悪癖は逃れられないが
2017/01/09 22:18
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悪癖は逃れられないが、その効用を実験で証明している。人間の心理にプラスにもマイナスにも影響している。悪癖をユーモラスに見たい。
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セクハラ、パワハラをまるで既得権のごとく常態化させる権力者たち。下手すると死ぬと分かっていながらXゲームにのめりこむ若者たち。悪癖としては少し解釈を広げ過ぎかもしれないが、「わかっちゃいるけどやめられない」という点では同じ(わかってない人も中にはいるかもしれないが)。その中で効用を見出すというのは、いくら科学の観点からとはいえ、無理がありすぎる。なにせ悪癖は理屈じゃないから。
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悪癖の科学 リチャード・スティーヴンズ著 ユニークな実験 挑戦の日々
2016/9/18付日本経済新聞 朝刊
うまくいかないときに悪態をついたり、退屈な会議で資料に落書きしたり。いけないと知りながらついやってしまう「悪癖」にも実は効果がある。そんな研究で2010年にイグ・ノーベル賞を受賞した英国の心理学者がユニークな実験方法などを明かした。
例えば、悪態をつきながら氷水に手を浸した人は、そうでない人より長い間、冷たさに耐えられた。結束の強い会社やスポーツチームでは、人々が普段の会話に侮蔑的な言葉を多く使い、親しみや友情を示していた。著者は悪態には痛みへの耐性を高め、人と人の結びつきを強める「隠れた効用」があると主張する。
また、バンジージャンプの体験者が恐怖というストレスを感じるにもかかわらず、血中には多幸感をもたらす物質が増えているという調査。落書きをすることで退屈な作業の能率が上がることを示した実験などを紹介する。
著者の関心は人の心と脳に広がっていく。最近では臨死体験の真偽を知るため、救急病院の天井に上からしか見えない絵や文字を描いたボードをぶら下げ、患者が幽体離脱か何かで絵を見ていないか調べたという。残念ながら、まだ誰も絵を見ていないが「そんなことではへこたれないのが研究者だ」と大真面目にいう著者の研究を想像するだけでも楽しい。藤井留美訳。(紀伊国屋書店・1600円)
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ブック紹介
『悪癖の科学』
-その隠れた効用をめぐる実験
リチャード・スティーヴンズ 著
藤井 留美 訳
紀伊国屋書店
2016/08 281p 1,600円(税別)
原書:BLACK SHEEP(2015)
1.相手かまわず
2.酒は飲め飲め
3.チョー気持ちいい
4.アクセルを踏みこめ!
5.恋をしましょう
6.もっとストレスを!
7.サボりのススメ
8.ダイ・ハード
【要旨】心理学は、人間の心の動きとそれに伴うあらゆる行動について探究
する学問だ。そのため扱うテーマは実に幅広く、社会常識的には「よくない
行動」とされていたり、それについて公の場で言及するのがタブーであるこ
とも含まれている。性的行動、悪態、危険運転、過度の飲酒やドラッグ摂取、
サボりなどだ。本書では、こうした“悪癖”について、それぞれ科学実験・
研究やそこから得られたデータなどを紹介しながら、多数の興味深い知見や
視点を提供している。著者は英国のキール大学心理学上級講師。「悪態をつ
くことにより苦痛を緩和する」研究で、2010年にイグ・ノーベル賞を受賞し
ている。なお、ダイジェストでは「飲酒」と「悪態」について取り上げた。
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●アルコールを摂ることで創造力が高まる!?
その昔、遠いご先祖さまが熟れすぎて発酵した果実を食べて酔っぱらった
ときから、私たち人間はアルコールに手を伸ばしてきた。やがて人間が自分
で酒をつくり、売買して、消費するようになっても、酒には��ましくない要
素がつきまとっていて、昨今はどちらかといえば悪者扱いされている。だが
本書はちがう。酒の隠れた効用を明らかにしていきたい。
偉大な芸術家の仕事に、酒が深く関わっていることはよくある。作曲家ルー
トヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、小説家F・スコット・フィッツジェラ
ルド、画家ジャクソン・ポロックがそうだったし、イギリスの作家J・G・
バラードは酒の力を借りて執筆していたことで知られていた。酒は創造力を
刺激すると言われるが、それには科学的な裏づけがあるのだろうか?
そんな疑問を抱いたのが、イリノイ大学の心理学者チームだ。彼らはまず、
創造性を測定するテストを考えだした。三つの単語(PEACH, ARM, TAR)のす
べてにくっつく第四の単語を答えるというものだ。
最初に思いつく答え(たとえばTREE)はたいてい不正解なので、それは一
度忘れて別のものを探す必要がある。論理的にものを考えるときは一定の方
向に思考を進めていけばよいが、このテストのようなときは、いくつかの異
なるアイデアを飛びうつりながら正解に迫っていく。さて、あなたは機敏に
拡散的思考ができただろうか。PEACH, ARM, TARのどの単語にくっついても成
立するのはPITだ。
イリノイ大学の研究では、つきあい程度に酒をたしなむ男性グループに酒
を飲んでもらった。ウォッカとクランベリージュースを混ぜたカクテルだ。
制限時間はあえて30分と短くして、アルコール濃度を急上昇させる。1時間
後、血中アルコール濃度が最高潮に達したところで、創造性を調べるテスト
に取りかかる。
ウォッカを飲んだグループの正答率は平均58パーセント。酒を飲んでいな
い被験者グループは42パーセントだった。飲酒グループは酔っぱらって注意
が散漫になり、単語テストの途中で計算問題を解かせると、単語をすっかり
忘れたりした。
些細なことのようだが、重要なのはここだ。アルコールの影響で、注意を
コントロールしたり、集中させたりする能力が損なわれるわけだが、実はそ
れによって創造力が向上するのである。注意をコントロールすることは、日
常生活のほとんどすべての場面で求められる能力だ。だが注意が過度に働い
てしまうと、創造的な思考まで妨げられることがある。ひとつのアイデアに
だけ注意が集中して、正解があるかもしれないほかのアイデアに飛びうつる
ことができないのだ。
適量の飲酒で、注意のコントロールが少しばかりゆるみ、その結果創造的
な思考が活発になる。これはぜひ試してほしい。仕事や宿題でレポートを作
成するときは、夕食にワインを一杯飲んだあとで下書きを読みなおすといい。
しらふのときは思いつかなかった着眼点に気がついたり、新しいアイデアが
浮かんだりするはずだ。
●悪態(侮蔑語・卑猥語)には苦痛を和らげる効果がある
2004年に下の娘が生まれたとき、私はいまどきの父親らしく妻の出産に立
ちあうことにした。だがお産は思うようにいかなかった。妻は長時間苦しみ
つづけ、激し���陣痛の波が襲ってくるたびに汚い言葉を叫ぶ。もちろん医師
も看護師も、こんな場面には何度も遭遇している。悪態、四文字語、ののし
り、不敬語、なんであれそういう言葉が飛びだすのは、お産の現場では当た
り前で、日常茶飯事なのだと助産師は説明してくれた。
なぜ人は痛みにさいなまれたとき、汚い言葉でののしってしまうのだろう?
そんな疑問が頭から離れなくなった。悪態と痛みのつながりについて同僚に
議論を持ちかけたところ、心理学的に二つの解釈が浮上してきた。
ひとつは「脱抑制」説だ。急性の激しい痛みに襲われたとき、人は社会的
に脱抑制状態に陥る。礼儀や世間体にかまっていられなくなるということだ。
その結果、ふだんなら抑えこんでいた汚い言葉や考えも、歯止めを失って口
にしてしまう。
もうひとつの説明が、「痛みの破局化行動」説である。痛みの破局化とは、
痛みの経験によって、否定的・破滅的なメンタルセット(心構え)になるこ
とを言う。そうなると痛みに対する恐怖心だけでなく、痛みの感じかたまで
増幅される。悪態はそうした破局化の表出だというのだ。だが、それだと痛
みがもたらす苦しみや不快感を悪態が後押しすることになるので、論理的に
無理がある。
痛みに反応して悪態をつく現象を客観的にとらえようと、私はキール大学
の学生たちとともに、数年かけて実験手法を練っていった。ヒントになった
のは、そのころ一瞬だけはやったアイスバケツ・チャレンジだ。私たちの実
験では、被験者にバケツの氷水に手を浸してもらうことにした。時間は最長
5分間。そのあいだに悪態を発してもらわなければならないが、頭をぶつけ
たり、金づちで親指を叩いたりしたときに思わず口にする言葉を、氷水に手
をつけた状態で再現してもらった。いちばん多かったのは、「ファック」と
「シット」だった。
被験者は侮蔑的な言葉を何度も口にしているほうが、ふつうの言葉よりも
長いあいだ氷水に手をつけていられたし、感じる苦痛の度合いが低く、心拍
数もより高くなった。私たちは心拍数の上昇に注目して、被験者は悪態をつ
くことで闘争/逃走反応(※恐怖を感じたときに戦うか逃げるかの二者択一
を自分自身に迫る動物の本能)が起き、ストレス性無痛状態(※強いストレ
スがかかっているときに、それへの対応に全エネルギーを集中させるため痛
みを感じなくなっている状態)になっているのではないかと考えた。
2回目の実験で、被験者に、日常生活で侮蔑語・卑猥語を口にする回数を
たずねたところ、答えは0回から60回までいろいろだった。それと氷水実験
の結果を突きあわせると、ふだん悪態をたくさんついている人ほど、悪態に
よる痛みの軽減が少ないことがわかった。この実験結果からひとつ助言をす
るならば、ふだんの悪態は慎んだほうがいいということ。そうすれば、ここ
ぞというときに威力を発揮してくれる!
私たちはさらに3回目の実験も行なった。侮蔑語・卑猥語を発するとき、
人は攻撃的になっているというのが実験の前提だ。では攻撃的な感情をかき
たてることで、痛みの感じかたは変わってくるだろうか。実験では、被験者
に一人用のシューティングゲームを10分間プレイしてから、氷水に手をひた
してもらった。ゴルフのビデオゲームをやった比較グループにくらべると、
彼らはより長い時間氷水に耐え、心拍数も高くなった。この結果は、悪態が
攻撃感情を通じて痛覚に働きかけるのではないかという私たちの仮説と一致
していた。
痛みに反応して汚い言葉を口ばしる行為は脱抑制行動と見なすのは無理が
ありそうだ。脱抑制行動では痛みの経験は変化しないはずだが、私たちが行
なってきた実験では、悪態は疼痛管理の手段になっていることが明らかだった。
墜落した飛行機のフライトレコーダーからパイロットの最後の言葉だけ集
めた壮絶なサイトがあるが、死を目前にしてストレスも感情も極限状態のと
きに出るのは、やはり侮蔑語・卑猥語だ。母親が新しい生命を世に送りだす
ときから、かけがえのない人生が悲劇的に断ちきられるときまで、生と死の
抜きさしならない瞬間にいつも悪態は寄りそっているということだ。
コメント: アートであれビジネスであれ、ほとんどのケースで「創造性の
発揮」には、アイデア創出と、それをかたちにするという二つのステップが
必要なのだと思う。著者の言うようにアルコールは前者のアイデア創出には
役立つのだろう。しかし、それを他者から評価されるようなかたちにもって
いくには、飲酒で失われる「注意をコントロールする力」が必要になる。夜
に飲酒しながらひらめいたアイデアを書き留めておき、翌朝それを整理する
といった、2種類の脳の組み合わせが必要なのではないか。悪態についても、
本文にあるように、ふだん悪態をつかない人のほうが、いざという時に悪態
の効用を受けられる。やはり、ふだんの状態と、悪態をつく状態の組み合わ
せが効果的ということだ。
※本ダイジェストは書籍からの引用です。
小見出し、要旨、コメントは情報工場が独自に作成しております。
Copyright:株式会社情報工場
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【関連するニュース】
ライブドアニュース(2016年8月24日付)
攻撃性が和らぐ? 悪態の意義を研究者に聞いてみた
http://news.livedoor.com/article/detail/11927036/
ライフハッカー(2015年4月30日付)
創造力をアップさせるキーワードは「ほろ酔い」と「ウトウト」?
http://www.lifehacker.jp/2015/04/150430slightly_drunk.html
===unqte===
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レビューはブログにて
http://ameblo.jp/w92-3/entry-12217408019.html
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通常あまり良しとされない行動などの効果(良い面など)について、実験などの結果をもとにした研究等を紹介した本。
読み物としてはこういうのあまりないですし、それなりに面白いんじゃないかと思います。
なんとなく、最後の「臨死体験はポジティブな感想が多いため、死ぬっていうのは怖くないのかもね」ってのが心に残りました。
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いけないとわかっていながらやめられない行為「悪癖」についての、そのリスクはもちろん、隠れた効用を科学的に探る本。
セックス、飲酒、悪態、高速運転、恋愛、強いストレス、サボり、臨死体験等々、これって悪癖‽と思われるものまで網羅し、科学的に分析してある。
たとえば、道路でスピードを出し過ぎる事には、退屈なドライブによる白昼夢を予防する効果がある等、眉をしかめられるような行為にも有意性があることを検証する。
こんなこと誰が考えつくの?と思われるような実験のあれこれがおもしろい。
著者は、「悪態が痛みをやわらげる」研究でイグ・ノーベル賞を、科学研究と社会の橋渡しを支援するウエルカム・トラスト・サイエンス・ライティング賞を受賞していて、軽快な文章は読みやすい。
各章のはじめの漫画もシュールで楽しい。
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飲酒や危険運転、F*ck のような罵声語、ストレスなど、必ずしも「よくない」とされている行動について、様々な実験を紹介した一冊。「よくないとされているにもかかわらず、人間がそれらの行動をするのは、何らかのメリットがあるからに違いない」というのがそもそもの着想で、実際に実験をしてみると、たとえば「罵声語を発っしていると人間のストレス耐性が高まる」ということが明らかになったりする(著者はこの研究によりイグノーベル賞を受賞している)。逆に、恋のように良いことの負の側面に注目したり、死の価値について示唆したりと話題と観点は多岐におよび面白い。もちろん、心理学のことだから、真逆の結果を示している研究も同じくらいたくさんあるのだろうし、記述を真には受けられないけど、暇潰しには丁度良い一冊。
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うーん、胡散臭い感じが拭えない。例えば悪態をつきながら氷水に指をつけると、そうでない場合より痛みに強くなったという実験。スポーツ選手は声を出した方がパフォーマンスが上がるらしいが、それと同じでは?つまり悪態である必要はないのでは。あと全体的に、二群間の比較を論じるなら被験者数とかp値とかも載せてほしい。8つの悪癖の中ではストレスの章が一番面白かった。ユーストレス(良いストレス)は幸福感を増やす、感情を自己抑制する、記憶力を向上させる。
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セックス、悪態、危険運転などの悪癖の隠れた利点を科学的に説明する…とあるけど、中身はこじつけっぽいのも沢山ある。あとがきによるとそれが心理学って分野なもんらしい。そう分かっててやってるならしょうがない。
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体や心に良くないとされるのとにも意味がある。
汚い机は創造性を増し、悪態は生産性を上げる。
いちいち面白く、胡散臭い。
さらさらと読み飛ばして、好きなところだけ自慢げに披露したい話。
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悪癖にもメリットがあるんだよということを、セックス、酒、危険な遊び、悪態、退屈などなど様々な観点で明らかにしていく。
王道の科学とは違う観点で、一般的に悪いと考えられていることのメリットを明確にしていく良い本。
やはり、悪態を理解するには、その悪態のメリットも理解することが大事だなと。
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様々な研究結果を科学的に分析した本で非常に知識として読んで面白い。
しかし一部では、片手運転と両手運転とスピードの結果が出ている。確かにスピードはでているが問題は自己を起こすか否かを論点とした方がよく、そもそもこの研究の目的がわからない。
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ネット記事にあるようなあやしげな心理学の研究成果をおもしろおかしく書いてるようなやつ。ヒマつぶしや話のネタにはいいが、お金出して買うものではない。
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セックス、酒、無謀運転、悪態、などなど。一般的によくない、とされることにも隠れた効用がある、ということを解く本。
セックスによる披露を解消するには、もっとセックスをすればいい! なんていう具合に軽妙なんだけど、実のところ深いことが書いてあるなあ。酒にはストップボタンがついている、とか。
果たして題名の「科学」はどこにあるのかな、という感じではあったが、なんか、ダメとされているいけないことに溺れている自分がかわいくみえてくる。人間は弱くて素敵だねえ。
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社会通念上、「人の愚かさ」として片づけられがちな行為の機能について探求する本。
特に心理学的な考察が多く、解釈にはファジーさが残るが、高潔な思い込みで運用されがちな昨今の社会通念に関する疑問を持ち始めるのに本書は役に立つだろう。