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18件
ハンチバック
著者 市川沙央
私の身体は、生き抜いた時間の証として破壊されていく
「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」
圧倒的迫力&ユーモアで選考会に衝撃を与えた、第128回文學界新人賞受賞作。
打たれ、刻まれ、いつまでも自分の中から消えない言葉たちでした。この小説が本になって存在する世界に行きたい、と強く望みました。
――村田沙耶香
小説に込められた強大な熱量にねじ伏せられたかのようで、
読後しばらく生きた心地がしなかった。
――金原ひとみ
文字に刻まれた肉体を通して、
書くという行為への怨嗟と快楽、
その特権性と欺瞞が鮮明に浮かび上がる。
――青山七恵
井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。
両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす――。
ハンチバック
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ハンチバック
2023/08/16 18:48
問われているのは私たち
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第169回芥川賞受賞作。(2023年)
作者である市川沙央さん自身が重度の障害者であることから、多くの注目を集めた作品である。
描かれた作品の主人公もまた重度の障害者で、「私はせむしの怪物だから」と作中に出てくる。「せむし」という言葉に「ハンチバック」というルビがつけられ、それがタイトルにもなっている。
それを自虐と呼ぶか、突き放した言い方というか、微妙だし、そのことの微妙感がこの作品をどう読むかという境界線ではないだろうか。
障害を持った主人公の女性が「妊娠と中絶をしてみたい」と願うことは、障害者である前にまず人間としてありたいという実に単純なことだ。
つきつめれば、これは人間の本質が書かれた作品だといえる。
男だろうが女だろうが、健常者だろうが、障害者だろうが。
だから、作者が障害者だから書けた作品には違いないが、書き手として想像の翼を広げれば書きえた作品ともいえる。
芥川賞の選評で、平野啓一郎氏が「当事者性が濃厚な作品だが、(中略)今後の自由な展開の期待」と書いていたが、おそらくそれこそ市川さんの受賞の大きな意味だろう。
多様性を認めうる社会にあって、市川沙央さんの作家性は必ず求められるはずだ。
ただ、その一方で過激な性描写について、松浦寿輝氏が書いているように「露悪的表現の連鎖には辟易」という意見には私も同じだ。
そこまで表現することがあったのかと思わないでもない。
2024/07/14 10:47
ショックを受けた
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
電子書籍よりも紙の本が好きなわたしはショックを受けた。そうか、このこだわりも本の重さに苦しむ人には思い上がりなのか。
著者の実体験をも思わせる生々しい記述に圧倒されつつ、虚構であると解っている文章の達者さにも息を呑み、最後にあれ? どこまで騙されたている? と驚かされる。
読み手を驚かせ、楽しませる著者の力量と人生を見詰める冷徹な視線に、感じ入った。
2024/10/23 11:46
抜きん出た才能を感じる
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞受賞作ですが、予想以上に現代文学でした。読み手を想定してないような最新の用語を惜しげもなく並べているかと思えば、古典的文学かと思うほど重厚な深い文章があったりで、その辺りは一種抜きん出た才能だと思いました。生々しさという点でも突き抜けていて、病気や精神状態の描写に制限なく、ある意味非常に丁寧に描かれていると感じました。この作品の本質を理解するには至りませんでしたが、さすが芥川賞に選ばれるだけの作品だとは思いました。