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  • カテゴリ:一般
  • 販売開始日:2012/04/01
  • 出版社: 新潮社
  • ISBN:978-4-10-115742-9

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剣客商売十二 十番斬り

著者 池波正太郎 (著)

「まだ…まだ死ねぬぞ、まだ十人あまりもいる…」死病に冒されながら、世話になった村に巣くう無頼浪人どもの一掃を最後の仕事と心に決め、ひとり剣をにぎる中年の剣客・村松太九蔵。...

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剣客商売十二 十番斬り

税込 616 5pt

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商品説明

「まだ…まだ死ねぬぞ、まだ十人あまりもいる…」死病に冒されながら、世話になった村に巣くう無頼浪人どもの一掃を最後の仕事と心に決め、ひとり剣をにぎる中年の剣客・村松太九蔵。その助太刀に小兵衛の藤原国助作二尺三寸が冴える「十番斬り」。小兵衛の亡妻お貞への情愛を彷彿させる「白い猫」「密通浪人」。[辻斬り]事件のその後を描き味わい深い一編「罪ほろぼし」など、シリーズ第12弾。

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評価内訳

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紙の本

武道を捨てる必要はないが、武家は捨てたほうが幸せになれる

2012/01/20 09:28

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

第一話『白い猫』、第二話『密通浪人』と、小兵衛の亡くなった妻お貞にまつわる話が続く。

夏の終わりのある朝、おはるが首をかしげるほどの上機嫌で、小兵衛が、珍しく両刀を帯して、出かけて行く。実は、果し合いに行くのだが、途中で、お貞と一緒に飼っていたタマにそっくりの白い猫に出逢い、その猫を虐待しようとした浪人たちを懲らしめたら、とうとう、果し合いに遅れるほどの騒動になってしまった。

この果し合いの相手平山源左衛門のそばには、若者が仕えていて、源左衛門を案ずるのあまり、小兵衛を敵(かたき)のように憎んでいるようす。これはあの、『剣客商売』第一巻第二話『剣の誓約』の大治郎の師の嶋岡礼蔵の果し合いの相手と同様に、若者のせいで、悶着が起こりそうなようす。

小兵衛のことだから、最後は無事に始末をつけたけれども、そのかわり、もう、猫を見るのも嫌になってしまった。猫に罪は無いのに。

少し寂しい話だった『白い猫』に比べ、『密通浪人』はユーモラスである。お貞の弟の福原理兵衛という人物が、この話で初めて出て来た。小兵衛がおはると結婚して以来、姉がどんなに嘆くことかと怒って、絶交していたという。

理兵衛の妻に関する聞き捨てならない噂を耳にした小兵衛が、久しぶりに会いに行くと、昔と打って変わって大歓迎。彼の態度がこんなにも変わったそのわけは……。思わず、にやりとさせられた。なるほどね。

第三話『浮寝鳥』は、作者がまず「乞食(こつじき)」という言葉を説明するところから始まるが、作者がこういうふうに改まって言葉の意味を説明するときは、人々が「徒(ただ)の乞食ではない」と噂するほど上品だとか、あるいはまた、第一巻第二話『剣の誓約』の冒頭で「ひとりごと」の説明をしたのは、大治郎が貧しく寂しい暮しに満足しているにもかかわらず、思わず、「うまい」と言ってしまうほどおいしい物を食べたからなのだと強調して、しかもその後更にその食べ物の説明をして、そんなささやかなごちそうでそれほど感激する慎ましさを更に強調するというような、要するに、作者のテクニックである。

『浮寝鳥』は、人々が「徒(ただ)の乞食ではない」と噂したとおり、ただの乞食ではなかった上品な老人が惨殺されてしまい、怒りを抱いた大治郎が犯人を探索していくと、ついには、橋場の道場が大勢の侍に襲撃される事態に到る。もちろん大治郎は反撃し、三冬も赤ちゃんの小太郎を戸棚に入れて、剣をとり、家の中に敵を一歩も踏み入らせない。大治郎もだけど、三冬、かっこいい!

真相が明らかになった後の、小兵衛の述懐、

>「四十年の歳月は、なみなみのものではないぞ。世も人も変る、変る。びっくりするほど変ってしまうわえ」

これは、私も、いろいろなことを思い合せて、寂しいような、悲しいような、恐ろしいような気がしてくる。

小兵衛は、続けて、次のようにも述べている。

>「なれど、変ったようでいて変らぬところもある。あの稲荷坊主殿の若いころにも、きっと、後(のち)の、あの姿が潜んでいたにちがいない。ただ、それを他の人びとも、また当人も気づかなんだだけのことじゃ」

これは、この話では悲劇に終ったけれども、人というものに希望や信頼を抱けるような気もしてくる。もっともそれは、この話の、「徒(ただ)の乞食では」なかった人が、いい人だったからだ。悪人の場合だと、希望も信頼もなくなってしまうわけで……。

第四話『十番斬り』は、小兵衛が一人で十人の敵を斬る。それは、短時間の出来事である。しかしその前に、重病で余命幾ばくも無い村松太九蔵が、鍛えぬかれた剣の腕と知恵とで、日数をかけて、一人、また一人と、敵の数を減らしていた。傷を負った太九蔵とその友の和尚とに、敵を近寄らせぬ小兵衛。このシチュエーションは、『剣客商売』第八巻第五話『女と男』に似ている。ただし、『女と男』で闘ったのは三冬である。小兵衛は、病の床の弟子を看取っていた。

『剣客商売』は、剣客の孤独と強さ、そして、誰にも平等に訪れる老いと病が、剣客にも訪れるさまを、容赦なく、また、ときに優しく、描く。優しいと感じるのは、小兵衛や大治郎など、数は少なくとも、人との深い情の通い合いがあるときである。

第十二巻第五話『同門の酒』は、ユーモラスである。まるで鬼平犯科帳のような事件が解決した後、小兵衛と同じ年配の、老年の「先輩」たちが、年下の、中年の「後輩」を叱りつける。それは小兵衛の言う通り、久しぶりに後輩を叱ることで、

>「辻先生の道場にいるような、若返った気分になっているのじゃ。つまり、たのしんでいるのじゃよ」

第六話『逃げる人』は、また、寂しい。大治郎が好感を抱いた、風体が小兵衛に似た感じのする老人。お互いに身の上を語らず、踏み込まず、淡々とつきあう。

小兵衛曰く、

>「老人は、こころさびしいものゆえ、はなし相手が見つかったので、うれしいのであろう」

>「お前なればこそ、気をゆるめているのであろうよ。年寄りどうしが会ってみても仕方あるまい」

だが、その淡いつきあいにも、終るときが来た。私は老人に同情してしまった。彼は、いつまでも恐怖と孤独に苛まれ続けなければならないほどの、罪を犯したのだろうか……。だが、その罪の被害者の家族も、かわいそうだし……。

そして、第七話『罪ほろぼし』。かつて小兵衛は、悪を退治した。だが、悪人にも家族がある。悪を退治すると、悪人の家族は、罪もないのに、不幸に陥ってしまう。家族のその後を知って、罪を感じてしまう、小兵衛。

最後、小兵衛はその「罪ほろぼし」ができたと感じるのだが、かつての悪人の家族のほうも、「罪ほろぼし」ができたと感じていた。明るい話で終わって、良かった。武道を捨てる必要はないが、武家は捨てたほうが幸せになれるっていうあかしのようにも思える。

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親しく交流を始めた老人は、友の敵だった。情の板挟みが大治郎を悩ませる。

2012/02/17 18:47

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る

 剣客商売第十二弾。

 生きるも死ぬも己の才覚次第。
 知らない間に人の恨みを買っているかもしれない。
 そんな厳しい剣客の世界に生きる秋山小兵衛と息・大治郎。
 しかし厳しい世界に身を置き、精神が鍛錬された二人と言えども、心を迷わすこともある。
 とくに大治郎は、まだまだ経験が足りないのだ。

 大治郎は田沼屋敷の稽古からの帰り、暴漢に襲われた下女を助けた、父小兵衛に似た老人と遭遇した。
 名乗れども名乗り返さず去っていく老人に、大治郎は妙な気持ちを抱いたものの、蕎麦屋で再び老人と邂逅してからというもの、二人は友のように打ち解け合い、たびたび蕎麦屋で食を共にするようになった。
 ところが、その老人の本名を父から聞かされた大治郎は愕然とした。
 友が長年探し続けている敵の名だったのだ。【逃げる人】

 相変わらず、池波正太郎の仇討ちものはいい。
 他の仇討ちの作品からは、長い間、追い追われることで、人物の本質が生々しいほどに感じられてくるのだが、【逃げる人】では、彼らと心を通わせ、情の板挟みになった大治郎の迷いと苦悩、決断への心痛がさし迫ってくる。
 敵を追う友に知らせるべきか、このまま何も知らないふりをし、親しくなった老人と交流を深めるべきか。
 このときどのように行動するべきか。
 それとも『するべき』という正解はないのか。
 現代でもありえる情の板挟みに、そういうことが印象に残った一冊だった。

【収録作品】
 白い猫、密通浪人、浮寝鳥、十番斬り、同門の酒、逃げる人、罪ほろぼし。

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2006/07/10 09:27

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2021/07/06 14:27

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