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8件
あの日、松の廊下で
著者 著者:白蔵 盈太
旗本・梶川与惣兵衛は、「あの日」もいつもどおり仕事をしていた。赤穂浪士が討ち入りを果たした、世にいう「忠臣蔵」の発端となった松の廊下刃傷事件が起きた日である。目撃者、そして浅野内匠頭と吉良上野介の間に割って入った人物として、彼はどんな想いを抱えていたのか。江戸城という大組織に勤める一人の侍の悲哀を、軽妙な筆致で描いた物語。第3回歴史文芸賞最優秀賞受賞作品。
あの日、松の廊下で
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あの日、松の廊下で
2021/10/05 13:46
すまじきものは宮仕え
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
組織の中で働いたことがある人ならとても共感できるのではないかと思います。昔から「すまじきものは宮仕え」という言葉があるように、無能な上司や同僚やどうしても相性の悪い人達の揉め事やら何やらで神経をすり減らす主人公、梶川与惣兵衛に感情移入してしまいました。忠臣蔵の映画やドラマで「殿中でござる!」と浅野内匠頭を後ろから羽交い絞めにしていたのが梶川与惣兵衛で、事件について日記を残していたことなど初めて知りました。
軽い文体で読みやすく、結末は分かり切っているのに続きが気になり、最後はやりきれない悲しみと余韻が残りました。浅野内匠頭の笑顔や吉良上野介の優雅な振舞が目に浮かぶようです。
あの日、松の廊下で
2022/06/29 16:31
こういう解釈もおもしろい
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つかも - この投稿者のレビュー一覧を見る
兵庫県民の私は絶対悪の吉良上野介、気の毒な浅野内匠頭、忠義一徹の家臣団という図式が普通であり、当然であり、疑うべくもないことでした。しかし、こんな解釈もあるんだ!とワクワクしながら読みました。確かに過剰に美化された赤穂浪士の討ち入りですが、ここまで人間レベルの思いややり取りにまで掘り下げられると、「そうかもしれませんなぁ」と思っていしまいます。梶川与惣兵衛の描き方も新鮮です。井上ひさしの『不忠臣蔵』の与惣兵衛とは真逆で、どちらも小説の醍醐味を覚えました。気になることは浅野内匠頭の関西弁。赤穂は関西弁というより、播州弁じゃないのかな?と兵庫県民は思います。「ボケ!」というようりも「ダボ!」が日常語ではなかったかなぁ。まったくの史実ではなく、たくさんの創作が入った時代小説。とても良い時間を過ごすことができました。
あの日、松の廊下で
2024/02/06 17:12
心理劇であり お仕事小説であり パロディである。
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
皆様御存知忠臣蔵。芥川龍之介をはじめ様々な作家が様々な視点 様々な解釈で、この事件を描きなおしているが、この作品はその中でも最右翼に位置されるべきものである。お互いの意志の齟齬、相性の悪さ、保守前例主義 などなどが悪いめぐり合わせとなって、このような大事件になってしまう。 現代の会社生活や学校生活でもこれに類することは実際に起こりそうで大変にリアル感がある。
ただ題名は、原題の「松の廊下でつかまえて」のほうが、サリンジャーを連想させて面白かったにと思い残念である。