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3件
墨汁一滴
著者 正岡子規
明治三四年,子規三五歳.重い肺結核の症状に喘ぎながら,『松蘿玉液』に続き,新聞『日本』に連載(一・一六―七・三)した随筆集.多様多彩なテーマが,みずみずしくユーモアにあふれた筆致で綴られ,子規の精神に拡がりと深さが鮮やかに立ち現れる.近代文学の巨星=子規が随筆家としての真骨頂を発揮した書. (解説 粟津則雄)
墨汁一滴
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墨汁一滴 改版
2019/01/26 23:31
正岡子規って、面白くて怖い人
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞「日本」に連載された子規の随筆集。誤った漢字を使う人が多いことを嘆いたり(読者にその誤りの指摘が誤りであることを指摘されたこともあったようだ)、季語というのは太陰暦と太陽暦のどちらで決めればいいのか判らないと嘆いたりといった日本語を大切にする人らしいことから、漱石は稲から米ができることを知らなかったたんだよとかいったこぼれ話や、「だらだらくだらない句をたくさん送りつけるな、初めの2、3句でこいつはだめだとすぐ判断できるから」という辛口コメントが面白い。なかでも歌人・落合直文の短歌を立て続けに添削しまくる(コテンパンに貶しまくる)ところは笑える。この時、落合氏はどう思っていたのだろうか
墨汁一滴 改版
2017/04/27 05:49
子規三大随筆はここからはじまる
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年(2017年)生誕150年を迎える正岡子規。
友人夏目漱石の方が有名なので、同じ年の生まれながら、漱石に比して大きく取り上げられることも少ない。
けれど、子規が残した功績は漱石よりも大きいかもしれない。
俳句という世界において。短歌という世界において。そして、何よりも近代の日本語という世界において。
子規には三大随筆と呼ばれる作品がある。
最初に書かれたのがこの作品(1901年)で、続けざまに『仰臥漫録』を発表、次の年に『病床六尺』を書いた。
もっとも、子規の命はそこで尽きる。
1902年9月19日。34年の短くも濃い人生であった。
この作品の執筆時にはすでに病魔は深く入り込んで、しばしばその苦痛を綴っている。
連載始まって間もない1月23日に「病床苦痛の堪へずあがきつうめきつ身も世もあらぬ心地なり」とある。
4月23日には「盛んにうめき、盛んに叫び、盛んに泣くと少しく痛が減じる」と綴る。
この日の記述は短いから苦痛は余程であったのだろうが、短いながらも文章のリズムがすこぶるいい。
子規にはその病ながら妙に明るいところがある。そして、そのあたりが漱石とは違う、人気の源泉だと思う。
その漱石のことをこの随筆の中で何度か綴っている。
1月30日には漱石の滑稽趣味を褒め、それは真面目な性格に起因しているとしている。
あるいは、5月30日には漱石は米の苗を知らなかったと暴露している。
色々な読み方ができるのも、子規の随筆の特長でもあり、その萌芽はすでにここにある。
墨汁一滴 改版
2016/03/08 04:59
『墨汁一滴』
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:シエル - この投稿者のレビュー一覧を見る
子規の随筆。
先の仰臥漫録』と同様に病床での記録であり、随筆だ。
子規に当たっては舌鋒鋭く観察者としての目を持ち、句論については判断できないが非常に面白く読める。
随筆家家として充分に面白く読める一冊だ。
『仰臥漫録』では最晩年の病床にあってもがき苦しむ様が強調されていたけれど本書ではそれもかなりあるが旧を思い返しての試験でのカンニング行為など今では大いに問題になる文章もある。
逆にそれが本書の面白さを引き立てている感じもするが、所謂表の歴史には出てこない子規の人間味溢れる一面を見る気がする。
病状の悲惨さは確かに深刻で死の前年の文章だけにその惨たらしさも伝わってくるのだが若くして逝った俳人の(廃人ではない)生を伝える文章だと思う。
古い文章だから今時の人には少々読み難いかもしれないが二読三読すれば意は通じる。
そんなに難しい文章ではないし、随筆だから