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一般書

生皮 あるセクシャルハラスメントの光景

著者 井上 荒野

小説講座の人気講師がセクハラで告発された。なぜセクハラは起きたのか? 家族たちは事件をいかに受け止めるのか? 被害者の傷は癒えるのか? 被害者と加害者、その家族、受講者た...

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生皮 あるセクシャルハラスメントの光景

税込 1,900 17pt

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商品説明

小説講座の人気講師がセクハラで告発された。なぜセクハラは起きたのか? 家族たちは事件をいかに受け止めるのか? 被害者の傷は癒えるのか? 被害者と加害者、その家族、受講者たち。当事者の生々しい感情と、ハラスメントが醸成される空気を重層的に活写する新たな代表作。

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みんなのレビュー90件

みんなの評価4.0

評価内訳

複数の勘違い

2022/07/03 10:11

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る

小説講座の人気講師からセックスを強要され、小説を書くことも講座も辞めてしまった咲歩。結婚して数年後講師をセクハラで告発した。

小説は当事者以外の家族、小説講座の生徒たち、SNSに投稿する関係の無い他人などの語りで進む。
視点を変えながら、いろいろな人の気持ちを読みながら、読者はグッと物語の深みに沈んでゆく。
上手いなあ、と唸らさられる。

レビューの中に父井上光晴に関連して読んでいる人がいた。
娘だった荒野は、どう思っていたのか。傷ついていたのか、と想像してしまう。
ただ、本作は傷ついて傷ついて、生皮を強引に剥がされ痛みに苦しんでいる咲歩が、告発したことで、もがき苦しみながらも、傷を癒していく姿が語られる。

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「恋する」を勘違いしてはいけない

2022/06/07 15:28

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

この作品の著者井上荒野の父親は、作家の井上光晴で、彼の晩年の姿を描いたドキュメンタリー映画が1994年の原一男監督によって出来上がっている。
 その映画には文学教室の講師を務め、多くの受講者が慕われる光晴の姿が描かれているし、荒野が父親と作家瀬戸内寂聴との不倫の関係を描いた『あちらにいる鬼』でも、講師として人気のあった光晴が描かれている。
 荒野の小説にしろ、原の映画にしろ、そこには光晴の様だけでなく、光晴に「恋する」女性受講者が多く登場する。
 そう、彼女たちは光晴に「恋して」、あるいはその感情は表には出てこない関係があったとしか思えない表情をしているのだ。

 荒野のこの小説には「あるセクシャルハラスメントの光景」とサブタイトルがついている。
 出版社の編集者をやめ、カルチャーセンターの講師としている月島光一、その彼に性交渉を強要されたことで悩み続ける咲歩という女性。
 行為自体は随分前のことで、咲歩はそのことで受講もやめ、新しい恋愛を経て結婚したが、月島に受けた行為はトラウマとなって彼女を苦しみ続ける。
 そして、ついに咲歩はその事実を告発する。
 その一方で月島を擁護する「恋する」女性たちも多くいる。
 彼女たちは月島に可愛がられることを請い、告発した咲歩を中傷しようとする。

 井上荒野がこの作品を書こうとした根底に、父光晴の姿があったことは間違いない。
 「恋する」受講者との間に何があったのか、荒野はそのことを暴こうとしている訳ではなく、男によって強引に生皮をはがされていく女たちを救済しようと願ったのではないだろうか。

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人の心はいつでもだれでも一方通行。

2022/12/18 15:15

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る

カルチャーセンターで小説講座の講師を務める月島光一の教え子には芥川賞受賞者がいるし、その他にも新人文学賞の候補になった人物もいる。
 しかし、月島のレクチャーの仕方は教えを受ける側に心理的に圧迫を与える。女性の教え子に対して、指導なのか口説きなのか。月島本人は指導に熱が入り過ぎた、男と女のことじゃないか程度なのだが、受けた方は乗り越えられずに筆を折った者さえいる。
 あれは決して合意ではなかった。と気付いた女性たちと周囲の感じ方、世の中の反応が、多視点で語られる。
 抵抗したら本当にやめてくれた? 野暮とか冗談が判らないと更にひどい仕打ちをしたりしない?

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曖昧な境界が生む痛み

2022/06/09 18:32

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る

タイトルや表紙、帯の雰囲気から、もっと生々しく性暴力を告発し糾弾する物語かと思っていた。しかし構えて読むと肩透かしを食うくらい、静かに話が進む。私たちのすぐそばにある、日常の出来事の延長線のような・・・。
セクハラやレイプといった性暴力がニュースになると、何か特別な大事件のように感じてしまう。被害者も加害者も自分とは遠いところにいる人のように思える。
だが、ここで描かれているような体験は、誰もがしたことがあるのではないか。当事者でなくても傍観者として。
善良な(悪意のない)ごく普通の人が、その力関係によって加害者になったり被害者になったりするものなのだ。
それを、さまざまな人を登場させることで、自然に描いている。セクハラの被害者、気付ずに加害者になっている人、被害者に心を寄せる人、被害者をバッシングする側に回る人。どの人にもそれぞれに思いや事情があり、善悪の二元論でバッサリと片付かない。被害も加害も、それをどう捉えるかも曖昧だ。だが受けた「痛み」だけは確かなのだ。癒えない痛み。
筆者はそれを「生皮」との言葉で表現したのだろう。
内容にあまりに「あるある」と感じさせる点が多く、日常の風景に近いので、物語の展開には物足りなさを覚える。
人物ごとに話が切り替わる仕立てだが、悪意のない傍観者や誹謗中傷する第三者は、1回登場したっきりで、その後について回収されることもなく、本当に通りすがりの人だ。
まあ、そういう人が改心したり、同じ目に遭ったりとか、そう都合良く話が進んでも興ざめするのだろうから、この物語は、すべてが回収されないまま終わるのがベストだったのだろう。
そして、それが、現実でもある。

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2022/05/14 22:47

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2022/03/27 11:12

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2022/04/02 23:56

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2022/04/04 10:47

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2022/10/29 19:13

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2022/12/03 18:28

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2022/04/07 15:29

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2022/04/20 10:42

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2023/04/05 23:30

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2022/04/25 23:38

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