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9件
父の詫び状
著者 向田邦子 (著)
宴会帰りの父に叩き起こされて夢うつつに土産を食べる福助頭の弟、母に威張り散らす父の声、転校した初日に教室に向かう気持ち、来客の多かった我が家の忙しい正月、温かいおひつの上で泣き泣きやった学校の宿題、おやつに食べた懐かしい“ボールとウエハス”、銀座に出かける日のおめかし、途中までは大成功だった初アルバイト、黒い服ばかり着るので黒ちゃんといわれた若い日々……昭和の「懐かしい家庭」を卓越した記憶で鮮烈にユーモラスに描く、向田邦子の第一エッセイ集。
父の詫び状
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父の詫び状 新装版
2015/11/18 21:43
天才
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
テレビドラマを手掛けながら、本も書く。今でこそ山田太一氏ら両刀使いは増えてきたが、向田さんは、その先駆けであり、しかも図抜けた存在である。とにかく、上手いとしか言いようがない。「父の詫び状」は、特にオチが素晴らしく、著書の第一作から凄いレベルだと感心させられる。肝心のオチを書くわけにいかぬのが、辛いところ。
父の詫び状 新装版
2021/03/08 11:03
笑った!
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジミーぺージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は昭和31年生まれです。
このエッセイは、若い人には分からない面白さが多分にあります。
向田邦子さんは私の父と同じ昭和4年生まれです。
なので、私の生まれ育った昭和とはいくぶん時代が違うと思うのですが、
それが全く同じ時代を生きたかのように一つになれます。
昭和という時代はそうなんですね。
当時の日本人の有り様も貧困さも慎ましさも温かさも同じなのです。
こんなにノスタルジーを感じた作品はありません。
私と同世代のひとに是非読んで欲しい作品です。
何度も吹き出して笑いました。
父の詫び状 新装版
2022/08/23 15:50
手元に置くなら文春文庫で
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
8月22日は
作家向田邦子さんの忌日「木槿(むくげ)忌」でした。
向田邦子さんが台湾での飛行機事故で亡くなったのは
1981年(昭和56年)8月22日でしたから
もう40年以上前になります。
向田さんの忌日を「木槿忌」と呼ぶのは、
向田さんと親交のあった山口瞳さんが
急逝した向田さんを偲んで綴られたエッセイにちなんだもの。
向田邦子さんは
脚本家として名を成し、
その後エッセイスト、そして作家となった。
直木賞を受賞したのは亡くなる前年、1980年だから
もし、亡くならなければどんな作品を残しただろうと
多くの人が悔しがった。
その向田さんの最初のエッセイ集がこの『父の詫び状』。
初出は「銀座百点」という雑誌で
1976年から1978年にかけて掲載されたもの。
単行本になったのが1978年秋。
掲載終了後まもなくだった。
そして、文春文庫に入ったのが、
亡くなった1981年12月で、
文庫化に際し、向田さんはその解説を
まだ若い書き手だった沢木耕太郎さんを指名する。
沢木さんは向田さんの期待に応えるべき、
文庫解説としては長い文章を綴っていく。
そして、ようやくその仕事にめどがついた8月22日、
沢木さんは向田さんの突然の訃報に接することになる。
文春文庫版の『父の詫び状』は
向田邦子さんの第一エッセイ集という誉れと
エッセイとしての読み応えのある愉しみと
それを最後に見送ることになった
沢木耕太郎さんの慟哭がつまった、
本としても貴重すぎる一冊といえる。