確かに、あの作品の匂いも
2024/12/23 14:44
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ねたばれ
信長に反旗を翻して有岡城に籠る荒木村重と翻意を迫り捕らえられた黒田官兵衛の物語と言えば、どう考えても歴史ものなのだが、この第166回直木賞受賞作はまさに曲者、この二人が探偵になって謎を解き明かすミステリーにもなっているのだ。この本では村重が信長に背いたのは長島の一向一揆等に見られた、その残虐性に呆れ、恐れをなしたからとなっている、その被害者の一人が村重の妻、千代保だった。なぜ、官兵衛は敵である村重に助力して難事件を解決するヒントを与え続けたのか、村重は官兵衛自身の知恵への自負が抑えきれなかったのだと思っていたのだが。解説のメントライン氏が、「羊たちの沈黙」の真面目なオマージュパロディでもあると語っている、うん、なるほどと思った
素晴らしい本です
2024/08/30 15:58
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投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリー小説の大家が挑む歴史推理小説です。個人的に情報なしで読み始めましたが、見事に推理小説として成立していますね。
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投稿者:氷狼 - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者から、てっきり現代の館ものの類いかと思って購入したら、戦国時代とは。
刻は荒木村重が織田に反旗を翻し、有岡城に籠もり、その説得のために諸将が訪れ、最後に来訪した小寺官兵衛が土牢に繋がれる辺り。
この時、主である小寺の姓を名乗っていた、後の世に名軍師と謳われる、黒田官兵衛。
籠城中の有岡城で起きる不可思議な事件を、村重に請われ、解く官兵衛。
しかし、敵味方の間で直接答えを教えることは出来ず、ヒントとして。
度々発生する不可思議な事件。
表向きと裏向きの答え。
村重に助言する官兵衛の真意。
最後に明かされる真相とは。
実在の武将も登場し、最後にその後の顛末が語られる。 村重が信長公に翻意した理由は、数ある仮説の一つではありましょうが。
いつもとは違うテイストのミステリー。
籠城中の城中で起きるそれは、よくよく考えれば、犯人を絞ることはできそうだが、なかなかに難しくもあり。
主人公は荒木村重か官兵衛か。
読み進めていくと、実は、かなと。
果たして、夕闇に黒ぐろと沈む有岡城囚われていたのは?
荒木村重と言う人物、ある程度知ってはいたが、そこまで知っているわけでもなかったので、知る良い機会になったかなと。
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
ずっと文庫化されるのを楽しみに待っていました!作者の書く小説のジャンルの幅広さにすごいなぁと思わせられました!戦の渦中にあって殺人事件の謎を解くというなんともまずはあり得ない設定を納得感ある理由でミステリーに仕立てる見事さと、話が進むにつれて徐々に孤立し、疑心暗鬼になる村重の胸中がうまく描かれているなあと思いました。官兵衛の出番自体は少なめですが、終盤になって、やっぱり主役は官兵衛!と思いました。
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166回直木賞受賞作品。
戦国武将、荒木村重を主人公に地下牢に幽閉された黒田官兵衛を探偵役に、籠城中の場内にて巻き起きる4つの事件の謎を明らかにしていく物語。
読んでいる時は、当時の言葉で書かれた地の文や話し言葉、風習や価値観に読みづらさを覚えたものの、米澤穂信先生の筆力により、脱落することなく最後まで読むことができた。
歴史としての史実のリアルさと推理などのエンタメ要素がとてもうまく融合していてとても良かったです。織田信長に謀反するため、”その時”を待つ荒木とその荒木村重に幽閉された黒田官兵衛が城の中で起きた数々の事件を解き明かす様がとても面白かったです。その事件の裏には恐ろしい陰謀があり、それが最終章で一気に明かされていく所がとても気持ちよかったです。そして一人の黒幕が明らかになりそれで終わりと思いきや、もうひとつの黒い野望が明らかになったところがミステリー作品としての醍醐味を味わえてとても良かったです。
読めば読むほど重たい雰囲気になっていくこの作品。村重はどんどん孤独さを増していく上に、それに追い詰められていく。しかしそれでも村木家を守ろうと信念を貫いた姿はとてもかっこよかったです。そして最後の最後にこの本を読み切った人だけが味わえるご褒美のようなラストにとてもグッときました。これが直木賞作品に選ばれたのも納得だと思います。
この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
荒木村重:杉田智和
黒田官兵衛:中村悠一
竹千保:茅野愛衣
荒木久左衛門:置鮎龍太郎
中村新八郎:松岡禎丞
池田和泉:鳥海浩輔
野村丹後:安元洋貴
北河原与作金勝:岡本信彦
瓦林能登入道:茶風林
高山大慮:チョー
鈴木孫六:中博史
下針:江口拓也
安倍自念:結川あさき
郡十右衛門:阪口大助
秋岡四郎介:梅原裕一郎
伊丹一郎左衛門:細谷佳正
乾助三郎:石川界人
森可兵衞:武内駿輔
無辺:千葉繁
栗山善助:梶裕貴
竹中源助:子安武人
松壽丸:佐藤聡美
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米澤穂信のうまさに脱帽.文章の調子というかテンポというか歯切れというか,まあそういうのがすごく良くって,時代小説ってこんなにいいものなんだと思わせた上に,さらに極上の連作ミステリー.しかも,ただのミステリーで終わらせないクライマックス.非常に良い作品を鑑賞させてもらい,感謝しかない.米澤先生ありがとう.
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文庫化するのを待って読んだ小説。
織田信長に謀反した荒木村重の有岡城で起こる事件がミステリとして戦国時代としてより緊張感のあるものになっている。濃厚で面白かった。
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荒木村重といえば、家臣妻子を残して逃亡した戦国一の臆病者と言われている。
最近では、逃走したのではなく毛利に援軍を求めて城を出たという説も出ているが、あまり好意的な扱いを受けていないと記憶している。
その村重を結果を曲げずにどのように描くのか、とても興味があった。
史実という縛りがある中で、どのようにミステリー要素を織り込んでいくのかも楽しみだ。
米穂さんは、驚くことに黒田官兵衛を安楽椅子探偵に据えて、物語を進めていった。
とてもおもしろい発想だ。
事件が起こるたびに、村重と官兵衛との対峙にワクワクしてしまう。
話を追うことが精一杯で、考えることをとっくに放棄したこちらとしては、「もっとはっきり教えて!」と官兵衛(岡田准一)に縋りたくなる。
徐々に意外な真犯人が浮かび上がり、ラストは怒涛のどんでん返しが待っていた。
息することすら忘れて、ラストまで突っ走った。
主人公は村重だったはずなのに、いつの間にか官兵衛に取って代わられていた。
これが一番のどんでん返しだったのかもしれない。
登場人物のその後も知れたのは、ありがたかった。
難しい言葉や漢字に躓きつつ、読了に時間がかかってしまったが、もう一度細部を観察しながら、読み直したいと思っている。
2025/05/10 08:09
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歴史小説とミステリーの組み合わせを初めて読んだが、
とても面白かった。
各所に散らばる伏線もきれいに回収していて、読んだあとも心地よい気分になった。
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有岡城主である荒木村重と幽閉された黒田官兵衛が、地下で肩を寄せ合い語らう様子が、映像を見ているかの如く鮮明に浮かんだ。時代小説をベースに、村重と官兵衛が城内でおこる数々の難題に挑んでいく様子は、謎解きの要素が豊富であり面白かった。作品全体として難しく感じたが、読み始めた時に抱いた印象と、クライマックスで明らかになる作品の主題に大きな変化を感じたので、再び読む時には更に理解を深められるかもしれない。
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歴史小説は、好きなので面白かったです。
有岡城の籠城戦を背景に起きる怪事件の謎を解く推理小説は、フィクション感も感じずに読めました。
村重の側近の名前が覚えられずに少し抜けた部分があるのは自分の力不足かな。
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面白かった!
叛旗を翻した荒木摂州が、籠城したけどそれから精彩を欠いていた、その時の状況を見事に想像させてくれている。
なるほど籠城は難しい。有岡も小田原も壮大で堅固な城も結局内から崩れていく。しかも崩れはそれぞれの怠慢ではなく、皆自分の国を思っての、生き方を思っての行き違いによる、業の深いはなし。
ふと思ったけど、総構えの城の中では、いつも戦に明け暮れてじっくりと見ることのなかった、民の苦しい暮らしに近づくことで、戦に疑問を生じるのが、いかに武士でも普通なのかも。
その中で独特の存在感を放つ官兵衛さんとおだしの方。その抉るような言葉。たまったもんじゃない。
「信長の棺」からの信長さんに逆らった人達の再評価に続く話かと思ったけど、結局、このお話の摂州さんもそんなに輝きを放たなかった。でもその代わり、武士のなかでも人間くささを匂わせてる。
なんで抜け出したのか。なんで生き残ったのか。
抜け出してからの彼を想像するのは、とても難しいけど、何を犠牲にしても本当に望むことに突っ込み、でも穢土の惨劇を目の当たりにして、本当に恐れることを見つけてしまったのだろうか、と思う。
さて次は、松永弾正のお話を読もう。
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時代小説且つ推理小説。而して直木賞受賞作。
米澤穂信は私の推しの作家の一人なので文庫で出てる分は大概読んでいる。稍ビターな味わいの推理小説が著者の売りだと思っていたが、時代小説(然も主役は黒田官兵衛と荒木村重)とは随分とまた変化球を投げてきたものだ。
私の記憶する限り著者が時代小説を手掛けるのはこれが初めてだったと思うが、中々どうして佳い文章を書く。独特のリズミカルな文体は一種京極夏彦の其れをも髣髴させる。
内容は完全にミステリである。織田信長に叛旗を翻した村重は籠城中の有岡城内で起こる不可解な事件の解決を迫られる。行き詰まった村重は已む無く土牢に幽閉した官兵衛の智恵を得ようとする……。
時代小説の特性をミステリに組み込む手腕は申し分無し。古典部シリーズ或いは小市民シリーズにも一脈通ずる読み味がある。
其れのみならず私が評価したいのは一向宗の思想と仏教哲学の取材が丁寧なところだ。時代小説となるとともすれば華々しい武将のキャラクターに重点が置かれがちだが、宗教とその思想を疎略に扱わず寧ろ作品の中核に据えたのは本作が単なる娯楽に終始しない文学的価値を持つ所以であると思う。
更に付け加えると本作は仏教文学的性格と同時に戦争文学としての一面も併せ持つ。殺戮と飢餓が織りなす地獄絵図の描写は大岡昇平の『野火』或いは遠藤周作の『深い河』のワンシーンを思い出させる。
斯くも本作の構造は複雑にして重厚である。それでいてミステリとしては百戦錬磨の手腕が遺憾無く発揮され、格調高い文体が時代小説の妙を演出する。
米澤穂信は以前に『真実の一〇メートル手前』が直木賞の候補作になった。彼方は彼方で面白かったが、彼方で逃して此方で受賞というのは何か納得出来る気がする。本作には直木賞の名に愧じぬ更なる高水準のクオリティがある。恐らくは著者渾身の労作であろう。
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これは歴史小説の体裁を取っているが、歴史小説ではない。そうかと言ってミステリーでもない。歴史上の人物や史実を使ってストーリーを作っているが、あまりその必然性はないのかもしれない。
荒木村重を中心とする物語で、信長にたてついて場内にこもっている様子が描かれているが、城内で発生する殺しの犯人探しがメインのストーリーとなっているが、その謎解きをするわけでもない。また史実にもあるように信長の使者の黒田官兵衛を捉えて幽閉するが、その殺人の犯人や城内の様子について官兵衛の知恵を拝借しようとするが、それほど多くのやり取りがあったわけではない。実は官兵衛も村重を陥れようとしていることが判明するが、それは最後の方でやっと判明する。官兵衛は最後のほうで開放されたあとやっと物語に跡を残すが、その回収は見事である。
歴史小説やミステリーとしては評価しないが、小説としては秀逸なのだと思う。
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折れた竜骨のように、その世界での常識(今回は戦国時代)を活かした展開が面白い。籠城中の重苦しく停滞した空気の中で、最後のカタルシスが良い。あの人、圧倒的光……。