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- カテゴリ:一般
- 発売日:2007/08/01
- 出版社: 新潮社
- レーベル: CREST BOOKS
- サイズ:20cm/255p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-10-590061-8
紙の本
海に帰る日 (CREST BOOKS)
最愛の妻を失った老美術史家マックス・モーデンは、記憶に引き寄せられるように、小さな海辺の町へと向かう。遠い夏の日、双子の弟とともに海に消えた少女。謎めいた死の記憶は、亡き...
海に帰る日 (CREST BOOKS)
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商品説明
最愛の妻を失った老美術史家マックス・モーデンは、記憶に引き寄せられるように、小さな海辺の町へと向かう。遠い夏の日、双子の弟とともに海に消えた少女。謎めいた死の記憶は、亡き妻の思い出と重なり合い、彼を翻弄する。荒々しく美しい、あの海のように—。各国の作家に激賞されるアイルランド随一の文章家が綴った、繊細で幻惑的なレクイエム。2005年ブッカー賞受賞作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【ブッカー賞(2005年度)】妻を亡くした老美術史家マックス・モーデンは、小さな海辺の町へと向かう。遠い夏の日、謎の死を遂げた少女。病に倒れた、最愛の妻。いくつかの記憶は互いに重なり合い、彼を翻弄していく−。繊細で幻惑的なレクイエム。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ジョン・バンヴィル
- 略歴
- 〈ジョン・バンヴィル〉1945年アイルランド生まれ。「コペルニクス博士」でジェイムズ・テイト・ブラック記念賞、「ケプラーの憂鬱」でガーディアン賞、「海に帰る日」でブッカー賞を受賞。
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紙の本
クロエと彼の妻が交じり合う
2021/10/22 22:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読もうと思ったきっかけは二つある。一つ目は敬愛する読書好きとして知られていた故児玉清氏が絶賛していたこと、そして二つ目はブッカー賞を獲得していること、ブッカー賞を獲っているからと言って必ず読むということはないのだが、2005年の時は候補作に私が海外の作品では一番好きだと断言できるカズオ・イシグロ氏の「わたしを離さないで」も最終候補作に残っていたということが強く影響している、「あの作品を上回る評価を受けた作品、これは読むしかないだろう」となったのだ。海で死んだクロエという少女との思い出、主人公の亡くなった妻・アンナとの思い出、そしてクロエが住んでいた別荘の一室を借りて暮らす主人公の今、過去と現在がまじりあい、妻とクロエも交じり合う、こんな経験はしたことないけれどなぜかデジャヴに襲われる不思議な作品だ
紙の本
一時代前のイタリアエロシネマを見るような、なんていったらあまりに皮相にすぎるでしょうが、そういう部分と悲劇性が微妙にブレンドされて・・・
2007/12/04 21:38
5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
よほどのことがない限り、出れば読もうとしている新潮社のクレストブックですが、出版案内だけで飛びつくものもあれば、なぜか出たことも忘れてしまい、後日、偶々図書館の書架などにひっそりと埋もれているのに気付いて、躊躇いながら手を伸ばすものもあります。バンヴィルのこの本は後者に属します。
でも、書評をメモから書き起こそうとして戸惑ってしまいました。何も思い出せないのです。もっと言ってしまえば読んだことすら忘れていました。でも、詰まらなかったということではありません。それなら、逆の意味で記憶に残っているはずです。カバーの案内文を手がかりに自分の記憶の底を浚ってみると・・・
カバー折り返しにはこんな文が載っています。
The Sea
最愛の妻を失った老美術史家マックス・モーデン
は、記憶に引き寄せられるように、小さな海辺の
町へと向かう。遠い夏の日、双子の弟とともに海
に消えた少女。謎めいた死の記憶は、亡き妻の思
い出と重なり合い、彼を翻弄する。荒々しく美し
い、あの海のように――。各国の作家に激賞され
るアイルランド隋一の文章家が綴った、繊細で幻
想的なレクイエム。
Don DeLillo
バンヴィルは、危険を孕んだ、澄みわたった文章を書く。彼には魂の深奥を見る冷徹な力がある。
Martin Amis
バンヴィルは熟達した文章家だ。彼の綴る言葉は、読む者に官能的な喜びを絶え間なく与えてくれる。
The Daily Telegraph
こう言った英国人がいるらしい。「アイルランド人に言葉を与えたのは我々だが、我々に言葉の使い方を教えてくれたのはアイルランド人だ」。かつてそれはワイルドであり、ジョイスであり、ベケットだった。そして今、それはバンヴィルである。
Illusutration by Megumi Yoshizane
Design by Shinchosha Book Design SDivision
これでは何も分りません。ただ、イッキ読みしたものではないな、とはいっても難解な文章、というわけでもなかった。でも簡単に読めなかったのは、構成が結構特殊だって気が・・・。そして朧気に頭に浮かんできたのです、少年だった主人公マックス・モーデンが友人の母親に惹かれていく様を、その性的な幻想ともいえる熱狂を。
それは爽やかな印象を与える Megumi Yoshizane の水彩だろう装画に描かれた子供たちがいる海辺の光景とはあまりに異なるものです。その11歳の少年の劣情ともいえる好奇心は、アメリカ映画風のあっけらかんとしたものではなく、いかにもヨーロッパのそれを連想させずにはいない、ちょっと暗い、それでいて本当の人間の存在を思わせずにはいないものでした。
なんとか思い出しました。これは愛妻を癌で亡くした老美術史家マックス・モーデンの回想譚なのです。
まず彼が思い起こすのは、まず自身の恋の原点ともいえるグレース一家のことです。どこか胡散臭さを感じさせる資産家のカーロ・グレースがいます。少年の視線を知ってか知らずか、自分の肢体をさらす妻コニー・グレースことコンスタンスがいます。そして双子のマイルスとクロエ、謎のローズ。
そして癌で亡くなったマックスの妻アンナとその娘クレアの話。自分の年齢的からすれば、こちらの話に興味を抱くのが当然なんでしょうが、なんといっても十代の娘二人を抱える我が家としては、やはりマックス少年の暗い熱情のほうが身につまされる、そうか男の子ってそんなところばかり見ているんだ・・・
ま分っていることではあるんですが、ねぇ・・・
ちなみに「カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』をおさえてブッカー賞を受賞した傑作長篇」とありますが、私の中ではイシグロ作品は忘れようにも忘れられない。同じ静謐さの中にある話でも、読んで面白い、仕掛けが自然、という点でも『わたしを離さないで』の面白さには敵わないでしょう。
紙の本
静かで強い作品
2015/09/11 09:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「彼らは行ってしまった。神々は。あの奇妙な潮が押し寄せた日に。」このインパクトあふれる出だしの中の「神々」がまさか語り手と同年代の少女とその家族だとは思わなかった。この表現の背景には階級というものの厳然とした存在がある。海辺の別荘地帯では階級が決まっていて、それを超えるのは普通は無理なのだという。だから憧れの少女と家族に近づき、親密に交わるようになった彼にとって、彼らは神々なのだとされている。リアルにはわからない感覚だが、しかし「神々」という強烈すぎる言葉で表わされることで、感じが掴めるような気もした。作者の言葉の選び方は、うまい。
語り手はひたすら過去を辿る。海辺の少女と過ごした時間、そしてそれよりも後の、妻と結婚し、最近看取るまでの時間。少女と妻の間には何の関係もなく、思い出すというだけで繋がっている話は脈絡のない頼りないものになってもおかしくなさそうなのに、そんなことはなかった。非常に鮮やかな映像となって浮かび上がる物語は、緻密な表現によっている。ストーリーとしては大きな起伏があるわけではない。山場といえる場面はあるが、その内容は早い段階で予測済みなので、むしろ静謐な印象さえした。
海、そしてそれに回帰していくというイメージ…それが大きな要素となっていて、「海の中に入っていくかのように」家に戻っていく語り手の姿に集約している。静かながら強い印象を残す話だと思った。
紙の本
勝手に、読む前のイメージはブラッドベリの『みずうみ』みたいなのかと・・・違った。
2018/06/30 16:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんで男性というのもは女性に永遠の憧憬を抱き続けるのだろうか?、というのは女性から見たら結構な謎であります。「母親から生まれたから」だけで説明がつく問題なのか? ほんとに不思議。
年老いた美術史家マックスは妻の死から立ち直れず、日々混濁の中にいる。
幼いころから続く記憶に吸い寄せられるように海辺の町へ。
マックスの現在・過去が縦横無尽に入り乱れる内容(一行で何十年も飛ぶ)は、“思い出のみに生きている老人の繰り言”でしかない側面もあるんだけど、それがまるで幻想文学のような文体で描かれるとこうも格調高くなるか、みたいな見本のような作品で、2005年のブッカー賞受賞作品だそうです。
でも妻を筆頭としてかかわりあった女性たちについての描写がほとんどということで私の冒頭の謎につながるわけです。女性側からそこまで男性に固執したものってあまり見られないような(特定の個人に向けられるのはあるけど、男性全体というのは・・・)。
そこもまた、女性と男性の違いなのかしら。
実は読み始めからずっとフランスの小説だと思ってて、文中で引用される慣用句が英語なので「あれ?」と思い、裏表紙とか折り返しをよく見たら作者はアイルランドの方でした・・・原文、英語じゃん(そもそもタイトルは“The Sea”だし)。
というわけで“雰囲気が大事”な物語でした。
後世まで残るかどうかはわからないけど、この独特の文体を操れるのはすごいことだろうなぁ、と(原文で読んでないのであれですが、訳者の村松潔氏は他でこんな風に訳したの見たことないから原文の特徴を踏まえているのでしょう)。
“作家の好きな作家”って感じがする。