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紙の本
100年前の災害の教訓は色あせていない
2023/08/13 16:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は2012年に新潮社より刊行された単行本に写真を多数追加、加筆修正を行った文庫本である。関東大震災における国鉄、民鉄、東京・横浜の市内電車の被害の全貌、地震発生時に運行中の列車の状況などが詳細に解説されている。当時の鉄道当局や鉄道職員が、災害と如何に向き合ったか、関東大震災から100年経過したが、その内容は今日でも大いに参考になる内容満載であり、一読の価値があると思う。内容の一部を以下に紹介する。◆地震発生時に首都圏の国鉄12路線に125本の客車列車、貨物列車、電車が運行中であり、そのうちの27本が脱線、転覆、土砂崩れによる海中への転落などの被害。地震発生後の火災による焼損車両は1433両。◆中央線、京浜線、山手線の電車区間で脱線した電車は皆無。◆地震発生後、東京からの避難民で国鉄の列車は屋根の上まで多くの乗客を満載、屋根から転落する悲劇も発生。これを防ぐため、屋根のない無蓋貨車で避難民を輸送。◆東京市電では、地震後、市民のほとんどが被災者でもあり無料としたが、殺到する乗客で大混乱。罹災証明書所持者のみ無料とすると罹災証明書を得るために区役所が大混乱、ほどなく無料乗車制度は廃止。◆関釜連絡船の二隻が東海道線不通区間の救済のため、品川~清水間で運航。◆地震発生時に鉄道職員は冷静沈着な行動で乗客の安全を確保した事例多数。◆当時はラジオ放送もない時代。情報提供は新聞が唯一の手段。東京の惨状を大阪の新聞社に知らせるため、新聞各社の記者はオートバイ、自動車などを駆使するも、結局落橋河川は泳ぎ、徒歩と鉄道利用の記者が一番乗り。
著者は、関東大震災と鉄道について多くの参考文献によりその実態に迫っている。ハード対策は当時に比べ進歩しているが、地震発生時の咄嗟の判断やその後の行動といったソフト面の研究は進んでいないと「おわりに」で指摘している。著者は、最終的にこのことを最も訴えたかったのだろう。
以下若干、気になったことを記載する。◆鉄道車両の数を「台」としているが、「両」とすべき。◆地震で鉄橋が「墜落」との記述があるが、航空機の墜落でもあるまいし、不適切な表記であろう。良書であり、著者は鉄道関連の著作も多いベテランだけに、些末なことであるが、この二点が猶更目立つ。
紙の本
鉄道という視点
2023/07/15 18:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
関東大震災について、その被害についていろいろ書籍が出ています。本書は、鉄道の被害という視点で、その被害をまとめたものです。道路や航空機が未発達の当時、鉄道は重要な交通手段でありインフラです。それが、どこでどのような被害を受け、どのように対処したか、それが網羅されている本書は、興味深いです。
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