蝶の戦記(新装版)上
著者 池波正太郎 (著)
尾張の国、清洲城下のはずれで、二十歳の於蝶は五月晴れのもとにのびやかな肢体をなげだしていた。夏草のにおいと果肉のような体臭に、木立を進む武士は惑乱した。一瞬の後に……。川...
蝶の戦記(新装版)上
商品説明
尾張の国、清洲城下のはずれで、二十歳の於蝶は五月晴れのもとにのびやかな肢体をなげだしていた。夏草のにおいと果肉のような体臭に、木立を進む武士は惑乱した。一瞬の後に……。川中島から姉川の合戦に至る時代を、少女から女へと変貌しながら、甲賀忍びの技と道に賭してゆく於蝶。上杉謙信への忠心に燃えつつ、時には男装して前髪すがたの小姓になりすまし、時に男たちとの恋にときめく日々……、心と体を完璧にあやつり、死闘を繰り広げる女忍びは、ついに川中島の決戦へ!
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良いですね
2024/04/28 16:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
叔父とともに織田家の様子を探っていた女忍の於蝶は、新たなる指令を受けて武田信玄との本格的な対決が迫り、上杉謙信のために働くことになります。さて、どうなる!
打倒信長に燃える杉谷忍びの鬼気迫る死闘が呼吸を忘れさせる
2009/12/04 19:21
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
<あらすじ>
甲賀・杉谷忍びの於蝶と叔父の小兵衛が雇われていた今川家は、勝ち戦に奢り忍びの情報を聞かなくなった結果、桶狭間で義元を討たれた。
その後、上杉家に雇われ謙信の小姓として世話をすることになったお蝶は、鬼神のような風貌と純真な心根に惹かれ、謙信のために働きたいと思いはじめた。
上杉家と武田家が激突した川中島の合戦をくぐり抜けた於蝶は、六角勢に味方する杉谷忍びたちと共に信長の首を狙うべく、近江を戦場とした浅井・朝倉と織田・徳川の合戦へ身を投じていく。
<感想>
戦国時代の不器用に生きた大名たちのために働いた女忍び・於蝶を主人公とした物語で、於蝶の頭領・杉谷信正の不器用な姿を描いている。
古い体制を頑なに信じて守ろうとする謙信、京の近くにいながら現在起こっている状況を知ろうとしない浅井、朝倉、六角氏らの衰退が印象に残り、そういう状況の中で、信玄や信長さえ討ってしまえばと暗躍する杉谷忍びの鬼気迫る緊迫の死闘は、読んでいて呼吸するのを忘れてしまう。
そして時代の流れに乗れなかった大名たちのために働き、同時に自身も零落していく杉谷忍び達には、悲壮感を感じるとともに、自分たちの信念のために働く潔い姿が凛として感じられた。
本書を読んで、「秘伝の声」や「秘密」ほど、この先はどうなるんだろうというワクワク感が感じられなかった。
恐らく川中島の合戦や姉川の合戦などの史実のなかで暗闘する忍びたちを描いているため、どんなに忍び達が信玄や信長の首を狙おうと、その結果がどうなるかは知っていることで、忍びたちの生き方を描いた物語に焦点を当てたものであることが、そう感じさせるのだと思う。
さらにこれまで多く語られてきた大合戦が舞台になっているので、歴史の流れ自体も大体知っているからなのだと思う。
真田太平記も歴史の流れの中に『草の者』を描いているが、真田家の中でクローズアップされがちな幸村だけでなく、あまり語られていない昌幸、信幸らに『草の者』が関わることで、この先は?という好奇心が起こる。
かといって「蝶の戦記」がつまらない訳ではなく、幾度か登場する謙信の小姓だった岡本小平太の成長と於蝶の関わり合いは、読んでいて面白いし、最後もこの二人で締めくくられているので、読了感は心地よい。
ところで「蝶の戦記」には、お蝶が登場する「忍びの風」「火の国の城」という続編がある。
「忍びの風」では「蝶の戦記」のクライマックスである姉川の合戦から始まり、甲賀・伴忍びの井笠半四郎とともに信長の命を狙い物語は進んでいく。
「火の国の城」では時代は関ヶ原の合戦の五年後に移る。甲賀を裏切った甲賀忍び・丹波大介を主人公として、伝説的な老忍び・お蝶とともに加藤清正のために働く姿を描いている。