紙の本
青春時代の特権とは?
2006/10/14 05:46
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校時代の校内行事に演劇コンクールがあった。学年8クラスを4チームにわけて 4ヶ月程度稽古をした上で コンクールで出来映えを競うものである。「青春時代」だけに 演劇だけでは終わらず 恋愛やら人生論やら 青臭いもので満ち満ちてしまうのはしょうがない。高校の夏休みは そんなもので費えてしまうのが 23年前の日々だった。
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そんなコンクールで取り上げられたのが 本作の「邯鄲」であり それを見ていて 三島の演劇に興味を感じ 本作を手にとった。*
基本的には各作品ともに一時間程度の一幕ものであり 切れ味のよさは抜群である。題材を能にとりながら 上手に現代に翻案する手際は際立っており 題材のテーマと (当時の)現代の精神の融合には舌を巻く。三島は演劇に その才能が最大に有ったと聞いたことがあるが なるほどと思わせるものがある。
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1980年代初頭の高校生には ちょっと難しかったはずである。41歳になった小生は 今はそう思う。但し あの頃はそうは思わなかった。難しいことに 分かった顔をして立ち向かうのも 青春時代の特権である。
紙の本
能の普遍性を現代モノに翻案する三島ならではの戯曲集
2006/11/26 22:43
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
能楽に造詣の深い三島由紀夫がまとめた8編の戯曲集である。戯曲集といっても能楽に原作を求めて、その原作の味を生かした戯曲である。原作とは、邯鄲、綾の鼓、卒塔婆小町、葵上(あおいのうえ)、班女(はんじょ)、道成寺(どうじょうじ)、熊野(ゆや)、弱法師(よろぼし)の8編である。
これらの作品は一つを除いて実際に上演されたことがあるという。海外でも上演されて好評を得たそうである。能楽の芝居としての筋書きは、オペラなどでもそうであるが、それほど複雑なものはなく、むしろ簡潔で分かりやすい。ただし、そのまま受け入れられる分かりやすさではない。
幽玄こそが観阿弥、世阿弥が追究したテーマであるので、登場人物には霊がよく登場するし、そのために面を付けてくるわけである。どの作品も原作の香りが漂う傑作であると思う。けっして原作そのものを現代風にアレンジしただけではないし、それを目的ともしていない。
むしろ、全く別の作品であるが、原作の香りの濃淡はあるものの、読み手としてはその香りをどの程度嗅げるかが楽しみの一つであろう。現代劇ではあるが、昭和31年に発表されたものなので、それ自体が相当な古さを感じさせる。現代風というよりは昔風の懐かしさのある時代背景を感じさせるのである。
巻末に三島本人の昭和31年当時のメモとドナルド・キーンの昭和43年当時の解説が掲載されている。これも随分興味深い解説である。三島本人の解説によると、この戯曲の端緒となったのは、郡虎彦氏の鉄輪、道成寺、清姫の戯曲に影響を受けたからだとしている。郡氏は能の時代をそのままにして、近代的な物語を作ったが、三島自身は、能の自由な時間的、空間的処理を生かし、主題を際立たせて現代に生かしたとその意図を語っている。キーンの解説もいつもながらその含蓄の深さには驚かされる。
私にとっては、実に収穫の大きい一冊であった。
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人の業はいつの世も変わりません。そんな、三島版謡曲リスペクト集。
個人的に、これは舞台で見たいけど、固定化された人物像で見たくないので、映像化して欲しくないたぐいのもの。
「班女」大好き。待っている人は、待っている時間も待っているのよ。だから私は待たない。私は待つわ。
ここから、能楽世界にデビゥする若人を待ってるゾ★(いるのか)
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演劇部にいた高校1年の頃、顧問の先生とつきあっていると噂だった二歳上の女子の先輩のいろっぽい姿がよみがえります。
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戯曲集です。今年、蜷川演出で舞台再演されます(今やってる)。来週観にいきます。難しいといけないので、予習に読みました。楽しみです。藤原君のミーハーなファンですが、こうして普通なら読まないような本に出会えることはいいような気がします。
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ハンガリー人の友達に薦められて読みました。(笑
初めて読む三島由紀夫。
読みやすかったです。
幻想的で、ひとつひとつがとっても美しい。
男と女の関係がいかに残酷で儚いか…
「卒塔婆小町」「葵上」「班女」はとくにお気に入り。
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能を三島らしい現代語で書いてある。三島は、戯曲を書いたり演出をしたりする才に非常に長けているということがうかがえる。しかし、僕は、残念ながら舞台演劇が苦手なのでその素晴らしさの一端をも感じ取ることが出来ない。残念だが、過去何度もチャレンジしてみてダメだったため、あえてこの作品を読むことだけで済ましてしまっている。
『邯鄲(かんたん)』(昭和25年:人間)
『綾の鼓(あやのつづみ)』(昭和26年:中央公論)
『卒塔婆小町(そとばこまち)』(昭和27年:群像)
『葵上(あおいのうえ)』(昭和29年:新潮)
『班女(はんじょ)』(昭和30年:新潮)
『道成寺』(昭和32年:新潮)
『熊野(ゆや)』(昭和34年:声)
『弱法師(よろぼし)』(昭和35年:声)
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私の文学の原体験は三島由紀夫だ。母親は、特に嫌がったが、三島由紀夫の華美流麗な文体に幻惑された。その後、読書歴は転転とするのだが、舞台に出会い、三島の戯曲に再会した。近代能楽集は、特に好きな戯曲集だ。今なお、演じ続けられているのが納得できる。
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能楽集、能楽集……と頭の中に描いて読むので、
この設定がいちいち素晴らしいと思ってしまう。
通りを挟んだ3階のビル二部屋だったり、
古道具屋だったり、病室だったり、家庭裁判所だったり。
「邯鄲」「綾の鼓」「卒塔婆小町」「葵上」「班女」「道成寺」「熊野」「弱法師」が読めます。
「卒塔婆小町」が好きでした。
言葉が美しく、ドキドキしちゃいます。
今現代能楽集があるけれど、ダメね。なんて思ってしまいました。笑
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元々戯曲関係が好きではなかったので持っていなかったのだが、「鹿鳴館」「サド公爵夫人」が楽しめたので購入。
面白かった。やっぱり戯曲でも三島の言葉は綺麗だな。中では「綾の鼓」と「卒塔婆小町」が好きだ。
本来の能の筋書きとは結末等、かなり変えているらしい。能に関しては知識皆無なのが残念。元を知ってる人だと余計楽しめるんだろうな。
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16歳の時に書いた『花ざかりの森』で文壇デビューした早熟な天才作家。頭脳明晰で論理性に富んだ作風ながら、作品の中では自分の内なる魔性や日本の伝統美への愛憎など論理を超えた美しさを追求しました。『仮面の告白』、『近代能楽集』、『金閣寺』、『豊饒の海』など
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三島由紀夫すごい!
お能を現代風にするとこうなる!
まねして、他の能楽をアレンジしてみたいけど、素人にゃ到底出来ない芸当。
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蜷川幸雄演出の舞台「近代能楽集」(演目は「卒塔婆小町」と「弱法師」)から入りました。それぞれ短編ですが、読み出すと他が物足りなくなるほどの濃厚さがあります。日本にも、三島脚本に負けない演出家がもっと育ってほしいものです。「弱法師」最後の台詞、「僕ってね、…どうしてだか、誰からも愛されるんだよ」には、全身鳥肌が立ちました。
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熊野をユヤと読めなくて、ふがいない私。
感情とか情景とかが全面に押し出されて、三島自身の解釈が書かれていました。
勉強不足で古典と比較できないもので、こんな話なのかとも思いました。
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三島らしさが如何なく発揮されてる作品集でした。「綾の鼓」と「卒塔婆小町」が一押し。やっぱ三島って言葉が綺麗。ト書きなので地の文がないのが残念。ものすごく綺麗な世界観なんだろうなぁ・・・。顔だけじゃない名優そろえた劇で見てみたい。