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3件
うるさいこの音の全部
著者 高瀬隼子
小説と現実の境目が溶けはじめる、サスペンスフルな傑作
嘘だけど嘘じゃない、作家デビューの舞台裏!
「おいしいごはんが食べられますように」で芥川賞を受賞した高瀬隼子さんが挑む新たなテーマはなんと「作家デビュー」。
ゲームセンターで働く長井朝陽の日常は、「早見有日」のペンネームで書いた小説が文学賞を受賞し出版されてから軋みはじめる。兼業作家であることが職場にバレて周囲の朝陽への接し方が微妙に変化し、それとともに執筆中の小説と現実の境界があいまいになっていき……職場や友人関係における繊細な心の動きを描く筆致がさえわたるサスペンスフルな表題作に、早見有日が芥川賞を受賞してからの顛末を描く「明日、ここは静か」を併録。
うるさいこの音の全部
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2025/04/10 08:50
うるさいこの音
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はぐらうり - この投稿者のレビュー一覧を見る
創作ではあるものの小説家のジレンマが描かれていてとても面白かった!作中作があるし、私小説風でもあるし、僕の好きな「分人」の話でもあると思ったので、要素が盛りだくさんだった。読者として少し気まずさも感じるが、心地よい感じもあった。
うるさいこの音の全部
2023/12/06 16:29
高瀬隼子さんは何処へ向かおうとしているのだろう
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新人作家として注目を集め出した女性、朝陽。
ただし、彼女はペンネームを使う。それが有日。
朝日はゲームセンターで正社員として働いている。
まわりの人たちは彼女が作家であることを知って、少しざわついている。
しかし、作家なのはもう一人の女性、有日。
つまり、ざわついている対象は有日のはず、だと朝陽は思っている。
そんな彼女が2作めとして執筆している作品と、
それを書いている朝陽の暮らしを二重写しのようにして描かれているのが、
表題作でもある中篇『うるさいこの音の全部』。
(相変わらず高瀬隼子さんのタイトルは絶妙)
そして、その執筆していた作品がなんと芥川賞を受賞し、
その騒動のなかで朝陽と有日が微妙にずれていく姿を描いた
短編『明日、ここは静か』を収めたのが、この本。
高瀬さん自身、2022年に『おいしいごはんが食べられますように』で
第167回芥川賞を受賞しているから、どうしてもこの2篇の作品を読むと、
高瀬さん自身の実体験によるものかと考えてしまう。
読者は時に小説に描かれた人物やものごとが
作者とその周辺のことと同一化してしまうものだから、
高瀬さんにもこの作品で描かれたようなことがあったのかもしれない。
そもそも現実の世界で生活を営む人間と物語を紡ぎだす人間は
同じ世界の中に存在しうるのだろうか。
本当と嘘。
この世界が本当で、物語で描かれるのが嘘、なんていうことで割り切れるのだろうか。
そんな世界を描いて、高瀬隼子という作家は何処へ向かおうとしているのだろう。
2024/10/03 11:10
わたしにも近い体験が
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタばれ
高瀬氏は「おいしいごはんが食べられますように」で第167回(2022年上半期)芥川賞を獲得している、残念ながら私は未読。表題作と「明日、ここは静か」は2023年に発表されたもの。作品の内容はゲームセンターの正社員・長井朝陽がある文学賞の新人賞を獲得してから(作者も芥川賞の3年前、すばる新人賞を獲得している)、職場や地元の母親たちの態度が変わってきてという「うるさい・・・」とゲーセンを舞台にした作品で芥川賞を獲ってしまった「明日、・・・」の連作になっている。冒頭は「作者の大学生時代の思い出かな思っていたら、それは主人公が書いている途中の小説だった、主人公がボツにしてしまったササキさんという大学生時代の友人とのエピソード、同じような経験がある私にとっては苦いものだった、彼は今、息才なのだろうか、ということも確認できない私