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  • みんなの評価 5つ星のうち 4.5 39件
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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2001.2
  • 出版社: マガジンハウス
  • サイズ:20cm/206p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-8387-1290-1

紙の本

体の贈り物

著者 レベッカ・ブラウン (著),柴田 元幸 (訳)

エイズ患者を世話するホームケア・ワーカーを語り手とし、彼女と患者たちとの交流をめぐる、生と死の、喜びと悲しみの物語。雑誌『オリーブ』、『鳩よ!』に掲載された7編に、初訳3...

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体の贈り物

税込 1,760 16pt

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商品説明

エイズ患者を世話するホームケア・ワーカーを語り手とし、彼女と患者たちとの交流をめぐる、生と死の、喜びと悲しみの物語。雑誌『オリーブ』、『鳩よ!』に掲載された7編に、初訳3編を加える。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

レベッカ・ブラウン

略歴
〈ブラウン〉1956年米国生まれ。作家。「体の贈り物」でラムダ文学賞、ボストン書評家賞等を受賞。他の著書に「アニー・オークリーのガールフレンド」「私をここにとどめておくもの」など。

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みんなのレビュー39件

みんなの評価4.5

評価内訳

紙の本

「あたりまえのこと」

2004/06/12 00:48

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:TOYOKUMA - この投稿者のレビュー一覧を見る

『体の贈り物』。
この本を読んで、
「強さとは何か?」ということについて考える。
この小説の中には一人の女性が生きている。
彼女の仕事は死にゆく人々を見守ることである。
死にゆく人々を前にすれば誰もが言葉少なになり、
いつもの自分の顔でいようと思っていても、
つい暗い表情になってしまう。
泣いてしまうこともあるかもしれない。
でも彼女は「強い」。
死にゆく人々を前にして、
人間としてやるべきことをちゃんと行う。
これは簡単なことのように思えるけれど、
とても難しいことである。
僕はこの小説を読んでいるだけで、
何度か泣きそうになってしまった。
死にゆく人々の姿が悲しかったわけではない。
死にゆく人々を前にして彼女が行ったこと。
彼女が彼らに語りかけたことがとても「あたりまえのこと」だったからだ。
「あたりまえのこと」を行うことが、
時にはとても難しく勇気のいる行為であることがある。

翻訳は柴田元幸。
彼の翻訳した小説が僕はとても好きです。
それは彼が「翻訳しよう」と思った小説が彼にとっては、
『訳した本はどれも、届くべき読者に届くことを祈りつつ世に送り出すもの』
であるということに、
大きな理由があると僕は思う。

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紙の本

いつまでも語り継いでいきたいものが在るから、僕たちは生きていく。

2004/04/13 02:53

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:すなねずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 柴田元幸さんの「あとがき」が、この本の素晴らしさを見事に伝えてくれている。一冊の本がその本に関わる多くの人、それぞれの「?(何か)」がひとつになってこんなに素敵な本が生まれて、それがたくさんの人々に伝わっていく。それはきっと、涙が出てくるほどに仕合せなことであるだろう。
 この本は「エイズ患者を世話するホームケア・ワーカーを語り手とし、彼女と患者たちとの交流をめぐる、生と死の、喜びと悲しみの、希望と絶望の物語」である。でも、そういうモラリスティックで重たい感じの話はちょっと……と思う人が多いんだろうな、と予測したうえで柴田さんはこう続ける。

>

 人は意識的にせよ無意識的にせよ、皆それぞれの<物語>を持って生きている。そのこと自体は悪いことではない。でもその<物語>は、常に自分のなかで新たに生き直される必要がある。なぜなら<物語>というものは必ず<排除>を伴うからだ。誰かを傷つけ、死に至らしめさえするからだ。人は、たいてい其処のところで間違う。躓く。強靭な一つの<物語>を作り上げればそれでいいのだ、生きるとは、自己実現とは、あるいは自己表現とは、そういうことなのだというふうに。それとも、周囲の人々と共に或る一つの<物語>をシェアしていけばいいのだというふうに。それが誰かを殺すのだということに気付かないふりをして。生きるということは、そんな<物語>が終わるところから始まるはずなのに……。
 この『体の贈り物』という本は読む者ひとりひとりに、その人だけの、それでいて決して「その人だけ」には終わらない、特別な贈り物を手渡してくれる。今の僕に対しては「姿の贈り物」という贈り物。

>

(こんな素敵な贈り物をもらったからには……と決意を新たにする僕であった。)

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紙の本

物語を捨てる時

2003/05/27 18:45

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:アベイズミ - この投稿者のレビュー一覧を見る

ヘルパーの仕事を始めて、この夏で三年になる。

私は未だこの仕事について、他人に語ることにためらいがある。同業者の人たちにもなじめない。福祉系の大学に進んだけれど、そこに蔓延する雰囲気になじめずに、二年でそこを後にもした。介護をするという目的で人と暮らしたこともある。そして、見事にそれにも失敗をした。それでもまた、この仕事に戻ってくる私という人間はいったいなんだろう。

周りの人は首を傾げる。人間との関わりを否定しながら、人と深く関わることなしでは成立しないモノに、惹かれていく自分というのは、いったい何者なんだろう。時として、すべてのことが重くなる。「人が好きだから」そう疑いもなく答える同業者に会う度に、自分がいかにこの仕事に向いていないか、いかに危ういバランスで働いているかを思い知る。

「介護」とは良くなることのない仕事だ。時として、必死になる家族や私たちはそれを忘れてしまう。どんなに手を尽くしても「死」からは逃れられない。一時奇跡のように快方に向かったとしても、それは奇跡であって、結果ではない。どんなに手を尽くしても、結果さえでないこともある。時間をかけても相手との距離は縮まるとは限らない。むしろ開いていくことさえ珍しくない。もしくは溝は溝として残るのだ。

「介護」とは非日常だ。それが日常になる。理不尽なこと、理解を超える出来事が、当たり前になる。ココロは鈍くならざるを得ない。介護をする人たちすべてが何処かでココロを押し潰しているように思う。そうしなければ、務まらない。次々に起こる出来事に、自分という存在が面白いように振り回されるのだ。

その先にいったい何が待つのだろうか。

それでも、辞めようとは思わない。ナゼダロウ。理屈にはならない。ただただ、病んでいる人の側にいるのが好きなのだ。小さくなっていく、透けていく、自分という存在が心地よいのだ。言葉を交わすことも望めない世界が、好きなのだ。そこに流れる時間が、とても濃く贅沢であるように感じるのだ。もしかしたら、人は不謹慎と言うかもしれない。それでも、密かな楽しみを満たすかのように、この仕事に惹かれているのだ。とにかく私は人が「死ぬ」その最後の瞬間まで立ち会っていたいのだ。

「体の贈り物」の中には、私が惹かれているなんとも静かな時間が、行く度も書かれていた。ヘルパーの仕事は、もう少し雑音が多いにぎやかな仕事ではある。とりあえず「死」というモノは少し遠くに置いてあって、毎日の雑多な事柄を対処していく方が遙かに多い。

それでも、私はいつも、この静かな感じをアタマの何処かに置いて仕事をしている。私が聞かれ答えること、話すこと、ヘルプすることすべてが、大きな目的に添ってなされている。相手の状態を--肉体的であれ精神的であれ--楽にするために、五感を働かせ、頭を使う。私がすることでありながら、私の介入が小さくなっていく。私など、そこにはいらないも同然なのだ。

私のありよう、生きようなど、この世界では意味がない。どうするか、それだけだ。「やさしさ」「思いやり」では寸法が合わない。もっとクールでもっと静かな。かけひきさえ存在する世界。それが私が居着こうとしている、世界なのである。

この本は、物語としての贅肉をとことん削ぎ落として書いてある。誰かにとって「物語」はいつも、甘く切なく心地がよい。それでも、それらを捨てたとき、捨てねばならないとき、むき出しの救いのない世界が現れる。それがこの本だ。この荒々しく静まり返った世界こそが、今の私が一番求めている世界であり、行かねばならない世界なのだと思っている。

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紙の本

人生の形成のための数々の葛藤

2002/02/05 23:42

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:楓   - この投稿者のレビュー一覧を見る

 エイズ患者と介抱士とのふれあいを描いた連作短編集。エイズ患者? と聞いて引いてしまう人、ちょっと待って! 訳者・柴田元幸氏があとがきでこの本の素晴らしさを語り尽くしていますが、この本は生と死についてを問い詰めるというような重過ぎる話でもなければ、お涙ちょうだいの人情話でもありません。語り口はいたってクール。比較的短い文章で語られるのは主に正確な風景描写で、心理描写はほとんどなされていません。それなのに、エイズ患者と介護士、双方の悲しみや切なさや悶えなどの気持ちが浮き彫りにされています。見事に。
 並々ならぬ力量を感じさせる著者レベッカ・ブラウンですが、本国アメリカでの知名度は今ひとつらしいです。逆に、この本を日本に紹介した訳者の慧眼には相変わらず感心してしまいます。柴田元幸氏にとっても、代表作になった作品。

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紙の本

読まないとソンする本。

2001/06/06 13:00

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:まーしゃ@B◎◎KRACK - この投稿者のレビュー一覧を見る

 読んで「よかった」「トクした」と思う本に出会うことはとてもうれしいものですが、残念ながら毎回そうだとは限りません。でも、この本の場合、読んで「よかった」「トクした」なんてもんじゃない。「読まないとソンする」本です。

 訳者もあとがきでいっていることですが、この本は「とにかくよんでもらわないと魅力がわかってもらえない」本です。「エイズ患者を世話するボランティアが語り手の、彼女と患者たちとの心の交流」が描かれているのですが、こんな紹介ではちっともこの本の魅力が伝わってこないどころか、「それはちょっと…」と引いてしまう人もいることと、思います。

 でも、違う。あなたが想像しているような陳腐な物語ではありません。

 エイズや闘病や死が、余計な感傷なしにシンプルに描かれています。たくさんの人が死んでゆきます。世話をしている人が死んだら、彼女はほかの、世話を必要としている人のところへゆきます。

 どうしようもない絶望感がそこかしこにあります。でも、確かな希望がみえてくる。まさに「贈り物」といえる作品です。

 とにかく、だまされたと思って読んでみてください。

【B◎◎KRACK】 No.86 2001/06/06発行●ちょっと大きな本棚

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紙の本

レベッカ・ブラウンから贈られた『パンドラの箱』

2001/04/17 17:34

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投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る

 何と言えば良いのか、この作品には、安直に「感動した」とは言えない何かがある。

 「エイズ患者を世話するホームケア・ワーカーを語り手とし、彼女と患者たちとの交流をめぐる、生と死の、喜びと悲しみの、希望と絶望の物語」という訳者・柴田氏のコメントを見てしまうと、読む前は少し腰が引けてしまうところがないと言えば嘘になる。しかし、読み始めれば、そんな懸念が無用であることがすぐ分かる。
 この短編集のどこ作品にも、安直な救いは描かれていない。安直な感傷もない。では、何が描かれているのか。それは、ささやかな誇り、「一人でシナモンロールを買いに行くこと」「自分でほんの一口のパンケーキを食べること」「自分の足でホスピスを出ていくこと」を支えにして生きている患者たちの力強さだ。そして、ケアをしてきた患者達が決して快方に向かうことなく死の道へと進んでいくにもかかわらず、プロフェッショナルとして誠実に「仕事」をこなしていく力強さだ。見守るケア・ワーカーも、見守れる患者たちも、本当に精神的にタフだ。

 こんな「タフネス」を描くこの作品は、レベッカ・ブラウンから贈られた「パンドラの箱」なのだと気がついた。パンドラとは、神から全ての贈り物を与えられた女性という意味だそうだが、この作品の主人公のケア・ワーカー(そして読者も)は、患者たちから様々な贈り物=人間の尊厳を貰っているのだ。そして、この贈り物には、ギリシャ神話のパンドラの箱と同様にとても辛いことが詰まっている。しかし、その辛さを乗りこえた先に、最後に残った「希望」が見えてくる。苦くて、少ししょっぱい「希望」が。

 とにかく、一気に読み終わってしまう。でも、何度でも読み返したくなる一冊だ。

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紙の本

しあわせのかたち。

2015/10/26 18:30

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投稿者:ひでり - この投稿者のレビュー一覧を見る

満たされない身体。残された感情。逃れようのない死。命を削ることで成り立つ日常。それでも、現実は全てを奪い去っていくだけではない。得られたものは、小さな幸せ。

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紙の本

「死」の別の顔

2001/10/18 23:56

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:nory - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ホームケア・ワーカーの「私」と彼女が世話をするエイズ患者たちの大切な時間を描いたとてもシンプルで美しい物語である。何かをとりたてて大げさに訴えることもなく、ただ彼らの生活がやさしく静かに描かれている。
 しかしそれは、近いうちに確実に死を迎える人たちとそれを見守るものの生活だ。患者たちは死を受け入れようと努力し、「私」はプロのケア・ワーカーとして、ときにはひとりの友人としてできる限りのことをしようとする。

 この本は「〜の贈り物」という題名がついた11編の短編からなっているのだが、世話をしている方が一方的に贈り物をしていると思うのは傲慢な考えだ。先に死を迎える人たちからの贈り物は、役に立ったり、目に見えたりするものではない。体のどこかでかすかに感じるものだ。そして、当然ながらその贈り物の中身はひとりひとり違っている。

 この物語を読むと、「死」というもののまったく別の顔が見えてくる。
 幸せだったと死んでいけたなら、できるだけのことはすべてやったと見送れたなら、それはとても幸福な死だ。そんな死もあるのだと気づかせてくれる。

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紙の本

今までにない感覚

2001/07/03 11:05

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Mihi - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「とにかく読んでもらわないと魅力がわかってもらえない」「それってちょっとと思われる方々のなかに、実は、この本を読んだら気にいってくれる方が絶対にいるにちがいない」−−訳者あとがきにある通りになってしまった。

 こういう話は苦手なはずだった。だが、この本は読めた。しかも心地よく、さわやかに。

 「この手の話」にしては熱すぎない。かといって、冷たすぎない。

 初めての「感覚」だった。確かに読んでみないと分からない。読んでよかったと思う。

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紙の本

レベッカ・ブラウン初の短篇集である。決して明るく楽しいものではないが、心に染みる好短編が幾つもある。

2001/04/04 15:16

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:安原顕 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 レベッカ・ブラウン初の短篇集である。著者は1959年、米国生まれの女流作家で、本作には「汗の贈り物」から「悼みの贈り物」まで全11作が載っており、内容はすべて「エイズ患者を世話するホームケア・ワーカーを語り手とし、彼女と患者たちとの交流をめぐる、生と死の、喜びと悲しみの、希望と絶望の物語」(柴田元幸)とあるように、決して明るく楽しいものではないが、心に染みる好短篇が幾つもある。冒頭の「汗の贈り物」は、こんな話だ。毎週火曜と木曜の午前、私はリックのアパートに通っていた。行く前に大抵は電話をかけ、何か欲しいものはないかと訊いていた。リックは厳密な自然食主義者ではあったが、近所のパン屋の焼くシナモンロールだけは例外で、日曜日の朝、焼き立てを買ってもいた。しかし、この日の電話では「要らない」と言う。リック宅に着くと、具合が悪いらしく、彼は寝ていた。「医者を呼ぼうか?」と訊くと、「都市共同体サービス」を呼んだと言う。リックは痛がり、寒いとも言うので、「私は自分の体をすり寄せて、彼の尻が私の膝にくるまれ私の胸と腹が彼の背中に当たるようにした。彼を暖めようと、うしろからぴったりくっついた。彼は私の片手を腹の上に引き寄せた。私はその手を開いて、指をぴんとのばし、手のひらで腹を覆うようにした。彼は自分の手をそこに重ねて、キルトと同じようにぎゅっとつかんだ。私の手の甲に、彼の手の汗が感じられた。腹の汗も、シャツごしに私の手のひらに感じられた。体じゅうから脈の動きが伝わってきた。脈は速かった。/彼の体に巻いた両腕に私は力をこめた。そんなことをしたって、病気を絞り出せるわけではないのだけれど。/しばらくして、震えが弱まった。汗はまだかいていて、彼の顔の側面がさっきより濡れているのが感じられた。泣いていたのだ」。リックはもう一人のヘルパー、マーガレットの車で入院する。私はリックを見送った後、彼のキッチンやバスルームを掃除する。リックの妻バリーが亡くなってから、リックはパン屋に行って買うようになっていたが、そのパン屋にも行けなくなった頃、私が彼の面倒を見るようになったのだ。私は、彼が二人で食べようとしつらえた食卓に坐り、目を閉じ、頭(こうべ)を垂れ、リックはどんな風に考えたのかを想い、バリーの姿も想像した……。全11作とも20枚前後、内容はみなこんなタッチだが、素材が素材だけに、作者は感傷的にならぬよう留意している。そして、この「独特の幻想的な雰囲気、男と女の、あるいは女と女の、強烈な愛の世界」「中学英語の範囲に収まるような文章と単語を使って書かれている」と柴田元幸は書いている。

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2005/04/30 12:56

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2007/09/05 16:54

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2005/05/14 06:02

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2006/05/05 22:15

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2007/03/18 23:28

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