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投稿者:onew - この投稿者のレビュー一覧を見る
「トニオ・クレーゲル」「ヴェニスに死す」の2編が収録されている。1970年代の萩尾望都さんの絵が合いそう。読み終わった後に、グスタフ・マーラー「交響曲第3番」「交響曲第5番」を聴くとさらに良い。
紙の本
トニオ・クレーゲル
2001/03/10 15:17
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投稿者:55555 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノーベル文学賞受賞者のトーマス・マンの傑作。芸術に生を見出した青年の老年にいたるまでの憂鬱を軽やかで整った筆致で鮮やかに描く。
紙の本
とにおくれえげる
2019/03/26 01:37
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヴェニスに死す、の方は岩波の実吉訳が定番(と思う)なので割愛。もうひとつの有名作「トニオ・クレーゲル」を収録。これほど鼻に突く登場人物はあまりいない。目を覆いたくなる。素晴らしい芸術家気取りだ。
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作家・北杜夫氏の言うところの、「観念主義の虜だった」初期のマンの代表的な二作品。いずれも芸術家(文士)を主人公とし、「市民(俗人)」と「芸術家」、「感性」と「理性」、「生」と「精神」など相反するふたつの性質のものの間で葛藤する人間像をえがいている。そしてそれは紛れもなく、マン自身なのであった。トニオ・クレーゲルにしてもヴェニスに死すにしても、美少年の描写がもの凄いです。ってゆーか美少年のあとを付け回すグスタフ・フォン・アシェンバハ…ストーカー?(犯罪ですよ!)ソクラテスと美少年パイドロスとのやりとりが挿話として在ったり、プラトンの『パイドロス』に通じる美とエロースの認識にドキリ。
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訳が悪いのか、どうにも読むスピードが遅い。作中人物の抽象思考が高度すぎて付いていけないのかもしれない。次は魔の山を読もう。
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唯美主義者のサロン★乙女書房 (店長名:Lili)2006年5月6日登録
★★★★★
ヴァカンスの逗留先ヴェニス。美貌の少年に心を奪われた円熟した芸術家(原作では作家、映画では音楽家)の運命。『ヴェニスに死す』はマンの原作もヴィスコンティの映画も甲乙付けがたい名作。少年の美貌、ただそれだけが芸術家として長年に渡って築き上げてきた主人公アシェンバッハの信念や理想さえも危くしてしまう、デカダン。絶対的美の前で芸術は意味を持ち得るのか?『トニオ・クレーゲル』にも一環したマンの芸術観が描かれています
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ヴェニスに死すの方が有名で、少年にときめく老人も悪くないけど、トニオクレーゲルの方が個人的には好き。
心のそこから心酔する訳じゃないけど、私もまたトニオを仰ぐ俯いて歩く人のひとりであるのだろう。
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【本書より】もう一度初めからやり直して、君のように成人して、堂々とたのしく素直に、まっすぐに秩序正しく、神とも人とも和解して無邪気な幸福な人たちに愛されたなら。そして、インゲボルク・ホルム、おまえのような娘を妻にめとり、ハンス・ハンゼン、君のような人
を息子に持てたなら。───認識と創造の苦悩との呪縛から解き放たれ、幸福な凡庸性の
うちに生き愛しほめることができたなら。……もう一度やり直す。しかし無駄だろう。や
はり今と同じことになってしまうだろう。───すべてはまたこれまでと同じことになっ
てしまうだろう。なぜならある種の人々はどうしたって迷路に踏み込んでしまうからだ。それは、彼らにとってそもそも正道というものがないからである。(「トニオ・クレーゲル」)
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『トニオ・クレーゲル』…これほどまでに全編一字一句余すところなく共鳴できる作品は、これから先二つと出会えないと思う。感受性が最も鋭敏な思春期の頃に出会えてよかった。今ままで読んだことのある中で恐らく最も好きな本。
『ヴェニスに死す』…当時の私には語彙があまりに難解すぎて途中で断念。別の訳者(名前失念)の訳で最近読み直したが読むペースが遅すぎて噛み締められなかったのでまた読みたい。
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「トニオ〜」の話は観念的で、芸術と俗物のせめぎあいが美しく光る話。貴族の生活、芸術家の旅・・・それは定住民と遊牧民といった比較になぞらえることもできるだろう。どうして人はこの二者択一を迫られるのだろうか。もっと自由に生きる方法はないものか。
「ヴェニス〜」・・・こんな美しい話に出会ったのは久しぶりだ。話の筋を平たく言えば、作家のおっさんが旅先で美少年に魅せられてストーカーをし、その美をひたすら讃える・・・と言ってしまえるが、これだけではこの話の良さが分からない。読みすすむうち、美少年とイタリアの美しい景観に吸い込まれていくこと請け合い。選び抜かれた言葉、一つ一つの言葉が、輝いている。ゴンドラが、海に映る日の輝きが、目に浮かぶ。本書を読むと、映画も観たくなる。
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魔の山の自分の中でのインパクトが強烈だったのに対し、こちらは内容を全く憶えていないのですね。もしかしたら買ってあるだけで読んでいないのかもしれません。絶世の美少年といわれるビョルン・アンドレセンを一度見てみたいという目的で、映画のヴェニスに死すを昨年初めて観たのですが、この本が原作であることに今気が付いたほどです。薄い本ですし、映画の原作であるということに興味を持ったので、そのうち読んでみようと思います。
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行動できない言い訳をあらゆる、へりくつをこねまくって自分を擁護している気がした。
行動派の私にはちょっと理解に苦しむ感じでした。
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さくさく読んでしまったので、
理解度は魔の山と同じく半分かな。
トニオ・グレーコルにおける、好きな人に自分の好きなものを押しつけるときの葛藤はすごくわかる。
解説の【「感性と理性」「美と倫理」「陶酔と良心」「享受と認識」こういう相反する二つのもにに挟まっている人間が芸術家として捕らえられている】はもっと考察する余地あり。
トニオは先に挙げたものの前者で生活を保ち、他方、ヴェニスの主人公は後者に身をゆだね破滅していった。うーん、どっちだ。
「もっとも多く愛する者は敗者である。そして苦しまねばならぬ」
「あの連中は、教師たちをおかしがりもしないし、詩をこしらえなんぞせず、誰もが考え、誰もが大きな声を出せるようなことしか考えないのだ。あの手合いは自分らをまともだと思い、人とも世とも和合していると思っているのに違いないのだ」
「いやいやそれはいけない。ハンスは自分のようになってはいけない。ハンスには今のままでいてもらいたい」
「あの眼は事物の内面を見ようとはしない。事物が複雑になり物悲しくなるところまではいって行こうとしない」
「愛されるとは嫌悪を交えた虚栄心の満足にすぎぬ」
「誠実というものが、この地上では不可能であることを見て、驚きと失望とを味わっていた」
「もしも表現のもたらすさまざまな快楽がわれわれをいつも正規はつらつとさせていないならば、魂の認識だけでは疑いもなく我々は陰鬱になる」
「春は仕事がやりにくい。これは確かだ。ではなぜなんでしょう。感ずるからですよ。それから、創造する人間は感じてもいいなんて思い込んでいる奴は大ばか者だからですよ。本物の正直な芸術家なら誰だって、そういう浅はかなてぺん師式の妄想に会っては微笑しています」
「あなたが言うべきことをひどく大切に考えていたり、そのことのために心臓をあんまりどきまぎさせたりすれば、まず完全な失敗は間違いない。悲壮になる、センチメンタルになる。それでどうなるかというと、何か鈍重な、不手際で大真面目な、隙間だらけの、鋭さを欠いた、薬味のはいっていない、退屈平凡なものが生まれるだけ」
「風刺と不信と反抗と認識と感情の深淵が、あなたを他の人たちから切り離して、次第に口を大きく開けていく。あなたは孤独だ、そうしていざそうなってしまうと、もう了解し合う道なんかありはしない」
「根が善人で柔和で好意的で、それに少々センチメンタルなのが、心理的な明察力のために手もなく精根をすりへらしてしまうといった人間。」
「文学の言葉はあっという間にあっけなく感情を始末してしまうが、そこには何か冷酷で、腹立たしいほど不遜なものがある。解剖化と形式化」
「父は考え深く、徹底的で、清教主義を奉じているところから几帳面で、どちらかと言えば憂鬱なたち。母はきれいで官能的で率直で、同時になげやりで情熱的。こういう両親をもった私という人間は疑いもなくひとつの混合。この混合は恐ろしい危険を孕む。そこから生まれでたものが芸術に迷い込んだ俗人」
「私の心の目の前には、秩序と形成を待ち焦がれる未生の幻のような」世界が浮かび上がる」
「どうやら高貴で有能な精神をたちまちにして完全に消耗せしめるのには、認識の鋭い苦い刺激によるに如くはない」
「知識が意志を、行為を、感情を、そして情熱すら、少しでも麻痺させ、辱める傾向を見せる限りは、この知識を否定し、拒絶し、ふとぶとしくそれを乗り越えていくという決意」
「アシェンババの作品中には何か官僚的で教育的なものが現れていたし、その文体も後には直接的な大胆さや、手の込んだ新しい陰影を欠くようになり、模範的で固定したもの、みがきあげられた伝統的なもの、保守的なもの、形式的なもの、きまりきったものにさえ変化していった」
「彼は海を愛していた。完璧なものによって静かにしていたいということは、優柔なものを作り出そうと心を砕く人間の憧れ」
「人間と言うものは、相手に判断を下しえないでいる間だけ、相手を愛し、敬うもの。憧れは認識不十分のこと」
「心迷った男は、こんなふうに考えて自分を支え、自分の品位を守ろうとした」
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難解。高校の時はヘッセなんかもたくさん読んだ。この、日本語訳に更に現代語訳がないと真に理解には到らない気もするけれど…それは多分、しない方がいい。
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作者の芸術家観が窺える。トニオ君の鬱屈した少年期は、現代のオタ・非コミュな人達には痛いほど分かるのでは。ハンスとインゲは「リア充」ってやつですね。
『
「春は仕事がやりにくい。これは確かだ。ではなぜなんでしょう。感ずるからですよ。それから、創造する人間は感じてもいいなんて思い込んでいる奴は大ばか者だからですよ。」
「あなたが言うべきことをひどく大切に考えていたり、そのことのために心臓をあんまりどきまぎさせたりすれば、まず完全な失敗は間違いない。悲壮になる、センチメンタルになる。それでどうなるかというと、何か鈍重な、不手際で大真面目な、隙間だらけの、鋭さを欠いた、薬味のはいっていない、退屈平凡なものが生まれるだけ」
』