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不安定が魅力
2008/06/23 22:26
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
深紅(しんく) 野沢尚 講談社文庫
以前、愛知県で母親とこども3人が 殺され住宅が焼かれるという事件がありました。その事件と似ている物語です。著者自身も愛知県出身であり、その後著者は自ら命を絶っています。家族が殺されて、修学旅行先でひとり残された小学校6年生の少女。彼女が大人になって出会った犯人の娘。同じ思いを味あわせてやろうという復讐劇。克明な描写に鳥肌が立ちます。深紅というのは血の色です。惨殺された一家四人から噴出された 血の海の色。明るい紅、黒味がかった紅。渦を巻いて、湯気さえ 立ち昇っている。主人公女性と犯人の娘、その娘の夫を3本柱にして後半は殺人計画が進行していきます。前半は主人公が可哀想になったり、いじわるに思えたり、読者の心が揺らぎます。不安定であることは、読み続けるための興味を生みます。ラストシーンはこれから読む人のために、ここに記すことはやめておきます。
久々の野沢作品
2023/05/15 20:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まるこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて好んで読んでいた野沢尚作品。何十年ぶりだろう。本屋で見つけて購入しました。やはり面白かった。ページをめくる楽しみを思い出させてくれました。また彼の作品を追いかけたい。
時間が彼女たちを癒してくれることを願わずにはいられない。
2004/11/13 00:12
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぶんこ虫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者の他の作品に比べて、本書は読後感が随分違う。解放とか救済とか、そういう言葉では不足だろうと思うけれど、何か明るいところへ導かれて終わるような温もりを感じた。どうしたんだろう、いい傾向だな、と思っていたら、作者の訃報を知った。
物語は重く衝撃的に始まる。悲惨な殺人事件。その被害者の家族としてたったひとり生き残ってしまった少女の苦悩。キリキリと突き刺すようにその深い絶望を描き出していく前半は容赦がない。
犯罪被害者の娘と、加害者の娘という、ありえない取り合わせの二人の少女の交流を描いた後半。そこでは、ひとつの犯罪計画が進行するが、物語は二人の日常を丹念に追っていくことになる。
その日常の中で、加害者の娘である未歩は、相手の素性を知らないまま、友人として心を開いていく。被害者の娘である奏子は、未歩を憎みながら、次第に憎しみ以外のものを感じるようになる。全く両極の立場にありながら、同じ年月を苦しみながら生きてきたという現実。未歩を知るにつれ、奏子の心の中の闇がゆらぎはじめる。
奏子も未歩も、その心に秘めた苦悩や憎悪を捨てることはできないだろう。けれど二人は、その絶望の中から立ち上がって、再生への道を歩き始める。そんな彼女達がいつか癒される日が来るようにと祈らずにはいられない。
静かな感動が残るこんな物語を、作者にはもっと書いて欲しかった。残念でならない。
小説家と脚本家の間で
2024/03/27 15:39
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投稿者:森の爺さん - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者である故野沢尚氏は、東京都練馬区で発生した一家殺人事件にヒントを得てこの小説を書かれている。事件自体は競売物件である土地住宅を手に入れた不動産業者が、その住宅から立ち退かなかった前の所有者の娘夫婦一家を殺害しバラバラにした事件であるが、この物語では被害者の父親による詐欺に起因して発生する。
この事件では、丁度夏休みの林間学校に行って家にいなかった長女だけ助かったのだが、この小説では同様に一家殺人事件で一人だけ生き残った娘の奏子が主人公となっている。小説の中では前半で平凡な人間が一家殺人事件を行うに至った経過が、後半は生き残った奏子が犯人の娘である未歩に接触し、彼女にDVを振るう夫への殺意を増幅させ、完全犯罪を後押しするという物語となっている。
犯人の裁判での主張は死んだ妻の保険金をだまし取った奏子の父親殺害についての責任能力は認めてるが、家族である奏の母親と弟2人の殺害については心神耗弱を主張するが棄却され死刑が確定する。一方で、奏子も犯人に対する憎しみとは別に父親の死について自業自得という冷めた感情を抱いている。
本来出会ってはならない二人の出会いが奏子の方が未歩を探して接近することにより実現し、犯罪に流れていくサスペンスの中で、物語の鍵となるのは奏子が長野県の林間学校の宿泊所から病院まで教師とタクシーで向かった「4時間」を悪夢として追体験するようになったことであり、それが未歩との犯行実施時に発生することでクライマックスに達する。
最終的に奏子は過去に起因する「自傷行為」から解放され、未歩も殺人犯にならないという結末は良いのだが、ある意味奏子の自傷行為に利用された未歩はこれからどうなるのかという疑問が残った(奏子の側からの観点の話だけ書かれていて未歩は知らないまま終わる)。
余り知られていないが、本書は野沢氏の脚本(こちらの方が本業の感がある)により映画化されており、以前レンタルDVDで鑑賞してみたが、内山理名演じる奏子(少女時代は堀北真希)と水川あさみ演じる未歩との絡みがほぼ原作通りに展開し、若き水川あさみのクールビューティーぶりが際立っていたが(殺人犯となる緒形直人の静かな狂気ぶりも印象深い)、ラストで「ここで原作から変更するのかよ。」と驚いた。野沢氏にとっては本書を書いた際に考えた別な筋書きを映画で実現したのかも知れないし、「後半が弱い」という批評への回答であったかも知れないが或る意味怖い。野沢氏が故人となった現在、その心境は謎であるが、脚本家野沢氏にとって、自身の小説が原作であっても(「あるからこそ」なのかも知れない)変更したくなるのかという感想を抱いたものである。
今まで知らないで損してました
2017/01/12 18:54
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投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
初見の作家さんです。
読み終えてから知ったのですが、2004年に44歳という若さですでに亡くなっておられるのですね。
本の裏書も読まずに何気に選んだ本でしたが、幸運な出会いになりました。
それにしてもこんな始まり方の作品がこんな結末になるとは読んでいても想像できませんでした。
読み手ごとに色んな意見や違った好みもあるでしょうが、私はこの結末がとても気に入り、野沢尚さんが好きになりました。
いくらでも救いのない刺激的なきつい嫌ミスにもできただろうに、作者の人間という生き物に対する諦めきれない、突き放しきれない愛着のようなものを感じました。
衝撃の幕開け
2015/12/26 14:30
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投稿者:おたま - この投稿者のレビュー一覧を見る
前半の衝撃と、後半の緊張感。奏子と未歩、ともに本人には何の罪もないにもかかわらず重いモノを背負って生きなければならないふたり。奏子の心の動きに慄きつつページをめくる手が止まりませんでした。最後は最悪の結末とならずに本当にホッとしました。何も知らずに奏子と別れ、もう再開することはないであろう未歩は、最後まで何も知らずにいた方がきっと良かったのでしょう。二人のこれからの人生に少しでも明るい陽が差し込みますように。
ネット評価が高いので、読みました。
2014/10/31 22:26
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投稿者:shingo - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネット評価が高いので、読みました。
犯罪被害者家族と加害者家族が接触する話。部分的には面白いのですが、ネタに頼りすぎで、展開が欠ける気がしました。評価としても、星3に近いかもしれません。
ラストにはホッ
2024/11/22 05:40
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんとなく、イヤミスの予感も有りながら読み進めましたが、こういうラストで良かったです、本当にホッとしました。読み始めたら、手が止まらなくなります。一気読みをオススメ。一家皆殺しの被害家族の一人生き残り…、辛いな。