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ミミズクと夜の王
著者 著者:紅玉 いづき , イラスト:磯野 宏夫
魔物のはびこる夜の森に、一人の少女が訪れる。 額には 「332」 の焼き印、両手両足には外されることのない鎖。 自らをミミズクと名乗る少女は、美しき魔物の王にその身を差し出す。 願いはたった、一つだけ。 「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」 死にたがりやのミミズクと、人間嫌いの夜の王。 全ての始まりは、美しい月夜だった。 ―― それは、絶望の果てからはじまる、小さな少女の崩壊と再生の物語。
鳥籠巫女と聖剣の騎士
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毒吐姫と星の石
2010/11/21 00:43
姫として育てられなかったお姫さま
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
星占いで政治を決める小国ヴィオンに姫として生まれたエルザ・ヴィオンティーヌは、誕生して直ぐに下町に捨てられる。占いで凶兆が出たという理由で。呪いの姫と噂されながら、全てのものに毒を吐くことで生活の糧を得て生きて来たエルザは、ある日突然、王宮に連れ戻される。再び占いにより、夜の王の住まう森の近くにある聖剣の国レッドアークの異形の王子に嫁ぐことが決まったというのだ。
生まれてから一瞬たりとも王族としての暮らしを経験することも無く、寒さと飢えにさらされて生きて来たエリザは、毒を吐けないように魔法で声を封じられ、無理矢理に輿入れすることになる。そこで出会った王子、クローディアス・ヴァイン・ヨールデルタ・レッドアークの手足に付与された夜の王の魔力により声を取り戻した毒吐き姫は、ディアを拒絶し逃げ出そうとする。
そんな彼女を受け入れ、自由に過ごさせるディアや、聖騎士アン・デューク・マクバーレンやその妻で聖剣の巫女であるオリエッタに触れるうちに、彼女にも少しだけ変化が見えてくる。そんなとき、彼女を捨てた国ヴィオンに政変が起きる。
星と神の運命において、という聖句により翻弄されて生きてきたエルザは、姫としての権利を受け取ることもなく、国のために人生を捧げるという、王族の統治システムの中に組み込まれてしまった。
一方、彼女が嫁ぐレッドアークの王子ディアは、呪われた四肢を持ち監禁されて過ごした過去を持つ。そんな彼が王子として立ち、国と民を護るという覚悟を見せることで、何不自由ない生活には代償が必要とされるのだ、という王族の常識をエルザに背中で語っていく。
生まれて直ぐに捨てられ、何の拠り所もなく、ただ自らの言葉のみを武器として生きてきたエルザ。しかしその言葉が多くの人の運命まで動かしかねない立場と一緒になった時、何も怖れるものはなかったはずのエルザに初めて畏れが訪れる。
これは王女として生まれながら、王女として育てられなかった少女が、運命を左右した占いの代わりに信じられる人を知り、王族として生まれ変わる物語であると思う。「ミミズクと夜の王」の続編。
2021/07/23 12:58
見事な幻想ファンタジー
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
切なくも、勇気が出てくるような美しきファンタジー。魔物も人間も同じように愛を受けて育ち、愛に惹きつけられるのだなあとあらためて思いました。前半ミミズクの立ち位置がよく分からず、霧に包まれたようなふわふわした物語だと感じましたが、途中でいろんなことが明確な形を表してきた頃からグッとこの物語に引き込まれました。ディアとミミズクの心温まる交流からクライマックスにかけての流れはとても印象深かったです。
2020/07/22 23:10
今この時しか書けない小説
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りー - この投稿者のレビュー一覧を見る
若書きと言えば若書きだし、誰しもに裏表もなく直球勝負の作品だけれど…、いや、だからこそ大人の顔の奥深くにしまい込んでいた子供時代の心にスッと届くような素敵な物語だった。子供から大人まで幅広く楽しめる現代の寓話。