紙の本
水はどこにでもある
2002/02/28 23:03
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投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
希代のストーリーテラー、ポール・ギャリコによって描かれた、彼女《雪のひとひら》が送る人生の壮大な流れの行き着く先と不変の愛……。
冬の日に、空高くに生まれた《雪のひとひら》。自分が何者であるのかも知らない彼女は、自分と同じ姿をした者たちと共にやがて地上に舞い降り、新たな世界を目にする。豊かな丘、流れる川、楽しそうに遊ぶ子どもたちやとげとげしい大人たち……。愛するものと出会い、旅をはじめた《雪のひとひら》は、一人が二人に、二人が一人になるような感覚を味わいながら、川の流れに身を任せてたゆたっていく。
ただ空を舞い降りるだけの存在であった《雪のひとひら》。彼女は、ギャリコの描いた多くの登場人物たちと同じ性質を持って生まれている。それは、女性であるということ。
ボクシングのチャンピオンをノックアウトしてしまったカンガルー、マチルダの冒険を描いた『マチルダ』(創元推理文庫)しかり、一匹の猫に自分が思い描く理想の女性像を照射したという『ジェニィ』(新潮文庫)しかり、孤独でやせっぽちな牝牛の思いを叶えた作品『ルドミーラ』(新潮文庫『スノーグース』に収録)しかり……。男性のギャリコは、小説家として女性を描くことに心血を注いでいたように思える。
そのまま人間の姿を伝えるのではなく、雪や牛などを擬人化するところも興味深い。雪の結晶は、他に同じ形が一つとして存在しない、またとない、他にはない《個》であり、雪として存在している以上は孤独な存在意外の何者でもない。それが水となって、他者と一体となる幸せを感じる、という自然の必然を使ってギャリコは一人の人間を、女性を描いている。彼の才能は、本当に稀有だ。
『雪のひとひら』では、ひとつぶの雪の結晶が地上に舞うようにして降り、地上では川の流れと一体となってただ流れていく様を通して、一人の女性がその一生を端的に美しく物語られていく。この物語で印象的なのは、この情景が女性的な語り口で伝えられていること。《雪のひとひら》の喜びや悲しみをすべて知り尽くした存在が、既に女性的であることは、ギャリコの描く普遍的な愛が女性という存在を通して伝えられていることの証しなのかもしれない。もちろん、彼は愛を女性だけの役割として押し付けているわけではない。ギャリコの小説家としてのアプローチが、不変の女性という存在であったというだけのこと。
この美しい小説がなにを伝えようとしているのか。そんなことは、この作品に触れた人がそれぞれに胸に抱けばいいこと。ではあるけれども、自分の感想を一つ、二つだけ。雪が水となり、川の流れとなって海に注ぎ、また空に昇って雲となるように、人の一生というのはなるようになる。水はどこにでもあるのだから。
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『「ごくろうさまだった、小さな雪のひとひら。さあ、ようこそお帰り」』
小さな雪のひとひらが、空の高みで生れ、地上に舞い落ちて水となり、
流れ流れて空へと帰る。ただそれだけ。
それだけを物語ったお話なのに、どうしてこんなに優しくて温かいのでしょうね?
この物語は、雪のひとひらを主人公とした、一人の女性の人生の物語です。
生れ、恋をし、結婚して、子供が出来、夫に先立たれ、自らも死ぬ。
そんな普通の人生であるのにこの物語は、『どんな生まれのものでもむなしく生れてきたわけではない』と言うことをわたしに教えてくれました。
『文庫』と言うにはかなり薄すぎるのですが、まるで絵本のような原マスミさんの挿絵が本の雰囲気にピタリと合った柔らかい絵で、そこがまた素敵です。
初めて読んだ時は泣きたくなりました。
今だって読み返せば、泣きたくなるほど胸が温かくなります。
落ち込んでいる時や、自分の生について悩んだ時にこの本を読むと何かが見えるような気がしてくるから不思議だなあ、と。
疲れたときに、ちょっぴりおすすめ。
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「雪のひとひら」というこの音の響きの美しさ。「ひとひら」という日本語はとても美しい表現だと思った。そしてそれだけの理由でこの本を手に取り、挿絵とその言葉のやわらかさに惹かれた。ギャリコの物語の構成もさることながら、矢川澄子さんの翻訳に私は感動したのかもしれない。
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雪のひとひら♀が地上に舞い降りて、雪のしずく♂と出会って、消え行くまでのお話し。雪のしずくが先にお空に召されてしまった時は悲しかったけど、出会えてよかったね。出会えてよかった。
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本のソムリエの方に紹介してもらった本。一昔前にはやった「葉っぱのフレディ」と同じような題材と内容。でも、もっと女の一生的なものをあつかった感じで、家族とかも出て来た。文章がいまいち好きになれない・・・。06-03
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本屋さんで『矢野顕子さんが第二の聖書と評した!』見たいに書いてあってたまにはこんなジャンルも読んでみるかと買ってみた。なんか雪が降って〜雪だるまになったところで中断・・・こういう本が好きといえる趣を解する心が欲しい・・・(つーかこれ絵本だよ!!)
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こんなにも薄いのに何でこんなにも愛を表現できるのだろう?と思ってた。「雪のひとひら」を主人公に誕生から死ぬまでの物語。
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買ってから随分読んでいなかった。
イラストが気に入らなかったから。
しかし『ジェニィ』を読んで
「もしかすると」と思ったから読んでみた。
解説の「女性の一生」というより
性別に関係なく人生のあらゆる面で見出せる幸せと悲しみ、
創造主の沈黙と愛、と読んだ。
信仰とは別にして
子供が思春期に入り、幼少時代のよい思い出を記憶に保ち
自らの行く末に不安をいだいたり、
自分が何もので、何をなすのか、なぜ生まれたのか悩んだり、
平凡を軽視して大物であるような錯覚を抱いたときに
読んでくれたら嬉しい。
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ある冬の日に空から舞い落ちた雪のひとひらが、春の日差しの中で水滴となって河を走り出し、ある時は湖にたゆたい、ある時は炎と闘い…再び天へと還るまでを描いた、おとぎ話のような「人生」の書。出会いや別れ、喜びや悲しみを経ながら、けれど止まることなく走り続けなければならない雪のひとひらの旅路は、まさに人生そのもの。美しい文章と清らかな目線に、決してリリカルなだけではない「人生」の重みが確かにこもっていて…シンプルゆえに心に沁みる小品。
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雪のひとひらの一生をつづった話。可愛く童話のように語られている。(ていうか童話?)風景の描写がとても綺麗。まー普通に唯一神っぽいのがアレですが、素直に読んでみると素直な気持ちで素敵だなと思えます。なんとなく優しい気持ちになりたい人にオススメ。
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「どんなにささやかな貧しい者、つつましい存在でも、ひとつとして無駄に見過ごされることなく、……いかなる輝かしい強大な者にもひけをとらぬものだったのです。」
女性の一生を雪また水の一分子に例えた物語です。しかし先の引用にも表れている様な、すべての命は等しく尊くそして意義深いものであるという作者の眼差しの優しさは男女問わずすべてに注がれています。したがって、男性読者にも十分たえうる作品であると私は思います。翻訳作品にありがちな日本語のぎこちなさもなく、まこと美しい文章で書かれています。挿絵もきれいです。
と、こんな丁寧な文章で感想が書きたくなるようなやさしいお話なのです。
原題:SNOWFLAKE
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日本人としては、読みながら「生々流転みたいな方がよかったなー(※)」とか「宗教的な思想がなー」と思ってしまうんだけど、楽しめたことは楽しめた。(※蒸発して消えるのではなくて、また新たなひとひらとして生きて……という循環で。好みの問題ですが)
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どんな辛い経験も、悲しい出来事も、すべては必然だったと思える。
愛する1人の人と出会うための。
そして愛する人が傍らにいる限り、これから先のどんな苦難にも耐えていける気がする。
全ては愛から始まり、愛によって育まれ、愛の力で受け継がれる。
生きるとは愛を知ることでもある。だから人の一生は愛の歴史なのだ。
私もまた儚い雪のひとひらに過ぎないけれど、愛によって生かされている。この果てしなく続く、大河のような命の営みの中を。
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人生ですよね。人生ってこういうものなんだ、と思った。こんなに短い話なのに、人生が凝縮されている。
誰が自分をこの世に産み落としたのか…その答えは結局でないけれど、最後は「生まれてこれてよかった」と思えたところが、…なんだろう、わたしもそういう生き方ができたらいいな、と素直に思えた。
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う〜ん。。。つまらなかったなぁ。
あつかってるテーマは人間の人生ってことですきなんだけど、、、なんか描き方にムリヤリ感があるきがするから、あんまり好きじゃないゃ