紙の本
<奇跡>のような一冊
2016/12/22 08:13
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「1885年に創立して以来、自動車業界の有力者らの資金援助を通じて、世界屈指のコレクションを誇る美術館として成長したデトロイト美術館」。
これは東京・上野で現在開催されている「デトロイト美術館」の公式ホームページに書かれている一文です。
この美術館はゴッホなどの印象派絵画をアメリカの公共美術館として初めて購入した館としても知られています。
ところが、2013年にデトロイト市自体が財政破綻に陥ってしまいます。
そんな市にあるこの美術館には至宝の美術品が収められているのです。
当然のようにその売却を求める声があがります。
それほど遠い昔の話ではないのに、そのニュースを知りませんでした。
原田マハさんが得意とする美術ジャンルの作品で、四つの作品で構成されています。
実話に基づくフィクション、つまりは破綻したデトロイト市からどのようにこの美術館が守られたかという美談ですが、原田さんの筆は決してその美談を押し付けるものではありません。
どころか、貧しい生活からわずかなお金を差し出すフレッドという男の、絵画に寄せる思いの方に心うたれます。
彼が愛した一枚の絵。
それが表紙の装丁にも使われている、セザンヌの「画家の夫人」という絵です。
この絵が四つの章それぞれに登場します。
その都度、原田さんはこの絵画の魅力をそれぞれの言葉で紡いでいて、セザンヌ絵画の奥深い世界を現出させてみせます。
小さな作品ですが、抱きしめたくなるような一冊です。
紙の本
アートは、友だち。だから、守りたい。
2022/04/07 15:21
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投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
1885年の創立以来、デトロイト美術館は、市民の生活そのものでもあり、誇りでもあった。
市民が気軽に世界最高峰のコレクションに触れることの出来る美術館。
しかし、2013年、市の財政難から存続の危機に立たされる。
珠玉のコレクションが売りに出されてしまうかもしれない事態となってしまったのだ。
亡き妻と通った美術館。
妻が「友人たち」とよんだ作品の数々は、彼の友となっていった。
コレクターの思い。
彼がモダンアートに興味を持たなかったら、デトロイトのコレクションはありえなかった。
美術館員の苦悩。
財政難が直撃した美術館。そのど真ん中でもがき苦しむ中に見えた光。
アートは、決して敷居の高いものではない。見たまま感じたものを大切にしていけば良い。
その作品を目の前にした時、時空を超えて、作者と直接対話ができるのだ。
読書と美術の融合なのだ。
紙の本
アメリカの美術館で起こった本当の話をもとにした小説です
2018/12/10 06:07
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、美術小説を書く原田マハ氏の作品です。ゴッホやセザンヌという名美術を所蔵する美術館がある日、財政難のために存続の危機に立たされます。美術を選ぶべきか、それとも市民の生活を取るべきか!この厳しい選択に市はどのように対処していくのでしょうか。本当にアメリカであった話をもとに小説化したワクワク・ドキドキの内容です。
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市民が一丸となって
2019/12/06 08:55
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
閉館の危機を迎えた美術館を救うために悪戦苦闘する、多くの人たちの想いが伝わってきます。かつて自動車産業で栄えた都市の、切実な現状についても考えさせられました。
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投稿者:Chocolat - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者の小説の中では、極端に短い作品ですが、作品に登場するこの1枚の絵画をとりまく、様々な物語を読むと、作者が絵画に深い理解と愛情を持っているのが感じられます。何事も専門家の話は面白いものです
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『暗幕のゲルニカ』はピカソ作品そのものにストーリー性を持たせたものだが、本作は『マダム・セザンヌ』の作品そのものというよりもそれを取り巻くデトロイト市民と作品の関係性に重点が置かれている。
いわゆる一般的な市民代表のフレッドと早くに逝ってしまったその妻、たジェシカ。二人から見た『マダム・セザンヌ』。
キュレーターのジェフリーから見た『マダム・セザンヌ』。
コレクターのタナヒルから見た『マダム・セザンヌ』。
アートはある一方面からのアプローチに限られていないことが良くわかる。美術に対する蘊蓄ウンヌンではなく、自分なりに感じることが大切なんだなナ。
原田マハの作品は「もっと気軽に見て、そして感じていいんだよ」ということを常に教えてくれる。
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自動車産業の翳りとともに、財政破綻に追い込まれたデトロイト市。
市民生活を維持するために、市の財産でもっとも金銭的な価値のあるもの…デトロイト美術館収蔵のコレクションを売却しなければならないのか。
『マダム・セザンヌ』を愛した人々が、やがて奇跡を起こす。
実話に基づく短編集。
モダン・アートの黎明期に多くの傑作を収集し、その死後愛したコレクションを美術館に寄贈したコレクター。
デトロイトの典型的な労働者階級に生まれ育ち、亡き妻に誘われてアートを愛するようになった年金生活者。
財政破綻の現実と、コレクションの散逸の危機との間で悩むキュレーター。
知識も何もなくても、アートの持つ力はこれほどまでに強く人の心を動かすんだということ。
作品に込められた思い、作品から受け取る思い、作品に捧げる思い、どれも目に見えない美しい力で、さらに作品を輝かせるのかもしれない。
美術館は大好きだけれど、残念ながらここまで深く感じることはできていない鈍感な凡人である私。
美術館の入場料が決して安くなく、大規模に宣伝されるような企画展では人波にもまれてしまい、作品との対話なんて出来やしない…という現状。
ちょっと待ち合わせまで時間がある、にわか雨をやり過ごしたい、散歩の途中ですこし休みたい、そんな時にちょっと喫茶店に入るくらいの気軽さで展示を楽しめるような場所だといいのに…
お酒でも色々な味の銘柄を繰り返し飲むうちに美味しさも違いもわかってくるように、もっとアートに日常的にふれる習慣を持つことで、もっと目と心が磨かれるような気がする。
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なんか、話としてはいいんだけど、肝心なところが「表面ヅラをなぞっているだけ」って感じで惜しかったです。
もっともっと、デトロイト市民や企業・団体では語りつくせない逸話があったんだと思います。
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実話を基にしているとのこと。芸術を愛する原田マハさん。こんな話を耳にし、目にして、書かずにはいられなかったんだろうと思う。アートの力、人の善意、良識を感じられる、秀作だと思った。
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アートへの想い、アートとひと、場所、歴史のつながり。生み出される価値、優先順位の括りに縛られない結末。ストレート過ぎるところがこのお話の価値だと思います。
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四六判のハードカバーだけど厚みがあるわけではなく、本当に数時間で読み終えるほどあっさり終わる(事実に基づいているから膨らませようがないのはわかる)。
でもマハさん節は健在だし、実際に自分もDIAに行ってみたい!と思わせる力は流石。
デトロイト美術館展に行かれる方には是非この本を読んでから行くことをおすすめしたい。きっとセザンヌ夫人の絵の見方が変わる。
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『デトロイト美術館展』に行くつもりなので行く前に読みました。
100ページちょっとで写真も多く掲載されているのでボリュームは少なく、1時間ちょっとで読了。
通常なら短編集に入るような短いストーリーです。
「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」と同じような雰囲気の美術に絡んだお話。
それほど深くはないけれど、スッキリした結末だし、
前述の2作が好きな人は楽しめるでしょう。
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(2016.10.05読了)(2016.10.02拝借)
「デトロイト美術館展」の東京展が、下記のように開催されます。「豊田」「大阪」は、既に終了しています。
デトロイト美術館館展
主催:フジテレビジョン、産経新聞社
会場:上野の森美術館
会期:2016年10月7日 (金) 〜 2017年1月21日 (土)
入場料:一般1,600円
概要
デトロイト美術館(アメリカ合衆国ミシガン州)は、古代エジプト美術から現代美術まで65,000点以上の作品を所蔵している全米屈指の美術館です。
本展では、デトロイト美術館の絵画コレクションの中から、モネ、ルノワール、ゴッホ、セザンヌ、マティス、ピカソ等、名作中の名作52点を紹介する「デトロイト美術館館展」を開催いたします。
この本は、上記展覧会に合わせて書かれ、出版されたようです。100頁ほどの本なので、割とすぐに読めてしまいます。
この本の中では、セザンヌの「画家の夫人」がメインで扱われていますが、展覧会の作品紹介の中には、この作品は入っていません。従って「画家の夫人」が、来日しているのかどうかは不明です。
かつて、自動車産業の街だったデトロイト。2013年、デトロイト市は財政破綻に陥った。市民に支払う年金に充てるべきお金が足りなくなってしまった。市民の生活を守るために、デトロイト美術館の作品の売却が検討された。
所蔵されている作品は、優れたコレクターの手によって集められ寄贈されたものが含まれており、市民にもそれらの作品に愛着を持って、何度も見に訪れる人たちもいる。
一度売却して散逸してしまえば、再び集めることは不可能である。
美術愛好家の中に、なけなしの年金をはたいて寄付したいという人が現れた。そのことにヒントを得て、寄付を募ったところ、多くの法人や市民からの寄付が集まり、美術品の売却をせず維持できるのに十分な資金が集まった。
というお話です。
【目次】
第一章 フレッド・ウィル《妻の思い出》 2013年
第二章 ロバート・タナヒル《マダム・セザンヌ》 1969年
第三章 ジェフリー・マクノイド《予期せぬ訪問者》 2013年
第四章 デトロイト美術館《奇跡》 2013-2015年
●妻の肖像画(41頁)
セザンヌは生涯に油彩だけでも29点もの妻の肖像画を描いたという。《サント・ヴィクトワール山》や《リンゴのある静物》と同様、セザンヌは自分の妻を「動かざるモデル」として、このんで描いていた。
●デトロイト美術館(59頁)
デトロイト美術館のコレクションは、幅広い時代と領域をカバーしている。中でも、印象派・後期印象派・近代美術の充実ぶりは、全米屈指と言ってもいい。ゴッホやマティスの作品は、アメリカのほかの公立美術館に先駆けて購入した歴史をもつ。
☆関連図書(既読)
「楽園のカンヴァス」原田マハ著、新潮社、2012.01.20
「ジヴェルニーの食卓」原田マハ著、集英社、2013.03.30
(2016年10月6日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
ゴッホ、セザンヌ、マティス。綺羅星のようなコレクションを誇る美術館が、市の財政難から存続の危機にさらされる。市民の暮らしと前時代の遺物、どちらを選ぶべきか?全米を巻き込んだ論争は、ある男の切なる思いによって変わっていく―。アメリカの美術館で本当に起こった感動の物語。『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』の系譜を継ぐ珠玉のアート小説。
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「暗幕のゲルニカ」など、歴史的美術作品の裏に隠された物語を描くのが上手な作家さんなので、今回もデトロイト美術館の裏側を期待していたのだが、今回は史実のみが時系列で描かれているだけで、小説としての面白さを感じることが出来なかった。でも、歴史の勉強にはなったかな・・・
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あっという間に読める。財政破綻による年金危機を寄付でしのぎ、デトロイト美術館の作品を守ったそうですが、あまりカラクリがわからない。後で調べよう。