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14件
地図と拳
著者 小川 哲
【第168回直木賞受賞作!】
【第13回山田風太郎賞受賞作!】
「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」
日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野……。奉天の東にある〈李家鎮〉へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。
ひとつの都市が現われ、そして消えた。
日露戦争前夜から第2次大戦までの半世紀、満洲の名もない都市で繰り広げられる知略と殺戮。日本SF界の新星が放つ、歴史×空想小説。
地図と拳
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地図と拳
2022/11/12 14:35
国家とは何か、を問う1冊
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yino - この投稿者のレビュー一覧を見る
1899年から1955年までの満州を舞台とした群像劇。日清戦争を経て、ロシアと日本の緊迫した関係の中では大きな存在意義を見せた満州が、エネルギー転換により徐々に価値が下がる中で、逆に太平洋戦争の火種となっていく様は、俯瞰した目線では滑稽でとても悲しく映る。地図や建築によって土地を切り開いてくのか、拳によって奪いにいくのか、緊迫の高まる昨今の世界情勢の中で、痛烈なメッセージを投げかけてくる弩級の1冊です。
地図と拳
2022/10/03 22:09
地図をつくることは、国家をつくること
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
未知の土地を夢想する人類の歴史を考えれば、世界の未来は、地図と夢によって決まる。人造物がない土地は、地図の上では白紙であるかもしれないので、その土地に建築するということは、地図に信じるものを、あるいは夢を書き込むことになる。国家というものは地図であった。満州という土地に、日本人が思い描いたものが、建築され、ゆがめられ、消滅する歴史は、地図として残るのだろう。すべての建築は特定の時間に帰属する。そして、その時間を延長しようとするという。地図も建築も、時間を保存し、また時間をつなぎ留める。重厚な物語であった。
地図と拳
2023/10/31 23:24
読了して感じる不思議な充足感はなんだろう?
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
600ページを越える長い物語は、日露戦争から第二次世界大戦までという長さもあるけど、描かれる物語の奥行きも深く、だからこの分厚さに。
加えて、中途半端な知識しかもたないせいで、いちいち立ち止まり、リアル歴史を調べつつ読んだものだから、なかなか前に進まない。しかし、そんな読み方の方が理解がより深まった気がしてよかったと思う。
実は、当初、冒頭を一読して、難解さはない平易な文章。エンターテイメント性も十分な気がして、どんどん読めそうな気配も濃厚だったのだがこの歯ごたえたるや...。
しかし、やってきたエンディングは、多幸感でいっぱいになりつつ読了。
どんな話だった?と聞かれて、スパッと説明できない自分がそこにいて、しかし、誰かにお勧めしたくなるほどの面白さだったのは確かです。