない。人生の機微を知り抜き、人間性の底に潜む闇と光を鋭くあぶり出す思考能力を持つ。まさに「人間学」の精華ともいうべき洞察だ。
筆者による各国の探偵小説の特色の整理が面白い。アメリカは人間を非感傷的に扱う、純粋に数学的・論理的に分析し、人間性に対する関心は希薄である。フランスは犯罪を取り巻く人間ドラマでメロドラマ的傾向がある。そして英国探偵小説は、人間性の探求が底流にある、事件の筋や謎解き、トリックといった表面的な部分に隠された、人間が抱く欲望や怒り、恐怖といったものが人間に及ぼす心理状態や行動の側面を探求していく。動機面を重視するミス・マープル、容疑者たちとの尋問や何気ない会話に力点を置き、会話から人物の思考・行動傾向を探る心理分析を駆使するポアロも同じである。
このような人間性の闇に根差す犯罪は無くなることはなく、何時かは自分も巻き込まれるかもしれないという恐怖・不安を、名探偵が解決してくれ、それらを昇華してくれるというところが探偵小説の魅力なのだ。現実世界で死に直面しているようなところでは、「探偵小説」を読む気は起きないだろう。したがって、殺人を扱う探偵小説は、平和な時代の下で読まれるという逆説的な文学である。
このような人間性探求に根差した名探偵ホームズは、トリックがわかったら終わりではなく、人間性の探求の部分は何度でも味わえる物語である。そのため、映画でリメイクされ、また、別の物語に登場しても違和感はないのだろう。
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歴代最強の名探偵に鮮やかな推理を可能とさせているものは何か――。
■第1回 名探偵の誕生
殺人は人生に混じった緋色の糸……なのだが、
「正義の殺人」をどう描くべきか。
■第2回 事件の表層と真相
「赤毛組合」「唇のねじれた男」等、
ロンドンの街角で起きた小さな事件や、
実は犯罪ですらなかったケースについて。
日常という表層の下に巣食う悪意や
19世紀末ロンドンの風景の緻密な描写を背景とした、
人間の二面性や二重生活がもたらした悲劇、
あるいは過去の恋愛と裏切りの情景などが綴られ、
そこに浮かぶ人間ならではの盲点や
錯覚を利用した物語が醸し出す独特の後味が、
ホームズ・シリーズを含む英国ミステリの特徴の一つ。
■第3回 ホームズと女性
ホームズ・シリーズにおける女性像の読解。
作者ドイルはホームズ・シリーズを通して
「事件を通じて露わになる女性の姿」を
様々な角度から描いたが、
一個の人間としての女性に関心を抱き、
その実像をニュートラルに捉えるための装置として
恋愛に陥らない設定のホームズを利用したのでは
なかったろうか……。
■第4回 人間性の闇と光
人間の〈悪〉を白日の下に晒し、
罪を理路整然と暴けるようになったが故に、
探偵小説とは人間の弱点や人間性の暗部を探究するに
格好の文学ジャンルとなった。
探偵小説は民主主義国家にしか生まれ得ず、
平和時でなければ栄えないジャンルである。
何故なら人が大勢死ぬ筋書きになっているから。
ホームズ・シリーズが人気を博し、
同時期に現実に起きた〈切り裂きジャック事件〉が
耳目を集めたのは、ヴィクトリア朝が
人々に“ゆとり”をもたらしていたことの証。
※後日、番組第4回まで鑑賞後、
ブログにまとめ記事を綴る予定。
https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/
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Eテレでやってたのを録画して
1, 名探偵の誕生
緋色の研究
雑誌向けに1話読切へ
2,事件の表層と真相
赤毛組合 唇のねじれた男
貧困層、格差、犯罪増加により犯罪小説への関心の高まり
3, ホームズと女性
女性を取り巻く状況の変化
ボヘミアの醜聞
サセックスの吸血鬼
4, 人間性の光と闇
ボール箱
ボスコム谷の謎
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「シャーロック・ホームズスペシャル」廣野由美子著、NHK出版、2023.09.01
113p ¥600 C9497 (2023.10.05読了)(2023.08.29購入)
シャーロック・ホームズのシリーズは、講談社青い鳥文庫や偕成社文庫などを主にしてほぼ読んだと思ってます。大人向けで読みなおした方がいいのでしょうかね。時間があれば読んでみましょうかね。
【目次】
【はじめに】世界一有名な探偵、シャーロック・ホームズ
第1回 名探偵の誕生 『緋色の研究』「グロリア・スコット号」
第2回 事件の表層と真相 「赤毛組合」「唇のねじれた男」「背中のまがった男」
第3回 ホームズと女性 「ボヘミアの醜聞」「サセックスの吸血鬼」「第二のシミ」
第4回 人間性の闇と光 「ボール箱」「ボスコム谷の謎」
☆関連図書(既読)
「シャーロック・ホームズの冒険」コナン・ドイル著・延原謙訳、新潮文庫、1953.03.31
「回想のシャーロック・ホームズ」コナン・ドイル著・阿部知二訳、創元推理文庫、1960.08.19
「恐怖の谷」コナン・ドイル著・内田庶訳、偕成社、1985.04.
「四つの署名」コナン・ドイル著・各務三郎訳、偕成社文庫、1998.05.
「バスカビル家の犬」コナン・ドイル著・各務三郎訳、偕成社文庫、1998.06.
「名探偵ホームズ 赤毛組合」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、1996.05.15
「名探偵ホームズ まだらのひも」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、1996.12.15
「名探偵ホームズ 消えた花むこ」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、1997.05.15
「名探偵ホームズ 緋色の研究」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、1997.12.15
「名探偵ホームズ ぶな屋敷のなぞ」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、1998.06.15
「名探偵ホームズ 囚人船の秘密」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、1999.06.15
「名探偵ホームズ 最後の事件」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、2000.07.15
「名探偵ホームズ 三年後の生還」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、2001.02.26
「名探偵ホームズ ピーター船長の死」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、2001.09.15
「名探偵ホームズ 消えたラグビー選手」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、2002.04.15
「名探偵ホームズ 悪魔の足」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、2003.07.15
「名探偵ホームズ サセックスの吸血鬼」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、2004.02.15
「名探偵ホームズ 最後のあいさつ」コナン・ドイル著・日暮まさみち訳、講談社青い鳥文庫、2004.10.15
「メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』」廣野由美子著、NHK出版、2015.02.01
「ジェイン・オースティン『高慢と偏見』」廣野由美子著、NHK出版、2017.07.01
(アマゾンより)
世界一の名探偵は、いかに生まれたのか?
英国の作家コナン・ドイルが生み出した一人の探偵は、世界中にフォロワ��を生み出す「最強」の探偵となった。
「緋色の研究」「グロリア・スコット号」「赤毛組合」「ボヘミアの醜聞」など数々のホームズ作品を通して、人間性の闇と光を考えるとともに、探偵小説がもつ文学的な意味を探究する。
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実はシャーロックホームズの本はやドラマ一度も見たことがありませんでした。この番組で取り上げられ、テレビでも再放送のドラマがあっていたので見たのですがとてもとても面白い。ただのミステリーではなく、100分deの番組で詳しくせつめいしていただけたので。人間の深層部分に深く切り込んだものだということがわかり、ファンになりました。
よいきっかけをいただきました。
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シャーロックホームズに会ったのは小学3年生、買った本がたまたま「赤い文字の秘密」(緋色の研究)。ホームズが出てくる最初の話。それから図書室で全集読んで、大学生の時に新潮文庫で全部揃えて。
他の人が書いたホームズに関する本もいろいろ読んで。NHKでやってた海外ドラマも見て。ハマってました。
今改めて、この考察を読み背景を知ると、また違う視点が面白い。「名探偵の誕生」「事件の表層と真相」「ホームズと女性」「人間性の闇と光」、番組でもやってたけど、読むだけでもおもしろい。読み返したくなったなあ…長編4に短編56、読みたいけど時間が(^^;;
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廣野さんによるドイル、ホームズ論。いわゆるシャーロック・ホームズ論というより、文学的側面に光を当てて読み解く。
シャーロック・ホームズが他の推理小説と異なる点は、常識的な倫理観を表に出さないところで、犯人だからといって警察に突き出すようなことはしないところ。ホームズ独自の倫理観に基づいている。また、女性に対する見方も極めてフェアで19世紀とは思えない扱い方をしている。
他にも色々と可能性に満ちたテキストであって、そのような意味で何度も読み返す価値のある文学たり得ているのだろう。
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作品が書かれた時代背景やミステリーというジャンルについての解説が面白かった。それぞれのテーマが短く纏められていて読みやすい。