壁(新潮文庫)
著者 安部公房
ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他...
壁(新潮文庫)
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商品説明
ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。そして……。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った野心作。(解説・佐々木基一)
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壁は、絶望的な画をかくためにある。らしい。
2002/01/26 02:43
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:プジタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なくした名前と、からっぽな胸のうちと、世界の果てにまつわる素敵な寓話。牧歌的なまでに押し寄せてくる詩情が快い。
安部公房の小説世界は、非常に閉鎖的で、その閉鎖性が極限に達したときにぐるりと世界が裏返るような感覚がある。私という閉じた世界が、めくり返されて世界全体になってしまうような感覚だ。その眩暈にも似た感覚が、安部中毒患者を生みつづけるのだろう。本作は、クラスメイトとの間にズレを感じ始めた田舎の優等生(小学五年生くらい)に特におすすめ。
不条理の世界で生まれた不変なるもの。
2002/12/09 10:59
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:葉月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あなたは誰ですか。
そんなことを問われて、まともに考える人間などいない。
いたとしても、ごくごく少数の変わり者である。
けれどその答えを生きている内に導きだせたなら、後の人生がとても楽に過ごせるのではないだろうか。そんなことを思う。
わたしは誰だろう?
その問いに答えるための鍵が、この本には眠っている。
ただし、鍵はありとあらゆる場所に、そして一読では気付かない場所にも隠れているので、要注意。
あと何回再読することになるだろう
2001/09/20 17:31
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:呑如来 - この投稿者のレビュー一覧を見る
何度読んでもこれほど新鮮に感じられる小説は他にない。この小説を読むたび、やはりカフカの精神を後継することができたのは安部公房だけだ、と実感する。真知夫人による挿絵も効果的に小説世界へ誘ってくれる。
カルマ氏については島田雅彦が『僕は模造人間』の中で共感を示しているが、私もカルマ氏やアルゴン君が他人とは思えない。
「壁が皮膚の役目をしてくれている」(177頁)
2022/07/03 11:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
硬質ながら詩情があり、文字なのに映像が思い浮かび、シュールなのに生の現実を感じさせるこの稀有(とも云える)文体にまず酔わされた。映画『2001年宇宙の旅』(1968年)よりもずっと前に、137~8頁や213頁のような描写が本作でなされていたとは驚きの一語。むき出しの実存世界において如何に自己を回復するか、あるいは何ものかに絡めとられてしまって終わるか、現代を生きる人間にとっての永遠の課題であろう。なお、『砂漠の思想』(講談社文芸文庫版)の68頁以下に、「Sカルマ氏の素性」という著者のエッセイがある。併せ必読かと。
初安部公房
2022/07/22 13:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
100分で名著で砂の女をとりあげていて安部公房が気になりました。砂の女が無く、こちらも名著で比較的読みやすいのかな?と購入。
壁
2001/05/05 13:37
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:55555 - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞受賞作品の「壁」。主人公はある日名前を失う。そして、様々な遍歴を経て、「見渡すかぎりのこう野です。その中でぼくは静かに果てしなく成長してゆく壁なのです。」という認識に至る。
シュール
2024/06/09 10:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みみりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
安部公房の書く話は、既存の概念だとか常識だとかから外れた、シュールな話が多い。この「壁」もそうである。
名前が自分から離れて独立した存在となる「S・カルマ氏の犯罪」、自分の影を獣に食べられてしまう「バベルの塔の狸」・・・読んだ後は自分の回りの全てのものが信じられなくなります。
異次元
2022/06/28 13:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:deka - この投稿者のレビュー一覧を見る
周囲の目を気にしながら生きている今だけれど・・・気にされている怒られるイラつかれるということがありがたいと思わなくてはいけないのかもしれない。。。けど自分の想像力からは読み進めるのが困難だった。
理解できたなどとは言えないが
2023/05/22 22:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
目覚めると名前を失っていた男。影を奪われ透明人間になった男。身体から糸がほぐれて繭と化した男。あり得ない状況の中、コミカルに展開していく様は、エンデの描く寓話も思い出させるが、教訓めいたものを見出すことはできない。名前を失った主人公の作品はカフカのようでもあるが、あのような深刻さは感じない。日常から大切なものを奪い去り、真に重要なものを炙り出そうとしたのか。あるいは日常の足元の儚さを描こうとしたのか。理解できたなどとは言えないが、公房の出発点として他の作品の理解のためにも引き出しに入れておきたい。