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5件
ぼく東綺譚
著者 永井荷風 (作)
取材のために訪れた向島は玉の井の私娼窟で小説家大江匡はお雪という女に出会い,やがて足繁く通うようになる.物語はこうして、ぼく東陋巷を舞台につゆ明けから秋の彼岸までの季節の移り変りとともに美しくも,哀しく展開してゆく.昭和十二年,荷風(一八七九‐一九五九)五十八歳の作.木村荘八の挿絵が興趣をそえる. (解説 竹盛天雄)
ぼく東綺譚
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濹東綺譚 改版
2019/03/21 21:58
永井氏のような生涯に憧れたりもする
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
墨東奇譚が書かれたころの永井氏は、全集が発売されたこともあって懐は温かだったらしい。若いころから外遊をしたり、女を買ったりという放蕩三昧だった彼は、この作品が朝日新聞に連載されていたころ(もう50歳をこえていた)も芸者から新しい女給や私娼にと興味は変わっていってもそういう堅気の女性ではない人しか好きになれないひとだったようだ。墨東というのは、永井氏によると隅田川の東岸にあたる地域で、彼の愛した私娼が住んでいたの玉乃井もその地域だったらしい。「作者贅言」も当時の銀座の風景、風俗が想像できて楽しい
濹東綺譚 改版
2021/07/13 23:26
墨東奇譚
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の大江匡は小説家らしく、作中で「失踪」と言う小説を書いている。つまり箱のような構造になっているわけだが、この「失踪」と物語は奇妙にリンクしていく。大江は自分の生活から観察した事を作品に反映させるようだから当たり前といえば当たり前なのだが、互いに足りないところを自然に補い合っているようで、作中人物の心理なども良く分かる。
大江は、ラジオや活動映画に代表されるモダンな文化に嫌悪を感じ、玉の井の私娼などと好んで会うのだが、そういった場所の女たちは金を持ったら良い客と所帯を持ちたいと考える。
しかし大江はこういった場所の女と所帯を持った事も何度かあるが、いずれもうまくいかないので、女とは最初から所帯を持たない、そういった希望を持ったら関係を断つということを繰り返す。ここが本書に批判が寄せられる点で、いわゆる世間で「悪所」と呼ばれる場所に同情を持っているように見せかけて、生活を共にしないなど本気で向き合おうとしていない遊びだけの姿勢だと批判する意見もある。私はそこまでする必要があるのか、小説の形だけでもそうすることは却って偽善ではないかと考えるが。
それはそれとしても、この小説再々の魅力は古風な言い回しと言葉遣いだろう。私はこういった言葉遣いを懐かしいと感じるような時代に生れていないが、それでも時々読み直したくなる一冊である。
濹東綺譚 改版
2020/11/30 17:58
やっと読む機会が訪れました
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るい - この投稿者のレビュー一覧を見る
多田蔵人教授の荷風追想を読み、この著書へ。
多田蔵人先生が講師でいらっしゃる会で学ぶ機会があり、荷風追想を手にして、この著書へ。
高校の時に、荷風のお話を聞く事はあってもずーっと読むことなくきました。
荷風追想で、こういう方となんとなく掴んで読んだので、スーッと入って行きました。
こういう時代、世界があった事に触れて、自分がその時代に生きても縁のなかったであろう世界を垣間見る面白さがありました。
高等遊民の主人公の生活、自分が高等遊民であれば、女性の当時の高等遊民のお話も読んで観たい、そういう事を思いました。
お雪は、生きていく上で頭の良い女性で、自分の人生を切り開いていき、未来は明るいだろうと感じました。
再度、ゆっくり読んでいます。