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紙の本
「なやみとの付き合い方」を重松氏が一緒に考えてくれる本
2009/12/24 11:44
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タール - この投稿者のレビュー一覧を見る
わたしがちょうど10歳になった年、平屋だった住まいが建て替えられた。与えられた二階の個室から西の空が見渡せるようになると、耐え難い暑さがふとゆるむ頃から、窓を閉め切るようになる厳寒の季節までの間、夕暮れの空を長いことぼうっとただ眺めていることが多くなった。暖色の空、影をつけて立体的な雲、見ているうちにも沈みきってしまう太陽。夏の終わりは命の終わりを予感させた。刻々と変化する景色が止められぬ時の流れを思わせた。いつものことと思いながら空をみることをやめられず、切なさに身悶えた。秋の気配が濃くなる季節はもの哀しさが募るものだと知ってしまった、あの頃。
「みんなのなやみ」を読んでいたら、悶々とした思いにとらわれながらその正体を掴めず苦しい思いで夕陽を浴びていた昔の自分を思い出していた。
10代の悩みは切実だ。成熟しない心は未熟な言葉に翻弄されて、思い詰めたまま打開策をどこに求めていいのかわからずに黙りこむ。傷ついた心を癒す術がわからない彼らは、SOSを発したいギリギリの心を隠してふざけて笑い、さらに傷つく。早急に解決しなければならない問題を常に抱えて生きる大人たちからすれば、取るに足らない悩みかもしれない。けれどシゲマツさんは、彼らの発する言葉ひとつひとつを重大なSOSとしてきちんと受け止め耳を傾ける。未熟な言葉を組み直し、彼らの思いを明確にし、同じ目線から、"一歩、その先へ"と促す姿勢がとてつもなく、いい。
たとえば、「マジで頭に来る!!」と訴える高一に対してシゲマツさんは「マジで頭に来てOKだ」と答える。そして続けるのだ。「ただ、マジで頭に来て――きみは、そこからどうする?」と。
的確なアドバイスをしようとするのではない。そもそも答えなどはないということを前提とした上で、悩める10代の気持ちにぴたり寄り添い、その手を取るシゲマツさん。ほんの少しだけ顔をあげてごらん、と声をかけ、こっちを向けばほらこの先にキミの求める答えのありかが隠れているかもしれないんだよと教えてあげるその言葉は徹底して温かく、同時にゆるぎなく逞しい。
まえがきに「なやみを消し去るための本ではありません」とあるように、あとがきには「なやんでいても、よし !」と示しているように、シゲマツさんはこの本での言葉を「なにかになやんでいる自分を肯定するため」のものであると説明する。そして繰り返される「刹那的にはなるな」「キレてしまうことで何もかもを失うな」というメッセージ。
大いなる自然の包容力と、大切なものを見失わさせたくないという強さを持つシゲマツさんの言葉が、絵本の中で奇跡をおこす森のようにきらめき、すべてを許す海で得られるのと同じ勇気を誘って、心を癒し傷を治す"人間力"を向上させてくれるのだと思う。
「人生は長い。長い人生であってほしい」
人生をマラソンにたとえ、自分の言葉を水にたとえて「よかったら飲んでみてください」と謙虚に語るシゲマツさんは、けれど最後に思いを込めてこういうのだ。
「完走しような、それぞれの人生」と。
ICレコーダーを前に、話した言葉をほぼその通りに本にしたというこの一冊。シゲマツさん=重松清氏が、腕を組んで考え込んだり、頭を抱えていたり、時に自嘲の笑みを漏らしたりする様子が手に取るように感じられる。氏が渾身の力で答えているのは、10代だけではない"みんな"で、悩める親への解答もまた真摯で心打たれる。夕陽を見ては曖昧な憂鬱に苛まれているヒマなどない大人にこそ、手に取ってほしい一冊です。
紙の本
みんな悩んでいる。
2010/08/20 05:18
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
みんなのなやみ 重松清 新潮文庫
作家の重松清氏がこどもたちの悩みに答えるという形式になっています。66ページの記述は心に残るものでした。父親が再婚してこどもが生まれて、父の連れ子である中学生男子が孤独感を訴えています。14歳男子のつらさが伝わってきます。
親には、過保護な親と放任な親がいます。両者とも虐待に通じる部分があります。親が食事をつくってくれない家庭はままあります。作者のこどもたちに対する回答には、うなずく部分もありますが、首をかしげる部分もあります。読者であるわたしとしては、こどもたちには、親に期待しないというメッセージを送りたい。自分のことは自分でするのが生きる基本です。作者も強調していますが、親の言いなりになってはいけない。
この本には、こどもたちから親に対するたくさんの注文が寄せられています。親としては、こどもは、親の思うとおりの進路をたどってくれないという覚悟とあきらめをもつことが必要です。
相談の内容は様々です。息が詰まるような相談もあります。ことに「いじめ」に関するものは深刻です。こどもたちの世界がとても狭い。世界は広い。旅に出よう。本を読もう。お金がなければ歩こう。図書館へ行こう。
272ページの「順接・逆説」のお話はよかった。いい学校を出て、いくらペーパーテストで満点近くを獲得しても、車の運転ができない人は雇いにくいです。頭を下げる接客ができなければ、お呼びでありません。ばかになれなければ、社会に出ても周囲にいる人間からいじめられるし、うつ病の予備軍に属することになります。
362ページにある「情報の多い時代」には、考えさせられます。インターネットや携帯電話、それらがなかった時代が過去にあります。どちらも過信しないことです。
紙の本
親世代も読みたい
2023/08/16 14:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウエブに寄せられた10代(小中高校生)の悩みに、重松清さんが答えた内容が一冊に。大人にとっては、通ってきた道。子どもたちには共感できる悩みだろう。
それに対して、本書で重松さんは何か明確に答えを出しているわけではない。だからすぐに解決する答えを求めている人には、参考にならないかもしれない。
しっかり悩める若者に寄り添い、一緒に頭をひねり、時には父親として、考えている。その姿は、ほんの一瞬でも読者を孤独から解放してくれるかもしれない。
子どもに何か投げかけられても答えられない親世代にも読んでほしい一冊だ。