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虹の谷の五月 みんなのレビュー

123(2000上半期)直木賞 受賞作品

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みんなのレビュー25件

みんなの評価4.3

評価内訳

25 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

ハッピーエンドでなくたって、私たちは生きていけるし、生きていかなければならない

2002/11/07 23:10

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

船戸与一の本を読んで、楽しいとか面白いとか思ったことは一度も無い。目の前で繰り広げられる、血と殺戮の物語を前に、涙どころかため息も出ないというのが正直なところだ。では、何でそういった本を私は読むのだろう。多分、そこに真実の世界が、怖かろうと、苦しかろうと、悲しかろうと、これが私たちが生きている世界だと納得させる力があるからだ。この本でも、船戸はフィリピンを舞台に、本当の人間の姿を見せてくれる。

話の主人公は、フィリピン人と日本人との混血 ジャピーノの少年トシオである。その少年が暮らすフィリピンのガルソボンガの村に、日本人と結婚して金持ちになったシルビアが帰ってきた。彼女の「日本に養女を迎えたい」という言葉を信じ、競い合う寒村の少女達。村の選挙で、経営する商店を利用し、シルビアに取り入る現職の首長ラモン。彼に挑む」理想の国土を望む熱血漢のラモンとその恋人のトニア。トシオの育ての親で元抗日戦士のガブリエル爺さん、虹の谷に住む戦士ホセ・マンガハス。

アジアの人に、日本が一体何なのかが伝わるような小説だ。相変わらず、死が描かれるが、決して累々たる死体の山ではない。と言って、ここにはユーモアのかけらも無い。それが船戸の変化か、といえばそれは違う。フィリピンの現実の反映だ。だから、もし彼が東ティモールの独立を背景にした小説を書こうとすれば、多分、もっとやるせない血のドラマとなるはずだ。

しかし、こういう作品が直木賞をとることは賛成だ。自分たちにとって見えないことは、ともすれば無かったことにしようという傾向が強い日本人が、受賞作ということで船戸の本を手にする。そして彼が提示する世界姿にたじろぐ。それだけでも、日本人は変わる。そういう力を、可能性をもった作品だ。これを手がかりに『蝦夷地別件』や『猛き箱舟』『山猫の夏』『炎流れる彼方』と読んでいけば、世界の本当の姿に目を向けることができるようになるはずだ。ハッピーエンドでなくても、私たちは生きていけるし、生きていかなければならない。

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紙の本

主人公の少年の視点から

2022/02/04 16:40

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る

フィリピンの田舎の島の情景が目に浮かぶような作品である。この作品は船戸与一の他の作品によく登場するような、ゴルゴ13ばりの超人が主人公でないところがとても良い。(サブの主役として登場はするが)
主人公の少年の視点からフィリピンの風俗が実に生き生きと捉えられ描き出されている。船戸与一の作品群の中でも指折りの作品だと思う。

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紙の本

船戸与一の作品を愛読されている方には申し訳ないのですが、僕はただの通りすがりです

2002/05/12 21:20

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:クーパー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 船戸与一の作品を愛読されている方には申し訳ないのですが、僕はただの通りすがりです。何か面白い本を、と探しているうちにこの本に行き当たったのです。
 この本のタイトルと装丁から連想したのは、森に囲まれた日本の奥地で起こる連続殺人事件です。実際に読んでみるとそれは見事に裏切られました。しかしこれは「良い裏切り」です。
 この勘違いが「先入観」という厄介者を追い払ってくれたお陰でこの本に出会うことが出来ました。もし先にフィリピンという、僕が生きる世界とは掛け離れた国を舞台にした物語だと知っていたらきっと読んでいなかったと思います。この作品が僕に新しい分野を築いてくれました。
 
 

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紙の本

得がたき作品

2000/07/26 03:47

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Centurion - この投稿者のレビュー一覧を見る

かなりよいです。発売直後に買って読んだんですが、
今年のNo.1はこれで決まり、と思いました。
直木賞受賞も、聞いたときにまあ当然だろうと思いました。

僕は、人間としての尊厳や気高さをテーマにしている
船戸作品がとても好きです。
この人の作品は心に直接響いてきます。
他の作家が好んで用いる、そらぞらしい正義感や、
安っぽい虚飾、あくびのでるような予定調和は存在しません。

そういう、いかにも日本人好みの生ぬるくて、無難な
作品をなんの疑問も抱かずに読んでる人には、
あるいはこの作品の良さがわからないかもしれません。
……もしくは本物の衝撃と感動をうけるかもしれないと思います。

人が死に過ぎるという意見もありますが、
(船戸作品においては今にはじまったことではない)
それは前述のような生ぬる指向の人達の意見だと思います。
船戸与一の圧倒的な筆力が全てにリアルな迫力を宿らせます。

今回の「虹の谷の五月」の終わり方は、個人的には
全船戸作品の中で最高だと思います。
主人公のいろんな思いや入り混じった感情にシンクロして、
余韻にひたれました。
全編通じて非常に完成度の高い作品になったなと思います。

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紙の本

敗北からの出発

2006/12/21 02:28

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:唐賢士 - この投稿者のレビュー一覧を見る

本作は、周知のとおり直木賞受賞作品である。
過去の超傑作『砂のクロニクル』や『蝦夷地別件』以来、この二者と比較して後々の作品を下に見る向きもあるが、ああいう超傑作というのは、作家の創作意欲と、それを支え受け入れる世界史・世界情勢のタイミングと、それに応じた読者の盛り上がりという、いわば「天・地・人」の絶妙な相関がきわまって初めて誕生するものであって、それほど簡単に期待できはしない。
その意味で、冷戦が崩壊し、第三世界革命や民族解放の闘争が辺境でのなし崩し的なテロリズムと犯罪の混合物に溶けていき、思想も主義もあったものではなく単なる市場主義万歳のグローバリゼーションだけが謳歌されて久しい現在、ああいう超傑作はもう二度と誕生はしないだろうし、おそらく船戸の作品世界においても、それを踏まえた上での苦しい模索がなされてるのだと思う。
そして、その模索の過程は、『クロニクル』以後に書かれた一連の船戸作品の中に、少しずつ読みとれるような気がする。読者はたぶん、あらかじめ「全的な反逆の不可能性」が確立された金銭ずくの二進法が支配する世界で、それでもなお反抗をつづけていかざるを得ない者たちが背負わされた、「あらかじめ定められた敗北からの出発」の軌跡それ自体を、船戸作品の創作過程の内部に読み込んでいかざるを得ない、そう思うのだ。
そこで『虹の谷の五月』である。本作に終始、流れているのは、徹底した挫折と敗北と諦観が風土病にまで化したかのようなフィリピンの空気である。すでに「反抗」や「反逆」は、馬鹿馬鹿しい三文芝居以下のパロディにまで成り下がっており、それはある者にとっては崩れかけた革命組織を辛うじて維持し、生計をつなぐためだけに握りしめられた古ぼけた護符であり、またある者にとっては、もはや金銭ずくの犯罪行為を飾りたてる見え透いたペンキ絵にすぎない。「組織」は単なる生存のための集団に堕落し、その堕落からも弾き出された者はテロリスト以下の傭兵にまで身を落とす。国家権力までもが、主義主張など投げ棄て、すべて二進法の貸借表のみによって、敵対組織や犯罪者に対する弾圧や裏取引を機会主義的に選択する。
そのような状況において、徹底した反抗は、それがどれだけ滑稽で悲惨に映ろうとも、もはや個人によってしか為し得ない。本作の「たった一人のゲリラ」、虹の谷のホセは、その状況そのものの象徴である。客観的に観て、悲惨で無意味な彼の軌跡は、ある意味では、船戸作品がたどっている苦闘そのものであると言っていいかもしれない。
さらに言えば、本作で起きる闘いは重大事件ではなく、小規模の紛争にすら発展しない。フィリピン辺境で、革命軍くずれと、革命軍くずれの犯罪者が警察の記録にもはっきりと残らないような銃撃戦をして、何人かがゴミのように死に、ほとんどの人間は気にもしない。最後の革命軍兵士ホセの孤独な魂は、主人公のトシオやジミーといったごく少数の人間にのみ受け継がれ記憶されて、その使命を終える。
つまりは、そういうことなのである。もはや、全てを一変させるような大事件は状況のどこにも期待しえず、人間は徹底して個的な闘争を通じて、個人の魂を新たな個人に継承させてゆくことを願うしかない。そこには大仰な仕掛けやスペクタクルは存在しないが、静かでどっしりとした手ごたえは確かにある。
その意味では、本作『虹の谷の五月』から、状況の中で船戸与一自身が闘いつづけ書きつづけてゆくしかないという、作者自身の個的な闘争の軌跡あるいはその方針を、船戸作品の継続的な読者としては受け取るべきなのであろう。

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紙の本

成長の意味

2000/07/18 23:54

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:るいぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る

読み終えて、最初に思った事は、「は〜、船戸与一らしいな〜。」だった。
少年という視点から描かれた文章により、私の怒りという感情へとスムーズにいざなってくれた。
この作品の見所はやっぱりなんといっても、「心の成長」であろう。
外見はまだまだ未熟な少年だとしても、心はその辺にいる大人とは一つも二つも上になっていく少年の心の成長が一番の見所ではないだろうか。
まあ、二つ失敗があったとすれば、一つは人の死が多すぎるというところ。
もう一つは終り方が中途半端だということぐらいだろうか。
まあ私的には、前作の「龍神町龍神十三番地」のほうがおもしろかったように思える。
まあ、読んでみる価値はある作品である。

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紙の本

フィリピンの政情不安を背景に、少年の人間的成長を描く

2002/03/20 00:30

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:杉江松恋 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた13歳の少年トシオ・マハナンは、祖父とともに、ガルソボンガの小村に住んでいる。5月のある日、ガルソボンガの平穏な暮しは1人の女によって突如かき乱された。金のために故郷を捨てた女、クイーンが村に戻って来たのだ。トシオはクィーンの目指す「虹の谷」への道を知っていることから道案内に雇われるが、そのことが彼の人生を大きく変えることになった。
 船戸によれば、冷戦構造崩壊後の冒険小説を再構築するためには、主人公を幼い少年に設定する必要があったという。主人公トシオが社会矛盾を自覚していく過程に、船戸自身も自らを重ね合わせてみなければならなかったのだろう。対日本軍、対マルコス政権と、常に解放のための闘いを強いられてきたフィリピンの政情不安、倫理の腐敗を背景に、少年の人間的成長を描く船戸の新たな代表作であり、遅すぎた直木賞受賞作である。

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2005/06/29 16:25

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2005/10/27 14:01

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2007/06/21 15:43

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2010/04/06 02:34

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2011/03/21 17:03

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2011/06/20 13:25

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2011/09/04 12:59

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2007/12/31 11:49

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