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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2007.11
- 出版社: 新潮社
- サイズ:20cm/189p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-10-379108-9
紙の本
泣き虫ハァちゃん
「ほんまに悲しいときは、男の子も、泣いてもええんよ」「兄弟ちゅうもんはええもんや」兵庫県丹波の野山を五人の兄弟や同級生たちと駆け回り過ごした、健やかで愉快な少年時代。自分...
泣き虫ハァちゃん
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商品説明
「ほんまに悲しいときは、男の子も、泣いてもええんよ」「兄弟ちゅうもんはええもんや」兵庫県丹波の野山を五人の兄弟や同級生たちと駆け回り過ごした、健やかで愉快な少年時代。自分を作ったかけがえのない幼い日々を、エピソード豊かに描いた物語。【「BOOK」データベースの商品解説】
「ほんまに悲しいときは、男の子も、泣いてもええんよ」 兵庫県丹波の野山を5人の兄弟や同級生たちと駆け回り過ごした、健やかで愉快な少年時代。自分を作ったかけがえのない幼い日々を、エピソード豊かに描いた物語。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
男の子も、泣いてもええんよ | 9−21 | |
---|---|---|
どんぐりころころ | 22−35 | |
青山の周ちゃん | 36−49 |
著者紹介
河合 隼雄
- 略歴
- 〈河合隼雄〉1928〜2007年。兵庫県生まれ。京大理学部卒業。ユング研究所で日本人として初めてユング派分析家の資格を取得。臨床心理学者。国際日本文化研究センター所長、文化庁長官などを歴任。
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紙の本
書評詩 ぼくたちの秘密基地
2010/06/16 08:45
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
それは草深い、あまりおとなが通らない
場所にあった
ぼくたちは そこを
秘密基地と 呼んだ
袋菓子
漫画本
こわれたラジオ
ぼくたちは そこで
秘密の指令を 発信した
おとなになんか なりたくない
あれから何十年も過ぎて
ぼくたちは いまだに
そこで 秘密の暗号を解読している
母のひざまくら
色褪せた写真
投函できなかったラブレター
ぼくたちは 秘密基地で
子どもにもどる研究をしている
本書は2007年7月に亡くなった心理学者河合隼雄さんの遺作となった作品です。子供時代の自身を回顧する自伝的物語ですが、残念ながら、小学校四年生までの未完となりました。
題名のとおり、何度も泣く場面が登場しますが、泣く意味合いが少しずつ変わっていくのがわかります。あるいは、たくさんの兄弟や学校の仲間たちに囲まれながらも、ふと孤独を感じるなど、成長の過程がよく描かれています。
本書の巻末には谷川俊太郎さんの詩「来てくれる 河合隼雄さんに」が収載されています。
◆この書評詩のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。
紙の本
「面白い質問です」(p106)
2008/02/11 18:38
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:和田浦海岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本には、いろいろな木々がありました。
「ハァちゃんの住んでいる篠山町は実に竹薮が多い。『篠山通れば、笹ばかり。猪芋喰て、ホイホイ』という民謡があるくらいだ。」(p98)
「柿にはいろいろ種類があるが、クボ柿が一番普通の柿だ。その他に、富有(ふゆう)とか、いろいろとある。どれもハァちゃんの家にあって、秋にとって食べるのが楽しみなのだが、クボ柿は安物でたくさんある。そして、そのなかに、ときどき、しぶ柿があるのだ。」(p23)
「校門を出て左へ少し行くと、お城の入口がある。入口を通り抜け、大書院の横の杉の木立のなかに先生は入ってゆかれた。」(p127)
「ヘコキムシとクソジの歌に笑い転げながら、一行は最初の目当てのくぬぎの木に近づいていった。ここは城山家の大切な狩場だ。」(p69)
「何だか泣き虫の自分が嫌いでなくなったような気持になって、ハァちゃんは庭を眺めた。庭にはお父さんの自慢の五葉(ごよう)の松が、悠々とそびえていた。『僕もそのうちに五葉の松に上れるようになれるかも』とハァちゃんは思った。」(p17)
そして、はからずも、この本の最後は、こう終わっておりました。
「しかし、ハァちゃんは冬が去って春が来つつあるのを感じとっていた。『鶯でも鳴くんとちゃうやろか』。そんな晴れやかな気持ちで庭の景色を眺めていた。」(p182)
亡くなると、葬儀に親しい坊さんがお経をあげてくれるように、この最後の本に、詩人が詩を添えられておりました。そこには、こんな箇所がありました。
・・・・・・
空からも木からも人からも
眼を逸らすとき
あなたが来てくれる
・・・・・・
あなたの魂の吹く笛に誘われて
ふたたび私は取り戻す
空に憧れ木と親しみ人を信ずることを
・・・・・・
この本「泣き虫ハァちゃん」の続きを読みたいと思われた方には、
河合隼雄著「未来への記憶 自伝の試み」上下(岩波新書)をおすすめいたします。その新書は、語りでして、私には昭和版「福翁自伝」としてもお薦めしたいくらいの魅力ある語り口に出会えます。こちらにハァちゃんのそれからが、もう語られておりました。
そういえば、谷川俊太郎氏の追悼詩「来てくれる 河合隼雄さんに」の最後の2行にも、その岩波新書を、ほのめかす言葉がはめこまれておりました。
私たちの記憶の未来へと
あなたは来てくれる
紙の本
やさしく清らかな物語
2007/12/11 18:06
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年七月に逝去された河合隼雄先生。その心のあたたかさ、人徳をしみじみと思わせる一冊である。
平易な文章で綴られる笹山での少年時代の話は、清々しくのびやか。自伝小説が陥りがちな、極端な甘さ、或いは逆に自己韜晦や卑下といったところがなく、読み心地がとても気持ちよい。男ばかりの六人兄弟の五番目のハァちゃん。兄弟の名前は、漢字だけ変えてあるようだけれど、中にはあの先生だな、とつながる名前もある。しかし、そんな現実とのからみなど問題ではない。物語を読んでいれば、ハァちゃんがどんなに心温まる、素晴らしい家族の中にいたかがわかるからだ。厳格なようでどこか剽軽なお父さん、包み込むようにやさしいお母さん、それぞれ個性あふれる四人のお兄さんにまだ小さな弟。この家族の中で、ハァちゃんはどんな存在やったんやろ…。自然に、そんなことを考えたくなる。ハァちゃんが喧嘩して帰ってきた時に、怒られるかと思ったら兄弟揃って喜んでいるくらい、おとなしいことで心配されていたようでもある。けれど、将棋に強かったりしてしっかり者と思われているようでもある。もちろん、一番重要なのは表題にもあるように泣き虫、という点だろうか。
ハァちゃんは本当に泣き虫で、読んでいても(あ、また泣いてる)と思うくらいだが、それにまつわるエピソードで最も印象的だったのは、『どんぐりころころ』の歌を歌っていて、(どんぐりはどうなったんやろ)と思ったハァちゃんが泣いてしまうところ。見つけた一番上のお兄さんが「どないしたん」と声をかけると、ハァちゃんは「あの、どんぐりさんが池にはまってな」と泣くのだ。お兄さんは《温かい目で》ハァちゃんのことを見るのだが、お兄さんならずとも温かい目になると思う。繊細でやさしい心を持った男の子なのだ。なんだかこちらもほろりと涙をこぼしたくなる。どんぐりは木になるんやで、と教えられ、ハァちゃんが《晴れやかな顔》になって、こちらもああよかったと胸をなでおろす。この場面では階下で別のお兄さんが《男らしくよ 涙を棄てよ》と歌っている。たまたまであり、それを非難するというわけでもないところに、「人の価値観は様々なんだよ」という作者の声を感じるようである。
他にも、お母さんが「泣いてもええんよ」と言う場面や、お友達との別れの前に撮った写真で泣かないように怖い顔をする場面や、いいところがいっぱいある。ひとつひとつ挙げていくと切りがないので、実際に手にとって読んでみていただきたいと思う。
家族から少し離れると、学校の話ももちろん多く描かれている。秘密基地や黒頭巾ごっこなど、生き生きとして新鮮だ。けれど、楽しいことばかりではなく、ハァちゃんは反りの合わない先生のクラスになってしまう。その先生とのエピソードは、笑えるような気の毒なような…。『平家物語』の話の途中に、「『源平盛衰記』に書いてありますね」と言ったら睨まれた、とか。猿が人間の祖先だって聞いて「じゃあアマテラスオオミカミが一番猿に近いんですか?」と訊いたら怒られた、とか。ハァちゃんは決して悪くない。猿の話など、むしろ、ハァちゃん、冴えてる!と言いたくなる。先生のほうにしてみたら困る質問ではあるだろうけれど、そういうのを認められる先生でなかったのは、ハァちゃんにとって不幸だったろうなと思った。
脳梗塞で倒れられ、執筆半ばで終わったということは本当に残念だ。ただ、終わり方は決して知りきれトンボではなく、知らなければこれで物語は完結したのだと思う終わり方だった。
ところでこの本では、絵も重要な役割を担っている。たくさんの温かいタッチの挿絵が、話の雰囲気にぴったりなのだ。また、最後に谷川俊太郎氏の詩がよせられている。この詩が真情にあふれていて素晴らしい。
紙の本
心温まる
2021/12/16 14:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
2007年に亡くなった、河合隼雄さんの遺作。
自身の子どもの時代を、子どもの目線から描いた自伝だ。
執筆途中で亡くなられたそうで、幼児~小学4年生で終わっている。河合隼雄さんが生きた時代は戦争とも重なるが、その空気や家族関係、学校の様子をほのぼのと伝え、温かな挿絵も相まって、心がほっこりする。
最後には谷川俊太郎さんによる河合隼雄さんに捧げる詩も掲載されている。
中学受験の国語で頻出の物語でもあるそうだ。