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兄の終い
著者 村井理子(著者)
一刻もはやく、兄を持ち運べるサイズにしてしまおう。
憎かった兄が死んだ。
残された元妻、息子、私(いもうと)
――怒り、泣き、ちょっと笑った5日間。
「わたくし、宮城県警塩釜警察署刑事第一課の山下と申します。実は、お兄様のご遺体が本日午後、多賀城市内にて発見されました」――寝るしたくをしていた「私」のところにかかってきた1本の電話。それは、唯一の肉親であり、もう何年も会っていなかった兄の訃報だった。第一発見者は、兄と二人きりで暮らしていた小学生の息子・良一君。いまは児童相談所に保護されているという。いつかこんな日が来る予感はあった。金銭的にも精神的にも、迷惑ばかりかける人だった。二度目の離婚をし、体を壊し、仕事を失い、困窮した兄は、底から這いがることなく、一人で死んだのだ。急なことに呆然としている私に刑事は言った。「ご遺体を引き取りに塩釜署にお越しいただきたいのです」
兄は確かに優しいところもある人だった。
わかり合えなくても、嫌いきることはできない。
どこにでもいる、そんな肉親の人生を終う意味を問う。
遺体を引き取り、火葬し、ゴミ屋敷と化している兄のアパートを整理し、引き払う。そして、何より、良一君の今後のことがある。兄の人生を終うため、私(いもうと)、元妻(加奈子ちゃん)、そして息子(良一君)の5日間の修羅場が幕を開ける。
兄の終い
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兄の終い
2020/10/09 14:14
普通でも大変な見おくりなのに、この怒涛ぶりには驚愕。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
生前は兄妹なのにうまくいかなかった。...というより嫌っていたその兄が突然死した。帯の言葉や著者のことばをSNSで見てたから知ってたけれど、そこから始まる物語はかなりヘビー、そしてダーティ。残された小学生の息子のココロのケアと引き取りの手続き、ゴミ屋敷のごとくになっていたアパートのかたずけ、そして兄のみおくりのこと。それらが、怒涛のようにやって来た。
兄の元妻にその娘、父方の伯母、一緒に乗り越えるひとがいてよかったなとまずもって思う。著者の村井さんは、兄を見おくる苦労を乗り越えながら、うまくいかなかった関係も心の中で解消させる。読者は、一緒に驚いたり、悲しがったり、困ったりしながら、最後、ココロからホッとするのである。
2020/05/12 17:45
残されたものたちの困惑
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
疎遠になっていた兄の、突然の訃報に翻弄される著者の本音が滲み出ています。義理の姉、甥っ子との微妙な関係と、愛憎半ばする家族の形も忘れ難いです。
兄の終い
2023/11/09 19:36
作者様と兄の元嫁様にエールを
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
ぐいぐい引き込まれて、一気に読んだ。
この怒涛の勢いと理路整然とした流れは、
作者様の怒涛の5日間と同じ激動だったに違いない。
家族に対する思いも書かれていたが、
内容に対してあっさりとした記載なのは、
そこで感情に任せている暇もないほど
なすべきことが多かったこと、
それが不慣れな土地での初めて尽くしのことだったことと、
身内に対する思いに向き合うのが辛かったからだと思う。
家族を守るために兄を遠ざけてきた彼女にとっては、
次男くんの「悲しいとかないの?たった一人のお兄さんやろ?」
という言葉は、報いであるかもしれないが、同時に
報われた証ではなかったろうか。
家族が亡くなるのは悲しいのが当然と
思える子に育っているということは、
温かい家庭を築いてきたことの証明だ。
負の連鎖を止めた作者様と兄の元嫁様にエールを送りたい。