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11件
改訂完全版 異邦の騎士
著者 島田荘司
失われた過去の記憶が浮かび上がり、男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活に忍び寄る新たな魔手。名探偵・御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリー『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。
改訂完全版 異邦の騎士
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異邦の騎士 改訂完全版
2002/07/10 06:48
良子の思い出
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カレン - この投稿者のレビュー一覧を見る
数ある島田作品中で最も人気があるうちの一作。
かくいう私も大好きです。
何度読み返しても、主人公と若き日の御手洗とのやりとりに笑い、ふたりの心の交流には胸が震えるし、最後のシーンには顔が涙でぐしゃぐしゃになるくらい泣いてしまう。
なかでも好きなシーンは、良子が綱島の駅でじっと帰りを待っているところ。島田荘司は憐れみの伴った愛情を書かせると本当にうまい。とにかく感情がリアル。主人公は、良子の、ステレオの使い方がわからず、ずっとレコードをイヤホンで聞いているような不器用さに、つきあげてくるようないとおしさを感じる。こういう思いは誰でも一度は体験しているのではないだろうか。
そして、御手洗と主人公が、ビートルズが好きということがわかって、レコードをどんどん聴いていくところ。違う世界に属する人々の中にあって孤独だった主人公が体験する、わくわくするような胸のときめき。魂の交流。
このあとがきで、著者が若いころよく詩を書いていたことを知った。
それであんなに叙情的で美しい、市場あふれる作品が書けるのかと納得。
このあとがきは、それ自体ひとつの独立したエッセイとして秀逸なので、島田ファンには絶対に読んでほしい。
2021/08/14 15:20
御手洗シリーズ第三作 原点たる傑作
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
記憶喪失の青年は助けてくれた女性を愛するようになり、充実した生活を送っていた。だが、思い出せない過去が幸せに影を落とす。そこには犯罪の気配が……
名探偵・御手洗潔シリーズの第三長編。作中の時系列では占星術殺人事件より前の事件となり、また原型作品の執筆も『占星術殺人事件』以前のため、シリーズの原点といっていい作品。著者の作品の中でも特に人気の高い一編で、読者の人気投票で一位となったこともある名作です。御手洗の人となりを把握してから読んでほしいので『占星術殺人事件』(できれば『斜め屋敷の犯罪』も)を読了してから手に取ることを強くお勧めします。
哀切に満ちたラブストーリーであり、巻置く能わぬサスペンスであり、御手洗潔の奇人ぶりと明察を堪能できるミステリ―でもある本作、読み逃し厳禁です。
文庫版には、島田荘司のデビュー前の日々を回想するエッセイが付記。こちらも琴線に触れる名文です。
異邦の騎士 改訂完全版
2018/03/04 12:04
著者に『怒』
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやぁすごかった!改訂前を知らず、どこが変わったかは分かりませんが、これを読めば御手洗がめっちゃ好きになります。シリーズ第1作とのことですが、主人公のことを考えると、逆に最初に読まなくて、何作か読んだ今で良かったと思いました。一方で良子が気の毒で、こんな結末にした島田さんに『怒』。みんな幸せにしてほしかったと思います。