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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
小川さんの作品は2作目だけれど、
文体がクセになってきた。
決して読みやすいストーリーではないし、
視点がコロコロ変わって理解をしやすいわけでもない。
たまにトンデモな話も混ざっている気もするけれど。
上巻が終わってすべての準備が整った感じ。
作品のあちこちにちらばっている理論がどう回収されていくか楽しみ。
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投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本SF大賞を受賞した作品と知って、本書を手に取った。
読み進めていくうちに、これはSFなのか?と首をかしげていた。
物語の舞台は1960年代から1970年代にかけてのカンボジア。
そこで語られるのは歴史小説といってもいいほどの、どこまでも現実的な描写や、史実を交えた革命の物語である。
本書を読んで驚いたのは、当時のカンボジアに対する圧倒的な情報量である。
私自身当時のカンボジアに対する知識などこれっぽちも持ち合わせていないが、ポル・ポトなど耳にしたことのある名前の人物を中心に当時の文化や慣習を丁寧に描いていた。
個人的に何より本当にこうだったのではないかと思わされたのは、ロベーブレソンの村民たちの物事の考え方だ。
論理的思考や科学的知識などではなく、伝承や呪術師のことを信用し、ティウンやムイタックが疑問を抱くと頭が悪いと罵る。
現代とは真逆の考え方が当時のことを全く知らない私でも、当時のことのように思えた。
不条理なルールを変えるために立ち上がり、革命を起こしたものがまた不条理なルールを作り出す。
そのようなどこにも救いがない世界に晒された人たちの描写がとても素晴らしい。
特にアドゥがお気に入りだ。
「たとえ意味がなくても、生き残らなければならない。死ねばすべての意味が消失する。」と決意し、何が何でも生き残ろうとしたアドゥの強さには感銘を受けた。
「理想郷は無限の善を前提にしているためとても危険だ。なぜならあらゆる有限の悪が許容され、想像以上の人々が苦しむことになる。」といった鋭い洞察に満ちたセリフなども本書の魅力の一つだ。
上巻は不条理に満ちた世界の恐ろしさや、その世界で懸命に生き延び、世界を変えようと奮闘する登場人物などが描かれていた。
下巻での展開が全く予想出来ないので非常に楽しみだ。
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
全人口に占める虐殺された人の比率が史上最悪といわれる、あまりに悲惨なカンボジア.ポルポト時代を舞台とした作品である。少しはSFっぽい設定もあるようだが、主体は身近な住人同士による相互監視 親子兄弟同士の密告 秘密警察 強制収容所 そして虐殺である。同じ様な例が、ナチス時代のドイツ スターリン時代のソ連にもあったようだが、カンボジアのほうが時代が近いためによりいっそう悲惨さが実感される。読み進めるのが辛いほどである。
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週末に上下巻を一気に読了。
いやー、なんかスゴいもん読んじゃったなぁ、と思います。登場人物は皆、愚者か狂人か天才、あるいはその全て。語弊を恐れずに言えば、J・G・バラードっぽいです。「夢幻会社」とか、あの辺り。
詳細は、まとめて下巻レビューで。
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物語では絶望的な世界に登場人物たちが置かれており、目を背けたくなるような惨状のシーンが繰り返し登場する。登場人物達が次々死んでしまうので、読後感が悪い章も多い。独裁政権に至ってしまう構造や、なぜそれが皆間違っていると分かりながら持続し、進んでしまうのかという社会組織の構造がそれぞれの立場の人間の視点から描かれていてわかりやすかった。ムイタックとソリヤという二人の天才がポル・ポトを打倒するという同じ目的を持ちながら、その道を分かつという物語の大枠は典型的でありながらも、興味を惹きつけられた。途中、泥や輪ゴムの超自然的能力が登場し、どういう世界観なのか混乱した。下巻でどういう結末にもっていくのか期待大。
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物語の舞台はポル・ポト政権下のカンボジア。クメール・ルージュの革命活動により政権が交代しようと、独裁者の首が挿げ変わるだけで、人民は圧搾され続ける過酷な現実。自分が産まれる僅か数年前にこんなにも凄惨な虐殺事件が起きていたことに驚愕する。生き残る為には、思考を研ぎ澄まし【ゲーム】に勝ち続けるしかない。作中の『賢くなるとは、臆病になることだ』という台詞には思わず虚を衝かれた。ポル・ポトの隠し子ソリヤと天賦の神童ムイタック、略奪され続けた少女と少年のジュブナイルは訣別を経て悲劇的な方向へ舵を切る―。下巻へ。
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今年は本作が読書納め。充実した読書ライフの一年でした。SFにはジャンル付けたけど、自分的にはむしろ歴史小説。SF的難解さは皆無なのがポイント高し。それに、歴史的知識が乏しくても問題なく読み進められる。むしろ、読みながら歴史的背景にも思いを巡らすことが出来る結構。単行本のときから凄く気になってたけど、これは話題にもなるわ。これでまだ折り返し。後半も楽しみ。
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面白いが一部を除いてSF小説の様な感じがしない。
凄いSFファンでは無いので面白いなら構わないが、日本SF大賞受賞作品なので下巻に何かがあるのか楽しみでもある。
主人公の周りの人々の多くが殺されてしまった状況で、これからどんな展開があるのか期待が膨らむ。
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ポル・ポト、虐殺とはよく聞くが、詳しくは知らなかった。
物語の舞台はポル・ポト政権が立ち上がる前後のカンボジア。
視点、時間が変わりながらも描かれる世界はどれも酷く、読むのも苦しくなる惨状。
人の命が軽すぎる。。。
白も黒になる、あまりに不条理な世界に何が正義かわからない。
「ここで引き金を引かなければ、スパイだとして別の処刑人に殺されてしまう」
こんな言葉が出てくる世界。
上巻ではまだ彼らの世界は変わらない。
下巻で世界は変わるのか?いや、変わって欲しいと願う。
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“嘘と正典”つながりで手にした一冊。
SFという世界観ながらカンボジアの悲惨な過去の歴史を織り交ぜた物語。
一歩違えば人間はここまで非情になれるんだなと恐ろしさを感じた。
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本書発売時から、面白いという噂を聞いていたけど、
タイミングがなく、文庫化したこのタイミングで購入。
SFというよりは、歴史小説と言ったほうがしっくりくるかも。
カンボジアのポルポト時代の前から、ポルポト時代に書かれている。
その革命前後に、主役級の人が躊躇なく死に、
時代が変わる恐ろしさを感じながら、
読む側が慎重になるほど展開が潔い。
今後の展開が分からず、下巻が楽しみになる一冊でした。
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カンボジアのポルポト政権下を舞台とした冒険小説。
SF作品として数々の賞を受賞しているが、上巻ではSF的な話はあまりない。
ポルポト、クメールルージュといえば、映画『キリングフィールド』が有名であるが、それを文章化した本といえばわかりやすいだろうか。
原始的な生活を至上とし、数多くの知識人を虐殺したポルポト政権下のカンボジア。
そのような状況のなかで生き抜く二人の少年少女。
二人の生きざまには手に汗握るものがあった。
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本作、書面で発見し帯に惹かれて購入。
…少しは内容確認して購入する癖つけよう。
カンボジアが舞台となっている。
カンボジア、カンボジアの歴史、背負ってるもの、お恥ずかしい限りだが私には全く知識がない。
慌ててWikiでほんのカケラほどの情報を得たが、全然足りない。
そして登場人物、登場人物の名前が覚えられない。
(吉川英治さん作三国志もこの問題と、読めない漢字が多過ぎて断念した)
サムとかソムとかサルとか(ToT)
そして本作「日本SF大賞」受賞作品と帯にあったのだか、これSFなのか?
と、なかなか入り込めなかったのであるが、上巻の後半にもなると細かい事はスルーできるほど展開に乗っていけた。
さて、下巻へ
が、しかし
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「あれ…?この小説、SFなんだよな…?」という疑問を頭の片隅に抱えながらも、数十年前のカンボジアの凄惨な状況に意識が向き、次第にSF作品かどうかなど気にならなくなる大作歴史小説…と思いきや、これが全て前振りになってしまうのが同書の凄いところ。
ポル・ポト政権の凄まじさは一般教養程度に知っていたが、ポル・ポトの名前があまり出てこないのでWikipediaで調べてみたら、重大なネタバレを発見…とショックを受けたが、全くネタバレではなかった。
というか、上下巻を読み終える頃には「その設定すら完全に前振りなんかい!」とツッコミたくなるので、むしろWikiでポル・ポトについて調べてから読んでも良いかもしれない。
完璧な下巻のために書かれた完璧な上巻。
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「ああ、こんなにSFとは面白いジャンルなのか」ということを読み終わって実感し、この感覚を以前に味わったのはいつだろうと思い返す。そして瞬時に記憶が蘇る。夭折した天才作家、伊藤計劃を読んだとき以来だと。
”SF”・”ポル・ポト”・”脳波”。この3つが本書を巡るキーワードである。にも拘わらず、上下巻で構成された本作は、上巻においてほぼSFの雰囲気は感じさせない。ただひたすら、カンボジアを舞台に、ポル・ポトがいかにテロルの繰り返しで政権を取り、世界が驚愕した虐殺劇を繰り広げていくかが緻密に描かれていく。本作がどのように着地するのか?、その疑問は脳波を巡る下巻で一気に回収されていく。
とにかく面白い小説を読みたい、そんな人には本作をぜひお勧めしたい。損はさせないという自信がある。