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あの武者小路実篤の自伝的小説。道端で一目会った娘に一目惚れし、絶対に結婚する、相手もそう思っているに違いない、これは天の意思だ、という妄想が膨らみ、家族や友人を巻き込みつつ、数年間思い続ける。その間の言動はまさに「おめでたき人」の一言で、嫌になるほど。しかし、これほどまでにあれこれ空想を膨らませることは、忙しくしている現代に人には欠けているのではと思うと、羨ましい面もあったりする。
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ほうき相手にプロレスができる。そんな言葉を思い出した。一流プロレスラーは相手なしで技の応酬などショーができるといったもの。「お目出たき人」が一流かどうかはさておき独善的な主人公のショーを見ている気分だった。
これはこれで狙って書いているのだろうから大したものではないか。小説としてはあまりおもしろくなかったけれど、風景の描写や主人公の鶴への距離感など筆致に見るものがあった。簡潔な文章なのは好印象。主人公の言動がダメなお坊ちゃんそのもので、その設定自体は楽しめるものの、その他の登場人物にはスポットがあたることがなく、それが小説の幅を狭めているように感じた。会話文も多くなく、主人公以外の心情は描かれない。ただ、それを目指したものではないから仕方ない。独善的な主人公の一人称だからそれを楽しめるかどうか。
付録についている、たった9ページの「空想」が一番おもしろかった。やはり戯曲的な会話文があったほうが、この作家は躍動感が出る。画家の兄が新聞の批評におびえている、寂しいお話。
解説(?)が山本健吉氏と阿川佐和子氏による二本立て。武者小路氏を現代の読者に結びつけてくれる。ここだけ読んでも十分楽しめる。
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空想にふけってもいいじゃない!
幸せな空想で仕合わせ、幸せになれるなら
たとえ恋が実らなくてもいいと思えてしまうお話でした。
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根拠はないけれど、鶴と結ばれるに違いないと思いこめる心の強さはいっそ痛々しい。
こじつけにもほどがあるような自分と彼女とのつながり?に満足して微笑んだり、鶴の容姿が醜くなって人が離れて行っても自分は鶴にためらいなくプロポーズするだろう…という中学生のような妄想を思い描いたりと、鶴との恋愛というより自分への陶酔のようなポジティブさに笑いがこみあげてくる。
わが身を顧みればけっして彼のことは笑えないのだけれど。
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2019/7/27
全然モテなかったと噂の武者小路実篤の本は前にも友情で読んだことがあるが、それに近いような、簡単に言うとウジウジ妄想男の話?
もともと月子という女性を好きだった26歳の主人公は、月子にフラれた後から近所に住んでいた鶴に恋をするのだが、別に鶴との関係が進展したり後退したりというような内容ではなく、言ってしまえば一目惚れした後、特に鶴との接点もないままにどんどん主人公が妄想や想像を膨らませていき、鶴が別の人と結婚したという知らせを聞いて勝手にショックを受けた的な感じの話です。
主人公と鶴の関わりがあったとするところもいくつかありますが、電車の中で偶然に遭遇した、とか、代理の人に結婚したい的な手紙を送ってもらってお断りの返事をされた、とか、会釈をされた、とか、とにかく直接的な関わりが一切ありません。
妄想だけでこうも話が進むものかと思うのですが、現代の小説ならきっと内容が薄っぺらくてつまんないなとか感じてしまうであろうところを、明治期のこうした文学作品は何でかつまらないと感じさせないところがあると思います。
どうしてそう感じるのか色々考えてはみるもののよくは分からず…。でも色々な描写がすごく丁寧に書かれているからなのではないかなという気はします。読書素人ですが、こうした文学作品に時々触れるのも良いなと思います。
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この小説に書かれてある主人公の恋愛がまるで高校時代の俺かよって感じではじめて読んだときはびっくりしたな。恋愛といったけれども主人公は好きな娘との間に接触はぜんぜんなくて、ただ自分だけで好きだ、結婚したいだの世間がどうだの恋愛のあり方がどうだのと独りよがりに考えてるだけなのよね。
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おめでたい人ってこういう人のこと言うんだなぁと、微笑ましくなる恋愛コメディ小説。これが、明治時代の作品と聞くと、何とも明治時代に親しみが湧いてくる。
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主人公である男は近所に住む鶴という自分よりも幾分若い女に恋して、その鶴との恋模様をおめでたい内容で妄想する話。結末は悲しい結果となるが、男は最後までおめでたいやつだった。率直な感想としては、この男が感情に支配されてよろしくない行動を取らなくて良かったなと。
いつの時代もおめでたい人はいるもんなんだなと思った。
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話した事もない女性へ恋心を爆発させる男の「超・妄想純愛劇」
世が世ならPTAの皆様が意気揚々と出版社に凸しちゃう粘着ストーカー小説の題材になりそうだが…
本主役はひたすら純粋で夢見がちでポジティブで高尚な侍か賢者だ。少し笑えて、割と切ない。
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かなり昔の本だけど、共感できるところも多くて面白かった。読みやすいし、主人公の気持ちが細かく綴られていてよかった。最後はうまくいかなくて残念だったけどまあそうだよなーと思った。
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一般的にはおそらくこんな感想だろうというのが浮かぶが、それはともかく、僕はこんなことを考えた。時間の流れ。そんな時の数分はとてもとても長く感じる。そんな時のそんながそれではなくて、さんざん考えているときでもそうかも知れないが。
多くの人、テンポよくはっきりと生きていこうとしているけれど、ふとした時にごちゃごちゃ考えているのではないか。聞いてもいないのにあれこれしゃべって何かの説明をするのは、いっぱいいる。
ともかく。
予感は当たるか外れるか。
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主人公の身勝手な恋の失恋までの物語。題名の通り主人公はおめでたき人、過ぎる。
しかも、その割には自分で動く事はなく、グダグダしてて何の進展もしない。人に頼ったりする。そしてその結果次第でその人にいちゃもんをつけたりする。憤慨ですね。
でもそれが面白い。グダグダがあったからこその後半の高揚感があった。
また、本編後に本編主人公が書いたと考えながら読む物語が幾つか入っていて、その描写はすごく面白かった。
総じて、憤慨だった。