気軽に読める「南極入門書」です
2021/12/20 11:20
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
南極という未知の世界について学べる、いわゆる「南極入門書」です。
表紙すぐには南極のカラー図やカラー写真が掲載されています。
文章の体裁もカジュアルで、中公新書としてはかなりラフな作りになっているのが好印象でした。紙幅も200頁未満で、気軽に読める内容です。
知られざる南極氷床の今
2021/12/14 22:30
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投稿者:第一楽章 - この投稿者のレビュー一覧を見る
北海道大学低温科学研究所の教授により、南極氷床の研究の最先端が非常にわかりやすく解説されています。一般的な世界地図では下の端に白っぽくあるな、くらいの南極ですが、その氷床は世界最大の氷の塊です。面積は日本の国土の37倍、2番目に大きなグリーンランドの氷床の約8倍。氷の厚さは平均で1940メートルで、氷の体積は琵琶湖の100万倍もしくは日本海の20倍に相当し、これは日本で消費される生活水の200万年分とのこと。そして、途方もないボリュームの氷が全て溶けると、世界全体の海水面は58.3メートル上昇すると見積もられています。地殻変動による『日本沈没』より、南極氷床の融解の方が、よほどあり得る危機です。
南極の氷床に関する科学は日進月歩で、観測・測定技術の進歩に伴い、新しい発見とそれによる知見の更新が今も続いているそうです。2機の人工衛星の距離の伸び縮み(トム&ジェリーという愛称)で氷の質量の変化を測ったりなど、驚きの連続でした。そして人工衛星の観測が進歩しても、やはり現場での観測が欠かせないのです。
そして、こうした最新の科学を、簡単な言葉で解説する筆者の筆力にも脱帽です。氷は水に浮くこと・冷たい水は温かい水より重いこと・塩水(海水)は淡水よりも重いこと、くらいを押させておけば十分に通読できます。たいてい、分かりやすさと科学的な正確性はトレードオフになるのですが、この本は非常に高いレベルで両立させています。
南極で起きていること
2024/06/14 17:44
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
南極の氷床がなくなっていくプロセスが単に温暖化で表面から溶けているというのではなく海水温の上昇で海に浮かんでいる氷が少なくなり陸上の氷床を支えていた部分がなくなり氷河の流れが早くなることで流出が加速するプロセスが起きているなど知らないことだらけだった。
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
南極の「氷」がどのような状態か?、またどのような危機を迎えているのか?、といった事項について基礎から学べる良書。南極の氷が溶けた場合の海流への影響など連鎖的な作用は驚きでした。
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投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
気候変動、温暖化の問題は地球環境にとって焦眉の急であると言われている。IPCCのレポートは年毎データの更新整備、新しい観測方法の出現等により解析結果も充実してきたようだ。
南極の氷床とその変動は、地球全体の気候問題と強い相関関係を示している。そのメカニズムについて、著者は南極での各国の調査活動からの解析結果を説明しながら将来未来を展望する。とはいえ、自然のメカニズムを実証データで解き明かすことはなかなか難しい。温暖化の基本事項である、気温についてはその測定方法を精査しないと測定値の吟味はできないとする指摘もある。
南極の氷床の調査研究はここ10年間で大きく成果をあげているそうだ。それは人工衛星による観測技術の導入が大きく、気候変動問題と大きく関わることから各国の調査グループが南極で活動し、成果を発表している。南極の存在は氷床や周辺海洋を含めて地球環境に及ぼす影響は大きいという。
過去80万年の地球環境変化をみると、10万年サイクルで推移し、気温とCO2濃度、海水準はほぼ比例関係にある。サイクル上、現在は10万年の温暖期に当たりこれからは寒冷化に向かう位置にある。その約10万年間(12万年)の海水準と氷床の変動も図化されている。サイクル上、いずれ寒冷化へ向かう流れだが、氷床の変動から海水準の上昇速度が大きくなると推測されている。
100年先、500年先の未来の話だが、その変化に対応していかなければ人類も生存が危ういことになろう。
未来を予測するに際して、3つの不確定性があるという。温室効果ガスの排出量、気候モデル、氷床モデルだ。人類が制御可能なのは温室効果ガスの排出量なので未来の地球環境を選択するのは人類自身にかかっているという。
地球環境問題は多くの要素要因が絡まっており、解きほぐすことは簡単には進まない。本書の研究内容も相関関係は抽出できてもその因果関係を明解に説明できていないようだ。今後の研究に期待したい。
理科の知識で理解できた。
2022/09/12 07:50
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投稿者:ら君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み進めるにつれ、他人事ではないのだとヒシヒシと感じるようになってきた。
南極の氷のことなんて、日頃は気にしていなかった。
気にかけよう。
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温暖化がもたらす「地球最大の氷」の異変。氷床融解が海水準上昇に与える影響は。現地調査と最新科学から“氷の大陸”の実態に迫る。
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p.63 過去62回の観測隊で派遣された人数は3500人
p.83 支えを失った氷河の流出は加速する
p.85 棚氷が氷河を押しとどめている
p.86 氷床変動のまとめ
p.93 底面融解→接地線後退→棚氷崩落
温暖化→海水温上昇→底面融解融解というシナリオ
p.101 溶けた氷は海水の塩分濃度を下げ、海水温を低下させてしまう。
海流は熱を運び、世界の気候や生態系に関与している。大気にも関与している。
氷床の重みはマントルを押す。
p.103-p.104 1900-2018で海水面は18センチ上昇。
海水の膨張と量の増加が原因でその出所は、ヒマラヤ、アラスカなどの山岳氷河が半分を占め、残り半分は南極、グリーンランドの氷床。
p.108 西南極が融けると海水面は5m上昇
p.114 海洋への淡水流入が海洋大循環を阻害する
p.146-p.147 将来予測についての意見
1、100m相当の氷床変動は起きている
2、人の営みが予測を難しくしている(特にCO2濃度は異常p.148)
p.165 p.175 2019IPCCの焦点は2100年までの環境変化が焦点に
・1.1mの海面上昇を予測
・大気、海洋、陸地の温暖化は人間活動による
・現在の二酸化炭素濃度は異常
p.174 生物の存在 その場に行かないと測定できないことが南極にはたくさん残っている
p.184 行かなくてはいけない理由‼︎
降雪量は現地で測定するしかなく、人工衛星(高さのみ測定)では何による標高変化なのか区別できない
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さて問題です。南極の氷は、日本人の生活水およそ何年分に相当するでしょうか。a)2年分 b)200年分 c)2万年分 d)200万年分。日本人の生活水は年間およそ13ギガトン。それに対して、南極氷床が抱える氷はおよそ2450万ギガトン。したがって、答えはdの200万年分となる。これ、本書の最初に出てくる事実だが、早速授業のネタとしてあちこちで使わせてもらっている。これだけでも十分に衝撃の事実なのだが、他にも知らないことがいっぱいあった。というか、どうやら新しいことがここ10年くらいで次々に分かってきているようだ。人工衛星などを使った観測技術が進歩してきたおかげなのだ。年中氷がとけない氷河は高い山の上にもあるが、南極大陸とグリーンランドには大きな氷河がある。あまりにも大きいので、それを特別に氷床と呼ぶ。南極氷床は面積で日本の40倍近く、しかも厚さが平均2km近くもある。体積でいうと1辺が300kmの立方体相当。まあ、とにかくでかい。それがとけているという。氷床の下の大陸に接している部分がとけて液体の水になっている。すると氷河が流れやすくなる。海に突き出た氷を棚氷というそうだが、その下は海水によってとかされる。ときにはカービングといって突き出た氷の塊がちぎれて海に流れ出ることもある。現在のところ、温暖化の影響でとける氷もあるが、南極の上に降る雪も増えるため、トータルするとそれほど多くの氷が減っているわけではないようだ。海面上昇に影響しているのはどちらかというとグリーンランド氷床のようだが、今後どうなっていくかは定かでない。短い期間で見て、これだけ大きなCO2濃度の増加、そして温暖化が起こっている原因として、人為的な影響があるのは間違いなさそうだ。人間が住める地球を残すためには何らかの手を打つ必要があるのだろう。ここからは私見だが、CO2濃度の季節変化を見る限りでは、光合成量を増やすのが最も手っ取り早いように思う。つまり、植物の総量を圧倒的に増やしていけばよい。近くの川べりなど、放っておくと草がボーボーに生えるため、すぐに刈ってしまわれるのだが、そんなことに無駄な人件費を使わずに、草は伸び放題にしておけばいいように思うが、どうだろう? とにかく植物の生命力はすさまじい。そこに望みをかけてみてはどうだろう?
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南極の氷って面白い。第1章の南極氷床の基礎知識からして、知らないことばかり。南極氷床の氷は2450万ギガトンあり、日本人が生活に必要とする水を約200万年間にわたって賄える計算になるとは驚きだ。
第2章にある南極の氷の変化の計測も興味深い。重力観測衛星GRACEの2つの機体の名称がトムとジェリーとはネーミングセンスが良い。
第4章の南極の変異がもたらすものは、海洋大循環の停滞が特に面白かった。
南極の氷にはまだまだ未知の部分があるので、今後の研究結果が楽しみだ。
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まず、南極が巨大な氷のかたまりを乗せている場所である。その氷の大きさなのだが、日本の37倍の面積✖️平均的な厚さ1940メートルというバカでかい氷の塊なのだ。そしてこの氷の塊が全て溶けると、現在の海水面を100メートル以上上昇させてしまうというのだから驚きである。そして過去には何度も南極にも北極にも氷のない時代があり、その時には海水面は140メートルほど高かったのだ。
そして過去繰り返してきたダイナミックな気候変動が、人間の活動によって明らかに歪められ、異常な変化を起こしている。人間の活動は、温室効果ガスにより1.5°ほど、大気汚染で−0.4°程の影響を及ぼしており、温室効果ガスはこのままだと急速に影響力を高めるようだ。どうなるかを予測するのはとても難しいのだが、大きな流れからすれば、いずれ人間が現在のような規模で生息していられる時代はそれほど永くは続かないのだろう。
氷河や氷床が地球環境にこれほど大きな影響を与えているというのは驚きの事実で、このことを知っただけでもこの本を読んだ価値がある。
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南極にある巨大な氷(正確には氷床)の事は、温暖化に絡んでニュースにも登場しますが、その実像はあまり知られていません。本書は南極の氷床を研究する筆者による分かり易い、かつ非常に内容に富んだ南極の氷床に関する新書です。
南極に存在する巨大な氷を氷床と呼びますが、そのスケール感は想像以上に巨大です。1辺の長さ1㎞の立方体の水の重さが1ギガトン(1000000000トン!10憶トンですね)となるのですが、この単位を使うと日本全土で1年間に降る降水量が640ギガトン、日本全国で使用される生活用水の総量は13ギガトンとなります。南極氷床の総量は約2540万ギガトンで、日本全国の降水量の約4万年分、生活用水の約200万年分という途方もない量です。そして地球上にある氷(ヒマラヤ山脈などの山岳氷河なども含む)の約90%が南極に存在しています。この規模ですから、南極に存在する氷が全て溶けたら、海水面が世界全体で約50m!上昇するというのも理解できます。
これ程まで巨大なスケール感であることを分かり易い例を挙げて紹介され、そして次に本書で触れられるのが温暖化、気候変動と南極氷床との関係です。南極では21世紀に入って平均して100ギガトンの氷が失われているそうです。100ギガトンというのが相当な量であるというのが先の例からもわかると思いますが、それでも南極の氷床全体から比較すると25万分の1です。これを”たった25万分の1”と捉えては非常に危険だという根拠が、本書後半で解説されています。詳細は本書をご覧いただきたいのですが、地球の気温が数度上昇しても南極の気温が氷の融点を超えることはなく、氷が融解する効果よりも温暖化した熱を海洋が取り込み、暖かくなった海洋にため込まれた熱によって南極の氷床が氷山となって流出する効果が非常に大きくなるとの事でした。
温暖化、気候変動について非常に大きな影響力を持つ南極氷床について、読者の興味をうまく引き出している1冊だと思います。難解な理論や表現も少なく、大変読みやすい印象でした。
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複雑系でいろいろな相互作用があり、単純に温暖化だから氷が溶けて。。。という単純なものではないようだ。しかし、種々の観測から人類の活動によりその変化は加速していることは確実である。科学的知見の蓄積に邁進する観測隊員に感謝。
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単に恐怖を煽るだけでなく、最新のデータをベースにした南極の姿は、とても興味深かったです。
何より南極について10年前のデータは、もはや役に立たないといったところが一番記憶に残りました。全体を通してとても面白かったです。
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まず冒頭驚いたのは、この地球上に存在する水の殆どが南極に氷として閉じ込められている事。
日本人が一年間に使う水のおよそ200万年分もあるらしい。
異常気象が言われて久しいが、筆者はイタズラにそれを煽ることもなく、どちらかというと淡々と、観測データに基づき今南極に起きていることを分析し記述している。分かりやすく書いてありその姿勢には好感が持てる。
気の遠くなるような年月の中での気象循環が、残念ながら人間活動によって歪められているのはほぼ間違いないが、それを止める有効な手段が見出せないのが今の世界である。
南極の氷にほんとに大きな異変が起きてからでは、その対策は全くの手遅れになるだろう。政治の世界と科学の世界が手を結び、なんとかせんといけないと再確認した。