紙の本
好きな作家は鬼籍に入っている
2019/01/20 21:56
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
作家が昭和43年第59回芥川賞に輝いた「年の残り」等、4作品を収録。私は「川のない街で」が好きだ。一回り上の男性と社内結婚した雅子は自分のことを想像力のない女だと思っている、ある時亭主から「離婚してくれ」とせがまれる。赤ちゃんの取違事件もおきた想像力のない雅子が想像したものは・・・という私はとても怖い小説と受け取ったのだが、考えすぎだろうか。やはり丸谷才一はうまい、戦争体験がある作家の持つ味を楽しめたのは彼が最後の作家かも知れない、阿川弘之も庄野潤三も小嶋信二もみんな鬼籍にはいってしまった
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学生の頃に読んではいたが、なんとはなしに再読。
まあ、久しぶりに純文学っぽいものを読んだという印象。
読みやすくて、描かれていることはどうであれ、読後感も悪くない。
どこか軽みがある。
そんな中に怖さもある。
丸谷才一さんの特徴かもしれませんね。
(2009年03月21日読了)
わりと最近読んだばかりなのに、すでにどんな内容だったか忘れてる・・・(2011.04.16)
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淡々としたその物語が好き。
丸谷さんのものはこれまでエッセイしか読んだことがなかったけれど、これからは小説も読んでいこう。そんな気持ちにさせてくれた中編集。
表題作「年の残り」と「思想と無思想の間」が個人的には好きだった。
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表題作の『年の名残り』を読みました。
味わい深い、読み応えのある文章で、一介の医師の老境を彼の旧制高校時代の同級生達の生き様を交えながら、複雑な心情の綾を巧みに描いていて素晴らしいと思いました。
親子とそして妻との関係も、それぞれの登場人物のもつ様々な有り様を対比させていて独善に陥らず、心の内側を見つめると同時に外へも開き、観察し、分析する均衡の取れた人格を読みながら知覚する、その辺りが心地良く感じました。
しかし、かなり衝撃的な事件とも言うべき出来事もあるので、読む際にはそれなりの覚悟が必要かもしれません。
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この本を読む前に、痴呆の祖母とこんな話をした。
「一郎さんは?」「死んだ」「次郎さんは?」「死んだ」「三郎さんは?」「死んだ」………。十吉さんまで実在してて、皆ことごとく死んでて、私も祖母も近くで話を聞いていた両親も、それで大笑いした。
この本を読んだ後には、父親とこんな話をした。
「形式と内容はどっちが大切?」「内容が大切なら、どこか体育館みたいな広い所にゴザ敷いて“世界はひとつ”とか言ってみんなで暮らしてれば良いけど、そうじゃないから、みんな同じ形の家をそれぞれ建てて別々に住んでる。まぁ、何より大切なのは、工期だけどね」元現場監督の立場から父はそう答えた。
もうすぐ30才で、ソンタグを読んで、ワイルドを読んで、祖母や父とそんな会話をして、『年の残り』を読んで、そしてこの本の269ページから270ページに続く丸谷才一の文章を読んで、私は涙がこぼれそうになるほど感動した。
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丸谷さん、40代のころの中編小説で芥川賞受賞作品でもあります。
ここのところ、ポツリポツリと読み返している丸谷さんの小説が面白くてたまらない。
主人公は69歳の病院長・上原。
休日の自宅に、小さいころから診ている男子高校生を迎え、軽く診察したあと、彼とのおしゃべりを楽しもうと草花のスケッチなどを出してきて見せたりしている。
物語を進める人物の目線が少年から始まったものだから、若い彼のお話なのかなと思うと、しばらくして老医院長のそれに代わり、話は過去に遡ったり、途中、電話が来たために出かけることになったり(旧友の死を知らせる電話だった)、そして、回想場面を多々含みながら、その友だちの告別式の帰りに参列者たちであれこれ語り合う、という場面で一応は終わる。
実際の丸谷さんより年上の医院長を設定したために、丸谷さんが実際には体験していない昭和史を上原は知っていて、(台湾に勤務し、昭和10年にはもう引き揚げてきている)たぶん、丸谷さんが子ども心に心底イヤだなぁ、と思っていたあの戦争にそれでも終戦ギリギリでは召集までされてしまったことに比べ、大人の対応ができたことに、読者としては、なんか言葉は悪いけど鬱憤晴らしがでいたような気がしてしまうところが可笑しい。丸谷さんにその気があったかどうか、はもうお尋ねする術もないけれど・・。(*^_^*)
ただ、上原が順風満帆の人生だったか、といえば、それはもちろん色々あったわけで、だからこそ、この物語が成立しているのだけど、それにしても、「死」の話がこんな短い話のなかにさりげなく&実はかなり多種出現している。
始めに出てきた高校生が、“ついうっかり”「みんな死んだんですね」と口をすべらせたことが全編に当てはまる、ということがあとでわかる仕掛け、というか、人間ってみんな死ぬんだよね、と、当たり前のことがしみじみ思われたりもするという・・・。
ひっそりした文体で、生死を語る登場人物たち。
遺書は果たしてあったのか、なかったのか、
おしまいに出てくる高校生の稚拙とも言える日記に消し書きの手法がとても面白く使われているのだけど、そんな消し方が、長いスパンで生きる人間というものの消し方、にまで通じる、なんてちょっと考えすぎかなぁ。
他三篇
「川のない街で」
「男ざかり」
「思想と無思想の間で」も
どれも面白く、それぞれ、その後の丸谷さんの作品の背景となっているモチーフや思いを発見(*^_^*)したりするのも楽しかった。
たぶん20年ぶり以上、もしかしたら30年くらいにもなるのかも。
うん、この年になって読むとまた新たな感慨(*^_^*)があったりして、とても面白く読みました。
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丸谷才一の二冊目の本。こちらは中短編集。
「たったひとりの反乱」はそうでもなかったが、こちらはより丸谷色の強い作品なのだろう。
地の文と会話文が混然一体となっている。
また、現在と回想とが自在に入り乱れる。
確かに人間の実際の思考はこうなのかもしれないけど、読みにくいと感じる面も否めない。
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六十九歳の病院長が、患者の少年との関係から回想する若き日々の情景――老い病い死という人生不可知の世界を巧みに結実させた芥川賞受賞作「年の残り」「川のない街で」「男ざかり」「思想と無思想の間」の四篇収録人生のひだを感じさせる六〇年代の作品。
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大正から昭和を生きる人々を描いた短編集。
人が内側に抱える思考や葛藤、過ぎていく日々の虚しさ、同時に救いでもある日常の流れが淡々と綴られている。老いや死が人に与えるものは何なのか、しんみりと考える人生そのもののような本だった。