紙の本
絶品の短編集
2002/02/15 08:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
アーチャーはこれまで長編の間を縫って、短編集を4作著している。「十二本の毒矢」、「十二の意外な結末」、「十二枚のだまし絵」、「十四の嘘と真実」の4作である。
いずれも甲乙付け難い短編群であるが、強いて優劣を付けるなら、この十二のだまし絵が最も楽しむことができる作品であると見た。ちなみにこのだまし絵は、どの作品にもニシンという文字が中に隠されているという。これは解説に記されているので興味のある方はご覧いただきたい。
初期の短編の中には、うっかり読み飛ばすと、それが全体のキーになっていたり、後でそれと分かってもどう解釈すればよいのか分からないものもあるが、この「十二枚のだまし絵」は、それがほとんどなく、より気楽に読むことができる。
十二の短編のうち、筆頭の「試行錯誤」は分量として他の4,5倍はある短編集の中の長編である。また、内容的にも推理小説風になっており、それがスパイ大作戦を思い出させるし、登場人物がいずれも魅力的に描かれている。ここだけの登場では勿体無い。それに答えたわけではないであろうが、珍しいことに、ここで登場する法廷弁護士、サー・マシュー・ロバーツが11作目の「眼には眼を」で再登場するという活躍ぶりである。いつかまた短編集に登場するのが楽しみである。
また、最後の「焼き加減はお好みで…」は、お好みに合わせて途中からストーリーの展開が分かれている。異なる部分を比較する楽しみもある。新しい試みで読者へのサービスを忘れていない。この他の「バグダッドで足止め」、「海峡トンネル・ミステリー」などは場所場所での特徴がよく生かされており、舞台は世界中に広がっている感がある。誠に秀逸である。
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古本で買った短編集。
とりたておもしろい!深い何かがあるわけではないけれども
全部、それなりに高水準の面白さ。
さらっと何かを読みたい時に読みたい一冊
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余韻はないが、読み応えがあっておもしろく、粒も揃った短編集。短篇も長編もこれだけ書ける作家は珍しいと思う。
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今までで一番、臨場感を感じた本。
映画観てるみたいだった。
特に『バクダットであしどめ』。
やばーい。
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ジェフリー・アーチャーは短編集と長編を交互に発表していますが、短編集の中でも「12枚のだまし絵」「12の意外な結末」「12本の毒矢」の3冊は着想も構成も非常に良くできており、おすすめの短編集です。
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セピア色に染まるほど読んだ小粋な短編集。今読むと、比較的古典的な話かもしれないが、あらすじを知っていてもなぜか楽しめる。「高速道路の殺人鬼」は夕刻追跡車から必死で逃げる女性の意外な結末、「バグダッドで足止め」は亡命したある男性におこる空港内でのハラハラ感を味わえる。J・アーチャーは長編の方が有名だが、お気に入りは短編が多いなぁ。
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今回の短編はこれまでの12編のお話より、物語性が高く落ちもストンと分かり易いものでした。
最後のお話の「焼き加減はお好みで」は結末を読者に委ねるもので、全部読んでしまいましたが、確かに焼き加減で味が違うものが賞味できました。
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読んでる過程は面白くてどんな結末なんだろう、とサクサク読めるけど結末はがっかり。焼き加減…は、四通りの結末があって結末はパッとしないけど、楽しい試みだと思った。
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〇 総合評価 ★★☆☆☆
翻訳モノの短編集はあまり面白くないことが多い。原因は文化の違い。ちょっとした小話やネタの意味が分からないので面白さを感じにくい。この作品は12作品のミステリ…というより世にも奇妙な話系の話がある。そもそものオチ・ネタが弱く,話づくりがそれなりにうまいというイメージ。これだけの話づくりのある作家であれば,日本人で日本人に分かりやすい小ネタを入れてあれば,それなりに楽しめる作品を量産しそうではある。
それでも,よく分からないアメリカンジョークはそこまで多くない。よって,★3程度には楽しめる作品がそれなりにあった。しかし,やっぱり何か違う。最後の「焼き加減はお好みで…」など,蒼井上鷹などの日本人作家が書いていたらもっと細かい部分に「なるほど」と思わせる技巧をこらした作品にしていたと思う。全体的に大味。★2かな。
〇 試行錯誤 ★★★☆☆
法廷モノ。ジェレミー・アレクザンダーという男と妻に裏切られた男の話。80頁ほどある中編で,メインの一篇なんだろう。ちょっとした叙述トリックがある。妻と友人に裏切られた主人公のリチャードは,殺人罪で1度裁かれ,殺人未遂でもう一度裁かれることになる。
主人公のリチャードが,妻と友人であるアレクサンダーにはめられ,アレクサンダー殺しの罪で裁かれるが,実はアレクサンダーは生きていて別人になりすましていたというもの。富豪である主人公のリチャードは,私設の捜査員を雇って真相を暴く。法廷モノでありサスペンスでもある。これはそこそこ面白かった。★3
〇 割勘で安あがり ★★★☆☆
ミステリではなく,ちょっとした小話。ある魅力的な女性が二人の男に半分ずつ金を出させて高価なプレゼントを買わせるというだけの話。これだけたわいのない話をそれなりに読ませる短編小説に仕上げるジェフリー・アーチャーの話作りの上手さが発揮されている。★3で。
〇 ダギー・モーティマーの右腕 ★☆☆☆☆
昔のボート・レースの英雄ダギー・モーティマーが八百長をしていて,そのためにせっかく主人公が買い戻したダギー・モーティマーの右腕がまた廃棄されるというだけの話。オチもないし,あまり面白くもない話。★1
〇 バグダッドで足止め ★☆☆☆☆
サスペンスに近いノリ。バグダッドから亡命した男が飛行機のトラブルでバグダッド空港で降ろされ,住んでのところでバグダッド政府に連れ戻され、死刑になりそうになるがなんとか助かるという話。しかしオチの部分,なんで主人公のゼーバリが助かったのかが腑に落ちない。★1
〇 海峡トンネルミステリー ★★☆☆☆
主人公と友人の作家の話。女が絡む。主人公の作品を読んでいない友人が,女から聞いたあらすじを自分の作品のように話,その内容が主人公の書いた作品だったというオチ。それなり。★2
〇 シューシャイン・ボーイ ★★★☆☆
北大西洋の真ん中の島に赴任した男のもとに,総督が急にやってきて,急場しのぎの使用人で対応するが,見抜かれていたというオチ。三谷幸喜の舞台やドラマのようなシチュエーションコメディ。デキはそれなり。★3で。
〇 後悔はさせない ★★☆☆☆
生命保険がらみの話。健康診査で友人の尿をだして審査を欺くが,生命保険会社員の罠で見抜かれる。しかし,最後は,嘘をついた男も自然死で死んでしまい,生命保険を得るという話。話づくりはうまいがオチは予想の範囲。★2かなぁ。
〇 高速道路の殺人鬼 ★★★☆☆
殺人鬼が後ろから追い掛けてきた車ではなく,女性の車の後ろに乗っていて,後ろから追い掛けていた車はそのことを教えようとしていたというオチのサスペンス。それなりに面白い。★3
〇 非売品 ★★☆☆☆
画家の卵の少女が,画商で出会った男に裏切られる話。しかし,画家としては成功の兆しがある。最後に事故に遭い,その事故が報道されたおかげで有名になる話。つまらなくはないが,面白くもない。★2
〇 TIMEO DANAOS… ★★☆☆☆
銀行員が旅先でお土産の銀の食器セットを買おうとする話。都会に近づくにつれてお土産の価格が上がり,最後は騙されて遠くの店で結構高めの値段で買うことになる話。★2
〇 眼には眼を ★★★☆☆
眼が見えないと嘘を言っている被告人に対し,敏腕弁護士が眼が見えていることがばれていると知らしめるために義眼の弁護士の眼をはずさせるという話。これはそこそこ。★3
〇 焼き加減はお好みで
映画館で女性に出会う男の話。後半部分が4種類に書き分けられる。4通り別々の結末を用意しているだけで,他の話と何か関連があるとか,そういった趣向がない。特に面白くもない。★2