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4件
眠れる美女
著者 川端康成 (著)
波の音高い海辺の宿は、すでに男ではなくなった老人たちのための逸楽の館であった。真紅のビロードのカーテンをめぐらせた一室に、前後不覚に眠らされた裸形の若い女――その傍らで一夜を過す老人の眼は、みずみずしい娘の肉体を透して、訪れつつある死の相を凝視している。熟れすぎた果実の腐臭に似た芳香を放つデカダンス文学の名作「眠れる美女」のほか「片腕」「散りぬるを」。
眠れる美女
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眠れる美女 改版
2019/01/28 14:29
この人は、かなりの変態かも知れない
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和を代表する大文豪で、ノーベル賞作家でもある川端康成氏に対して大変失礼な言い方ではこの人はまさしく変態だと思う。河野多恵子の「劇場」という短編を読んだとき、せむし男とその妻の関係に興味をしめして自分もその関係の一部となることによって欲求をみたすという描写に彼女が変態ということを確信したのだが、「眠れる美女」の昏睡している少女に添い寝をして楽しむ老人であるとか、若い女から預かった片腕と会話する男(「片腕」)であるとか、この人は天才であることには間違いないのであるが、この発想は常人にはできない。きっと、かなりの変態だったに違いない
眠れる美女 改版
2023/07/07 06:48
昭和35年では67歳はりっぱな「老人」
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノーベル賞作家川端康成の代表作にして最高傑作といわれる『眠れる美女』を読んで、
まず初めて感じたのは、
この作品が書かれた昭和35年では67歳という年齢は「老人」と呼ばれていたという
驚きのようなものだった。
21世紀の現在、67歳の人をもって「おじいさん」と呼ばれることはあっても
「老人」と呼ばれることはないはずだ。
この中編小説の主人公江口「老人」は67歳。
知人の紹介で若い美女が一晩ただ眠っているだけの怪しい宿を訪れる。
「目覚めない娘のそばに一夜横たわろうとする老人ほどみにくいものがあろうか」、
江口「老人」はその老いの醜さの極みを求めて来たともいえる。
ただ江口「老人」は、他の客とちがって、「男としてふるまえるもの」が残っていると、
自身は思っている。
つまり、まだ女性と交わりができるという自信である。
江口「老人」が老人の醜さと呼ぶのは、性欲を失ったことをさすのだろう。
しかし、この宿で「眠れる美女」にその行為をしてはならないことになっている。
江口「老人」もまたその取り決めを越えることはない。
ただ、彼は「眠れる美女」の片側で、過去の女性たちのことを追慕していく。
江口「老人」がこの怪しい宿に入りこむたびに、彼は別の女性との思い出に浸っていく。
そのあたりの展開が、とてもいい。
物語としての完成度も高い。
そして、江口「老人」が自分にとっての最初の女と気づくのが、
17歳で死に別れた「母」という衝撃的な結末を迎える。
この中編をもって、川端康成の世界観を論じることは可能だろうが、
純粋に小説としても読み応えがる。
川端康成を読むなら、『雪国』よりも断然『眠れる美女』だろう。
眠れる美女 改版
2018/08/11 00:42
柔和な夜毎の迷いは積もるもの
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:おこめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
三作あります。どれもドキッとするエロスが垣間見れます。でもかならず横には恐怖も横たわっているのです。表題作は、絵にしたくなるほど触感や色が伝わって来ます。夏の夜長に是非