- 販売開始日: 2010/07/02
- 出版社: 中央公論新社
- ISBN:978-4-12-205301-4
ボートの三人男
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これぞ英国人の笑い。アメリカ人の作品にみる下品な大笑いはありませんが、皮肉に富んだ笑いならたくさんあります。まして訳者が丸谷才一で、解説が井上ひさし、おまけにカバー画が和田誠だなんて、豪華・・・
2011/12/20 20:40
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
前々から、といっても2004年からですが、気になって仕方のない本がありました。それがこの『ボ-トの三人男』です。で、なぜ2004年かといえば、この年にコニー・ウィリス『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』が出て、私はそれをそこそこ楽しんだのですが、その本の紹介分のなかに
*
ジェローム・K・ジェロームのユーモア小説『ボートの三人男』にオマージュをささげつつ、SFと本格ミステリを絶妙に融合させ、ヒューゴー賞・ローカス賞のほか、クルト・ラスヴィッツ賞を受賞したタイムトラベル・ユーモア小説。
*
という言葉があるからです。私は、古典や準古典といった作品よりは、あくまで現代小説というか現存作家が書いた小説をリアルタイムで楽しむことをモットーにしていますが、一応、アンテナだけは張っておいて、今こんな本が評判だとか、売れているという情報だけはつかんでいるつもりでした。ましてユーモア小説には目がない、というか、それだけで評価する部分があるわけです。
ところがです、本を読みだした高校時代以降、2004年までジェローム・K・ジェロームという人名も『ボートの三人男』という書名も一度として私の情報網に引っかかってこなかった。たとえば、この文庫も初版は1976年7月10日とある。しかも2007年で23刷も増刷しているわけで、この私が気づかないはずがない。でも、気づかなかったというか全く知りませんでした。
ですから、ウィリスの『犬は勘定に入れません』から想像するに、そんなには面白くないだろうと思い込んで、『ボートの三人男』にあたることを先延ばしにしてきたわけです。ただ、ネットで見ていると面白いのですが、『犬は勘定に入れません』から『ボートの三人男』へと流れる読者がとても多い。ま、SF読みでない私にとってウィリスと聞いてもピンときません。
でも、「本の雑誌」などでウィリス作品の評価は高いわけです。10年近く前に出た『航路』は絶賛に近かったし、『犬は勘定に入れません』の作品の姉妹編に当たるという『ドゥームズデイ・ブック』(未読)などは、SFファンならば無条件で飛びつくヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞という三賞を受賞しているわけです。だからウィリスということで『犬』に飛びつき、その元ネタ本ならきっと面白いに違いないと判断したと思うのです。
で、私も遅ればせながらの読書ということに相成りました。で、ともかくカバーが素敵です。もう色だけで楽しくなっていまうのですが、線にも味があります。誰の手になるのやらと確認すれば、池田満寿夫です。ちなみに、私が手にした本は1992年版。実は、この素晴らしいカバーも2010年の新装にともなって、和田誠に変わっっています。
池田の軽妙洒脱なスケッチもですが、和田のコミカルな絵の魅力もいい。ただし、池田によって描かれた人物は、イギリス人というよりはフランス人のような雰囲気もあって、そういう意味では和田のほうが小説にはあっているのかもしれないとは思いました。ただ、全体の色合い、とくにほんのりお酒で染まったような雰囲気は、池田に軍配かな、なんて思ったりもします。
で、面白かったです。イギリス特有のドタバタで、派手な騒ぎではありませんが、じっくり読むともう滅茶苦茶です。簡単そうな旅が、思い付きで大冒険になる。夜の散歩が、軽い一杯が、ジャングルの彷徨に、泥酔の果ての大混乱になります。それでいて、友情は損なわれません。私ならとっくに怒って絶交になるはずなのに、一夜明ければ次の計画に余念がありません。
歴史が生んだ国民性もあるでしょう。作品が書かれた当時の社会の豊かさもあるかもしれません。この余裕なくしてモンティ・パイソンもなければ、ミスター・ビーンもないかもしれない。フロストだって小説に登場していなかったかもしれません。映画にしたら(なっているのでしょうが)会場はクスクス、ケラケラ笑いが絶えないのではないでしょうか。
無論、子供にはピンとこない。でも、これを楽しんでいる親を間近に見て入れば、子供の社会の見方も変わってくるはず。でも、その英国での若者の暴動騒ぎを見れば、そんなことも言ってはいられません。もしかすると、あの暴動の背景には、英国人が『ボ-トの三人男』を読まなくなっている、あの楽しさの背景にあった心のゆとりをうしなっているということがあるのかもしれません。ここらは、現代英国でこの本がどう読まれているのか調査をしてほしいところではあります。
最後に、カバー後の案内を引用すれば
*
気鬱にとりつかれた三人の紳士が
犬をお供に、テムズ河をボートで
漕ぎだした。歴史を秘めた町や村、
城や森をたどりつつ、抱腹絶倒の
珍事続出、愉快で滑稽、皮肉で珍
妙な河の旅がつづく。イギリス独
特の深い味わいをもつ、代表的な
傑作ユーモア小説。
*
構成は全19章に、井上ひさしの解説がついたものです。
楽しかった!!
2013/10/14 20:38
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あんず86 - この投稿者のレビュー一覧を見る
もう随所でクスリと笑いが出てしまう、っていう感じ。
お腹を抱えて大爆笑という雰囲気ではないが。こう上品なユーモア感覚…?
こういう笑いもけっこう好き。
最後の終わり方もたいそうよかった。大満足のため息が出ました。
犬のモンモランシーがまたよい味添えてるし。しっかりと人間さまといっしょになってましたね。三人+一匹って感じで、なくてはならない存在でした。
予想外に面白かったので、もっとたくさんの人にこの本を読んでもらいたい気持ちでいっぱいです。
世界で読み継がれているイギリス人ユーモア作家のジェローム・ジェローム氏の名作です!
2020/07/27 10:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、イギリスの喜劇役者であり、新聞記者でもあった、ユーモア小説家として有名なジェローム・ジェローム氏の世界で読み継がれる名作です。同書の内容は、気鬱にとりつかれた三人の紳士が犬をお供に、テムズ河をボートで漕ぎ出すことから物語が始まります。歴史を秘めた町や村、城や森をたどり、愉快で滑稽、皮肉で珍妙な河の旅が続いていきます。数々のオマージュ作品を生み、いまだ世界で愛読されている英国ユーモア小説の古典とも言うべき作品です。ですこの機会に、ぜひ、読んでみられてゃ如何でしょうか!
これぞイギリスのユーモア(多分)
2020/11/14 17:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:honty - この投稿者のレビュー一覧を見る
とにかく可笑しいし、どんな展開になるのかなと楽しんで読めます。原文を読んでませんが、翻訳はとても自然だし、すらすらと流れる日本語であっという間に読んでしまいました。気軽におかしく楽しく読めるけれども、ちょとした人生のペーソスもありいいです。くすっと笑いたい時に時々開いて読んでます。
クスッと笑ってしまうユーモア
2019/11/30 23:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つきたまご - この投稿者のレビュー一覧を見る
ユーモア小説の古典と聞いていたので、読んでみなければと思っていた作品です。
大笑いということはなく、クスッとかニヤッとかしてしまう笑いに溢れています。大人が読むと楽しいですが、子どもが読むと腹を立てそうです。
とにかく、不真面目・なんでも他人のせいにする・自分は頑張っていると思っている3人の男と、決しておとなしくはない犬がボートに乗って川に出ます。
まず、旅立つまで長い(笑)そして、旅立ってからも、旅に関係ない話が多い(笑)旅でのできごとで思い出した回想が多めです。しかし、その内容が、「わかる!こういうことある!」となってしまう内容の多いこと!
みんなで悪態をつきながら移動しますが、彼らの身勝手さもまた笑えます。
古典とありましたが、この内容の面白さは時代を問わないはずです。
男三人と犬一匹が川を下る!
2010/04/07 22:03
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:K・I - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙がなんといっても和田誠さんの絵である。すばらしい絵だ。まずそこに心惹かれた。
さらに訳者が丸谷才一。そして、「ユーモア小説の古典」とオビには書いてある。
そういうしだいでこの本を読んでみた。
内容をおおざっぱに説明すると、
「ぼく」とジョージとハリスという男三人とモンモランシーという犬が、
ボートに乗って川を下る、という話だ。
というストーリーなのだが、
ストーリー自体がそんなに重要なわけではなくて、
つまり、この小説の肝は、
「何が描かれているか」ではなく、
「どう描かれているか」だろう。
小説や戯曲を読んで腹を抱えて笑うという体験は、
僕はシェイクスピアの『夏の夜の夢』でしか体験したことがない。
しかしこの小説ではそこかしこにある「ユーモア」に、
にやりと何度もさせられた。
個人的には川に出る前の準備段階が一番、
「笑えた」部分なのだが、
川に出てからも、
色々な「難問」が三人プラス一匹を待ち受ける。
正直に言って、この小説で描かれているイギリスの歴史について、
ほとんど内容が分からなかったのだが、
それは仕方のない部分だと思う。
というわけでこの小説は☆4つにしたいと思う。おすすめである。
最後に一つ付け加えると、
この小説には、今では差別語になっている表現が、
しばしば見受けられる。
しかし、原作が19世紀のものなのだから、それは仕方がないだろう。
では、そういう昔の「人権意識」の小説や戯曲をまったく訳さない方がいいのか、
といったら、そんなことはない。
文学というのは、縦の時間が重要なのだ。
あまり好きな言葉ではないが、「伝統」に近いものが文学ではある程度重要だと思う。
となると、あとは、
そういう小説や戯曲も訳して、
ただし、「但し書き」をつける、
というのがベストだと思う。
その点で参考になるのが、
『夜はやさし』や『エドナ・ウェブスターへの贈り物』などを出している、
「ホーム社」という会社だ。
上記の2点の小説についている「但し書き」は、
昔の小説や戯曲を翻訳する際に参考になると思う。
美しいテムズ川のボート旅で展開される懲りない一行の珍道中
2019/09/21 08:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:隣でジントニック - この投稿者のレビュー一覧を見る
憎めない程度の毒に恵まれた3人と1匹がテムズ川中流を遡っていくボート旅。イングランドらしい川面や岸辺の風景描写がとても美しく、一行の間抜けな魅力をとても際立たせている。
この本の登場人物と登場犬は、こだわりが強いくせに思い付きで行動し、自分の失敗はいち早く他人のせいにし、誰かがやらなければならない仕事は誰かに押し付けようとし、やみくもに吠え立てて存在感を誇示する。でも誰もがそういう部分を持っているのが我々の現実。
どこにでもいそうな反省の足りない一行の、どこにでもありそうなドジな話に、きっと読者は昨日の失敗を慰められる。雨のラストシーンも「人生こんなもの」と思わせて良い。