世界の真ん中に咲く華の、行く末
2011/08/08 11:04
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投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
前巻でとうとう崩御した西太后。当然のごとくその後の世界を巡って、世は混迷する。東北王として君臨し、伝説の龍玉を持つ張作霖。清朝を倒して新しい国家を築こうとする新勢力、革命家の孫文。その勢力に対抗するべく復活した「天才的俗物」袁世凱。そして清朝の延命をはかる、実の皇帝宣統帝溥儀とその側近の者達。明日の中華を思う力がぶつかり拮抗し、今にも崩れ落ちそうになったそんな時。天才的指導者、「宋教仁」が現れる。選挙にも圧勝して中国を民主化の道へと導き、新しい世界が開けるのかと思わされた、その矢先。なんと宋教仁が暗殺され、あろう事か袁世凱が皇帝に即位してしまう。そして世にもおかしな皇帝が二人いる国家が誕生してしまうのだ。一体中華の国の行く末は、どうなってしまうのか。
世界の真ん中に咲く華、中華の大輪。その激動の歴史を垣間見れ、非常に面白かった。まともに学術書でも開いたなら、とてもとても読み切れた物ではないだろう。それを春雲兄弟のような架空の人物を絶妙な按配で織り交ぜ、この壮大な歴史絵巻をエンタテイメントの粋にまで昇華させて読ませてくれたのは、さすがとしか言いようがない。この4巻で完結となったけれど、しかしまだ「蒼穹の昴」シリーズは終っていない。本作品では、登場人物それぞれの最終的な道が示されてはいないのだ。次作では明らかになるのか、楽しみでならない。
蛇足ですが「蒼穹の昴」から続くこのシリーズを読むと、非常に読書力と日本語力が付くと思う。重厚な物語でありながら、非常に魅力的な登場人物やそこここに交えられたユーモアなどで、中学生くらいからでも十分読めると思う。また浅田氏らしい美しい言葉や言い回しが随所に見られ、「ああ日本語は美しいなぁ」と、思わずため息が出てしまうほどだ。そういう意味から、夏休み中の中学生高校生に、ぜひ挑戦してみて欲しいシリーズだと思います。
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投稿者:ポッター - この投稿者のレビュー一覧を見る
今までの歴史書といえば、戦いに勝ちすすみ、歴史をその名を留めた勝者の賞賛とした物であった。この小説では、勝つ為には、綺麗事だけでなく、いわゆる「清濁合わせ飲む」覚悟がなければ、飲み込まれてしまう事も書かれていると感じた。
えっ、これで終わり?
2024/08/11 20:21
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投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
4巻引っ張って「俺たちの戦いはこれからだ!」で〆られたのには開いた口が塞がらなかった。主要な事件は経過をすっ飛ばして事の顛末だけ書かれる始末……なのは史実ベースだから許されるとしても、面白い部分を抜かれるとどうも白けてしまう。西太后で既にやったような「実は……」な解釈を袁世凱にまで適用するのもまた然り。特に袁世凱の場合だと、周囲の評価と言動に若干のズレが生じていて、いよいよ4巻になるとズレが極大になっているため、史実とのギャップを狙いつつ整合性を保つために個人を蔑ろにして描いた感が否めない。異国情緒を絵画のような美しい筆致で書き上げ、かつ読者の心情を掴む見せ場の豊かさたるや数え上げられないほどであったが、場当たり的な粋ばかりで筋の通った納得感が読み勧めるにつれて壊滅していくのがとにかく辛かった。崩れ行く整合性もあるいは「乱世の表現」に過ぎないのかもしれないが、そう好意的に解釈できるほど自分の好みの展開ではなかった。正直、張作霖のエピソードと西太后・袁世凱のエピソードで別タイトルにした方がまとまりが良かったのではないかとさえ思う。
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面白かったー。『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』の続編です。
舞台は中国。時は清王朝の滅び行こうとしている、歴史の変わり目。それまでひとりの肩に清の行く末を背負って激務におわれていた西太后も、年老い、病に侵されて、じきに死にゆこうとしている。廃嫡された皇帝は心を病んだまま、離宮に幽閉されている。混乱の続く国を背負うに足る人材もおらず、各国はこの機に乗じて利権を得ようと画策を続けている。
そんな時代、東北にて群雄割拠の様相を呈する満州馬賊の中に、ひとりの英雄が現れた。張作霖。かつて皇帝の手から失われた龍玉を、満州の地にて見出した彼は、天意を得て満州の王者となり、やがては清王朝を打倒して新たな王朝を築こうとするが……
中華歴史大河ファンタジー。複数のキャラクターの視点を通して、西太后が亡くなる前後の時代を描いた本筋と、女真族が清国をつくった時代の伝説とを、いったりきたりしながら話は進みます。
かつて生き延びるために親兄弟を置き捨てて村を出、やがて銃と馬術で身を立てて、張作霖の手下になった李春雷。自ら宦官になる道を選び、やがて人望を集めて上におしたてられ、西太后の側近となった李春雲。貧しさゆえに生き別れとなった兄弟の、運命は大きくわかたれて……
恥ずかしながら歴史に暗いので、どこまでが史実で、どこからが創作か、よくわかっていないまま読んでしまったのですが、あとで調べたところ、登場人物には架空のキャラと実在の人物と混在しているようです。龍玉や天意や偉人の亡霊がどうこうというような、ファンタジー色の強い部分と、史実に基づく歴史小説としての部分があります。
張作霖のキャラクターにはあまり共感できなかったのですが、とりあえず、馬賊たちの描写に激しく痺れた……! ただ、彼らの行く末については、調べれば史実はわかるのですが、作中で語られた部分だけだと、ちょっと消化不良感がありました。
ほかにも探せばアラもあるような気がしますが(これ主人公誰なのとか、所々文章がくどいとか、キャラ立てがたまにブレてるとか、ええっそこで終わるの!? とか)、でもとにかく、読んでいてべらぼうに面白かったです。盛り上がったし泣いたし感動しました。春児たち兄弟の邂逅には、涙を禁じえません。
こういう本にあたると、面白い小説は減点法じゃわからないなあとつくづく思います。
さらに続編のマンチュリアン・レポートが刊行されているのですが、ここまできたら文庫落ちまでじっとガマンしようと思います……。が、がまんがまん。
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人は生きようとして生きるのではない。生かされているのである。為政者は私欲のために事を成したというが、ほとんどの場合が、名もなき国民に対する使命感であったり、責任感からであったりしている。袁世凱・張作霖・孫文・西太后しかりである。2011/01/08
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蒼穹の昴の続編の最終巻。
といいつつまだ続く。な感じの終わり方です。
登場人物の語り・エピソードにうるうるしつつ、一番のこったのは宋教仁の演説です。民主共和制について今一度考えさせられる。
現在、この体制の中で生きているのは、こういう歴史の流れがもちろん日本にもあったからなのだと。
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久しぶりの浅田次郎だったせいか、最初のうちは文章の甘ったるさというかべたべた感というか、何と言うか「過剰」な感じが鼻についてしまって読みにくかったんだけど、それに慣れてしまえば、やっぱり面白い。
登場人物たちがみんな魅力的で、物語にぐいぐい引き込まれていった。
蒼弓の昴の時からだけど、西太后をこういうキャラクターにしたというのが新鮮だった。一番好きな登場人物だな。
あと、袁世凱が意外で、終わりの頃まで嫌な奴だと思っていたので、自分もまだまだ読み方が甘いなぁと。
そして、とにかくかっこいい張作霖。これからどうするんだ!というところで終わってしまったので、次作が待ち遠しい。でも、確か実在のこの人は殺されちゃうんだよね。本当にどうなるんだろう。
もちろんこのお話はフィクションなんだけど、そもそも中国の近現代史はちゃんと勉強してないな。せっかくなのでこれを機会にそれ関係の本読んでみようかな。
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時間系列が飛び飛びですごく早いペースで物語が進む。思わずこれ全4巻だよね??と疑うような展開だったんだがやはりすごい気になるところで終わった!
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兄弟がやっと再会してくれて嬉しかったです。
歴史上の人物がでてくると、今後がわかっているだけに複雑な気分に
なります。
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蒼穹の昴のほうが好み。西太后をいい人にするための説明がちょっとくどく感じられた。
調べてみたところ宋教仁は実在の人。孫文は結局まったく出てこなかった。蒋介石はちょっとだけ出てきた。
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大連では、涙が止まりません。
最近、涙脆くなって来てるのは間違いないけど、それにしても泣いた。
・゜・(ノД`)・゜・。
そこで、はたと気付きました。
この作品はここで終わるけど、この後も歴史は続いてる。なのに僕には全然知識が無い。
一体この後、どうなったんだろうか?
どんな経緯で、現在に至ったんだろう?
日中関係が微妙なこの時期に読んだのも縁なんだろうなぁ
あの後も「わが勲は民の平安」と言える政治家はいたんだろうか?
僕もこれからは「没法子」て言わない生き方をしよう!
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とにかく面白かったです。
感動のシーンもいっぱい。
朝っぱらから涙ボロボロだったり・・
趙爾巽が奉天を去るとき、読んでいて予感があった。
やはり張作霖たちが列車を追ってきた。
趙爾巽に次々に彼を労った。
ほ~ら、やっぱりと嬉しくなった。
やっぱり張作霖はカッコいい、心の深い人だ。
まるで映画のワンシーンを観ているようだった、そういえば昔こんなシーンの映画観たことあったなぁ。
そして思うのは白い布をなびかせている馬占山、どうしても昔観たテレビドラマ「ハリマ王」を思い出してしまう、古い!!
刺客に襲われた宋教仁を守るために、自らが上に体で覆いかぶさり銃撃され死んでいったトム・バートン、彼にも泣かされた。
春児と春雷の再会のシーンは歯がゆくて、切なくて、そして文秀と玲玲と春雷の再会のシーンも泣けたね。
でも、会えて本当に良かった。
袁世凱がすごく嫌な奴だと思っていたら、案外そうでもなかったのね。
あんな死に方しちゃって可愛そうにと思って調べてみたらお顔が可愛くてビックリ(笑)
ちょうど前に「ワイルドスワン」を読んでいたので、いろんな面が重なって心配にもなった。
で読み終わってからずっとWikipediaを見ていった。
張景恵(二当家)はソ連の捕虜になった。
そして中華人民共和国に引き渡され、獄中で病死したとある。
「ラストエンペラー」にも出てたんだねぇ。
この時溥儀と同室になったとある、なんとなくそのシーンは記憶にあるなぁ・・
そして張作霖の長男、張学良のハンサムなこと。
長生きしたのね、でもやはり反逆罪で逮捕されてから、長い軟禁状態なんと50年も続いたらしい。
2001年に100歳で亡くなったそうだ。
って、次から次へ調べていくときりがないくらい歴史って面白い。
春児や文秀のような架空の人物と、実在の人物とがうまく溶け合って、壮大な歴史ドラマだったわ。
「蒼穹の昴」で春児に夢中になり、「中原の虹」で張作霖にすっかり魅せらてしまった。
偉大な人たちがいっぱいいて、すごい文化も持っていた国が今はどうしちゃったんだろ?
「わが勲は民の平安 わが勲は民の平安」
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てっきり張作霖爆死まで行くのかと思いましたが。。。。まだまだ続きそうですね。今後の展開が楽しみです。
このシリーズを読んでいると西太后がとてもよい人に見える。。。。映画のイメージとホント違いますね。
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最後物足りなかったというか、マンチュリアンに続くのかなぁ?
みたいな感じもあったけど、結局この4冊、何度電車で涙をこらえたことか…
蒼穹の昴から読んでないとこの感動は薄かったと思う
ちゃんと読んでて良かった
蒼穹の昴からもう1回読み返そうかと悩み中…
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終わっちゃったのがすごく悲しい。
「蒼穹の昴」の時は西太后の、「中元の虹」では、袁世凱のイメージがすごく変わりますね。フィクションの部分もあると思うけど、歴史もどれだけ真実が伝えられてるか分からないなって思った。
春児と春雷、そして、りんりんの再会のシーンが本当に感動した!