紙の本
赤染衛門の物語
2024/03/21 13:30
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
赤染衛門と名が伝えられた女性の人生の後半戦。夫を見送り、成長した子どもたちの行く末を見ながらの後半生となるかと思われたのに、 一人の少年を託されたことからがらりと生活が変わる。
三条天皇の御代、自らの孫の即位を待ち望み、陰に陽に天皇の退位を迫る藤原道長、父とは無関係に天皇に心を寄せる道長の娘で三条帝の妃の妍子、複雑な生まれの頼賢。
公的な歴史書が編纂されなくなって久しく、また『源氏物語』に記される紫式部の信条などに影響を受けつつ、赤染衛門は筆を執ろうとする。
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【紫式部が生きた時代の豪華絢爛宮中絵巻】日本初の女性による女性のための歴史物語『栄花物語』の作者である朝児(赤染衛門)からみた宮廷はどんな姿をしていたのか?
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権力争いがメインだと思うけれど、私には筆の力を感じた。何かを書こうとする主人公、書物で師弟関係を結ぶ主人公と頼賢、和歌を詠む習慣。
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百人一首で見かける名前。あるいは「栄花物語」の作者として教科書で見かける名前。
その程度の知識しかなかった赤染衛門、その人の物語。
2024年の大河で描かれる紫式部が白髪交じり姿というのも新鮮だけど、絢爛豪華な平安時代の宮中の物語なのに主人公が50代後半というのも意外といえば意外だったり。
その赤染衛門が女性向きの歴史書「栄花物語」をなぜ書こうとしたのか、そしてそこに何が描かれているのか。此の世をわが世と思うと言ってのける傲慢極まりない藤原道長が権力の頂点に達してもなお手に入れようとしたもの、心身ともに追い詰められ限界を超えながらも道長に抵抗を続ける居貞が帝位を譲ろうとしなかった、本当の理由。そしてそこに生まれたとある事件の真実。このある意味ミステリ的要素が読ませるんだな。真実が知りたくて朝児と共に最後まで駆け抜ける。
複雑怪奇な平安時代の人間模様。物語だからこそ描ける栄華の陰の悲しみ。華やかさの裏にある嫉妬や策略陰謀に翻弄されながらも、人と人との間にあるまっすぐな感情に触れて涙。
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物語と歴史の意義に正面から向き合った作品。
主人公は歌人として名高い赤染衛門ですが、ここではとても親しみやすい人物。
仕事をやめて家庭に専念していたら世間に疎くなっていたり、成人した子どもたちとの齟齬に悩んだりしつつ、夫亡き後の人生へと踏み出す姿は、なんだか他人事とは思えませんでした。
時代は三条天皇の御世。平安朝の華やかさよりもドロドロとした闇い部分が中心なのでエンタメ性は弱いのですが、大事な場面で詠まれる和歌に心を打たれます。
作品内容を知らずに読んだので、最後の方で『栄花物語』だとわかる喜びを味わえました。
最後の章が暁月なのもぐっときます。
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犯罪疑惑を解き明かすミステリー要素あり、政治的対立のドロドロありで波瀾万丈の物語でした。面白く読みましたのでオススメ。
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初めて澤田瞳子さんのこの本を読みました。
そこに居られた人々の懊悩や優しさ、その時代の設いが文章が流れるように美しいですね。
物語をどう伝えようかが 作者と朝児が交差している様子が垣間見られ 一体化していくようで素晴らしかった。
三条天皇のことや栄花物語、他の読みつがれいる物語を是非読んでみようと思います。
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夫の大江匡衡を亡くした寡婦の朝児は一年の喪に服していた。朝児は結婚前は実家の苗字を取って赤染衛門という局名で宮勤めをしていたことがある。夫の匡衡は文章博士であったし、朝児自身も和歌で名を知られていた。義理の息子の挙周や娘の大鶴は出仕しているし、末の娘の小鶴は書籍三昧をしている。朝児本人は再度宮使いをするつもりはなかったが、大鶴のたっての勧めで藤原姸子の下に出仕することになった。またある経緯で叡山の権僧正である慶円の弟子の頼賢の書籍の師となっている。
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人はとかく、目を惹くものばかりを信じがちである…人目にはつかねど内心で案じている者は幾人もいる…p.336
順調でなかったり不幸だったりどん底では辛く悲しく孤独に陥ったりしたこともあり、そんなこともあったときには静か〜
に寄り添ってくれる優しさもあったなと…この本を読み終え改めて思い心温もる。
頼賢の生い立ちには辛いこと悲しいことが多々あったけど、受けた優しさは心に染み込んでいいて、朝児との出会いが転機となり難ありながらも良い方へ成長していくののが微笑ましく嬉しく読み進めました。
この物語の三条天皇の妃達の心内は平安時代の姫で卑しくないのがよかった。
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許される限り、この世のありとあらゆる物をこの目で見ておきたい。
そしてそれを書き記して世の人々に知らせたい、という「物書きの業」
人々はどのような読み方をしてくれるのか、密かに込めた真意を汲み取ってくれるだろうか?
紫式部が、清少納言が、そして赤染衛門が抱いたそんな思いを、作者も胸に抱いているに違いない。
『栄花物語』を著した、赤染衛門の物語。
憎しみに身を焦がし、復讐だけを生きる糧とする乱暴な若き僧だった頼賢(らいけん)の成長と、
夫・大江匡衡(おおえのまさひら)亡き後、叡山の高僧・慶円に請われるまま、訳ありの頼賢を学問の弟子とした朝児(あさこ)こと赤染衛門が、権謀術数渦巻く宮城の歴史を見たままに書き留めようと決意するまで。
世は、藤原道長vs三条天皇。どちらに着けば己の身が安泰か、朝堂は二つに割れている。
平安絵巻はきらびやかな地獄絵図である。
有明/上弦/十日夜(とおかんや)/小望月(こもちづき)/十六夜(いざよい)/暁月(あかつき)
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大河ドラマ「光る君へ」の舞台や登場人物を、ドラマとは違う視点から眺められる一冊。
百人一首を覚えたことがあるが、歌の意味や詠み手のことはほぼ知らない私にとっては、終盤に出てくるある歌について、なるほど背景にはこのような事情が!ということがわかって(?)興味深かった。
大河ドラマのおかげで、ビジュアルが具体的に脳内補完されつつ、読了。
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澤田瞳子さんの文章は、とても素敵でグッとくる表現が多い。本作も物語や史書の在り方の箇所は、とても良かった。
内容は赤染衛門を中心に据えて、生い立ちとか『栄花物語』を書くきっかけといったような内容かと思い読み始めてしまったので、頼賢がメインになったり謎解きのようになってしまったりと、少し自分の読みたかった物とは方向性がズレてしまった。
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赤染衛門の栄花物語の背景、つまりは藤原道長の朝廷掌握の独断専横とそれに翻弄された女房や宮廷人たちの物語、三条天皇の皇后を恨む藤原原子の養い児頼賢の事件の真相探しのミステリー色もあって、面白い時代小説になっている。彰子や紫式部なども登場し、また違った視点から眺められるのが新鮮だった。