紙の本
日野富子
2020/08/19 19:51
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
応仁の乱には興味がありませんでしたが、読んでみたら面白かったです。登場人物が多いので混乱しましたが系図が出ているので助かりました。
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世が乱れに乱れた室町後期、将軍足利義政の正室として「権力」を握った日野富子。ともすれば悪評高い彼女の意外な実像と、当時の庶民を生き生きと描いた傑作長篇
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応仁の乱に関する小説を読もうと思い手に取った。日野富子という不幸な女性の物語。同じ女傑の話としては、同氏の「北条政子」の方が好き。
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永井路子の本はほぼ読破しています。最も好きな時代作家。残念ながら手元に残っていない本を「読みたい」カテゴリ登録してるけど、かつて一度は読んだ(笑)。
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室町時代、日野家の姫として当たり前のように将軍足利義政へ嫁いだ日野富子。政治に関心を持たない夫、夫に愛されない自分、やがて自らが強くなり、室町幕府をとりしきっていくようになります。
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(1994.08.27読了)(1994.08.18購入)
内容紹介 amazon
世が乱れに乱れた室町後期、将軍足利義政の正室として「権力」を握った日野富子。ともすれば悪評高い彼女の意外な実像と、当時の庶民を生き生きと描いた傑作長篇
☆関連図書(既読)
「日野富子」真鍋和子著、講談社、1994.02.22
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室町時代 八代目将軍足利義政の正室日野富子を中心として物語。
日野富子の女性として母親として幕府の重鎮としての姿を永井路子独特の表現で描いている作品である。
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応仁の乱のドロドロ陰謀後継者争い小説。将軍義政の正室:日野富子と浮浪人:蘭之介を主人公にして、内側と外側の行き来するようにして複雑な相続問題を描く。
司馬遼太郎が「火星人の眼と地人の眼が大事」的なことを言っていたのを思い出した。歴史を宇宙人の目線から俯瞰すること、当時の庶民の目線から白い目で見ること、こういう視点で見ないと、下手したら歴史改変しかねないからね。
この作品は、相続問題の渦中にいるけれど女ということで一定の距離を置いている日野富子の客観的な目線、浮浪人だけれど神璽奪回や今子の暗殺に関わる羽目になった蘭之介の客観的な目線、で語るところがキモであると思った。
登場人物をメモする紙を準備して読み始めましょう。
______
p21 苛政の足利義教
6代将軍足利義教は歴代の弱腰将軍に比べて精力的に活動する専制君主だった。武士の貴族化が甚だしい室町幕府では珍しい。あまりにやりすぎて、赤松満祐に殺されてしまった。暗殺ではない、自宅に招いてサクッと殺ってしまった。
p47 日野氏の複雑さ
日野氏には、後醍醐天皇の側近として非業の死を遂げた(正中の変)、日野俊基、日野資朝もいる。足利尊氏の黒幕である僧:賢俊も日野氏である。
p55 変事はなかったことにするのが作法
貴族化が進んだ室町幕府では、すべてにおいて慣例が優先された保守的な世界であった。富子と義政の初夜に賊が紛れたのに、「そういう時は何もなかったようにふるまうのが正しい」と富子は諌められた。変事はあってはならないこと、その存在を認めてしまえば不吉なので、なかったことにするのが正解。本当に貴族的発想ww
p57 死なぬよう死なぬよう生かされる
8代将軍義政は、非業の死を遂げた義教、それを9歳と幼く継ぐも一年で早世した義勝、の後を継いで8歳で将軍に持ち上げられた。悪い流れを断つよう、死なぬよう死なぬよう大事に生かされた。
p66 お今の周りの女官ばかり身ごもる
義政の乳母:お今は義政に寵愛され、政治的にも強い力を持った。お今は自分の権力をさらに強めるためにも、自分の手のかかった女官を義政の側女にして侍らせた。お今は別の女房が男の子を産んでしゃしゃり出ないよう、薬湯係などにも手をまわしていたに違いない。
p69 お今vs大方様(日野重子)
幕府の奥では、生母の大方様と乳母のお今の女の闘いが繰り広げられた。
p72 三魔
烏丸資任、有馬持家、お今の「ま」がつく将軍義政側近の魔物。お今ww
p110 ゆうかがすごい
蘭之介に振られた腹いせに、蘭之介が加わっていた神璽奪還の計画を、中村宗通をたらしこんで敵に寝返らせ、台無しにした。美人局!
p115 保健の先生、黒女
古代以来、権力者の女は一番になるためあらゆる技術を教え込まれた。あんなことや❤こんなこと❤そんなことまで!?
それを教える先生がちゃんといたんだな。
p124 胡萩局の妊娠はお今にも痛手のはず
赤松貞村の娘で山名氏を後ろ盾にした胡萩が義政の子を妊娠した。自分の手のかかっていない女官の子供が男の子だったら…きっとお今も不安のはず、と富子は思っていたが…涼しい顔をしている。不自然だと訝った。
p130 お今の余裕の分け
富子はお今の不思議を解決するため、黒衣の秘書官、蔭涼軒の禅僧:季瓊(きけい)にたずねた。
お今は若くして乳母になった。義政が成人してもその容姿は美しく、逆に熟れた淫靡さをもっていた。
そうすれば、たとえ乳母と将軍とはいえ、男と女、起きるべきことは、当然のごとく起き、誰よりも密接な間柄になる。その絆は切れることもない。
乳母は養い君の子を産むことはご法度である。しかし、すでに離れられないような関係を作っている今、胡萩だろうが富子だろうが、怖いものはないのである。
お前が一番怖い。
p185 妊娠中の女心
富子は初めての妊娠で、自分は男の子を産む者だと自己暗示のように思い込んでいた。それ故に、あらゆるプレッシャーを通り越して自身のようなものが生まれていた。妊娠中の女はこういった出産への期待に、押しつぶされる者と、逆にその気になって強気になっていく二つに分かれる。
p193 呪術は信用されていない
現代人は昔の人間は誰もが呪詛や妖術を信じ切っていたと過信しているが、実際はそうではない。本心で信じているものは滅多にいない。狂信者くらいである。
ではなぜ呪術がでてくるのか。信じていようがいまいが、利用できるから然もあるように扱われていたのである。「呪術のせいで失敗した!責任とれ!」とか「我が神通力で苦境を打開できた!褒賞をよこせ!」とかね。
呪術・妖術は信用されていたのではない。利用されていたのである。だから、長く残っていたのである。
p207 応仁の乱スタート
火をつけたのは畠山家の家督争い。
p214 辞任は留任の保障行為
当時、役職に固執したい時、あえて将軍に辞任を申し出る。すると「いや、もう少しやってみてはどうだ?」となる。この一声をもらったら、役職を当分のあいだ留任できる権利を得たことになる。そういう謀が普通だったすごい世の中。マキャヴェリズム
p221 賢い富子
富子も奥での生活が長くなり、悪い方向に頭が働くようになった。お今側の茶阿に男の子が生まれた。世継ぎ争いで敗れたと思った。茶阿に世継ぎを奪われるくらいなら、自分の旦那を廃位して、義政の弟の義尋(のちに義視)を将軍にして富子の妹を輿入れさせ、日野家の血族を将軍家に残そうと考えた。悪い。
義政も政治にあまり興味がなく将軍職に辟易していたようだったので、季瓊の手も借りて政治工作に乗り出した。成功した。
p228 策士溺れる
富子、懐妊。せっかく万事手配したのに…
p236 生まれた子は他家へ
平安朝以来、上流家庭の女は生まれた子を自分の手では育てない。有力な家来の家に預けられて、互いに縁を強く結ぶ。将来の将軍の補佐官と庇護者の信頼関係の始まりとなる。
p247 コイミ、ウワナリ
平安朝以来、男女の間柄で、先妻はコイミと呼ばれ、後妻はウワナリと呼ばれた。
当時はウワナリ打ちという、先妻の後妻への殴り込みが当然の���利として存在した。先妻は果たし状のような訴状を出し、殴り込みの日を申し込む。親族など味方を引き連れ(女だけ)後妻のいる元夫の家にカチコミに行く。後妻も味方を呼び、防衛線を張る。先妻軍は必ず台所から攻め込むルールがあり、怒りを放出させ暴れまくる。両軍暴れまくったところで仲介人が引き分けを告げ、一件落着となる。
実に興味深い。
p249 槍に兵法が変わる
室町に時代が移るころから、戦法が大人数化して、武器も槍などの新しい武器が使われるようになってきた。
楠正成の作品で、彼が槍を実戦で効果的に使い始めたというものがあった。事実かはわからないが、この頃から槍が流行り始めた。
p268 文正の政変
細川勝元が足利義政の側近:伊勢貞親と季瓊を政治追放した事件。また、義政の弟:足利義視が失策を犯して権威が低下した事件。
事の発端は斯波氏の家督争いに足利義視が調子に乗って口出ししたところから。
足利義政の側近である伊勢貞親は、妾が斯波義敏の妾と姉妹だった。その繋がりがあって(妾の政治工作)斯波家の家督争いで、斯波義廉を廃し、斯波義敏を家督の地位に仕立てた。
還俗して政治の世界に入ったばかりの足利義視は、斯波義敏の汚い相続に異議を申し立て、政治の浄化活動を始めた。
伊勢貞親は当然これを煙たがり、季瓊とともに足利義政に「義視が幕政に文句をつけているから義絶すべし」と進言する。本当に絶交されそうになった義視は細川勝元に泣きついた。
細川勝元はこれを「伊勢貞親と季瓊への攻撃のチャンス」とみて、山名宗全や諸大名の連署をもって二人を「足利義視への暗殺疑惑」の罪で国外追放するよう、足利義政に迫る。義政は事態の大事ぶりに動揺し、追放を承認し、義視との義絶も解く。
以上が事の顛末であるが、これはただの斯波氏の家督争いではなく、細川勝元の政治工作の成功になった。
これに対し、山名宗全は細川の勢いを止めるため、畠山家の家督争いで反細川派閥を作ろうとした。
この政変を契機に、畠山家の家督争いが激化・拡大していく。また、足利義視は自分の地位の危うさを知り、細川勝元にすり寄るようになる。
この政変でもう一人、政治工作に走っていた者がいる。日野富子である。
足利義視はこの一件でうまくいけば将軍家から離別し、相続の約束を反故にできるはずだった。そうすれば、自分の産んだ足利義政の子:義尚に将軍継承権が舞い込むはずだった。悔しかっただろう。
この本で一番大事なシーンかもしれない。いや、応仁の乱の始まりを告げる最重要事件である。
p271 大盤振る舞い
垸飯(おうばん)とは、当時の室町御所での元旦のお祝いを管領が用意する時の「ごちそう」のことをいう。この御馳走をふるまうことが現在の「大盤振る舞い」になった。
p280 富子の前日工作
正月の祝いで、畠山義就が山名宗全の家で足利義政・義視を歓待することになった。
畠山家の家督は畠山政長であり、現職の管領も務めており地位もある。さらに、細川勝元が後援していた。それに対抗して山名宗全は畠山義就を立てようとしていた��である。
家督でもない畠山義就の宴席にそんなに人が集まるわけもなく、特に政治的なやりとりもないと楽観視していた足利義視は度肝を抜かされる。
畠山義就の宴席は大勢の大名が集まり、盛大だった。当然、敵対する細川家や畠山政長の関係者はいなく、山名宗全は将軍に政治工作を仕掛けるチャンスを作ったのである。
この宴会の賑わいは、前日の御台:日野富子への元旦への挨拶で諸大名がこの宴会に出席するようくぎを刺されていたからであった。
この宴会の席で、山名宗全は「これほど盛大な宴会を開き、将軍に忠節を披露した畠山義就には京での宿がない。これは武士の礼節としていかがなものか。そこで提案、畠山政長が住んでいる屋敷を義就に譲らせるのが得策ではないか」とほぼ無理やり将軍義政の承認をとり、畠山政長の地位を貶める工作に成功した。
この後、畠山政長は足利義政の屋敷明け渡しに反発して、管領を辞任する。
後任の管領には、山名宗全が後援する斯波義廉がつき、山名宗全が権力を強めた。
細川勝元もさすがに不当であると畠山義就の追放を求めるために、花の御所を塀で囲み、足利義政に談判に出た。
この細川の出陣のとき、日野富子は出産のために細川教春の屋敷に出産にきており、家中の慌ただしさを察知していた。富子は細川勝元の権威を落として、足利義視の後ろ盾を弱めたいがために、政治工作に走る…。
富子が山名宗全に事前に細川の出兵をリークする…。
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ふふぁーーーーー。超疲れた。
後半の怒涛の展開難しすぎ。細川勝元と山名宗全の権力争いで、誰がどっちの派閥か絡まっていく…。
あと、下の名前だけで表記されると「どこの家の人だっけ??」ってなる。
ここにまとめるために何回も読み直してやっと腑に落ちた。でも、時間かけたおかげですごい読後の満足感です。
マキャヴェリズム。
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高校生のときに読みました。試験勉強もそっちのけで読みふけったのを今でも憶えています。学校の図書室に新着図書として見つけたのですが、誰も借りてなかった―笑
今から思えば、高校生には少し難解な歴史小説であったかもしれませんね。私は当時から歴史が大好きだったので、むしろ、こういう本格的な歴史小説に出逢えて嬉しかったです。
誰も借りてないので、図書館の本だけど、ピカピカの真新しい本は折り目もシワもなく、とても気持ちが良かったです。上下巻ともにあっという間に読み切りました。
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混沌としていた室町時代末期、悪女と言われた日野富子の実像に迫る。由緒ある日野家の姫と賀茂の河原でたくましく生き抜いていくゆうかとの人生を対照的に描く事で、この時代の面白さ、日野富子のしたたかさをうまく表現している。
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足利義政の妻、日野富子の生涯。好奇心いっぱいの娘だった富子は、将軍家に嫁ぎ何ごとにも意欲を持たず我が子の行く末にすら無頓智な夫にかわって、いつしか幕府の財政をあずかるまでになる。形式や前例にしばられ夫婦や親子の間ですら距離を感じる富子と対照的に河原に、自由にたくましく生きる庶民のゆうかと蘭之介の暮らしが描かれている。
義政が情熱を傾けた東山銀閣はこういう時代に作られ、こういう背景があったのだと知って行くといいかもしれない。