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電子書籍

池袋ウエストゲートパーク

著者 石田衣良

ミステリーの「今」を読みたければ、池袋を読め。刺す少年、消える少女、マル暴に過激ジャーナリスト、カリスマダンサー……駅西口公園、通称ウエストゲートパークを根城にする少年少女たちが、発熱する都会のストリートを軽やかに疾走する。若者たちの現在をクールに、そして鮮烈に描く大人気シリーズの第一作。青春小説の爽快感とクライムノヴェルの危険な味わいを洗練させ、新しい世代から絶大な支持を得て話題となった連続ドラマの原作。

池袋ウエストゲートパーク

税込 740 6pt

池袋ウエストゲートパーク

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みんなのレビュー80件

みんなの評価4.3

評価内訳

紙の本ドラゴン・ティアーズ 龍涙

2012/04/18 15:02

龍の涙~中国格差社会と労働研修の実態

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る

まず最初に書いてしまうと本作品で、主人公マコトにある種の大事件が起こる。とかく池袋ウェストゲートパーク(以下IWGP)シリーズファンにとっては、これ結構な事件。思わず「えー!?」と声が出てしまう事請け合いです。お楽しみにw。
さてIWGPシリーズも9作目。正直これまでの作品の中には、少々マンネリを感じる物もあってそろそろ潮時なのでは・・・なんて感も無くは無かったのだけれど。4つの短編からなる本作品は、これ非常に素晴らしい。前作の「非正規レジスタンス」も良かったけれど、並んでシリーズ中でも相当好きな作品と言えると思う。中でも表題になっている「ドラゴンティアーズ」がいいなぁ。色々な意味で、ぜひ皆さんに読んでもらいたい一作。
一見ラノベのようなタイトルだけれど、内容は全くさにあらず。中国の格差社会と、日本 への(労働研修制度という名の)出稼ぎ労働がテーマになっている。労働内容は苛烈を究める上、搾取を重ねられて手取りは時給で270円という状況。それでも3年働けば生涯賃金に近い物が得られるというから、来日した若者たちは必死だ。
その研修生の一人、中国人の美少女クーが、労働研修から逃げ出した。このままでは出稼ぎ労働従事者250人全員が、連帯責任で強制送還されてしまう。そこでクーを見つけ出して欲しいとトラブルシューター、マコトの元に依頼が舞い込んできたのだ。いや正確には、匿っているであろう地元中国系のマフィアとの折衝役。しかし苦労して出会ったクーから話を聞くと、苦役から逃げ出したいとか東京で遊びたいとか、そう単純な話ではなかった。労働研修では、病気で死にかけている父親を救えない。だからあえて夜の仕事に身を沈め、さらなる高給を得ようとしていたのだ。違法だと分かっていても、父親を救えないのでは意味が無いのだと言う。・・・こうなると、マコトにはもうする事がない。自分で道を選ぶことを諭すのだが。苦悩の果てに、クーが選んだ切ない道に胸が痛む。
がしかし!最後の最後に、見事な切り札が切られるのだ。しかもそれを切ったのが、最近主人公のマコトをも凌駕する人気を誇る、あの人だというのだからたまらない。「うわああああ、そう来たか!」と思わず声が出そうになり、涙腺が緩む。ひっさびさに、スカ!っとした気持ちになれました。
・・・そこで最初に戻るのだが、マコトの身に大変な事が起きるのだ。これはこれから後の作品にも、きっと大きく影響するんじゃなかろうか、非常に楽しみである。
IWGPシリーズ、本作を読んでやはり比類なき独特の世界を築き上げたなと感じました。この傑作ドラゴンティアーズを含め素晴らしい短編4作、ぜひ読んでみてください。

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紙の本池袋ウエストゲートパーク

2007/07/28 12:23

内容の重さを感じさせない疾走感

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:@翔@ - この投稿者のレビュー一覧を見る

随分前に購入して今更ですが読んでみました。
現代の若者の間にあふれる問題を扱っていて過激な描写も多いのですが、さくさくと読み進むことが出来ました。
石田さんの書く文章はどんな内容を扱っていても知的さにあふれていてどこかやわらかいところが魅力だと思います。

ページをめくる手が止まらずあっという間に読めてしまう一冊です。
出てくるキャラクター一人ひとりの個性も光っていて軽快なテンポで物語が進んでいきます。
ぜひ他のシリーズも読んでみたいと思いました。

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紙の本電子の星

2005/09/22 13:07

石田衣良ファンならずとも同じみの、I.W.G.P。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ロングボーダー - この投稿者のレビュー一覧を見る

今回は、
「東口ラーメンライン」
「ワルツ・フォー・ベイビー」
「黒いフードの夜」
「電子の星」
4つのエピソードを収録。
「東口ラーメンライン」は、ドラマでGボーイズがラーメン店を
やるという話があり、そのベースになっているのかもしれない。
それ以外は、ドラマのシナリオで使われていないと思う。
シリーズ当初に比べ、マコトのキャラクターが定着し、
落ち着いてきたように思える。
小説の中だから。。。
と言えないようなエピソードたち。
面倒なトラブルと解っていても、立ち入らずにいられないマコト。
トラブルが解決した時に、依頼人だけでなくマコトも成長している
そういう構成もわるくないと思う。
石田衣良著書には、はずれがない。

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紙の本池袋ウエストゲートパーク

2020/07/04 22:46

シリーズタイトルって池袋西口公園のことなんだよなぁ...しみじみ。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る

石田衣良の連作短編小説集「IWGP」シリーズの一作目はデビュー作だったよなぁ。とふと思い出し、再読。2020年夏現在、シリーズは15作まで出ているが、その骨格となる要素はすべて1作目にある。
池袋西署の署長が古い知り合いだったり、池袋の最強チームGボーイズのリーダータケシが幼馴染だったり...と、ご都合主義の設定がベースだが、それこそが物語の面白さ。主人公マコトがちょっと不器用なヒーローであるには絶対条件だったりもする。
とにかく、ストリートにしっかり根付き、しかもインディペンデントでいながら、ちょっとすごいことを成し遂げてしまう。図体ばかりが大きくて何にもできない既成「組織」に対するアンチテーゼの物語にもなっていて、そのまま今に続いている。
初読の時、池袋西口公園を池袋ウエストゲートパークと言ってしまうセンスが面白いなぁと思ったことを思い出した。

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紙の本非正規レジスタンス

2010/09/16 09:37

か、かっこええ・・・

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る

 あまりにカッコよくて、読んでてうるうるしてしまう。感動じゃない、ただそのかっこ良さに涙腺が緩んでしまうのだ。といっても本作品でかっこいいのは「池袋のトラブルシューター」主人公のマコトでも、悪ガキ達の最大チームGボーイズを束ねる「キング」タカシでもなく、ましてや地域の有力暴力団渉外部長のサルでもない。何とマコトの、おふくろさんである。毎度物語の冒頭にちょっとだけしか登場しないマコトのおふくろさん。しかしながらマコト曰く「熱烈なファン」がいるらしい。であるなら満を持して、の登場なのだ。いやもうその立ち居振る舞いに言動、一つ一つがかっこいい。ピンと背筋を伸ばして若造を嗜める姿が、目に浮かぶようだった。そりゃ女手一つで池袋にフルーツ屋を構えて切り盛りし、あのマコトを育て上げたのだ。暴力団だろうがチンピラだろうが恐れず立ち向かうマコトをして、唯一絶対にして頭の上がらない存在である母親。そのお母さんがシリーズ初めて物語の中心に立ったのが冒頭の「千川フォールアウトマザー」である。面白い!またサルやタカシも、マコトのお母さんを大事に思っているのがしみじみと感じられて胸に来る。
 そしてもう一人、三作目の「定年ブルドック」の主人公もすごくかっこいい。一人の少女が、また悪い男に騙されかける。その少女が幼い時から目をかけてきた男、大垣が主役のその物語。初老とも言える年齢の大垣だが、小山のような容姿は武骨でありながら以前オリンピックの柔道強化選手にも選ばれた事がある猛者。少女を救うために、マコトとタッグを組んで行動するのだが。言動もカッコいいし、格闘シーンは読んでいてちょっと男惚れしてしまう程だ。話は少しズレるが、キングタカシは池袋の悪ガキ達の間では絶対の王様である。類稀なる動体視力と瞬発力を持ったタカシのパンチは高速を極め、誰も避ける事が出来ないという。何とタカシは、生まれてこの方物を落としたことが無いという。物が手から零れ落ちてから地面に着くまでに、また手の中に納められているからだ。そのキングタカシをして「あの大垣と言う柔道家にスパーリングを申し込めないかな」と言わしめる。ああああ・・・み、見てみたい!というか読んでみたい(笑)!この大垣、一回限りの登場ではあまりいもったいない白眉なキャラだと思う。いつかまたぜひ再登場してもらって、できたらタカシとのスパーリングシーンを読んでみたいものだ。
 このシリーズがテーマとするのは、いつも現代社会が抱える問題である事も興味深い。今回も不遇な非正規雇用者やシングルマザーにスポットを当て、その問題点を浮き彫りに上で、応援歌的にまとめあげてある。そして他に比類なき表現力と語彙で描かれる世界は、美しいを通り越してシュールをさえ感じてしまう。いずれにせよ、胸に沁みる物がある。
 正直、この所のこのシリーズは多少マンネリを感じていた。マコトの所に厄介ごとが舞い込む。それを人海戦術ならGボーイズとタカシが、情報戦と裏の世界ならサルが協力して片付けると言うパターン。ところが今回、そのタカシやサルは完全にバックアップ役となり、まさかのお母さんや大垣が前に出てくることで、新しい展開を見れたように思う。私的には文庫化されたシリーズ8作の中でも、ベスト3には入れたいと思う作品だった。いやもうこのシリーズ、これからもぜひずっと続いて欲しいと切に願う。

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紙の本灰色のピーターパン

2009/02/04 10:29

作品のテーマを再認識~やっぱ名作。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る

池袋ウェストゲートパークも、外伝の「赤・黒」(ルージュ・ノワール)を加えれば、本作までで7作。1作目から大ファンになり、本作に至るまで発刊の度に楽しく読ませて頂いて来た。主人公は池袋で家業の果物屋を手伝う、自称トラブルシューターの真島誠。彼の元に持ち込まれる、地元池袋だからこその色々なトラブルを、彼の機転と絆で解決していくのだ。と、こう書けばやけに浅く感じるのだが。いやいやさにあらず。本作品は池袋の街のずっと深い部分、人間たちのずっとずっと深い部分を描き出した作品である。
東京在住の私は池袋にも良く出向く。もちろん池袋西口公園も良く知っているので、この作品の楽しさはまたひとしおだった。けれど以前の書評でも書いたのだが、このところちょっと、マンネリな感があった。すなわち、トラブルを抱えた者がマコトの元に転がり込み、マコトは義の名の下に池袋の「少年少女のキング」タカシの力と、地元暴力団の交渉部長で幼馴染のサルの力を借りてそのトラブルを解決し、悪い奴を懲らしめるという形。正直「またか」的な感があったし、もうこの物語はこれ以上成長はしないのかな、とも思ってしまったのだが。
石田さんが変わったのか作品が変わったのか、いや読み手の私が変わったのかはわからない。がしかし、確かに読感が以前とは確かに違うのだ。以前は何だろう、数ある東京の街の中でももっともディープな池袋の街の風俗を通して「若者たちの今」や「世俗の今」を描いている感だった。ああ今の若者たちはもう、こんな事になっちゃってるのか…的な。それが段々と変化してきて、今回のIWGPでは色んな面から子供たちを、子供たちの未来を守ろうという意識が感じられたのは私だけだろうか。
作品中で起こる事件は、今回もやはり池袋のディープサイドの事である。表題になっている「灰色のピーターパン」では、盗撮した携帯写真をDVDに焼いて、違法に販売している名門小学生の物語。
ここで訴えかけられているのは、決して「こんな世の中になっちゃったんだよ」という事ではない。そんないたいけな子供たちが、そんな事が出来てしまう、危うい世の中に警鐘をならしているのだ。その小学生に金の匂いを嗅ぎつけてたかる、悪しき少年たちが象徴的に描かれている。そしてやはり守ってやるのもまた大人。守ってやらねばならないのだ、と。そう作品は訴えかける。
また兄の膝と夢を壊され、復讐を依頼してきた少女には、「そんな事をすれば、お前もケダモノになっちうまうぞ」とマコトは話すのだ。作品を通して、世の中の子供たち全員にそう語りかけているように感じたのは、私だけだろうか。目線が一つ上、大人の目線になっている。そして、以前の作品より暴力的なシーンが極力削られている感。マコトの解決方法も、力技ではなく、知恵と工夫でといった感が強い。本作品では決して直接拳を振り上げたりはしない。悪意に憤ることもあるけれど、ぐっとこらえてスマートに事件に対峙していく。いやマコトは決して弱腰でもなく、ケンカが弱いわけでもない。過去の作品には何度か直接戦うシーンもあったはずだ。
・・・いやそうか。主人公のマコトが変わったのだ。第一作では高校を卒業したばかりの少年だったマコトも、本作ではハタチを超えていた。視線が少年から大人のそれに変わっていたのだ。なるほど、さすがである。主人公の成長に合わせて、性格はそのままに、立場と目線を変えたのだ。
池田小学校での惨劇を耳にした石田さんは、涙ながらに「約束」を書いたという。また「4TEEN(フォーティーン)」では14歳の少年たちの、大人との戦いと成長を描いていた。考えて見れば、いつもいつも石田さんの作品は子供たちの為に書かれていたように思う。拙いからこそ迷いも失敗もする。でもそうやって成長していくんだ、手を貸してやろう救ってやろうよというメッセージが、強く流れ出てくるのだ。そしてふと思い出す。あの頃の自分を。拙かった自分を。何をエラそうな事を、と自分を笑いたくなってしまう。
池袋ウェストゲートパークシリーズ。目を覆いたくなるような現実を描いた作品もある。でもそれが今で、現実なのだ。目をそらしちゃいけない、知らなくちゃいけない。そして守ってやらねばならない。この作品から得られるのもは、老若を問わずに大きい。誰にも読んで欲しい、現代の名作である。

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紙の本池袋ウエストゲートパーク

2003/08/08 01:52

気取らない街、池袋

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yurippe - この投稿者のレビュー一覧を見る

渋谷でも新宿でも六本木でもなく、池袋。石田衣良の筆は、縦横無尽に跳梁する池袋の住人を鮮やかに描出する。

「オンナのレベルは池袋が一番」とナンパな弟は言う。歌舞伎町を崇拝していた元カレは、いつの間にか「ブクロは横ノリ系の聖地だ」を口癖に、ズルズルファッションを纏(まと)い池袋の虜(とりこ)になっていた。どうやら流れは池袋らしい、と感じたのは数年前。今更ながら『池袋ウエストゲートパーク』を読んだ。

本書の主人公マコトは、池袋の西口公園(通称“ウエストゲートパーク”)近くに店をかまえる果物屋の一人息子。ダラダラと退屈な毎日を送るストリート・チルドレンの一人だが、抜群に機転の利く頭脳とイケてるルックス、街のギャングのヘッドにも一目置かせる人間的魅力の持ち主である。池袋の街を知り尽くし、強い愛着を持つマコトの元には次々とトラブルが持ち込まれる。マコトは、時に街のギャングを操り、時にヤクザを出し抜きながら、特殊技能を持った仲間たちとトラブルシューティングを成し遂げる。それは爽快な、珠玉の物語集なのである。

渋谷や新宿という街はアイデンティティが確立していて、その中で動く人物にはおのずと制限が加わる。お子様が幅を利かせる新宿や、海千山千の暴力団員がたむろする渋谷センター街には違和感があるだろう。渋谷や新宿には既成のイメージと街自身の持つ“タテマエ”があるのだ。だが池袋にはすべてが似合う。露出過多のコギャルも、大のヤクザが通りを闊歩する姿も、10代のチビギャングが繰り広げるストリート抗争も、あっけらかんとしたフーゾク嬢も、池袋の中ではみな居場所を持ち、存分に生きることができる。池袋には気取りがないのだ。

石田衣良は、いま一つ存在感の薄かったエアポケットのような大都会・池袋が発する声なき声を見事に聴き取り、スタイリッシュな物語に仕立てて見せてくれた。颯爽と街を駆け抜けるボーイズ&ガールズと、軽くて重い現代特有の病んだ事件の数々が、主人公マコトの軽妙な語り口を借りてグルーヴィに展開されていく。それはまだアイデンティティの確立していない池袋だからこそ、ありえたステージ。

「池袋ウエストゲートパーク」を読んでいる瞬間は、まさに新しい都市の誕生に立ち会っている瞬間である。

※続編の『少年計数機 池袋ウエストゲートパーク2』も、期待を裏切らない秀作である。

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紙の本Gボーイズ冬戦争

2010/11/16 15:59

最近見れなかった、キングタカシの躍動が見れる一冊。これは良い!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る

池袋ウェストゲートパーク(IWGP)シリーズの7作目にあたる本作、4つの短編からなっているのだけどその4編ともに良い出来。中でもバーンダウンザハウスと表題もなっている「Gボーイズ冬戦争」は、シリーズ中でも傑作の一つとしてあげてもいいと思う。
 一作目の「要町テレフォンマン」は、忌むべき犯罪者集団振り込め詐欺をテーマにしている。彼らのしている事は決して許されることでは無いし、絶対悪である。しかしもし彼らに言い分があるとしたら、少し聞いてみたいとは思わないだろうか。彼らなりの正義や信念があるのだとしたら、聞いてみたいと思わないだろうか。降り込め詐欺を辞めたがっている青年からの依頼。それはどうしてなのか、どうして止められないのか。青年の訴えに、マコトが動き出す。
 二作目も詐欺まがいをテーマにした物語「詐欺師のヴィーナス」。誰しも街角で、綺麗な女性に画廊での絵画展示会に積極的に勧誘された事があるだろう。それにひっかかった男の話。女の色仕掛けに、数百万のローンを組まされてしまった。そのあまりにひどい詐欺まがいの商法に、マコトが乗り出すのだけれど。女の話を聞いてみると、思わぬ社会の闇と女の暗い過去が見えてきて…。
 三作目の「バーンダウンザハウス」でも、現代社会の闇にスポットを当てる。過度の期待を背負わされた心優しき少年は、とうとうその重圧に耐えられなくなり、全てを焼き捨てる事を選んでしまう。家族が寝静まっている、自分の家に火を点けてしまうのだ。祖母が重度の火傷を追ったものの、父母は助かった。少年はまた家族と生活を、始めるのだけれど。その日から、また池袋の街で放火が続く。ボヤ騒ぎであるとはいえ、罪深き犯罪。また少年が疑われる。確かに少年は、夜な夜な外出を繰り返していたのだが。一体犯人は少年なのか。そしてマコトは、少年を色んな意味で救ってやる事が出来るのか。ぐっとくる。こういうお涙系の物語も、実は石田さんは非常に得意だったりする。
 表題にもなっている「Gボーイズ冬戦争」はボリュームも有り、読み応えたっぷりだ。池袋のガキ達の間では、絶対のキングタカシ。そのタカシに、怪しい「影」が近寄る。その「影」の陰謀で、Gボーイズの結束が崩されそうになっているのを嗅ぎ付けたマコトは、タカシに協力を言い出すのだが。友達ゆえ、当初それを拒むタカシ。そのタカシの態度に、マコトは激昂する。そして二人は、池袋の平和を乱す本当の影に戦いを挑む。
 面白かった、としか言いようも無い。何せIWGPシリーズは読後が気持ちよい。作中話で、キングタカシとサルとマコトが三人で花見に行こうなんて話をする。その姿を想像しただけで、ぐっときてしまうのだ。IWGPを知る人はみなそうだろうと思う。青年たちの真の友情は、舞い散る桜のように言葉も無く美しい。シンプルだけどそれゆえに硬く美しい友情を感じさせてくれる、シリーズでも傑作の一つだと思う。

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紙の本ペットショップ無惨

2023/09/30 23:19

もはや予定調和の物語展開が心地いいです。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る

IWGPシリーズももう18作目。1作目から読んでいる読者にとっては、池袋を舞台としたいつもの物語が展開する安心感がまずは好き。
しかし、テーマとなるのは、現代社会の課題であることは変わりなく。本作は、表題作のペットショップという業態に横たわる闇の話が、読んでいていちばん辛かった。
物語は、もはや予定調和スタイルになってしまったけれど、それでも、秋が来ると新刊が楽しみなのは、テーマが社会の闇を「トラブルシューティング」してくれるからなんだと思う。

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決して痛快なばかりではない。 依頼者と同苦する誠のハートに皆がついてくる。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る

池袋西口商店街の果物屋で店番をする真島誠の元に、今日も依頼人がやって来る。

誠の小学校のクラスメイト・和菓子屋の一人娘の小枝子は、区民アートギャラリーのトラブル。
食えないアーチストの一世一代の作品が何者かに壊される。

キングが持ち込んだ、信じられない金額を稼ぐユーチューバーのトラブル。
スマホ一つでなんでも繋がる。

決してマスクを取らない美少女のストーカーと美容整形にまつわるトラブル。
美しさって、何だ?

そして表題作のブラック企業。
価格破壊の向こう側は人格破壊か。
巧妙に組み上げられた搾取のシステムを突き破れ!

常に時代の最先端を泥臭く駆け抜ける誠と池袋の仲間達。

綺麗事ではすまない複雑なトラブルに知恵と人脈と胆力で立ち向かう。

誠が手にするのがPHSからスマホに変わっても、トラブルはなくならない。むしろ複雑になり、混沌とするばかりだ。

決して痛快なばかりではない。
依頼者と同苦する誠のハートに皆がついてくる。

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紙の本西一番街ブラックバイト

2023/06/20 09:27

決して痛快なばかりではない。 依頼者と同苦する誠のハートに皆がついてくる。

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投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る

池袋西口商店街の果物屋で店番をする真島誠の元に、今日も依頼人がやって来る。

誠の小学校のクラスメイト・和菓子屋の一人娘の小枝子は、区民アートギャラリーのトラブル。
食えないアーチストの一世一代の作品が何者かに壊される。

キングが持ち込んだ、信じられない金額を稼ぐユーチューバーのトラブル。
スマホ一つでなんでも繋がる。

決してマスクを取らない美少女のストーカーと美容整形にまつわるトラブル。
美しさって、何だ?

そして表題作のブラック企業。
価格破壊の向こう側は人格破壊か。
巧妙に組み上げられた搾取のシステムを突き破れ!

常に時代の最先端を泥臭く駆け抜ける誠と池袋の仲間達。

綺麗事ではすまない複雑なトラブルに知恵と人脈と胆力で立ち向かう。

誠が手にするのがPHSからスマホに変わっても、トラブルはなくならない。むしろ複雑になり、混沌とするばかりだ。

決して痛快なばかりではない。
依頼者と同苦する誠のハートに皆がついてくる。

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知恵と、人脈と、胆力で、複雑化するトラブルに挑んでいくマコト。 そこにあるのは、目の前にいる困っている人をほっとけないという、最も簡単で、最も難しい、大事な人としての生き方だ。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る

IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズの第13弾。

池袋西口の果物屋の青年マコトのもとへ、今日も行き場のない悩みを抱えて人が訪ねて来る。


毎年、新刊が出るたびに楽しみにして読んできた。

だが、一方で思う。読むのが年々つらくなっている。

毎年、マコトのもとを訪ねて来る人たちの悩みのが、深刻になり、複雑になり、取り返しのつかないレベルまできているからだ。

読み進めるうちに、やり場のない感情がこみ上げてくるのだ。


『滝野川炎上ドライバー』
真面目で地元で愛される宅配ドライバーの河本順治。人がいいばかりに知人の借金の保証人となり、離婚。離婚した妻の交際相手に引き取られた小学三年生の透の腕にある青いあざを、マコトは見つけてしまう。
児童虐待と、ネットにあふれる正義感からくる炎上。
「ネットができてから、おれたちは正義の力を行使するのに酔うようになった。誰もが指先ひとつで裁判官になれる時代になったのだから」


『上池袋ドラッグマザー』
「飛びおりるまえに谷底をのぞきこんでいるような目で」中学三年生の木崎真唯は、マコトと訪ねて来る。
「ママが別の人になってしまったんです」
普通の人の前に、当たり前の顔をしてやってくるドラッグの恐怖。


『東池袋スピリチュアル』
鰯の頭も信心から。
分かっていても、人は怪しげな「スピリチュアル」に手を出してしまう。
礼儀正しい女子大生の越川若葉には、見えるのだという。そこに居ないはずの「人」が。
そして、その「能力」に、IT企業の代表が目をつける。


『裏切りのホワイトカード』
Gボーイズのキング・タカシのもとに怪しげな儲け話が舞い込んで来る。
マコトは、日本有数の製薬会社をもつ財団の若き理事の潮見美穏に呼び出される。
「ブラックボード」(裏仕事の出会い系掲示板)を運営している弟・晴臣を探してほしいとの依頼。
出口、否、入口も見えていない迷宮に、マコトは仲間と乗り込んでいく。


知恵と、人脈と、胆力で、複雑化するトラブルに挑んでいくマコト。

そこにあるのは、目の前にいる困っている人をほっとけないという、最も簡単で、最も難しい、大事な人としての生き方だ。

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紙の本裏切りのホワイトカード

2023/03/31 10:12

出口、否、入口も見えていない迷宮に、マコトは仲間と乗り込んでいく。

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IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズの第13弾。

池袋西口の果物屋の青年マコトのもとへ、今日も行き場のない悩みを抱えて人が訪ねて来る。

毎年、新刊が出るたびに楽しみにして読んできた。

だが、一方で思う。読むのが年々つらくなっている。

毎年、マコトのもとを訪ねて来る人たちの悩みのが、深刻になり、複雑になり、取り返しのつかないレベルまできているからだ。

読み進めるうちに、やり場のない感情がこみ上げてくるのだ。

『滝野川炎上ドライバー』
真面目で地元で愛される宅配ドライバーの河本順治。人がいいばかりに知人の借金の保証人となり、離婚。離婚した妻の交際相手に引き取られた小学三年生の透の腕にある青いあざを、マコトは見つけてしまう。
児童虐待と、ネットにあふれる正義感からくる炎上。
「ネットができてから、おれたちは正義の力を行使するのに酔うようになった。誰もが指先ひとつで裁判官になれる時代になったのだから」

『上池袋ドラッグマザー』
「飛びおりるまえに谷底をのぞきこんでいるような目で」中学三年生の木崎真唯は、マコトと訪ねて来る。
「ママが別の人になってしまったんです」
普通の人の前に、当たり前の顔をしてやってくるドラッグの恐怖。

『東池袋スピリチュアル』
鰯の頭も信心から。
分かっていても、人は怪しげな「スピリチュアル」に手を出してしまう。
礼儀正しい女子大生の越川若葉には、見えるのだという。そこに居ないはずの「人」が。
そして、その「能力」に、IT企業の代表が目をつける。

『裏切りのホワイトカード』
Gボーイズのキング・タカシのもとに怪しげな儲け話が舞い込んで来る。
マコトは、日本有数の製薬会社をもつ財団の若き理事の潮見美穏に呼び出される。
「ブラックボード」(裏仕事の出会い系掲示板)を運営している弟・晴臣を探してほしいとの依頼。
出口、否、入口も見えていない迷宮に、マコトは仲間と乗り込んでいく。

知恵と、人脈と、胆力で、複雑化するトラブルに挑んでいくマコト。

そこにあるのは、目の前にいる困っている人をほっとけないという、最も簡単で、最も難しい、大事な人としての生き方だ。

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人生は困難の連続。 戦った分しか成長しない。 マコトたちは今日も池袋で生き抜いていく。

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池袋西口商店街の果物屋の倅マコトのもとに、今日も人がやってくる。
誰にも相談できない難問を抱えて。

金もない。
学歴もない。
彼女もいない。

だが彼には仲間がいる。
困難に立ち向かう胆力がある。
そして温かいハートがある。

街を歩き、仲間と語り、音楽に耳を傾け、知恵と勇気を振り絞っていく。

救いようのないように見えるトラブルに取り組む青年たちを描いた第14弾。


スキャンダルにハメられた人気若手俳優。
我々はいつまで人のスキャンダルで楽しめばいいのか--「泥だらけの星」
(BGMは、オネゲルの「ヴィオラ・ソナタ」)

救いようのない格差社会と貧困。抜けられない負の連鎖。
今、出来ることとは?--「鏡の向こうのストラングラー」
(シューマンのピアノ曲「クライスレリアーナ」)

見えないはずの闇を照らしてみればそこには。
心こそ大切なれ。--「幽霊ペイントハウス」
(ベートーヴェンのピアノトリオ「幽霊」)


「いいね」が人を殺す。
「いいね」によって、人が死ぬ。
21世紀のハーメルンの笛吹き男--「七つの試練」
(モーツアルトの交響曲第39番。フランシス・ブーランクの「フルート・ソナタ」。ベートーヴェンの交響曲第4番)

「誰に報告することもなく、自分なりの考えと勘で動く。つかえるのは池袋の街に広がる人のネットワーク。トラブルを抱えていないときは、おれは半分しか生きていないのかもしれない」(P166)

人生は困難の連続。
戦った分しか成長しない。

マコトたちは今日も池袋で生き抜いていく。

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電子書籍池袋ウエストゲートパーク

2022/12/18 15:31

知恵は現場に。 勇気は我が胸に。 絶望の中でも、ホンの少しでも前進めば、希望はある。

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池袋駅西口の果物屋の倅マコトのもとに、苦悩に喘ぐ人々がやってくる。

池袋のトラブルシューターにしてコラムニストの奮闘記第15弾。

金もない。
恋人もいない。

勇気と智恵で、仲間と共に、救いようのない底なし沼のような現実に挑んでいく。

〇目白キャットキラー

虫唾が走る残虐な動物虐待に挑む対人恐怖症でベジタリアンの高校生。

「男も女も関係ないよな。人間なら誰だって、ガッツを見せなきゃならないときがある。そんなときは、死にたくなるなるほどつらくとも胸を張らなきゃいけない。工業高校卒のおれにしたら、まだ十七歳のガキにいい勉強をさせてもらったとは思わないか」

BGM「子猫のワルツ」(ショパン)

〇西池袋ドリンクドライバー

池袋の無法運転に立ち向かう夫婦。
7年前に、我が子がひき逃げで犠牲になっていた。

仕事を捨て、毎朝現場に立ち学童擁護員をしながら、迷宮入りした真実を追い続ける。

たどり着いたのは思いもかけない結末だった。

「宮沢賢治みたいに日本の異常気象に負けず、どんな天気でも朝の七時から街に立つのだ。おれたちの世界には思ってもみないところで超人的な活躍をしている人間があちこちにいるというわけ。ヒーローは子どもだましのアメコミ映画のなかだけにいるんじゃない」

BGM「人生を楽しめ」(ヨハン・シュトラウス二世)

〇要町ホームベース

高一から10年間引きこもっているシゲルからの長文メール。
読むのが面倒になったマコトは電話をかける。

母ひとり子ひとりという同じ境遇にひかれ、10年閉ざされた重くて厚い壁を開けに行く。

引きこもりとその家族を食い物にする悪質ビジネスに二人は立ち向かう。

マコトの店に、ダンボールを回収に来る福祉施設で働く「みっちゃん」。

彼には軽い知的障害と少々のこだわりがある。

「引きこもり」がシゲルの苗字と思い込んでいる。

「十年引きこもろうが、お前が誰だろうが、みんな気になんかしないぞ。シゲル、そろそろ独房を出てもいいころだろ」

別に気合いを入れた台詞ではなかった。メロンってうまいよな。それくらいのつもり。

だが、それをきいたシゲルが食べかけの串をもったまま爆発的に泣き出した。みっちゃんが困った顔をして、シゲルの頭をなでた。

「マコトさん、弱い人をいじめたらいけません。そんなことを施設でしたら、先生に怒られますよ」

黄色づくめのみっちゃんが、シゲルの背中をなでながら、声をかけ続ける。

「引きこもりさんは、いい子です。引きこもりさんは、いい子です。だから、泣かないで。ぼくまで泣きそうになります」

泣きべそをかいているみっちゃんと馬鹿みたいに涙をこぼすシゲルを見ていて、なぜかおれまで泣きそうになった。

うちの店先で涙なんて見せることは断じてできない。おれはアンデスメロンの残りをくい切ると、棒を捨てるふりをして店の奥にいき、涙を拭った。

BGM「シンデレラ組曲」(プロコフィエフ)


〇絶望スクール

無国籍居酒屋を経営するマコトの同級生にして元Gボーイズの特攻隊長キミア。

彼の店で旗ベトナムからの女子留学生ミン。

太陽ような彼女の笑顔が消えた理由を探り、マコトの仕事が始まる。

留学生の夢と希望を搾取するブラックビジネススクール。

BGM「日本狂詩曲」(伊福部昭)

他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはいけない。

見えないところで誰かをディスる暇があったら、目の間の人に今何ができるか考え動く。

知恵は現場に。
勇気は我が胸に。

絶望の中でも、ホンの少しでも前進めば、希望はある。

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