この世をば(下) 藤原道長と平安王朝の時代
著者 永井 路子
優秀な二人の兄が相次いで病死、長兄の子・伊周との政争にも勝利した道長。やがて一条天皇のもとへ長女彰子を入内させ、のちの後一条天皇が生まれ、権力を握る。彰子に仕えた紫式部や...
この世をば(下) 藤原道長と平安王朝の時代
商品説明
優秀な二人の兄が相次いで病死、長兄の子・伊周との政争にも勝利した道長。やがて一条天皇のもとへ長女彰子を入内させ、のちの後一条天皇が生まれ、権力を握る。彰子に仕えた紫式部や清少納言など王朝の才女たちも鮮やかに描いた王朝歴史小説。
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運「が」実力のうち、そして短命な栄華も運。
2024/03/10 18:34
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
巷間では『運も実力のうち』と囃されたりします。この俗諺が本書下巻では(下巻のみならず上巻でもと言えますが)殊更『運「が」実力』を体現していると痛烈に感じました。運も実力のうちと言えば揶揄に聞こえますが、運は大切な要素です。現代の会社員生活にも同様です。
主人公:藤原道長を取り巻く数多の人物たちとの人間模様は現代に置き換えた場合、一般人が経験し得るものでは中々ありません。ですが、個々の箇所では充分にあります。その点が本書に惹き込まれる所以と言えそうです。
本書末章で書題にある「この世をば・・」が詠じらますが、望月は欠けるものです。あの時期での道長は望月が欠ける気がしないと思わず感じたのでしょうが、物事に永遠など無いという事を自身の中に念じる冷静さが無かったのは悲しい性です。道長の弱さの一つだと思います。
本書が読み手を惹き付けて離さないのは、やはり道長と言えど一人間であり、また当人を囲繞する幾人かの人々に依って蔭に日向に支えられる様が心を打つからに他なりません。人は一人では生きられない、また自分では変える事が出来ない事象(火災や死別)がある、是等は道長とて例外ではないという事を読み手が裡に刻み込める一書です。
望月ではなく、早くも下弦に・・・
2023/11/30 17:14
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
ようやく左大臣になった道長だが、兄・道隆が残した中宮定子の存在が気がかりだった。
そこへ思いもかけない事件が起こり、定子の兄弟である伊周・隆家らが失脚してしまう。
自らの働きかけなしに、政敵が消えてくれたことに、いぶかりながらも安堵の胸をなでおろす道長であった。
このあたり、まさに「禍福は糾える縄の如し」の感を強くするが、実際人間の野望などはさほどのことはなく、謀略の網など軽々とすり抜けた偶然が支配しているというのが本当のところだろう。
それにしても思うのは、この時代道長以外にも、非常に興味深く、また魅力的な登場人物が多いということだ。
無害な政治パートナーとして選ばれたことにも気づかず、ひたすら自分の運を信じ続けた顕光、入内させる娘をもたなかったために摂関レースに参加できず、そのため時の人道長に批判の目を向けつつも、結局は体制に影響を与えることのできない実資、滅私奉公で道長の前半生を支え、一条帝との緊密で安定した関係を作り上げた行成など、まさに多士済々と言っても言い過ぎでない。
この時代を、絢爛たる宮廷絵巻と、道長の独壇場とだけみるイメージは、全くの誤りで、彼ら彼女らがそれぞれの役割を十分に発揮していたからこそのものではないだろうか。
そんな中でも異彩を放っているのが、道長の甥の隆家だ。教養派の兄・伊周とは異なり、剛毅な性格で、甘やかされた世間知らずの多かった上級貴族の御曹司とは思えないほどの気骨を持つ人物だというのが、「大鏡」や実資の「小右記」に残された彼の横顔だ。
道長独走への憤懣を日記の中にしか記せなかった実資とは異なり、堂々と道長を糾弾する姿は、負け犬の遠吠えではなく、道長何するものぞという政権批判と言ってもいいのではないか。自己憐憫や呪いなどに走らず堂々と生き、新天地としてのぞんだ大宰府では、「刀伊の入寇」という、誰もが経験したことのない事態に遭遇する。
ところが彼は、扱いにくい現地の守や在地勢力を結集して、この外敵を食い止め追い払う。なんだか後の武士の萌芽を見る思いで、こういう人物が存在していたこと自体が、この時代の裾野の広がりを感じさせ、華やかで平和な時代と勘違いしている我々を、次の時代へと緩やかに導いているような気がする。
とにかく、様々な人物を包容した、幅の広い時代だったと実感させてくれた作品だった。
再読どころか、何度でも読み直したいものである。
永井路子の最高傑作
2024/04/30 09:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
永井路子の歴史小説はほとんど読みましたが、この「この世をば」が最高傑作だと思います。藤原道長という摂関政治の全盛期を築いた人物から、権力とは、運とは、様々なことを考えさせられます。喜怒哀楽が激しい道長の性格が生々しく感じられ、千年昔の人々がとても身近に感じられる、素晴らしい作品です。
有名なこの世をばの歌を詠んだ時は、月は欠けゆくものだと思いもしなかったであろうことを思うと、栄華の無常も感じました。復刊されたことがとても嬉しく、多くの方に広く読まれて欲しいと思います。
うまく行き過ぎて
2024/08/11 23:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻では、ますます、道長の運命がうまく行回ります。全ての強運を藤原道長という人は受け取っているようで。真実は不明ですが、むしろ、自分の出世のため、策略でライバルを追い落として行く方がおもしろいのに、なんて。