「17の鍵」で「19号室」を開けたら、さらなる旧東独の闇が…
2025/03/27 11:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一作から間髪入れず第二作の登場。「17の鍵」事件から1年半後、トムはパパに。今回もベルリン国際映画祭のオープニングイベントで実際に女性が殺される瞬間を撮ったと思われる衝撃的な映像が上映される、という元TV編集者ならではの「掴み」で始まる。おまけに実写映像証明の解説付き。被害者はベルリン市長の娘。なぜか市長の要請で「17の鍵」事件チームが再び結成招集され、トムとジータのコンビ再結成、うるさい上司ブルックマンとモルテン。しかし捜査を進めようにも、市長周辺の関係者、また、警察上層部は市長に忖度するような言動で妨害?市長は何かを隠している?死体も発見できす、捜査に進展が見られない中、別の殺人事件が起こり事件の背景の謎が深まっていく。そして、殺害映像に映された、今度は「19」という数字。前回と同じように、今回も謎の部屋番号を暗示しているのか?第一作では、「17の鍵」を見てトムと友人たちが関わった過去の事件と妹の失踪に引き戻されたが、今度はジータ。第一作でフラッシュバックのように現れるトラウマの原因となった自分の若い頃にトラブル、レイプと屈辱的な仕打ちを受けた出来事が事件と関係していることに気づく。
第一作で、旧東独時代国会保安省シュタージによる、ナチの「レーベンスボルン」的な人身売買が明らかにされ、これが事件の引き金・背景になっていたが、第二作では国家権力による強制養子縁組事業であったことが明らかにされる。今回事件の被害者たちは東独時代シュタージ高官として関わっていたこと、ジータを襲ったグループ、そしてトムも含む子供時代の「17の事件」の関係者、彼らが今回の事件に収斂されていく。旧シュタージの高官達は、再統一後自らの過去を洗浄・隠ぺいして政財界で活躍する者もいたが、これまでの言動から警察内部にもいるような…?まだ、「ラスボス」は登場していない?
謎が謎を呼ぶ展開であり、解明されたと思いきや、作者はチラっと次作につながる未解明の謎を作中に残す。全四作原書カバーでライトモティーフのように使われている「羽」―ヴィオーラが身に着けていたーが、本作ではトムの友人に顕れる。トムの妄想をかき乱すように、「17の鍵」の女性精神病患者、今回は映画祭にいたこどもの目撃者、とヴィオーラの分身も登場する。このように各編は独立した事件で、それぞれ解決されるが、通底する部分が仄めかされ、解明されず謎は第四作まで続くようだ。一方で新たに謎の「宙ぶらりん」人物が登場する、という構成は、TVシリーズ・エンディングのようだ。今回は前作に登場した「宙ぶらりん」人物が犯人として「回収」されるが、新たに「宙ぶらりん」が登場する。先の映画祭にいた子供は何者でどこにいったのか?
全四作の今後の展開の事件の背景には、どうやら東独シュタージによる強制養子縁組事業があるようだ。国のナンバー2主導であったことから、さらに拡がりを見せていくのではないか?今回はモルテンの父親はこの事業の中心人物であって、モルテン自身が強制養子だったという事実。物語の最後にトムの父親が「宙ぶらりん」登場するが、「17の鍵」からすると今後トムの父親も関係してくるような気配。父親には先の子供との何やら関係があり、トムは疑いを持つ…父親も旧シュタージで、そしてトム自身も強制養子であり、ヴィオーラも?と謎がどんどん拡がっていき以下次作ということになる。ただ、ジェローム・ルブリ『魔王の島』や『魔女の檻』のような、最後は全てトムによる妄執的な結末、でないことを祈る。とにかく旧東独シュタージの闇は深い、妄執で終わるようなものではない。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
4部作らしいから、これで半分。
まだまだ謎が残ったまま。
気になるのは、やたらと狭い範囲で事件が起こってること。
東ドイツの闇とはいえ、狭すぎでしょ。
投稿元:
レビューを見る
女性の殺害シーンが映画祭で流された。そこには『19号室』の文字が…ベルリンの壁崩壊という大きな歴史をベースに展開するミステリは前作よりさらに重厚感があった。さらに、気になっていたジータの過去までがからむ。今作もまた、気になるラスト。次も絶対翻訳して欲しい!
投稿元:
レビューを見る
17の鍵に続いてトム・バビロンの2作目。作品の色調はどんよりと曇った鈍色でドイツってこんな国なのかと思う。とりわけ東ドイツの歴史が共産主義国の典型的な閉鎖的で疑い深く自国民を(特に子供を)もっとも虐げていたことを底流に話が進んでいくので救いがない。ただ、ジータの初恋の描写だけが唯一の例外と言えるか。
それにしても、最近読んだフランスのセルヴァスシリーズと主人公の設定がよく似ている。優秀なはずなのに無鉄砲で単独行動が多く、なんども殺されそうになりながらも敵の優柔不断さに助けられて生き延びる、アクション映画の世界そのものでリアリティを削いでいる。バビロンシリーズはこの後も2作品が続くようだがこの重苦しさは変わらないだろう。
投稿元:
レビューを見る
マルク・ラーベ『19号室』創元推理文庫。
『刑事トム・バビロン』シリーズの第2弾。
『17の鍵』からの秘密がついに暴かれるという触れ込みのようだが、謎が謎を呼ぶだけだった。どうにもストーリーに入り込めず、いつの間にか結末を迎えていた。
本シリーズは4部作で、第3作は『スズメバチ』、第4作は『ヴィオーラの部屋』と続くようだ。
ベルリン国際映画祭の開会式場で上映されたのは、若い女性が殺害される瞬間の映像だった。そして、その女性は市長の娘で女優の卵であったことから大騒ぎになる。トム・バビロン刑事は捜査を始めるが、相棒の臨床心理士ジータは、映像内の壁に残されていた『19』に自分との共通点を見付けて戦慄する。
イマイチというか、読むのが苦痛になるようなストーリーに第3作以降は止めてしまおうと思う。
本体価格1,360円
★★★
投稿元:
レビューを見る
トムの相棒、われらがジータ・ヨハンス。その秘密、というか人に言えなかった過去が本作で重要な意味を持つ。
2001年に16になるというジータは本当にきれいだったんだろうな。そして18年後のジータは美しくかっこいい。
シリーズ第1作『17の鍵』から読んできて、謎の山積みは高くなった。4部作で起承転結の「承」部分にあると考えればむべなるかな。
ベルリン州刑事局は?トムの妹は?トムの息子は?…その他、次作以降に持ち越し。
最後の第74章は完全に次作予告。
「カテゴリ」は「ミステリー」にしたし、ミステリー要素はたくさんあるわけだけど、スリラーと呼ぶほうがより適切。
投稿元:
レビューを見る
「17の鍵」と同じトム・バビロンが主人公のドイツを舞台にしたミステリー。今作は臨床心理士のジータに焦点を当てている。ジータの18年前の事件と2001年の事件がそれぞれの時間系列で交互に描かれていく。過去のトラウマに苦しむジータ、妹の亡霊が見えてしまうトムの2人の、足を使った地道な操作に拍手を送りたい。
投稿元:
レビューを見る
ベルリン国際映画祭の開会式場に悲鳴が響き渡った。予定外の、女性が殺される瞬間を撮った映像が上映されたのだ。女性は市長の娘で女優の卵。映像はあまりにリアルで、目出し帽の人物が上映を強要したという。トム・バビロン刑事は捜査を始めるが、相棒の臨床心理士ジータは、映像内の壁に残されていた「19」に、自分との共通点を見つけて戦慄する。
誰も彼もが叫び続けているような、サスペンス満載のドイツ発警察小説第2弾。しかも肝心の謎は次作以降に残されているとは。
投稿元:
レビューを見る
前作同様、映像が目に浮かぶようなエキセントリックなオープニング。さすが映像制作会社社長!目まぐるしい展開に閉じることができず、ほぼ一日で読みました。こうした歴史の負の側面を抉り出すことで、エンタメに重みが生まれているかと。ドイツ分断時代ネタはたっぷりありそうなので、今後も楽しみです。ジータと彼の繋がりを作るのはちょっとやりすぎ?かと思いましたが、ほんわかパートでもあるので、今後の展開を期待します。にしても、臨床心理士とは思えないほど現場での捜査に加わっていて???ではあります。そしてまたまた次作に余韻を残す結末、読まざるを得ないではないですか。ただ、今後の流れに必要なのだとは思うけれど、ヴィーが出過ぎ。ちょっと煩わしく思っちゃいました。
投稿元:
レビューを見る
やや展開が冗長に感じる部分も否めないが、じっくりねっちり描いてくれるミステリは好みなので良かった。
今回は前作よりもはっきりしたところがあったし、ここまできたら絶対にあと二作読みたいので翻訳なにとぞ。
あんな引きをされて読めなかったら生殺し!!(笑)
投稿元:
レビューを見る
トム・バビロンとその相棒ジータ・ヨハンスのシリーズ第二弾。
今回もタイトルは数字。そして登場人物たちの過去の出来事が現在に深く関わってくるというスタイルを踏襲。
本作の主役はジータで、彼女の特異な見た目の秘密が明かされることとなる。
始まりはいきなりベルリン国際映画祭の会場だし、
後半スリリングな展開となる場面の舞台は
数千のコンクリートの石柱が立ち並ぶホロコースト記念碑。
視覚的な効果が半端なく、先へ先へと気持ちがはやり楽しめた。
四部作の半分で、以降の作品の発売は今のところわからず。
早めの刊行、よろしく!!
投稿元:
レビューを見る
『17の鍵』に続く第2弾は、2019年2月、ベルリン国際映画祭の開会式場での映像で、女性が殺害されるシーンが上映されるという幕開けである。
あまりにも映像がリアルであり、女性が市長の娘で女優の卵だと判明し、トム・バビロン刑事と相棒の臨床心理士のジータが動き出す。
映像内の壁に残された「19」に戦慄したのは、ジータだった。
今回は、ジータが主役といえるほどの存在感と身体を張る活躍だった。
2001年に16歳だったジータの過去は壮絶であり、彼女たちの闇が暴かれていくにつれ、過去と現在が繋がり、隠された事実や謎が公になっていく。
そしてトムとジータと関わりを持っていたのがベネだったことも驚きだった。
過去からの連鎖を断たなければ、悪はいつまでも根絶しないのか…という事件だった。
前作同様、冒頭からショッキングな場面であったが、まだ続編があるのだろう。
投稿元:
レビューを見る
今回も良い。
トム・バビロンが主人公のドイツミステリー第2弾。
ベルリン国際映画で突如上映されたスナッフ・フィルム。そのフィルムは本物かどうか判断できないが、「17の鍵」の捜査メンバーが招集された。
事件を追うごとに物語は混迷を増していく。
前回は主人公のトムの過去と現代の事件が交わっていく流れだったが、今回はトムの相棒のジータの過去と事件が交わっていく。
過去と現代を行き来する進行のバランスがとてもよく、また場面転換もテンポがよいので、圧倒的なリーダビリティを感じる。
海外テレビドラマにすると映えそうなイメージ。
今回も前作と同様に事件の背景に旧東ドイツ時代の組織が暗躍しており、シリーズを通して薄暗いイメージが変わらず、うっそうとした雰囲気を感じる。
個人的にはデヴィッド・フィンチャーっぽいなと感じた。
早く次回作が読みたい。