紙の本
答えの出ない状況を生きる。
2017/10/31 12:52
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作者の本を読むのは初めて。医者や学者の文章ではない、触りのやさしい文章。何を説明しようとしているか、やさしく導いている。
紙の本
少し期待外れだった。
2017/07/30 16:57
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投稿者:たまがわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
率直にいうと、期待外れだった。
主題である、「ネガティブ・ケイパビリティ」についての話は意外と少ない。
ボリュームが多いのは、「ネガティブ・ケイパビリティ」について言及している作家の生涯についてとか、
シェイクスピアや源氏物語の話、その他いろいろ。
精神科医である著者の、患者への対応についての実例の話は面白かったし、
プラセボ(偽薬)効果についての話も結構長く、これはとても興味深く面白かった。
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2017年31冊目。
「ネガティブ・ケイパビリティ=性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」。
何かを理解するためには言語化が必要で、言葉に落とし込むことで、ようやく考えに形が与えられて安心する。
でも同時に、パンの耳を切り落とすように綺麗に形どられる代わりに、切り落とされてしまうものもある。
無理に形にしないからこそ伴うことができたものもある、と思う。
理解や言語化への欲求に切迫されず、豊かに惑うことも、自身の心のためにも、相手との人間関係のためにも、大切だと再確認した。
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コロナ感染症がちょっと騒ぎ出したころから読み始めた。当時はまだ飲み屋もやっていたが、送別会者などなどが自粛していたなぁ。でものみたい上司を止めるのが大変だった。
源氏以降の下りは正直いらなかった。話が飛んだような印象がある。著者の趣味に走った感が出ていた。
とはいえ、世の中は解決できない問題に溢れていて、確かにその中でいかに生き抜くかということはとても大切だ。
学校では解決策はすでに公式化されているものだから、世の中にぽーんと出されると、呆然としてしまうのも当然だ。面接訓練で、私の経験談を聞きたがった若者らも、私の答えを聞いて、自分の答えを出そうとしたのだろう…などと思った。
いつまで続くか分からない、どうなるか見えてこない、そんな中でも生きていく、よく考える。
そうなると、図書館が閉まっているのはなかなかしんどいことなのだな。
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啓蒙書のような本はめったに読まない。この本は人に勧められて読み始めた。書いてあることに違和感はない。聞き慣れないネガティブ・ケイパビリティという言葉も、考え方自体は特異なものではない。要は結論を急がないということ。急ぐ前に相手の意図をよくよく聞き分けるということ。そして共感することを心掛けるということ。結論を押し付けないこと、と付け加えてもよい。
作家はこの言葉の起源から、自身の生業である精神科におけるこの概念の重要性を簡潔に記してゆく。するすると言葉は読み下される。
残念なことが二つ。
小説もものにするという作家の日本語が、微妙に頭の中で音像を結ばない。何度か読み返して音のつながりを理解する必要がある文章に時々出食わす。本全体の構成が完結で読者の興味を引くことに腐心していることも判るので、文章ももう少し平易な日本語で綴るべきだったのではないか。
もう一つはやたら作家自身の他の著作への言及が多いこと。この作家の熱心な読者であればそれもまた楽しい趣向だが、初めて出会う読者にとっては自慢話を聞かされているように聞こえてしまう。その寄り道は本当に必要だったのだろうか。
但し作家が鳴らす警鐘はとても切実なもの。昨今の不寛容な世相を鑑みれば、そろそろ僕らは立ち止まって一体何がいけなかったのかを考えてみてもいい筈だ。多様性の重要さが声高に叫ばれるご時世に必要なのは、相手を説き伏せることができる秀逸なアイデアでもそれを効果的に伝えるプレゼンテーションでもなく、確かにネガティブ・ケイパビリティなのかも知れない。
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negative capability 負の能力、陰性能力
どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力
社会は変えられない、とりつくすべもない事柄に満ち満ちている
キーツによるネガティブケイパビリティの重要性の発言
不可思議さ、神秘さ、疑念をそのまま持ち続け、性急に事実や理由を求めないという態度
謎話を謎として興味を抱いたまま、宙ぶらりんの、どうしようもない状態を耐え抜く力
詩作「エンディミリオン」
喜びも、悲しみも歓迎する
忘却の川の藻も、ヘルメスの羽も同じだ
今日も来い、明日も来い
二つとも、私は愛する
略
わかりたがる脳は、音楽と絵画に戸惑う
簡単に答えられない謎と問い
フランス人ブランショの言葉
「答えは質問の不幸」
「答えは好奇心を殺す」
黒井千次
「謎や問いちは簡単に答えが与えられぬ方がよいのではないかと。不明のまま抱いていた謎は、それを抱く人の体温によって成長、成熟し、更に豊かな謎へと育っていくのであるまいか。そして場合によっては、一段と深みを増した謎は、底の浅い答えよりも遥かに貴重なものを内に宿しているような気がしてならない」
日薬〜時間的な基盤の保証
目薬〜見ていますという効果
プラセボ効果(プラセボの原義はラテン語で、「私は喜ばす」)
ある意味の思い込みで、効果が出る
治療を受けいているという実感かわ症状に改善をもたらす
ノセボ効果とは、プラセボでも副作用が出ること
プラセボ効果を生じさせる必要条件は、意味づけと期待
キーツ、シェイクスピアに心酔
真の創造行為にはネガティブケイパビリティが欠かせないとの気づきから
創造、ラテン語のcreatioの原義は、to bring into bringで、無からこの世に存在させる
創造行為は人間が神の位置に立って、無から有を生じさせる営為
だから通常の能力ではなく、ネガティブケイパビリティが介在すると考えられる
精神医学では、創造行為と癒しを関連づけて考察
創造行為は本人に癒しをもたらすと信じられている
病理性を芸術にぶつけることで昇華させ、健全を取り戻す
しかしこれは容易ではなく、芸術家にはアルコール依存症が多い
芸術家の認知様式
特徴的な能力とは、対立する曖昧な情報を統合する力、言い換えると二つの正反対の思想や概念、表象を同時に知覚して使う能力
別の研究
1知性
2知識
3能力をどこに集中させるかという知的様式
4性格
5動機付け
6環境
4の性格特徴として指摘されるのが、「曖昧な状況に耐え」「切れ切れのものが均衡をとり一体となるのを待ち受ける能力」
キーツいわく
自分が無になるところから詩的言語が発せられる
シェイクスピアは
世界の総体、人間の全体をそのまま掴みとろうとする世界に着目、自身の意見信条は出ていない
理解と不理解の境界、読者が気づくか気づかないかの微妙な暗闇に一条の���い光を入れる方法をとっている
p187
教育とは、本来もっと未知なものへの畏怖を伴うものであるべき
この世で知られていることより知られていないことの方が多いのだから
素読〜意味もわからずただ声に出すだけ
繰り返すうちに、抑揚が身につき、漢字の並びからぼんやり意味が掴める
この教育には、教える側にも教えられる側にもわからないことへの苛立ちがない
わからなくてもいい
言われるままにくりかえす
問題設定もなく、ひたすら音読して学ぶだけ
素養や教養、あるいはたしなみは、問題に対して早急に解答をだすことではない
解決できないことにじっくり耐える、熟考するのが教養
学習の速度の差は自然
学習というのは、世の中の学ぶべきこと、塾の宿題ではない
孔子の論語の3分の一は芸術論
論じられているのは、絵画、詩、演劇、音楽
真の人間になるためには芸術を学ばねばならないと強調されている
それは、わけのわからないもの、解決不能なものを喜び、注視き、興味を持って味わっていく態度を養成するためなのかも
崇高なもの、魂に触れるものというのは、ほとんど論理を超越した宙ぶらりんのところにある
人生の本質はそこにある
ビオンの言葉
ネガティブケイパビリティを持つには、記憶、理解、欲望が邪魔をする
現代の教育は、到達目標という欲望があるために、時間に追われながら、詰め込み記憶を奨励しつつ、とりあえず理解させようとする
それではネガティブケイパビリティは育たない
タイムの記事から
普通の親から生まれた成功者の子どもの共通点
他国からの移民
両親は子どもの小さい頃、教育熱心
0〜5歳までいろいろなことを学ばせていた
学ぶ心を植えつけていた
親が社会活動家
家庭内は平穏ではなかった
子ども時代に人の死を見てきた、生きることの大切さを学んでた
丁寧な幼児教育の後は放任
森田療法
持ち堪えるは、能力のひとつ
エラスムス(オランダ人、愚神礼賛を書いた)
寛容を説き続けた
寛容を支えるのがネガティブケイパビリティ
精神科医として大切なのは、親切
中尾弘之先生
人間の最高の財産は、empathy、共感
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ネガティブ・ケイパビリティは知っていましたが、最初に使ったのがキーツとは知りませんでした。
普段の仕事の多くは、落としどころがあり、限られた期間と費用でいかにそこへもっていくかがキーです。できるだけ当てはまる事象を調査し、見つかればそれでほぼ終了です。
その方法を、例えばカウンセリングなどに使ったら最悪です。クライエントをラベリングして理解した気になってしまいます。たとえ、すぐに答えを求めてるクライエントがそれを望んでいても、それでは何も前に進みません。あえて安易な道を避ける勇気が必要です。
社会はますますせっかちになり、ネガティブ・ケイパビリティを培う経験をすることが厳しくなっています。できるだけ意識して生きたいですね。
余談ながら、キーツは純朴で繊細な青年と勝手に思い込んでいて、「遊蕩がたたり、性病にも罹患し水銀を服用」はチョット意外でした。
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すぐに答えを求め、秒単位で情報をかき集めようとする現代の人たちには最も必要な力だと感じた。
最後に語られるアメリカの少年からルワンダの聾唖の子供に贈られた手紙のエピソードだけでも、この本を読んだ価値があるくらいに素晴らしいエピソードだった。
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どうにも解決できない問題を、宙ぶらりんのまま、何とか耐え続けていく力。
ネガティブ・ケイパビリティ、興味深いです。
オープン・ダイアローグで言うところの「不確実性への耐性」と同じ概念でしょうか。
割り切れないもの、答えを出し得ないもの、どうにもならないものと、どのように共にあるか。
ネガティブ・ケイパビリティ、私も身につけたいです。
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ネガティブ・ケイパビリティとは何か、それを人生に生かすには、というあたりが知りたかったのだけれど、歴史上の人物の誰がその能力を持っていたとかそんな話ばかり。なのでパラパラと斜め読みして終わった。
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判型も小さく目立つ本でもないが、書名「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力」が目にとまり。引き寄せられるように手にとった本。
ネガティブ・ケイパビリティという概念に出会えたこと、その意味するところを知ることができたのは、本当にありがたい。
ネガティブ・ケイパビリティ、寛容、共感、の欠如がこの今の世界の生きづらさの根源にあるのだということが理解できた。
多くの人に読んで欲しい。とくに、子育て中の方、これから親となるような方には、ぜひおすすめしたいと思う。
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ネガティブ・ケイパビリティとは不確実さの中に性急な結論を持ち込まず、神秘さと不思議の中で、宙吊り状態に耐えていくことだと定義されています(手を替え品を替え定義がされていますが、言っている趣旨は同じです)
僕は人生で一番大切な力は「漠然として不安に耐える力」だと思っているますし、なんでもかんでも白黒を仕えたがる風潮はヘタレだと思っているので、とても深く共感しました。
ネガティブ・ケイパビリティについて、歴史から、自身の体験から、時事問題から、さまざまな事例を持ち出して解説しています。くどいと感じるかもしれませんが、わかりやすいとも言えます。
日本のみならず世界中、現代はネガティブ・ケイパビリティが欠如していると思えてし方がありません。右とか左とか保守とかリベラルとかはどうでも良くて、「議論ができるか」「話し合えるか」が大事だと思うのです。
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ネガティブ・ケイパビリティ=「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」あるいは「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」。著者が事例として挙げている、不登校やギャンブル依存症、メルケル首相とトランプ大統領の対比は興味深い。現代はすぐに結果を求める、不寛容の時代だからこそ、大切なのは他者に対する「共感」だという筆者の主張に賛成だ。
読んだばかりの薬丸岳『ガーディアン』のテーマにも通じており、こういう形で極右に振れている現実に対する揺り戻しがきているのだとしたら、そこに希望が見える。
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負の能力もしくは陰性能力。「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に堪える能力」である、Negative Capabilityについて語った本。
昨今、というか、もう高度経済成長の頃から、なんなら産業革命以降の趨勢であろう「マニュアル化」に一石投じるかのような内容で、非常に示唆に富んで面白い考え方だ。
詩人のキーツが兄弟に宛てた手紙の中でその考え方を示し、後の世に精神科医のビオンが見いだし、著者は論文で目にして注目してきたという概念。本書の前半は、キーツの生い立ち、ビオンの半生を紹介するので、なかなか本題というか、この能力の効用について語られないのでイライラする。 が! それこそ早急に回答を求めてしまう近代教育の悪弊、現代病なのかもしれないところだ。
それをこの読書体験からも分からせようとする著者の深慮遠謀だとしたら見事なものだ(多分そりゃ違うとは思うが)。
こうしてこの能力が発想され、発見に至り、世に膾炙された一連の経緯のあと語られるネガティブ・ケイパビリティであるが、今は、そんな悠長な考え方は認められにくい世の中だ。究極の対局が、なんでも分かったものとして片付けようとするマニュアル。
”マニュアルがあれば、その場に展開する事象は「分かった」ものとして片づけられ、対処法も定まります。ヒトの脳が悩まなくてもすむように、マニュアルは考案されていると言えます。”
人は、こうして考えることをしなくなると警鐘。現代の教育がそもそも、如何に早く正確に”解”を吐き出すかを目的としているため、「不確かさの中で事態や状況を持ちこたえ、不思議さや疑いの中にいる能力」なんてもっての外ということだ。しかし、そうした、不確かさの中に身を置くことで、モノゴトの本質に深く迫ることができる。それをやってきた個々の偉人がシェイクスピアであり、紫式部だったと説く。人間の本性を赤裸々に描いた洋の東西の文学界の巨人はネガティブ・ケイパビリティの体現者でもあったということだ。
この能力の効用として対人間の場合、
「相手を本当に思いやる共感に至る手立」と、本書は説く。
相手を思いやる、自分ファーストじゃないんだよとなと、ふとあの人のことを思いながら読んでいると、ドイツのメルケル首相との対比で、トランプ氏のことも取り上げてあり、やっぱり、そこ、言いたくなるよな、とほくそ笑んだ。
斯様に、このネガティブ・ケイパビリティは、国際社会の問題でも、文学の創造性においても、教育問題や、もっと身近な対人関係でも重要で大切な能力だと、現代のあらゆる風潮に対するアンチテーゼとして提示している。
著者の本業である精神科医としての臨床の例だけでなく、作家としてシェイクスピアの発想、池波正太郎と編集者との会話、黒井千次の書評委員会でのエピソード、フランスの作家モーリス・ブランショ(1907-2003)の言葉などを引用した喩えも示唆に富んでいる。
ー La reponse est le malheur de question. (答えは質問の不幸である)
なかなかいい言葉だ。
とはいえ、謎を謎のまま置いておかない��分は、これはひとえに現代教育の賜物ではなく、記憶と理解を通じ、こうありたいという欲望をかきたてる、他ならぬヒトという種族の脳の成せる業。こうしてホモ・サピエンスは地球上の覇者となり得たので、その方向や勢いにいまさらブレーキを掛けることは非常に難しいはずだ。
ただ、そろそろ、立ち止まって考えることも必要なのかもしれない。そんなことを思わせてくれる面白い一冊だった。
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なぜ、色んな怪しい思想、政党、宗教が古今東西、こんなにも盛況なのか!本書の内容とは多少ずれるが、その原因が理解できたような気がする。
陰の能力を、自らも大切にして、周りの人にも広げて行きたい!
分からないものを、分かろうとしないで、容認する能力を、身に付けようと思う。
また、プラセボ効果を、今まで以上にまで至る所で活用したい!