紙の本
レビー小体型認知症の基礎ガイドブックの位置付けといえる1冊です。
2024/01/10 21:15
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
当書は、レビー小体型認知症の患者の方と認知症専門医のお2人による共著で、同病についてのトークを新書にまとめた1冊です。
正直、私は当書を読んで初めて同病を知りました。トークでは患者の方の病状や、世間に同病が認知されていないことへの辛さが語られています。お医者さん側が優しい言葉で受け止めているのが、当書の内容を穏やかにしています。
いわば、当書はレビー小体型認知症の基礎ガイドブックに当たるといえます。紙幅も薄く、文中の表も大きく表記されているので、同病についての基礎知識を得るのに最適な1冊です。
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治療薬もなく、未明のレビー小体病(以下レビー)。
レビーは、脳内伝達物質のドーパミンとアセチルコリンが減るので、薬で補充すると良くなる。
ただ、レビーの薬剤過敏性から各薬の適性量の見極めがとても難しい。
ぼーっとしている時間が長いなぁと覚醒させるために(知能を上げるために)抗認知症薬(アセチルコリン)を増やしすぎるものなら、パーキンソン症状(以下PD)が進んでしまうし、かといってPD治療薬(ドーパミン)を増やすと、今度は幻視が増えたり凶暴になったり騒ぎだしたりする。
トライアンドエラーを繰り返す介護側は「どうすりゃいいんだ」と疲れてしまう。
そんな時節、本書で樋口さんが言っていた、
「60点でいいじゃないですか」(本書P165/177 kindleの頁表示)という御託宣。
どうしても元気な父に戻ってもらいたいと、あれもこれも良くしたいと、こちらが熱量多めにいろいろやってもらいたいと思うのだが、当人がストレスに感じていると良くないとある(悪いストレスは猛毒 P118/177)。
*本書抜粋
(P166/177)
生きる張り合いがあることは、何よりも脳の働きを高めると感じます。調子が悪い時でも、人前で話さなければいけないとなるとシャキッとできてしまうので、自分でもびっくりします。その後は、寝込むんですが。
脳の働きを低下させるのは、役割も楽しみも人との会話も笑顔もない生活じゃないでしょうか。歩かなければ歩けなくなるように、脳も使わなければ、働かなくなるんだと思います。嫌いな計算ドリルを必死でやるんじゃなくて、家でも家の外でも何か役割を持って、人と笑い合いながら過ごしている人は、認知症があっても周囲を困らせるような症状はあまりでないでしょうし、進行も緩やかになる気がします。
(P165/177)
レビー小体病に限らず、認知症の診断を受けて苦しんでいる方は、できないことを無理やりやろうとしているんですよ。覚えられないのに必死で覚えるとか、計算ができないのに必死で計算するとか。誰にも頼らずに一人で歯を食いしばってやるとか。それでうまくいかなくて、「情けない」とか「迷惑をかけている」とか、自分を責めている。すごく真面目な方だと思うんですが、それでは脳に自分で毒を注いで、自分から悪化させているようなものです。いいことは何もない。
できないって何も悪くないですよ。病気の症状なんですから。他のことならできることがいっぱいあるんですから。自分が好きで得意で、やっていて楽しいと思えることをすればいいんです。楽しいって脳には最高の薬なんです。
*
ある程度受け答えしてくれて、ちゃんと自分で歩いたり、一人でご飯を食べれくれて楽しそうに笑ってもらえるだけでも「良し」。60点で良いと考えると、介護する側も少し肩の荷も降りると思う。
本書を援護(介護人は母)の立場で読み、今後もアンテナを張って情報収集は続けつつも、援護力の60%を機能面に、残りの40%を当人を楽しませることにバランス変更しようともの思う、2024の新春である。
自分の症状を的確に表現できる樋口さんと、内門 大丈さん(医師)の対談集。レビーと生きる当人と診る側のお医者さんの両目線から話を聞けて興味深かったです。
素敵な本です。レビー関係者に強く推します。
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レビー小体型認知症について、わかりやすい解説を患者と医師が対話する形でまとめられ、読みやすいです。レビー小体病と表現した方が良いほど記憶障害のない病態があったり、パーキンソン病の認知症とレビー小体型認知症、アルツハイマー病との線引きが難しく、特に高齢になればレビー小体が脳に蓄積されるのは珍しくなく(発症の有無とは別に)、アルツハイマー病との合併もあるというのには驚きました。著者の一人である当事者の著書「誤作動する脳」も読みたいと思いました。
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何度も読み返しました。身近な人がなった時、初めて知ることばかり。患者さんは多種多様だから、これがあてはまる、とはいかなくても、何故かホッとした。勇気をいただきました。