0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
絶望から始まる物語。
やっと見つけた安らぎをまた失う時に、彼は一体どんな風に立ち直っていくのでしょうか。
オースターは時々こちらの精神状態に堪えます。
投稿元:
レビューを見る
一年限りのこと、数十年に及ぶこと、たった数日、数時間のこと
感想を書きたいがネタバレにならない自信がない。
終盤に出てくる劇中劇の写しと思わせられる瞬間もあるが
「ムーンパレス」のような他人の人生を追った挙句
「偶然の音楽」のような展開と思うこともあり
しかし・・・
投稿元:
レビューを見る
本書の文庫化で久々にオースター作品を読む。
いつもながらの簡潔で詩的な文体が楽しめる。
特に架空のサイレント映画の描写は見事。
読みながら頭の中で、ワンカット毎の映像が鮮やかに再生される。
(映画好きな人にはたまらないところと思います)
ストーリーについてもお得意の展開でグイグイ読ませます。
メタフィクション的な仕組みだったり、
反則ギリギリ・過剰すれすれな偶然性の演出とか。
オースター節が堪能できます。
ただ、個人的には最後の展開がちょっと受け入れづらかった。
(少し救いが無さすぎるな、と)
投稿元:
レビューを見る
面白い。明るいとは言いがたいトーンに包まれているのにいつの間にか引き込まてしまうのはオースターの文体ならでは。
人物造形よりも、文体でストーリーを作っているように思う。
プロットは言ってしまえば喪失のシークエンスなのだけど、過去と現在を自由に行き来する語りと、場面場面でスピードが変わるリズミカルな文章が、通俗的なドラマとは感じさせない。
ただ、クライマックスまでの部分が緻密に構成されているだけに、クライマックスの安易な加速が物語を引き離してしまったのが、個人的に残念。
説明不足のキャラクターに頼るとは…
投稿元:
レビューを見る
いくつもの登場人物と時代が交錯しながら、現実と映画と思索が交錯しながら、常に一定のトーンに覆われている物語。希望というものが目前に見えるからこそ、深い喪失というものが詳細に描かれている。それでも読んでいて先に進みたくて仕方がなくなるのは、微細な表現によって心がつかまれるから。読後ものすごく悲しい気持ちになったけれど、この本に出会えたことそのものはとても喜ばしい。そんな物語。
投稿元:
レビューを見る
なんでこの人の本は面白いんだろうか。物語内物語内物語の入れ子の仕掛けあり、偶然が重なることでストーリーはぐいぐい進み、まあ普通に考えれば面白いのだけれど、それだけだったらちょっとあざとくて鼻につくはず。なのに、そうは感じさせない。それがなんでなんだろうと小一時間考えたけど、うまく言葉にできないけど、まあそれが言葉にできないからこそ、俺はいつまでもオースターの本を愛す。
投稿元:
レビューを見る
「幻影の書」(ポール・オースター:柴田元幸 訳)を読んだ。「幽霊たち」以来20年ぶりに読むP・オースターなので、すごく硬質で尖鋭的なものを想定していた。が、どちらかというとドロリとした質感に違和感を覚える。フリーダの妄執の本質を私は読み取れずにいるが、ものすごく面白い物語である。
投稿元:
レビューを見る
”読む”というか、”見る”に近い感覚だった。もしくは誰かの語りを”聞いている”ような。
時代も場所も国も言語も違うのに、ましてやフィクションなのに、登場人物たち(作品中作品の登場人物にいたるまで)を身近に感じた。寄り添って痛みを分かち合っているかのようだった。
オースターの作品には、まず喪失がある。
投稿元:
レビューを見る
さすがのポール・オースター。これまで読んだ中で個人的に好きなのは『ミスター・ヴァーティゴ』だけれど、いわゆるオースターの王道を行く作品。ストーリーはあるような無いような。オースターが取り上げたテーマというか主題の周りを、ぐるぐるぐるぐるいろいろなエピソードを使って、マトリョーシカのように、らせん階段のように、何重にも重なってゆくことで、テーマ・主題が魔法のように自然と浮き上がってくるように感じられました。久しぶりに本の世界(ストーリーだけでなく雰囲気)にとっぷりと浸かってしまいました。読み終わったときには長い夢から覚めたような、そんなような不思議な気分でした。飛行機事故で家族を亡くして失意にまみれた大学教授ジンマーが、酒と自己憐憫と終わりのない後悔の念にさいなまれているときに、ふと目に入った昔のサイレント映画の一幕。自然とこぼれた笑いにビックリし、まだ生きようとする気持ちが自分に残っていたかと、すがるようにその映画の監督・主演を務めたヘクター・マンの足跡をたどるのですが、ヘクターはある時期に突如忽然と行方をくらまし、以来60年以上行方不明のままだという。ジンマーは残っているヘクターのフィルムを余さず見て一冊の本を出版するのですが、それを読んだという自称“ヘクター・マン夫人”から、「ヘクターがあなたに会いたがっているので当家に来てください」と招待状が届き、、、、。大変読み応えがあり、面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
ひさしぶりに物語の醍醐味を味わいました。
それなりの成功を収めながら突如失踪してしまった喜劇俳優と、その俳優に関する本を書いた男との数奇な関わりについて書いた小説ですが、実際にありそうにない話なのに、もしかしたら実際にあったことかもしれないと思わせてしまう語り口が見事です。
特に面白いのは物語の中に数多くの作中作(主に映画)が登場してきていて、そのどれもがそれだけで興味をそそられる作品になっていることです。ヘクター・マンの喜劇映画などは、サイレント映画なのに関わらずシーンを思い浮かべてクスリと微笑んでしまいそうになる出来です。
解説によると、作中作のひとつ「マーティン・フロストの内なる生」はオースター自身によって実際に映画化されているそうで、それにも納得ですね。
投稿元:
レビューを見る
一時期大好きだったのに何となく遠ざかっていたポール・オースター。
これを読んでいったん離れてまた読み返したくなった理由がわかった気がする。
シリアスなようでいて、人生最大級のトラウマがきれいなお姉さんに頭ナデナデされてるうちに克服できているようなバカっぽさに違和感覚えたからなんだと思う。なんなの?深淵なふりしてるだけの単細胞じゃん、みたいな。
でもそのバカっぽさがあるからなんとかやってけるのかもね、てこれ読んで改めて思えた。やっばり好きです。
投稿元:
レビューを見る
相変わらず最後の数十ページでものすごくぞくぞくして、
ページをめくる手がとまらなくなります。
あと劇中劇というか、最後のほうに出てくる映画の内容がすばらしい。
見てもいないのに映像を見たような気分になります。
やっぱりこのひとすごい。
投稿元:
レビューを見る
ポール・オースターはやっぱり面白いなぁ。
今まで読んだ小説はまずハズレなし!この本もとても面白かった!映画の描写や、登場人物の過去の物語が、映像のように描かれている。見てない映画を見た気にさせてくれる描写はさすが。
物語も先が気になる展開でどんどゆ読めた!
人間の生きる意味みたいなのを色々考えさせられました。
投稿元:
レビューを見る
久しぶりに電車の中で興奮して読んだ本
ちょうど観た映画「アーティスト」と何故かリンクしたのが面白かった
投稿元:
レビューを見る
「幻影の書」。この魅惑的なタイトルに引き寄せられ購入した。
最愛の妻と子を不慮の事故で無くし、絶望の淵を彷徨う主人公の大学教授は、
ひょんなことから目にした無声映画に引き込まれる。
それは、1920年代のある一時期にだけ活躍し、その後一切の消息が不明となった
「ヘクター・マン」という俳優兼監督の作品だった。
これらの作品に没頭し、「ヘクター・マン」の研究書を書くことで絶望から抜け出そうとする。
その書はその後、二人を予期せぬ出会いへと導くことになる。
このようにして物語が展開していく。
特に嘱目すべきは、主人公がヘクター・マンの作品を鑑賞するシーン。
細部に渡るまで表現された文字、文章は、
読む者の脳内のスクリーンに厳密に投射され、
我々はヘクター・マンの映画(即ちオースターが架空で創った映画)を
明瞭に鮮烈に目撃することになる。
そして、その他全体のオースター(訳者の柴田 元幸氏)が紡ぐ美しい文章自体にも、
映像を想起させる力が備わっており、
まるで映画を題材にした映画を観ているような感覚に捉えられる。
あくまでも私的な印象(内容では無い)だが、
映画に例えるならば、ヴィム・ヴェンダースがニュー・シネマ・パラダイスを撮ったかのような質感を感じた。
この作品は映画そのものだ。
映画好きで、映画に関わってきた経験もあるオースターが、
このような効果を狙って書いたものかは知る由も無いが、
そんな彼の文章が結果的にこのような効果を生み出していることは偶然ではあるまい。
そして巧妙且つ暗示的なストーリーは、
さらにこの作品に霊妙さを纏わせている。
もう個人的にどつぼな世界観。
映画好きにも是非お薦めしたい。