- みんなの評価
16件
思い出トランプ
著者 向田邦子 (著)
浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など――日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。
思い出トランプ
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
思い出トランプ 改版
2021/02/14 18:40
身近な家族小説
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジミーぺージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
13編からなるオムニバスです。
昭和生まれの人間には、昭和の臭い、懐かしい世間の風景を感じます。
若い世代の話ではなく、熟年期の夫と妻、男女の話です。
向田邦子さんの描写力が見事な作品だと思います。
思い出トランプ 改版
2019/10/21 19:54
直木賞
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
直木賞を受賞した『花の名前』『かわうそ』『犬小屋』のほか、13編。3篇で直木賞受賞っていうのもすごいですよね。何度でも読み返せる本です。
2015/09/30 01:16
向田さんの芸
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:garuhi - この投稿者のレビュー一覧を見る
「かわうそ」から始まるこの13編の向田作品。三〇年以上も前にも『父の詫び状』と共に読んでいる。それは向田さんが直木賞を取る前であったか後であったかは、もう定かではない。どの作品も充実していて、独特の向田ワールドを形作っていて読むたびごとに鳥肌が立った。今回中学生までに読んでおきたい日本文学の中にたまたま「かわうそ」だったか「ビリケン」だったかが入っていて、もう一度読み返してみたくなり、新たに買い求めて読み返してみた。やっぱり何度読んでも凄い物は凄い。三〇年間自分のなかで埋もれていた作品のなかでも、「大根の月」が僕にとっては忘れられない作品だった。昼間見る月が大根の薄切りにそっくりだというたとえが昼間に月を見るたびに僕のなかで、向田邦子を連想させていた。なんて比喩のうまい人なのだろう。そして物語の展開も水上勉言うところの「向田さんの芸」であり、生中にまねのできる物ではない。向田邦子の文章、小説にせよ・エッセイにせよ、日常の中のふとしたことをきっかけとして人生の・人間の機微を鮮やかに切り取ってみせる「芸」は正しく絶品であり、他にまねのできる物ではない。
学生時代に読んだときもそうは思ったが、筆者がこれを書いた歳になって読み直してみると、その感慨は一層である。最近の小説にこういった深みを期待できないのは当然のことである。今宵、良い小説を読んだ満足感に久方ぶりに浸っている。