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戦争への恐怖。そして、穴を掘り続ける男性。
シュールな設定がなんともティム・オブライエンらしい。「失敗作」でも読み応えは十分
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訳者の村上春樹氏がとある著作の中で「この本を訳すことで(凍り付いていた心が)本当にあたためられた」といった旨のことを書いており、それに触発されて読んだ
「まとも」であるがゆえに社会の「狂気」に適応できない主人公という話(という括りが大雑把であることには少々目をつぶって)は、まあよくあるけれど、その人物の半生にわたる心の変遷をここまで丹念に描いた作品はそうないのではないかと思う。1960年代〜のアメリカの情勢を肌感覚として知っていないと、本当の意味でこの小説で描かれた焦燥のようなものはわからないのかもしれないな。とはいえ、自分のような年代の人間でも充分にこの小説のもつパワーにやられた。圧倒されました。
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村上春樹氏が訳しているというだけで手にとったが、とても面白かった記憶がある。ある日突然自宅の庭に核シェルターを掘り始める男の話だったですよね?詳細や読書同時の感覚はだいぶ薄れて生きているが、とても魅力を感じたということだけは覚えている。それを証拠に、約10年後、同じティムオブライエンの「世界のすべての7月」を買って読んでいる。また今度読み返してみよう。
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それまで春樹訳という事で、この人の本を買い続けていたけど、この本を読んで僕はティム・オブライアンが凄く好きになった。「アメリカン・ビューティ」的な壊れたアメリカ人の世界。たぶん今、生きるという事は、心をどんどん壊していくということなのかも?だから、まともなヤツが一番危ない。
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村上春樹訳だったことから読み出した本。日本の学生運動と同じように、アメリカにもあった若者の波乱の時代。ハルキストには絶対合う。おすすめ!
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3回くらい読みました。自分の嗜好が客観的に見えた作品です。村上春樹さんが翻訳をしているので慣れてる人には読みやすい作品です。本厚いけど。
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ついつい試験が近かったり、やらなきゃいけないことがったりすると、引っ張り出して読んでしまう一冊。なんか読むと妙に現実感がなくなるし、心も沈むんですけどね。たぶん、心が沈むような話が好きなんだと思うんです。
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60年代アメリカという、不安定さ故ぽっかりと穴の開いた時代。穴自体には何かがあるのではなく、何かが無いから穴がある。安定さを欠いた話であるからこそ、物語り全体が穴の中にあるような薄暗い雰囲気をかもし出している。おもしろかった。
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内容(「BOOK」データベースより)
元チアリーダーの過激派で「筋肉のあるモナリザ」のサラ、ナイスガイのラファティー、200ポンドのティナに爆弾狂のオリー、そしてシェルターを掘り続ける「僕」…’60年代の夢と挫折を背負いつつ、核の時代をサヴァイヴする、激しく哀しい青春群像。かれらはどこへいくのか?フルパワーで描き尽くされた「魂の総合小説」。
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久々に足先から頭の上までその世界に浸ることができた小説。決して万人受けする話じゃないけど、この物語が持っているエネルギーはすごいと思う。
話は男が一人急に家の庭に穴を掘るところから始まるのですが…
まあ気になった方はぜひ。
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SFと言いきっていいものかどうか。こうだったかもしれない過去、こうかもしれない未来を、史実に並行に書き上げた、リアリズムといっちゃってもいい、妙な小説。
全共闘世代にノスタルジイを抱いちゃう男子諸君はぜひこれを読むとよい。
後半のサラの健気さと、主人公の駄目男っぷりに爆! でも全共闘に憧れちゃう男子ってこんな奴多いよな。だから読むとよいのだ。
ところで「物語に銃が出てきたらそれは必ず発砲されなければならない」のくだり、村上先生、最新作にも引用して使ってたけど、いいの?
もとがチェーホフだからいいの? でも自分で翻訳したものなのに・・・いいの?もしかして忘れちゃったの? などど要らぬ心配をしてみる。
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・読み終わって色んな気持ちが残ってる。言いたいことが山ほどある。でも、この小説をどう表していいか全くわからない。でもがっつり揺さぶられた。そんな小説(どんなだよ?)。
・村上春樹のあとがきも、「現代の総合小説」とか言っちゃってるけど結局のところどう捉えていいかわかんないと書いてるとしか思えない。
・これ村上春樹が訳したわけが良くわかるわ。
・正直に言って、自分の妻子を手にかけちゃうほどの核妄想については全く理解も共感もできない。でも自分も子供の頃核兵器の存在を知って眠れないくらい怖かったことを思い出した。使うと世界が終わっちゃうものが存在していることが怖くて仕方なかった。
・結局60年代ってのがどういう時代だったのかについて書かれた本なのかもしれない。
・ずっしり100ページほどもある訳注がまるでエッセイのようで、村上春樹好きには凄くお得な感じがする。思わずにやりとさせられる内容。
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ベトナム戦争中の話である。
なぜウィリアムは穴を掘り続けるのかが知りたくて、一気に読んだ。
「掘れよ、と穴が言う。」という文章がよく登場する。
穴を掘り続ける意味がなんとなくわかった時、全身震えた。
又、村上春樹の訳注がすごく丁寧で分厚く、有り難い。
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「君が正常な人間なら、脅えというものを抱くはずだ。脅えを抱けば、穴を掘るはずだ。もし君が穴を掘れば、君は異常人間ということになる」
ティムオブライエン、二冊目。
核戦争、ベトナム、兵役忌避、狂気。
安定を追い求めることへの強迫観念。
どこまでいけば安全なのかわからない。
失わない為にはどうしたらいいのかわからない。
どうして冗談にできるんだろう。
どうしてわからないんだろう。
という、シンプルな問い。
「Eは本当はmc2なんかじゃないんだ、それは狡猾なメタファーであり、最終的な等式は本当は成立していないのだ」
究極の骨子。
ここに着地するしかないのですか。
私の中にもウィリアムがいるねぇ。
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とても面白かった。
英語勉強用に使ってる「ハイブ・リット」の中にティム・オブライエンの「レイニー河で」が入っていて、とてもよかったので買ってみた。
とても心を揺さぶられた。
ベトナム戦争や東西冷戦の時代で、核戦争がリアルな危機として感じられていた時代の話。核戦争に備えて庭に穴を掘り続ける男の話と、その男がどういう風に成長してきたかという二つの話が交互に登場して話が進行していく感じだった。
アメリカでは学校で核戦争用の避難訓練とかしてたとか、そういう時代背景を詳細に注釈としてつけてくれていたので、主人公たちの置かれている状況を把握しやすかった。
タイトルにもあるように、話の中では「核」が大きな意味をもっていたけど、この話は核についての話であるというよりは、核というものを使って書かれた、おびえ方というか、心の病み方の話なんじゃないかなと感じた。
自分は核戦争の危機というものを当時の人ほど差し迫ったものとは感じてないと思うけど、それでもとても強く感情移入しながら読めたからそう思った。
正しいと感じることをしようとすると頭がおかしいように見えて、頭がおかしく見えないようにしようとすると、狂ってるとしか思えないことを信じないといけない。
そういう何を信じていいかわからないような状況でどんどん決断を突きつけられて、それでもなんとかやり過ごしているうちに、気がつくと取り返しのつかないところまで来てしまっている感じ。でもどうしたらいいのかは全然わからなくて、そういうのにおびえたり、心がおかしくなりそうな感じ。そういうのに強く引き込まれたんだと思う。
つよく感情移入してたからか、ハッピーエンドじゃなくてもいいから、どうか破滅的な終わり方だけはしないでくれと思いながら読んだ。
アメリカではこの本は失敗作という扱いらしい。信じられへん。
印象に残っているシーンはたくさんある。以下。
・船で夜の海に出かけて、エンジンを切ってラファティーと二人だけで飲みながら話すシーン。
・ラファティーと銃を沈めるシーン。
・サラが主人公に、他にもありえた未来を細かく上げていくシーン。
・主人公が逃げ出すのを家族が送り出すシーン。
・逃げ出した後のキーウェストでの不安に満ちた平穏の日々。
・父親の葬式に双眼鏡をつかって覗き見るシーン。
あと、村上春樹はティムオブライエンから思ったよりも影響をうけているのかな、と思った。スタンスが似てるっていう方があってるかな。
人生をダンスのステップに例えるくだり、チェーホフの銃の話の引用もそうだし、ラファティーと主人公の会話はダンスダンスダンスでの主人公と五反田くんの会話と雰囲気がそっくりだ。
読む順番が逆だったらにやりとしながら読めたんだろうと思うと少し残念かも。